【GE作者合同投稿企画】聖なる夜だよ、神喰さん! 作:GE二次作者一同
投稿作品名:フェンリルに勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない
登場キャラ:コウタ・エミール・エリナ
ジャンル:シリアス、ほのぼの、ギャグ
祈りは届く。
□ ■ □
「ボランティアしに行くぞー」と唐突な提案。
気が抜ける声を上げたのは、第一部隊隊長、藤木コウタである。
「えー」
「えーてお前、社会奉仕活動も立派な仕事なんだぞ」
いかにも不満気に返すエリナ。
本日の第一部隊にしては珍しく、極東支部にて待機命令が下っていた。
それも、一週間は防衛班の随伴任務に従事せよとの追記だ。とは言っても防衛班の性質上、“呼び出し”をくらうことはそうそうないことは解り切ったことである。
第一部隊の通常任務は遊撃掃討・・・・・・つまりは積極的防衛であるが、実質長期休暇を得たようなものだ。
エリナもこの休みを利用し、買出し等、骨休めをするつもりで予定を立てていたところに、コウタがふらりと現れたのだった。
「いや、そんなことわかってますけど。隊長が連れていく所ってだいたいろくでもない所じゃないですか」
「おっとお、辛辣ゥ!」
「この前はピクニックとか言って、結局連れていかれたのは工場の跡地だったでしょ。
せっかく新しい服を下ろしたのに、重油でべとべとになったんですけど?」
「灰色の空、濁った空気、ほのかに香る鉄サビのにおいに包まれて食べる戦闘糧食は最高だな! かわいいアラガミ達とふれあい王国だ!」
「その前はみんなでレクリエーションの時間だーって、遊びに行こうって言われた先は連続討伐任務地だったじゃないですか。
ボルグ・カムランの巣だったじゃないですか。私のスピア相性最悪だったんですけど」
「突属性耐性とか甘え。弱点部位にねじ込んでこそのトッツキマン。でしょ?」
「何なの? 馬鹿なの? 馬鹿なのね! 嫌だって言ってるの伝わんないかなあ!」
「エリナ、よく聞くんだ」
「何よ」
「無理だって思えるうちはまだ余裕だ。口から血の泡しか出なくなってから休みたいって言え」
「ひぇ」
「前隊長の名言だ。わき腹に刻んどけ」
「あの人はもう何か・・・・・・ゴッドイーターっていう名前の別の何かでしょ! 私は普通なの! 普通の一流のゴッドイーターなの!」
「俺も大概だよなとは思うけど、お前が何言ってるかわかんねーけど、何を言いたいかはわかる」
「こう見えても名家の子女なんですけどお! お嬢様なんですけどお!
もっとこう、こう、ちゃんとしたこう、誰かのためになってありがとうって言われるみたいな、そういうのじゃないと嫌なんだからね!」
「か、勘違いしないでよねっ! 別に嫌だって言ってるんじゃないんだからねっ! ボランティアとかしたことないから不安になっただけなんだからねっ!
あとこれは心の副音声なんだからねっ!」
「ウッッッザイにもほどがあるでしょうが!」
「まー今回のはほんとにちゃんとした慈善活動だからさ。頼むよ。最近ほら、ゴッドイーターの反乱とか社会問題になってるじゃん? 事実かどうかはさておき・・・・・・。
極東支部にもそういう嫌な空気あってさ。で、そいつを払拭しようって、榊さんの提案で、居住区に繰り出してボランティアしましょうねーって」
「まあ、そういう理由ならいいけど・・・・・・でも私、その、簡単なことしかできなくて、その、ほんとに私がそういうの参加してもいいのかなって」
「言える分だけ成長したよ、お前はさ。実際、ゴッドイーターが社会活動してる姿っていうのはさ、そいつを見てる人たちにとっては、すげー安心するもんなんだよ」
「自分達が守られてるって、自覚できるから?」
「ゴッドイーターは化物じゃないって思えるからな」
シニカルな笑みを浮かべるコウタに何も言えなくなる。
たまにこういった表情をよくするようになった、とは彼をよく知る者達の言葉だ。
それを成長と取るべきか、それとも道を踏み外しつつあると取るべきか。
隊長職に就いてから、コウタは、おそらく本人でさえ意図しない方向へと、どうやら皮肉的な進化を遂げたようであった。
その片鱗はかねてより在ったらしい。
極東支部第一部隊隊長は、藤木コウタをおいて他にいない。
最強の名を冠する前第一部隊隊長にこうまで言わせる凄みとでも言うべきものが、コウタには備わっていた。
別段後ろ暗い経験や過去があったからではない。擦り切れた感性のまま、全てを寛容と受け入れる器は生来のものであろう。
こればかりは経験からでは望めぬものだ。
前第一部隊の面々には、実力は十分なれど、この器は不十分であったと言うしかない。
つまりは精神的にタフなものでなければ勤まらないということだ。
隊長職というものは。
「で、一応隊長クラスが管理官になって引率ってことになってるけど、部隊運用することもないしさ、希望があればどっか別のとこ組み込めるけど、どうする?」
「あ、じゃあ先輩と・・・・・・」
「悪いことは言わない。やめとけ。俺がやってきたことヤベェと思ったんなら、やめとけ。いいなこれはフリじゃないぞ。絶対にやめとけ」
「あっ・・・・・・はい」
「クレイドルも帰ってきてるから参加するけど、ソーマはリーダーに捕まったからだめだ。関わるな。
で、リンドウさんは家族で一緒に参加するだろうから空気読むとして。んー、防衛班はどこ行くんだっけか」
「アリサさんもいるんですよね? アリサさんのお手伝いをするのはダメなんですか?」
「いいけど・・・・・・え、本気で?」
「え、なにそのリアクション怖いんですけど」
「いやだってお前、アリサの仕事とか手伝うとかって、色々させられるぞ?」
「そりゃ、アリサさんは多忙でしょうし、私なんかが手伝えることも」
「アーサ何とかにさせられて延々と右斜め前に進む、っていうミッションとかさせられるんだぞ?」
「えええ何それ」
「いかに右斜め前に進むかだけを追求されて角度が十度曲がってるだけでガチ切れされんだぞ?」
「さすがにそれは嘘じゃ」
「だと思うじゃん?」
「左に曲がったら何が起きるの!?」
「左行ってチョー強いBAとかが出てきてバランス崩れたら責任とれんのかって聞いてんだよコラァ! オー!?
とか怒鳴りながら首絞められる」
「元第一部隊怖すぎだよお!」
「最近のアリサのトレンドは新しく見つけた土地におまんじゅう工場を建てること」
「おまんじゅう!?」
「この前クレイドルで拾ってきた従業員におまんじゅうコールさせてた。おまんじゅう! ヘイ、おまんじゅう! って」
「アリサさんって聖女キャラじゃなかったの!? リュミノジテ・エテルネッルとか防御系の技とか叫んでそうなのに、よりによって!?」
「まあ冗談はここまでにしてだ」
「こいつ・・・・・・!」
「はいこれ申請書類。悪いことは言わないから、俺のとこにしときなって」
「あーもー! わかったわかりました! これでいいでしょ! ほら!」
「ほいサンキューな。エミールの奴も・・・・・・」
「そこでずっとプルプルしてるけど」
「僕は・・・・・・僕は今、最高に感動している・・・・・・慈善活動、すばらしい・・・・・・ゴッドイーターに、なってよかった! 本当に、よかった!」
「ほっとこ」
「うん」
書類にサインし、手渡す。
エリナ・デア=フォーゲルヴァイデ・・・・・・サインは日本語で書いてみた。
少し歪だけれど、それでも自分の名前を表す文字だ。ペンを執れば執るほど、サインがうまくなっていく。そんな気がしている。
積み重ねた自分がそこにあるようで、エリナというカタカナに愛着を持っている。
過去の書類整理をしている時に、兄のサインが残された書類を見つけたことがある。
そこにも自分と同じように歪な、カタカナのサインが書いてあって、なんだかくすりと笑ってしまった。
兄もまた、こうして戦い以外の場で、人々を守るために日々働いていたのだろうか。
ありがとうと、感謝の言葉を告げられていたのだろうか。
どこか心に、暖かな風が吹いたように感じた。
「それじゃ、プレゼントの用意しようぜ」
コウタがにっこりとして言った。
本日の任務はボランティア活動なり。
行き先は児童養護施設。
ミッション内容は、クリスマスパーティの準備、だそうだ。
□ ■ □
「知ってるか? クリスマスってのはさ、昔は毎年12月に行われていたものらしいぜ。
神様に祈りを捧げるための日だったんだと。贈り物を交換し合って、笑って、遊んで、それで静かに家族と夜を過ごす。
世界がこんなになって、神様は毎日人を食うようになって、そんで祈るもなにもなくなったから、忘れ去られてた日になってたんだと。
で、今回俺達で復活させてやろーと、そんな流れになったわけで」
「初めから、こうするために? 私たちに、これを見せるために?」
「時間が空いたから、いい機会だと思ってさ。お前達を痛めつけてやろうとか、そういう意図はまったくないよ。でも、これは知らなきゃいけないことだ。
俺達が、知っておかなきゃいけないことなんだ」
「こんなの・・・・・・こんなのってないよ! あんまりだよ・・・・・・もう嫌だ・・・・・・嫌だよ・・・・・・」
「きついよなあ。俺達は、俺達が何を守っているか、誰を守っているか。それを知らずには戦えない。戦えないんだよ」
「おねえちゃんって、みんな、おねえちゃんありがとうって、言ってた」
「そっか。よかったな」
「あの子達みんな、手袋をしてた。首も布をまいて、部屋の中なのに顔しか外に出てなくて、たぶんあれは医療用の服で・・・・・・周りにいた人たちも保母さんとかじゃなくて、医療スタッフで・・・・・・」
「『黒蛛病』さ。接触感染を防ぐためのものだったんじゃないかな」
「そんなこと分かってる! あの子達、あの子が私の目の前で転んで、私、手を差し伸べることもできなくて、それでもあの子は・・・・・・!」
「末期に入ってるそうだ。薬と“回復錠”の合わせ技。本来はゴッドイーターにしか使えない劇薬だけど、後先考えなけりゃ、重病だった子達を立たせるくらいは出来るようになるんだってさ」
「どうして・・・・・・どうしてあの子達は、あの子は・・・・・・みんな、どうして」
「どうして、だろうな」
「みんな、みんな笑ってた。笑ってたの」
「エミールはどうしてる?」
「トイレで吐いてる」
「あの子達の前でいつもの調子を貫けたんだ。偽善だってわかってても、そう振舞わなきゃいけなくて・・・・・・騎士道ってすげーよなあ」
「わた・・・・・・わたし・・・・・・私は・・・・・・」
「よく見ておくんだエリナ。そして、忘れるな。ここから見える風景をさ」
「街の・・・・・・景色・・・・・・」
「家から漏れてちらちら輝く光を、街の灯りをさ、希望の火なんだって、あいつは言ってたよ。
誰かに紡ぐために、火を繋ぐために、こうやって人は生き続けていくんだって。じゃあさ、だれにも紡ぐことなく消えていってしまった火は、なんなんだろう。
そう思ったことがあるよ。でも、そうじゃない。その火は小さくて、誰かに灯すことが出来なくても、それでも熱は残る。あたたかいと感じることは出来る。
つながりなんだ。人は、ただそこにあるだけで、その熱が伝わっていくんだ。つながっているんだよ、みんな、全部と」
「あの子、たちも」
「うん」
「作り物の木の上に飾られた星に、みんなでお祈りしてた」
「うん」
「いったい、何に祈ってたんだろう。何を、祈ってたんだろう」
「・・・・・・さあなあ」
「あの子達の祈りは、どこにいくんだろう」
□ ■ □
合成ガソリンの臭いが立ち込める護送車に揺られながら、エリナは窓の外を眺めていた。
対アラガミ装甲で補強された車両は快適性とは程遠く、振動が酷い。
手酷く揺さぶられては、肩やら肘やらをハンガーやボルトにぶつけてその度に顔を顰めている。
痣にはならないだろう。擦過傷や打撲痕に強いことがゴッドイーターの体の特徴である。
ただ、今はゴッドイーターとしての特典に感謝する気持ちにはなれなかった。
「今日はクリスマス・イヴだな!」
「エミール、うっさい」
「みたまえエリナ! 雪だ! ホワイトクリスマスだぞ!」
「うっさいってば。ここは異常気象で年中雪が降ってるでしょ」
「あの子達にも見せてやりたかったなあ! エリナ!」
「うっ・・・・・・さいってば! やめてよ、やめて・・・・・・」
エミールとて、もちろんエリナもまた、知っている。
あの時、先週に養護施設で言葉を交わしたあの子達は。あの輝く笑みを向けてくれた子ども達は皆。
あれだけ一生懸命に用意したクリスマスパーティを、誰一人として、迎えることが出来なかったであろうことを。
黒蛛病罹患者の死亡率は100%。回復錠の“混合ワクチン”を摂取しなければならないステージであったとすれば、つまりはそういうことだ。
あの愛おしい微笑の裏に、いったいどれだけの苦痛が隠されていたのだろうか。
なぜあの子達は笑えていたのだろう。エリナには想像もつかないことだった。
「聞いてくれ、エリナ! 僕は思うんだが!」
「何よ」
「僕の『ポラーシュターン』は星の名前を持っているのだ! 星に願いを、僕は騎士道をあの輝く北極星に誓ったのだ! たとえこの世界が赤く廃れようとも、星の輝きは変わらないからだ!」
「だから何なのよ」
「思うんだが! あの子達も! 同じだったのではないかと!」
「同じ・・・・・・」
「ゴッドイーターは、輝いているからだ! いや、バーストしていると物理的に光るがそれはさておき、輝いて見えるのではなかろうか! ゴッドイーターは!」
「それは・・・・・・うん、解るかもしれない。私も、お兄ちゃんがキラキラして見えてたから」
「星だ! 僕達はあの子達にとって、星だったのだ! だから! だから・・・・・・」
「良いこと言おうってつもりがあるなら、泣かずにいいなさいよ・・・・・・」
護送車のスピードが落ちる。
「さ、到着したぞ」エンジンが停止し、運転席からコウタが顔を覗かせた。
窓から見える深々と降る雪よりもなお、はらはらと零れていく幾筋の涙があった。
コウタは少しだけ苦笑すると、「あっ、そうだ」と唐突に話しを切り出した。
「これ、届いたんだけどさ。お前達宛てにって、手紙。ほら」
受け取って見れば、宛名は見覚えのあるもの。
あの時訪れた、施設のものだった。
差出人は、子ども達――――――。
『ありがとう』
たくさんの、ありがとう、がそこにはあった。
『ありがとう。とっても楽しかったよ』
『お兄ちゃん、お姉ちゃん、また遊んでね』
『クリスマスパーティ、楽しみだね』
ああ・・・・・・エリナの喉が、例えようのない声を上げた。
手紙には絵が添えられていた。みんなで書いた絵なのだろう。筆跡やタッチがそれぞれ違うものだった。
そこには、クリスマスの色とりどりの飾りが描かれていて。
あの場にいた全員が、エリナやエミールやコウタが、みんなにっこりと笑って、笑顔で描かれていて。
その全員が、手を繋いでいて――――――。
「星が、綺麗だな! 本当に綺麗だ! 本当に・・・・・・きれいだ・・・・・・きれいだ・・・・・・」
エミールが天を仰ぎつつ叫んだ。
あの子達の手のぬくもりを知らない。こんなにも笑えていた自信がない。
今日この日を迎えられることはないと、あの子達も皆、知っていたはずなのに。
それでも、ああ、それでもあの子達は。
「星だ」
ぽつりとエリナが零す。
添えられた絵の裏には、折り紙で折られた手製の星が、テープで貼り付けられていた。
絵の中心にあるクリスマスツリーの頂点で輝く星に、そっくりのものだった。
「あの子たちの願いは、祈りは、ここに。ほら、届いたんじゃねーの?」
「かっこつかないですね・・・・・・ほんと」
「それが俺だしな。さ、任務いくぞー」
「了解!」
今日もまた、為すべきことを為すだけだ。
手には勇気を。背に誇りを。そして胸には、星を。
託されたのだ。きっと、私たちは、託されたのだ。
小さな灯火を。この暖かさは、その証なのだ。
だから今はただ想い、願い、祈る。
私は祈り、戦いに往く。
オラクルの輝きは、祝福の光。バレットの響きは、天国の鐘
全ての上に訪れる淡雪が、聖夜に降る涙を全て、天に還してくれますよう――――――。
エリナはぎゅうっと神機・・・・・・『オスカー/祈り』を握り締め、スカートを翻して車外へと飛び出していった。
(´・ω・`)>あのね、お祈りってね
(´・ω・`)>かなわなくってもね
(´・ω・`)>きっと誰かに届いてると思うんだ
(´・ω・`)>信じて?
祝! GEアニメ後編直前記念!
みんなで書こうGE合作短編集、クリスマス企画!
再びこのような素晴らしい企画をすすめて頂きました、ウンバボ族の強襲様に感謝を。
そして参加者の皆様方おつかれさまです。
いやー、クリスマスですね!
皆様はいかようにこの時を過ごされるのでしょうか。
私はゲーム三昧になりそうです。狩りゲーが・・・・・・ふぉーるあうとが・・・・・・お空のスマホゲーが・・・・・・!
が、がちゃ・・・・・・ガチャしなきゃだめなのおお・・・・・・!
時が流れるのは本当に早いですね。
GEアニメも後編が直前に迫り、いまから待ち遠しくてなりません。
GE2もやるのでしょうか? 円盤買えばワンチャンあるか・・・・・・!?
さて、今回の短編については見やすさ重視で短めにさせていただきました。
本編もこれくらいが読みやすいかも。描写を短くかつイメージがわきたつようにするのは中々難しいですね。練習せねば!
それでは、アニメが完結したらばぜひ皆様とまた語らい合いたく思います。
最後に重ねてご挨拶を。
ウンバボ族の強襲様、投稿者の皆様、私の短編を読んで頂けました皆様方。
ありがとうございました&メリー・メリー・クリスマス!
そして、皆様よいお年を!
来年度もまた、よろしくお願いいたします!