魔法少女リリカルなのは〜夜天に浮かぶ月〜   作:すこすこノ助

34 / 40

意外と短かったです。



第19話 夜天に浮かぶ月

カイトの作戦はどうにかして闇の書の中で眠っているはやてに声を届かせるという単純な物だった。

 

「待ってて…はやて。今、助けてあげるから…」

 

眠っているのなら声が届くまで声をかけ続け叩き起こせばいい。

その為にはなるべく近くで呼びかけないといけないが、戦闘スタイルが近接メインのカイトなら何も問題は無い。

 

カイトはなのはに援護を頼み目の前にいる長い銀髪に真紅の瞳をした女性に向かって飛び立った。

 

向かってくるカイトを撃ち墜とさんとと魔力弾が迫るが、なのはのアクセルシューターが魔力弾を相殺していく。

 

なのはの完璧な援護を受けて闇の書へ接近し刀を振るう。

目標に向かって真っ直ぐ飛行した体勢のまま横薙ぎに一閃するが、闇の書は刀身が当たる部分だけに障壁を展開して斬撃を防ぐが、カイトが刀身に魔力を送り込むと障壁に(ひび)が入る。

 

罅が入っていく障壁に眉をひそめて不思議そうな表情の闇の書を尻目に刀身を押し進めながらカイトは作戦を実行に移す。

 

「はやて!起きろ!」

「…爆ぜろ。」

「チッ!」

 

カイトが闇の書の中で眠っているはやてに声をかけるが、闇の書は障壁を爆発させるコマンドワードを口にした。

カイトはバリアバーストのコマンドワードだと瞬時に判断しなんとかその場を離れ事なきを得た。

闇の書は追撃の魔力弾を放つが、なのはの魔力弾で相殺されていく。

 

カイトは念話でなのはに礼を言いつつ再び闇の書に迫り斬りつける。

障壁で防がれるのは想定済みなので、今度は連続で刀を振るった。

 

「はやて!目を覚ませ!はやてがさっき見たのはなのは達じゃない!偽物なんだ!」

「無駄だ…」

「無駄なんかじゃない!はやてなら分かってくれる!」

「我が主の願いは変わらぬ…」

 

連撃を繰り出しながらカイトの説得は続くが全身を覆う様な障壁を破れなかった。

鉄壁の防御に焦ったのかカイトの動きが単調になってきたのを見て闇の書は斬撃を避けて魔力弾を撃ち込みカイトを吹き飛ばした。

 

「カイト君!」

「ごめん!なのは!助かった。」

 

何とかギリギリ障壁を展開してダメージを最小限に留めたが至近距離からの攻撃で吹き飛ばされたカイトをなのはが受け止めてくれた。

 

「障壁が硬い…あれを抜ければ何とかなるかも知れないのに!」

「じゃあ、私がやってみるね。」

 

カイトの返答を聞く前になのはは魔法陣を展開させカートリッジを使用するとレイジングハートから桜色の翼が出現した。

 

《A.C.S.スタンバイ》

「え?魔力刃?」

「うん。本当は次の模擬戦で使えるか試そうとしてたんだけどね。」

 

レイジングハートの先端に圧縮された魔力刃が形成されたのを見て、カイトはなのはが何をしようとしてるか見当もつかない。

 

「エクセリオンバスターA.C.S.!ドライブ!」

「えぇっ!?」

 

ストライクフレームと呼ばれた魔力刃を展開したレイジングハートを手になのはは闇の書に向かって飛び立っていくのを見てカイトは目を丸くして驚く事しかできなかった。

 

闇の書が展開した障壁に魔力刃を突き刺したなのははカートリッジを使用し魔力を高め障壁を突破した瞬間、レイジングハートから桜色の砲撃が放たれた。

なのははバリアを無理矢理抜いてほぼ(ゼロ)距離で砲撃を叩き込んだのだ。

 

「…え?アレを俺相手に試すつもりだったの?絶対死ぬよね?」

《非殺傷設定なので死にはしません》

「死ぬ一歩手前までいきそう…」

 

なのはのとんでもない魔法を目の前にして自分相手に試すつもりだったのを考えると非殺傷設定であっても大怪我じゃ済まないだろうと思いカイトは冷や汗が止まらなかった。

しかし、なのはの強烈な砲撃を超至近距離で食らえば、いくら闇の書であってもダメージは与えただろうと思っていたが、爆煙の中から姿を見せた闇の書はほぼ無傷といった様子でこちらに目を向けていた。

 

「うーん…もうちょっと頑張るしかなさそうだね。」

《そうですね》

 

カイトは刀を握り締め再び闇の書に向かって飛び立ち刀を振るって斬撃を繰り出す。

相変わらず斬撃は障壁によって防がれているが、カイトは攻撃の手を緩めなかった。

 

「はやて!聞こえるか!はやてが今しようとしてる事は間違ってるんだ!」

 

どんなに防がれるようが関係無いといった様子で刀を振るながら叫ぶ。

 

「はやては間違った事をしようとしてるんだ!だから注意する!間違った事をしちゃいけないって!」

 

必ずはやてに声が届くと信じてカイトは叫び続ける。

 

 

 

『ん…眠い…』

『今はゆっくりとお休みを…』

 

闇の書の中で、はやては先程大きな衝撃を感じ一瞬だけ目を覚ましたが再び強烈な睡魔に襲われていた。

 

 

『……て!』

 

朦朧とした意識で目の前から聞こえた声に言われるがまま眠ろうとした時、またもや衝撃を感じたと思ったら今度は誰かの叫ぶ声が聞こえた気がした。

 

 

なんや?声?

 

『…やて!は…て!』

 

誰かわたしを呼んでるんか…?

誰や?誰が呼んでるんや…?

よう聞こえへん…

けど…この声…どっかで聞いた事あるような…

なんや懐かしいなぁ…

両親が死んでしもうて一人ぼっちになった時もこんな風に名前呼ばれ続けたなぁ…

今も家族を失って同じ気分やから思い出したんやろか?

 

あの時はどうなったんやっけ…?

悲しすぎて泣いてばっかりのわたしに誰が名前を呼び続けてくれたんやっけ?

 

それが何か嬉しくて…

名前を呼ぶ声が嬉しくて…

その優しさがわたしを救ってくれたんやっけ…

 

『…やて!はやて!』

 

八神はやての心は例えるなら夜の空。

両親を亡くした時、そして今も家族を失って心の中は夜天の様に真っ暗だ。

 

『はやてを守る!そして間違った事をしようとしてたら注意する!』

 

しかし、その存在はどんな時でも真っ暗な空を淡く優しい光で包み込む様に照らしてくれる。

 

『約束だから!』

 

そう…それはまるで…

 

 

夜天に浮かぶ月

 

 

「カイ君!」

 

 

 

約束を守る為に戦いながら、はやてに呼びかけていたカイトは闇の書の動きが鈍っているのを感じていた。

それでも攻撃と呼びかけを止めずに、むしろ好機と捉えはやてに届く様に願いながら叫んでいると闇の書が持っている魔導書から金色の光が溢れ一筋の閃光が飛び出してきた。

 

カイトは攻撃魔法かと思い闇の書から離脱したが、閃光から感じる魔力はカイトもよく知っている魔力だった。

 

「フェイト!無事で良かった。」

「うん。ちょっと色々あって脱出するのに手間取っちゃった。」

「フェイトちゃん!良かった!」

「なのはも心配かけてごめんね。」

 

カイトとなのはがフェイトの周りに集まり帰還を喜んだ後、闇の書の方へ目を向けるとそこには全く微動だにしない闇の書の姿があった。

 

 

「…動きが止まった…?」

 

 

 




この場面を書きたかったんです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。