黒く冷やされ固まった溶岩の道を通りすぎたパパス一行は行き止まりに突き当たり、頭を悩ましていた。
「どういうことだ。ここまで分かれ道などなく一本道であったのに行き止まりとは…」
「この部屋を少し調査してみましょう」
頭を抱えて悩んでいるパパスにレイシアが提案する。
「そうだな悩んでいてもしょうがない皆この部屋を丹念に調査するんだ」
「はい」
パパスの指示により皆はバラバラに部屋の中を丹念に調査し始める。
調べるにしても部屋の中は暗く調査するのに手間取ることから、マーサがレミーラを唱えてから隅々まで調べることになった。
しばらく経つと
「みんななんか見つけたよ!」
とプオーンが皆に声をかける。
皆がプオーンの元にかけよると半径一メートル程の穴がぽっかりと床に空いている。
「この穴なんだけど」
プオーンが蹄を向ける。
「うむ、よく見つけてくれた。しかし、この穴に入るのは勇気がいるな。どこまで続いているか分からんし、罠で底に刃が仕掛けられていたり、先程のように溶岩があってもたまらん、どうするべきか」
穴を前に皆が思案にくれる。
そんな中をマーサが穴に向けて手のひらを近づける。
「あら穴から風を感じるわ。したには空間があるのは確かだわ」
「じゃあ僕が行ってくるよ」
マーサの話を聞きプオーンが胸を張って答える。
「プオーンちゃん大丈夫なの?」
レイシアが不安そうにプオーンに問いかけると、プオーンは背中を向けて小さい羽を動かしてみせる。
「僕にはこの羽があるから大丈夫だよ」
と言うと颯爽と穴に飛び込んでいった。
ただプオーンの羽はその体を浮かせることができるのかと疑問を持たされる物だったので、プオーンを待つ皆は不安げに待っていた。
しばらく時間が経過する。
皆にはその待つ時間が限りなく長く感じた。
穴の中からパタパタと羽ばたく音が聞こえる。
皆が一斉に穴を覗き込むと羽を蜂鳥のように高速で動かしながら上昇してくるプオーンが。
プオーンが皆の前に降り立つと笑顔で説明を始める。
「下にはマーサ様が言っていたように空間と道が続いていたよ。下までも約3メートル位だし皆ならたぶん大丈夫だと思う」
その説明を聞いた皆は頷き穴に飛び込むことにした。
例え足を怪我したとしてもパパスの万能『ホイミ』があるからと皆が納得したからだ。
「じゃあ私が先に行こう。バルバルーは悪いが魔物が来るかもしれんので殿を頼む」
「ああ、任せときな」
バルバルーに後のことを託してパパスが一番始めに穴に飛び込んだ。
その後続々と皆が飛び降りてきた。
サンチョが地面に尻餅をついて痛がっていたこと以外には別段問題はなかった。
「しかし、この城はどうなっているんだ。階段ではなく穴が空いているだけとは」
パパスは愚痴をこぼしながら先頭を歩いた。
「確かにここの魔物達は体が大きくてこの穴を通れませんしね」
レイシアも続けてそう答える。
「これでいいのよ。魔物達は階層ごとに持ち場があってその持ち場を離れちゃいけないんだから。例え魔王が襲われたとしてもね」
マーサが説明する。
その答えの中には重要な話が含まれていた。
「魔王とやりあっていても邪魔が入ることはねえってことだな」
「そういうこと」
バルバルーが話すことにマーサが笑顔で正解と言う。
そんなこんなで再び警戒しながら先を急いだ。
しばらく進むと大きな空間に辿り着く。
神殿のような佇まいを残すその空間にはポツンと宝箱がおかれている。
あからさまに可笑しいと皆は感じているがマーサは近づき造作もなく開く。
宝箱の中には神々しい輝きを放ち、きらびやかな装飾を施された王冠『太陽の王冠』が納められていた。
「はい、これはあなたが装備するものよ」
マーサから手渡された王冠をパパスが頭にはめるとピッタリと頭にフィットした。
「マーサはこの宝箱に何が入っているか知っていたんですか?」
あまりにも造作もなく宝箱を開けたマーサに疑問を持ったレイシアがマーサに尋ねる。
「ええ、水差しをくれたヘルバトラーさんが教えてくれてね。魔王さえも触れることができない王冠が宝箱に納められているって。本当だったら守っている魔物のヘルバトラーが二体いるって話だったのだけど、そのヘルバトラーが私のところに急遽回ってきたから大丈夫だと思ったのよ。最初私の見張りはゲマっていういけすかない魔物だったんだけどね」
「そ、そうなんですか…」
またもや出てきたジャハンナの長老。
レイシアも苦笑いするしかなかった。
次の部屋も前の神殿と大差ない大きな部屋であった。
ただし、9ブロックに区切られた場所に奇妙な部屋が8つ存在し、その8つの部屋が隣接しあい、まるでパズルのようになっている。
そしてどの部屋にも部屋の中心にボタンが設置されている。
先に進めそうなところはない。
ここにも壮大な仕掛けがあるのだろうと皆で手分けして探ることにした。
「ここの部屋にはここが開いていて、この部屋はここが開いていると」
皆が調査してきた話を聞きレイシアがそれを図にし簡易の地図を作成する。
そんな中いきなり右下の部屋が大きな音をたてて動き始めた。
「なにがあったんだ!?」
「すいません、部屋の中心のボタンをうっかり押してしまって」
動いた部屋からパピンが出てきて謝罪した。
「そうですか。部屋のボタンを押すとその部屋の横が空いているとその空きの空間に部屋が動くと」
パピンの話を聞いたレイシアがそう呟きながら地図に書き込み始める。
「分かりました。皆さん私の指示にしたがって部屋のボタンを押してください。
まずは右中央、次に右上、その次は中央上、そして最後に中央」
皆がレイシアの指示通りに部屋のボタンを押していくと先に進む道が開かれた。
先に進むと今まで感じたことがないほどの威圧感を放つ巨大な扉が目の前に現れた。
「この先に魔王がいるのだな。皆準備はいいか」
パパスが皆に視線を送ると皆黙って頷いた。
「よし開けるぞ」
パパスが扉に手を触れると、ギギギギという音をたてながらひとりでに扉が開く。
「!!!」
扉の先に広がる空間には皆が声をなくし、立ち尽くす。
たった一枚の扉を隔てただけであるのに、次元そのものが違うのだ。
歪んだ背景に、今まで見たことがない色彩が広がる空間。
足を一歩踏み出すことさえ、躊躇するほどの威圧感に満ち溢れている。
皆背に冷や汗をかき、手にあせ握る状態である。
先に視線を向けると中に浮いた巨大な老人が腕を組み、白いマントを身に纏い眠るようにしている。
皆は一目見ただけで気づいた。
そう、その老人こそが魔王ミルドラースであると。