第1章最終話です。
大きな決断を下したカイトは翌日学校に着くと先に職員室に行き近い内にイタリアへ引っ越しする事を伝えた。
教室に行くといつもはカイトの後に来るなのは達が先に着いており、いつもの様に雑談を開始していた。
「今日は遅かったね。」
「先に職員室に行ってたんだ。」
「職員室に?…アンタ何したの?」
自分の席に座ると、なのはに声をかけられ遅く着いた理由を話すとアリサがジト目でカイトを睨んできた。
「何もしてないよ…ちょっと報告。」
「報告?何の?」
「先生が来てから言うつもりだったけど、高町達には先に言っとくかな。」
職員室で先生に伝えた時にホームルームで発表する手筈を整えていたが、クラスの中で一番仲が良いのはこの三人組だとカイトは思っているので先に話す事にした。
家の事情で母の故郷イタリアへ引っ越す予定がある事を伝えると三人は大層驚いており少し寂しそうな表情も浮かべていた。
ホームルームでクラスメイト全員に向けて発表した後は、休み時間の度にクラスメイトから怒涛の質問責めに少し疲れたカイトだったが何とかやり過ごし放課後を迎えた。
学校を出たカイトはまず海鳴大学病院へ向かった。
病院に着くと受付で石田先生を呼び出してもらう。
石田先生は、はやての主治医でカイトも付き添いやお見舞いで何度も会っている。
はやての事を特に気にかけてくれている良い先生だ。
「あら?カイト君一人?今日は、はやてちゃんの検診の日じゃなかったはずだけど…」
「少しお話がありまして…」
石田先生は少し疑問に思いながら何となく言いにくそうにしているカイトを見て診察室に連れて行った。
診察室で二人きりになるとカイトは近い内にイタリアに引っ越す事を伝えた。
「そう…でも、わざわざ来てくれたって事はそれだけじゃないんでしょ?」
「はい。先生!はやてをよろしくお願いします!」
「ふふふ、任せなさい!あなたが守れない分も守るわ。」
たった一言しか言っていないのに色々と察してくれた石田先生に、やっぱりこの先生は良い先生だと思いながら感謝しカイトは病院を出て次の目的地に向かって歩き出した。
商店街を歩いて次の目的地である喫茶翠屋に着いた。
店内に入るとエプロン姿の美由希がカイトに気付いた。
「カイト君?どうしたの?今日は稽古の日じゃないでしょ?」
「はい。今日は皆さんが働いている日なんで来ました。」
週二回の稽古の日取りを決める時に聞いていた、なのは以外の高町家の全員が翠屋で働いている日がたまたま今日だった。
美由希にみんなを呼んでもらい高町家にイタリアに引っ越す事を伝え、今まで稽古に付き合ってくれた事に感謝すると同時に引っ越しの準備の為、今日から稽古に行けない事を謝る。
「それじゃあ、本当に今までありがとうございました!」
店の前まで出て見送ってくれた高町家全員に深く頭を下げ喫茶店を出て最後の目的地に向かう。
今までお世話になってきた人達に引っ越す事を伝えていくと本当に地球を離れるんだなと実感が湧いてくる。
最後の目的地が近付くとカイトは少しゆっくりと歩いた。
まるで自分の心を落ち着ける様にゆっくりと。
目的地に着くといつも通り呼び鈴を鳴らして合鍵を使って中に入る。
いつも通りの動きのはずなのに上手く出来ない気がした。
どうやら相当緊張している様だ。
「ん?どないしたん?」
「えぇっと…」
八神家のリビングで向かい合っていると、さっきまで普通に伝えてた事が上手く言葉に出来なかった。
「昨日の事…決めたんやろ?聞かせて?カイ君。」
「え!あ、うん」
見透かされている事に驚き若干緊張が解けたカイトはイタリアに引っ越す事をはやてに伝えた。
「そっか。行くんか…イタリア…」
「えぇっと…そのゴメン」
「なんで謝るんや!カイ君が自分で決めたんやろ?ならええやないか!」
はやては笑っていた。
その笑顔を見てカイトは笑顔になる。
この笑顔がいつも自分に元気をくれる事をカイトは思い出していた。
それから二週間が経ち引っ越しの日を迎えた。
この二週間は引っ越しの準備に追われながらクラスメイトとのお別れ会を翠屋でやったり、最後の稽古として士郎、恭也、美由希と試合したり、はやてと料理を一緒に作ったりして最後の思い出を作った。
「はやて…」
「ん?」
月代家の前でわざわざ見送りに来てくれた石田先生が引く車椅子に座るはやてに近付き、カイトははやての手を両手で包み込む様に握ってしゃがみこんだ。
「な、何や!どないしたんや!?」
「はやて…はやてを守るって約束…遠くに行くから約束守れなくなる…ごめん…」
「もう!わたしは大丈夫や!確かに…ちょお寂しいけど…」
いきなり手を握られ真っ赤になるはやてを見ずにカイトは下を向いて謝る。
そんなカイトを見て、寂しさが込み上げきたのか下を向くはやて。
「でも!でもね!はやてを守るって約束と、悪い事をしたら注意し合うって約束は無くならないよ!約束は消えないよ。永遠に続くんだ。」
顔を上げてカイトは宣言する。
はやてもその言葉を聞き顔を上げた。
しかしその目には涙が溜まっている。
「僕ね!よく分からないけど、絶対また会える気がするんだ!」
「うっ…ぐす…そうやな…なんか…ひっく…カイ君に言われたら…そんな気がしてきたわ…」
はやてはいつまでも守ってもらう弱い自分じゃなく強い自分を見てもらう為に笑って見送りたかった。
しかし迫り来る別れの時間に耐えきれなくなり涙を流してしまう。
「…うっぐ…ひっく…ゴメンなぁ…笑って見送りたかった…のに…」
「はやて…笑って?僕、はやての笑顔が大好きだよ!だから笑って」
「ふふふ、ありがとう。でもさよならは言わんよ!だって…また会えるんやろ?」
「うん。絶対に会える。だから…はやて…行ってきます。」
「行ってらっしゃい。カイ君。」
はやてはカイトとエレナを乗せたタクシーを見送った。
大好きだと言ってくれた笑顔で。
「…石田先生すんません…一個だけ…我儘聞いてもらって…ええですか?」
「ええ、一個とは言わず何個でも」
「…うっ…ぐす…ありがとう…ございます…」
タクシーが見えなくなると、今まで我慢していたはやては石田先生の胸の中で思いっきり泣いた。
泣き声の描写が大変でした。
今でも本当にあんな感じで良かったのか不安です。
とにかく、これにて第1章堂々完結です!
第2章はストックを増やす為に少し間を開けようかと考えてましたが、やはり同じペースで投稿する事にします。