サラボナ
町の住民、そして集められた屈強な傭兵達でさえ驚愕に包まれていた。サラボナから約5キロ程離れた場所に突然とてつもなく大きな魔物が現れ、しかもそれが自分たちの討伐対象となる魔物であるからだ。
立ち上がった魔物ブオーンはサラボナに向かって歩き出す。
サラボナの住民はパニックになり大慌てで逃げ出す。まさに恐慌状態だ。それはなにも住民に限ったことではない。先程までは金に対する欲望で活気づいていたが、眼前にあのような化け物が現れれば気づくのである、叶うはずがない。死にに行くようなものだと。そうなると傭兵達も命あってのものだねだと一目さんに逃げ出した。
ブオーンを見たことにより9割程の傭兵が逃げ残りは、数える程である。
「まさかあれほどの大きさとはな。」
「ああ、ざっと見て5、60メートル程あるな。」
「どのように攻撃すればいいのだろうか。」
パパス、バルバルー、パピンはそれぞれ思ったことをいう。
パパス達は確かに強いが問題は大きさになる。あれほどの大きさでは攻撃を当てることすら叶わない。魔法は有効だがあいにくレイシア以外攻撃魔法は使うことができない。
思案にくれていると、
「大きさは変えることは流石にできませんが、相手を上半身ぐらいにまですることはできます。ただし少々時間がかかるので、時間稼ぎをお願いします。」「分かった。任せておけ。」レイシアが真面目な顔で話すのでパパス達は頷き時間稼ぎをすることになる。
ブオーンが歩みを進めるごとに大きくなるように感じる。
見た目は牛もしくは犬のようであり、二足ほこう。前足、後ろ足に蹄があり、目が三つあり体に似合わず意味がないような小さな翼があることぐらいか。
だんだん近づいてくるにつれて、残っていた傭兵も後退りし、しまいには逃げ出していく。
パパス達はサラボナに被害が出てはいけないということで外で迎え撃つことにする。
ついにブオーンがこちらにたどり着いた。見上げる程の巨体。もう残っているのはパパス達のみである。
「ル~ド~ル~フ~は~ど~こ~だ~?」やけにノンビリした話し方である。これなら時間稼ぎは簡単だなとパパス達は思う。どうやらルドルフとはルドマンの先祖のことらしいので、答える。
「ルドルフはもう亡くなっている。」「ル~ド~ル~フ~は~死~んだ~の~か~。」一瞬ブオーンの顔に悲しみが表れたように見られた。続けて時間稼ぎを試みる。
「なぜお前はルドルフを探す?」
「お~ま~え~た~ち~に~は~か~ん~け~い~な~い。」「イラつくしゃべり方だな。」バルバルーは本心を話すが、時間稼ぎがしやすい話し方ではある。
「ありがとうございます。もう大丈夫です。」レイシアが述べる。パパス達は少しは戦闘をしながら時間稼ぎをする必要があるかなと思っていたので、少し拍子抜けだった。
レイシアはかなりの魔力が込められているのが素人目にも分かる腕を振り上げ、地面を叩き「地割れ」という。レイシアが、叩いた地面が割れ初め、徐々に巨大な地割れになりブオーンに迫り、ブオーンを飲み込んでいく。
ブオーンは地割れに飲み込まれた。しかしやはり巨大なので予想通りに胸から上は残っている。
「う~。予想はしていましたが。少しショックですね。今までどんな魔物も飲み込んできたのに、ただ落とし穴にはまっただけのようなんて。挟まれてもけろっとしていますし。」
「いや充分だ。あとは任せてくれていい。」
「腕がなるぜ。」
「楽しめそうですね。」パパス、バルバルー、パピンはそう話ブオーンに突っ込んでいく。
レイシアは少し休んだ後に参戦する。それまではサンチョが守ることになる。パパスがその俊敏さでいち早く突っ込む、ブオーンもそれを迎え撃とうと蹄のついた前足?で殴り付ける。しかし、大振りな上動きが鈍いので容易に避け、地面に突き刺さった腕に乗りブオーンの眼前に走る。
「さみだれ切り」一撃一撃は弱いが、手数が圧倒的に多い斬激がブオーンに襲いかかる。的となる図体がでかいために面白いように技が決まる。
「俺にもやらせろよな。新しい技を見せてやる。」パパスと同じように腕をつたってきたバルバルーがパパスと入れ代わる。「つるぎのまい」バルバルーは大剣を振りながら舞う。バルバルーが舞うたびにブオーンを斬激が襲う。ブオーンは振り払おうと腕で殴ろうとするが、華麗に舞うバルバルーにはかすることもない。攻防一体の強力な技である。
「では締めは私が!美味しいところは頂きます。」そう宣言しブオーンに切りかかる。しかしブオーンは息を吸い込み、炎を吐き出す。激しい炎だ。巨大な炎がパピン、バルバルー、パパスを包みこもうとしたその時、「フバーハ」戦闘に遅ればせながら参戦したレイシアの魔法が、パパス達を炎より一瞬早く包み、ダメージを軽減する。
しかし炎が巨大であるために受けたダメージは大きく、三人は吹き飛ばされる。
やはりブオーンに一番近かったパピンの怪我(火傷)が酷いのでレイシアが近づいて治療をしようとする。だがブオーンの攻撃は終わってはいなかった。天に向かって咆哮をあげると、天から雷が降り注ぐ、受け身をとり地面に着地したばかりの三人を襲う。
『しまった。』三人が思った時には時すでに遅く、強烈な電撃による痛みが体全体を襲っていた。
最悪な事態が予想された。
軽減されたとはいえ、激しい炎、雷を受けたのだ。一般人であればどちらかひとつで即死しついるだろう。一般人であるならばだが。
ブオーンも勝ち誇ったかのような顔で見ていた。
「痛みはかなり強烈であったが、さほどダメージはないな。」「まったくだ。パパスの攻撃に比べたら屁でもねえ。」
異常な体力(HP)を持った二人はけろっとしている。
ただし、一般人よりかなり強いとはいえ彼らには及ばないパピンは気絶していた。レイシアはパピンにベホイミをかけ、パピンを治療したあと、パピンのことはサンチョに託し前線にたつ。
「お二方の攻撃を受けてもまだピンピンしているとは。流石に巨体なだけあってタフですね。」
「ああ、だが面白い。」
「パパスのいう通りだ。ゾクゾクするぜ。」
「戦闘狂だ…」『何か言ったか?』
「いえ何も。」三人は話終えると戦闘体制をとる。ブオーンはピンピンしている二人に驚いていたことにより攻撃してこなかっただけであった。
第二ラウンドが始まる。