パパス達の目の前では、とてつもない戦いが行われている。
エビルプリーストが鋼鉄をも軽々と引き裂くであろう鋭い爪を降り下ろすと、ミルドラースの体に深々と三本の切り裂かれた跡と、紫色の血液が飛び散りエビルプリーストに降りかかりエビルプリーストは下卑た笑みを浮かべ見下すようにミルドラースをに視線を向ける。
しかし、ミルドラースも黙って受けているばかりではない。
切り裂かれたことをものともせず、四本の腕を合わせ、呪文を唱える。
「メラガイアー!」
四本の腕を合わせた中心から直径10mは軽く越える、凄まじい熱量の火球を作り出し、放つ。
辺りを過ぎるだけで焼き付くす放たれた火球をエビルプリーストは受け止めようとするが、威力が強すぎ防御に徹するのが精一杯であり、着弾と同時に巨大な火柱が上がる。
次はミルドラースがおぞましい笑みを浮かべるが、火柱はエビルプリーストを焼き付くしてはいなかった。
白い体色が所々黒く焦げ、ひびや亀裂が入った状態で火を纏いながら飛び出してくる。
そのまま流れでミルドラースとエビルプリーストは組み合う、そして巻き起こる衝撃波。
力比べの様相だ。
両者の力は拮抗し、微動だにしない。
しばらくの拮抗に先に焦れたのはミルドラースであった。
組み合った腕は二本、残りの腕で交互にエビルプリーストの脇腹を連打する。
轟音と共にミシリ、ミシリとエビルプリーストの体から異音が漂う。
ミルドラースが異音がしだした所を重点的に攻撃を加えだす。
次第にエビルプリーストの表情に苦悶の色が浮かぶ。
ミルドラースは愉悦を感じながら続ける。
その時だった。
エビルプリーストが少し体をよじると、ミルドラースの腕を腹部の口が噛みついた。
噛みつかれた腕からは紫色の血液が流れ、バキバキという音と共に引きちぎられる。
それと同時にエビルプリーストの腹部から冷たく耀く息が放たれる。
ミルドラースの腹部から流れる血液は凍りつき、腹部も白く凍結しだす。
ミルドラースも負けずに灼熱の炎を吐きかける。
灼熱の炎はエビルプリーストの顔面を焼き付くす。
等々実力伯仲の戦いが繰り広げられている。
パパス達は呆然と戦いの行く末を見守るしかできない。
しかしここである人物が皆を集めて話し出す。
「レイシア『アストロン』を唱えなさい。私がこの戦いに決着をつけます」
マーサであった。
この戦いを前にしても動じることすらなく言いきる。
「そんなことができるのか?」
パパスは不安げに尋ねる。
「ええ、組み合っている今が狙い目なの私を信じてあなた」
自信ありげに話すマーサに若干の不安を覚えるが、パパスは自分の妻を信用することにした。
「分かりました。私も信じます。アストロン!」
レイシアが呪文を唱えると、パパス達は金属の塊と化す。
それを見守ったマーサはミルドラースとエビルプリーストに手を向けた。
マーサから迸る嵐のような魔力にミルドラースとエビルプリーストが気づいた時には既に遅かった。
「漁夫の利ね、ビッグバン!!」
「何!!」
「たかが人間が何故この呪文(特技)を!!」
マーサの魔力が宇宙の始まりを想像させる大爆発を巻き起こす。
中心点はミルドラースとエビルプリーストの間。
イオグランデなどとは比べることもできない爆発。
マーサも瞬時に唱えた『アストロン』で難を逃れた。
しばらく経ちアストロンが解かれた皆の前には、四肢がなくなり体が崩れ始めているエビルプリーストと、こちらも四肢が消し飛び焦げた肉団子のようになりながら虫の息のミルドラースがいる。
また空間には至るところにひびが入ったり、崩れたりして、外の景色が見栄隠れしている部分さえある。
あまりの凄惨な状況についていけず目を点にしているパパスに、時間差でアストロンが解けたマーサの声がとぶ。
「あなた今よ!」
「あ、ああ」
マーサの声に後押しされ、パパスが走り出す。
「これで終わりだ!」
パパスの体から放たれた闘気が具現化され一つの檻となりミルドラースを包む。
「アルテマソード!!」
パパスは大きく剣を振りかぶり、闘気の檻もろとも剣で真っ二つに叩き切った。
「ぐひゃあぁぁああ!!神を越えた…私が…敗れるとは…」
断末魔と最後の言葉を残し、ミルドラースは二つに分かれ霧散した。
念願の宿敵を倒したパパスは振り返りエビルプリーストに走ろうとした時だった。
「ミルドラースは死んだか。では次はお前達だ」
ボロボロになりながらも気丈に話すエビルプリーストに嫌な感じを受ける。
「何を言う。お前ももう虫の息ではないか」
「フハハハハハ。これで勝ったつもりか。いい忘れていたが、わしは後一回進化を残していてな。それを今見せてやろう」
驚愕の真実をエビルプリーストが語ると、エビルプリーストの体が再び発光する。
血のような赤、奈落のそこのような黒、この二色が合わさったような見るものに底知れない恐怖を与える光が放たれ、そして発光が止んだ時、四肢が蘇り、全ての傷が直り、体色が白から黒に変わったエビルプリーストが立っていた。
「さあ、終わりにするぞ人間達よ!!」
エビルプリーストとの最後の戦いが始まる。