魔法少女リリカルなのは〜夜天に浮かぶ月〜   作:すこすこノ助

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今回も4000文字オーバー!



第18話 届かぬ声

思わぬ形で自らの将来が決まったカイトはエイミィに連絡して地球に転送してもらった。

闇の書の意思とも言える管制人格は広域攻撃型だという現場からの情報と以前調べた情報からカイトは対策を考えていた。

 

まず、管制人格がユニゾンデバイスであり現在は主であるはやてと融合していて管制人格の方が表に出ているという事は、はやては現在意識を無くしている状態だ。

はやてを目覚めさせる事が出来れば何とかなるかもしれないと考えたカイトだったが具体的な案は浮かばない。

クロノからは相手と話が出来る様なら投降と停止を呼びかけてくれと言われている。

 

「さて、とりあえずこの結界を破らなくちゃね。月下。解析プログラム起動して?」

《了解しました。結界術式の解析を開始します》

 

結界が張られている所まで来ると解析プログラムを起動させ術式の解析を始める。

古代ベルカ式だが月下に搭載されている解析プログラムなら問題は無い。

 

《しかし良かったのですか?あんな形で将来を決めてしまって》

「いいんだ。はやてを助けられるなら自分がどうなろうが構わないよ?」

《マスター…それは本気ですか?》

「いや、ごめん半分冗談。どっちの部下になるかずっと決められ無かったから、丁度良かったと思うよ?」

《マスターがそう言うのなら私は良いのですが…解析完了しました》

 

月下の急な問い掛けに何となくはぐらかす様に答えてしまったが、クロノとブラウン隊長どちらの誘いを受けるか決めかねていたのは事実だった。

こんな事態が起きなければ決めきれずにずっと悩んでいたかもしれないと思っていたのでカイトは意外とスッキリした気分だった。

 

「じゃあ術式に割り込みかけて壊すよ!」

《刀身に割り込みプログラムを付与しました。いつでも行けます》

「よし!久しぶりに本当の月代流剣術!三日月!」

 

カイトは両手で刀を持ち上段に構え刀身を頭の後ろまで持っていくと一気に振り下ろした。

結界に当たると割り込みプログラムが作動し結界の刀身が触れている部分から亀裂が入っていく。

それを確認するとカイトは更に力を込め結界を斬り裂いた。

 

月代流剣術三日月は元々相手の頭上から刀を振り下ろして一刀両断する豪剣である。

ちなみに魔法と剣術を融合させた月代流魔剣術の三日月は厳密に言うと射撃魔法である。

 

結界内に浸入し魔力反応を追って闇の書の意思の元へ向かうと、なのはとフェイトが闇の書に砲撃魔法で挟撃しているところだった。

闇の書は砲撃を難なく防ぎながら小さな魔力刃の大群を二人の周りに囲む様に出現させた。

 

「月代流魔剣術 三日月!」

「ッ!…防げ。」

 

小さな魔力刃が二人に向かう瞬間にカイトの三日月型の射撃魔法が猛スピードで闇の書を襲った。

それに気付きすぐさま障壁で防御するが魔力が圧縮されている三日月は障壁に罅を入れていく。

 

「カイト!」

「カイト君!」

「助太刀に来たよ!二人共!」

 

カイトの名を呼ぶ二人に応えている間もカイトの三日月は闇の書の障壁に罅を入れ続けている。

 

「…潰せ。」

 

障壁を爆発させ三日月を相殺しその場を離れた闇の書は持っている魔導書のページを開き桃色のミッド式の魔法陣を展開した。

 

「え?アレって…」

「スターライト…ブレイカー?」

「マズイ!二人共離れるぞ!」

 

なのはの切り札スターライトブレイカーを展開する闇の書に気付いた三人はカイトの指示でその場を離れる。

フェイトはなのはを抱えて飛びカイトはその後について行く様に飛んだ。

 

「あの…フェイトちゃん?こんなに離れなくても…」

「至近で喰らったら防御の上からでも堕とされる。」

「フェイトの言う通り。回避距離を取らないとアレは防げないよ?」

 

なのはは二人の言い分に複雑な表情を浮かべていた。

しばらく飛んでいるとフェイトのバルデッシュが民間人の反応を捉えた。

結界内に取り残された民間人がいるという非常事態に三人は戸惑ったが、巻き添えを喰らわせてはならないと思い反応があった付近まで飛んでいく。

 

「あのーそこの人!危ないので動かないでください!」

「そこの二人!動かないで!」

 

なのはとカイトは民間人を見付けると大声で注意を呼びかけた。

二人の声を聞いた民間人二人は動きを止めてこちらを向いた。

 

「今の声って…なのは?」

「フェイトちゃん?」

「アリサちゃん…すずかちゃん…」

 

結界内に取り残された民間人はなのはとフェイトそしてカイトの友人のアリサとすずかだった。

驚く魔導師三人と状況が全く飲み込めないアリサとすずか。

そしてアリサとすずかの二人はいつも学校で見る時とはどこか様子の違う友人達と一緒にいる少年に目を向けた。

 

「もしかして…カイト君?」

「髪型が違うけど…確かにカイトだ…アンタ何でこんな所にいるのよ!イタリアに行ったんじゃないの?」

「バニングスは相変わらずだね…説明は後で。とりあえず死にたくなければ今はジッとしていてくれるかな?」

 

死にたくなければと聞いて怯えた表情の二人に近付きカイトは前を向く。

色々と面倒な事になったと思いながらも二人を絶対に守らなければならないと決意する。

 

「月下。」

《了解。コンプレッションシールド・オーラル》

 

カイトは自分とアリサとすずかを覆う様に球体状のシールドを展開して踏ん張る体勢を取った。

 

「カイト!説明しなさい!」

「今は無理。喋りながら防げる程優しくないからね…アレは。」

「一体何なのよ!あの光は!」

「だから!説明は後で!悪いけど集中させてくれないかな?」

「アリサちゃん!カイト君の言う通り大人しくしとこう?」

「わ、分かったわよ…」

 

昔、学校で話していた時には少なくとも聞いた事が無い程、珍しく声を荒げるカイトにすずかはアリサに言う事を聞く様に諭した。

カイトはやっと大人しくなった二人を見て気を引き締める。

目の前を見るとなのはが障壁を展開して攻撃に備えた直後、途轍もなく巨大な桃色の光がこちらに押し寄せてきていた。

 

『月下…もし障壁が破られた場合は俺の事はほっといて二人を最優先で守ってね。』

《その必要はありません。この距離ならマスターの防御は抜けませんから》

 

二人に心配させない様に念話で月下に指示するが、距離となのはとカイトの防御力を計算したのか月下の言葉からは自信みたいなものが感じられ、少し弱気になっていたカイトはその言葉に後押しされる様に力を込めて桃色の魔力の奔流を受け止めた。

 

「ぐぅっ!うおぉぉぉ!」

「カイト…」

「カイト君…」

 

気を抜けば飲み込まれるぐらいの勢いで桃色の魔力の奔流は続くが、後ろにいる大切な友人達を守るという想いだけでカイト達魔導師三人は必死で食い止める。

必死で歯を食いしばって耐えていると恐ろしいまでの魔力の奔流はドンドンと弱まっていき、やがて完全に消滅した。

なんとか防ぎ切ったカイト達魔導師三人は友人二人の無事を確認し安堵の表情を浮かべていた。

 

『エイミィお願い。』

『はいはーい。すぐに安全な所まで運ぶねー!』

 

エイミィに指示を出してカイトはふぅと一息つくと障壁を解除しその場から少し離れる。

すると突然アリサとすずかの二人は光に包まれ安全な場所へ転移された。

 

「よし。二人共クロノから伝言。話が通じる様なら投降と停止を呼びかけてって。」

「うん。分かった!やってみる!」

 

いきなり戦闘に割り込んだ為、この様なタイミングでクロノからの指示を言い出す事になったが、二人は了承して闇の書に語りかけた。

二人が必死に説得を試みるが闇の書は主の願いを叶える事のみを遂行するただの道具と返答する。

 

「我は主の願いを叶える為の道具だ。道具に心など無い…」

「本当に心が無いんなら!そんな風に泣いたりなんかしないよ!」

 

二人の説得を聞きながらカイトは思考を張り巡らせた。

 

はやては何で泣いている?

はやての願いは何だ?

 

「そして愛する者達を奪った者には永遠(とわ)の闇を!」

 

愛する者を奪った?誰が?

愛する者達は守護騎士の事か?

あの二人が守護騎士を奪った?

非殺傷設定にしてある二人が守護騎士達を殺した?あり得ない…

ならば…誰かに騙された?

もし、本当にそうなら…はやての勘違い?

はやては勘違いであの二人に消えて欲しいと願ったのか?

 

だとしたら…間違ってるな…

 

 

「この!駄々っ子!」

 

フェイトの荒げた声を聞いて思考の海から戻ってきたカイトが見たものは闇の書に突っ込んで行ったフェイトが闇の書に吸収された様に消えていくところだった。

 

「フェイト!」

「フェイトちゃん!」

 

とっさの事で一瞬何も考えられなくなりそうだったが、エイミィからフェイトのバイタルに異常は無く生存していると伝えられ二人はホッと胸を撫で下ろした。

 

「なのは…ちょっといいかな?」

「どうしたの?カイト君。」

 

とりあえず先程思考して出た疑問を聞いてみると、なのははカイトがここに来るまでの事を話してくれた。

なのはが言うには仮面の男がなのは達に化けてはやての目の前で守護騎士達を消し去ったという。

 

「なるほど…やっぱりはやての勘違いなんだね。」

「カイト君って…はやてちゃんの事知ってるの?」

「あれ?言って無かったっけ?はやては幼馴染だよ?」

「ふぇ?幼馴染?もしかして昔言ってた約束をしてる幼馴染って…はやてちゃんの事なの!?」

「うん。だからもうこれは運命だと思ってる。」

 

なのはがアリサと喧嘩した時に仲裁したカイトは幼馴染との約束を守ったと言っていた。

その幼馴染が目の前の闇の書の主であるはやてなのだからなのはが驚くのも無理は無いし運命だと言われても不思議では無かった。

 

「それで俺は今、はやてが間違った事をしてると思うんだ。」

「うん。私もそう思う…」

「だからさ…注意しないといけない。」

「うん!間違った事をしてたらお互い注意し合おう。だよね!」

 

なのはは、その約束の内容がとても素敵だったので今でも覚えていた。

むしろ自分も間違った事をしている人に注意できる人になりたいと思っていたくらいだ。

 

「約束は守らないとね!」

「うん!」

 

カイトの言葉には大切な幼馴染を助けたいという想いが込められおり、それに気付き自分も同じ想いだったなのはは満面の笑みで力強く返事を返し、お互い顔を見合わせてから同時に闇の書へと目を向ける。

 

少年は戦う

 

運命に抗う為に

 

少女との約束を守る為に

 




ついにカイト君参戦!
闇の書の意思との激闘!勝機はあるのか!
次回をお楽しみに!
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