魔法少女リリカルなのは〜夜天に浮かぶ月〜   作:すこすこノ助

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ここは一気に行きたかったんです。



第21話 雲心月性

カイトは適当に作ったバリアジャケットを変更し、似合っていないと言われた髪型もついでに変更した。

 

バリアジャケットは、はやてと上半身は同じデザインでスカートは黒のズボンに変更し腰にある装甲みたいな物と背中の黒い羽と帽子はオミットした。

 

髪型は女性陣から色々と注文があり意見がまとまらなかったので、後々ちゃんと考える事にして前髪だけ下ろした状態で落ち着いた。

 

「うん。前髪下ろしただけやけど似合ってるやん。騎士服もええ感じや。」

「でも、こうしてお揃いのバリアジャケットだと恋人みたいだね!」

 

はやてがカイトの新しい髪型とバリアジャケットを褒めていると、なのはから爆弾発言が飛び出した。

改めて考えるとお揃いのデザインだという事はそう思われても仕方ないと今更気付いたカイトとはやては急に恥ずかしくなり顔を真っ赤にして俯いてしまった。

そんな微笑ましいリアクションの二人を見て、なのはとフェイトそして守護騎士の三人は温かい目を向けていた中で唯一ヴィータだけがカイトを睨んでいた。

 

「すまない。話の腰を折ってしまうんだが少しいいか?ん?カイトどうしたんだ?顔が真っ赤だぞ?」

「な、何でもないよ!」

「それにバリアジャケットのデザインが変わっているが…ん?あぁ、なるほどな…」

「ニヤニヤするな!それより何か話があるんじゃないの!?」

 

カイトのバリアジャケットが助け出した幼馴染と同じデザインになっている事に気が付いたクロノはニヤニヤと口元を歪ましている。

クロノにとってカイトは弟の様な存在なので、からかいたくて仕方ないといった表情だった。

 

しかし、今は弟の恋路をからかっている様な状況ではない為、クロノは顔を引き締めてはやてや守護騎士達に近くの海上に(うごめ)いている黒い淀みが闇の書から切り離された防衛プログラムかどうか確認を取った。

 

クロノは防衛プログラムがあと数分で暴走すると告げ、その場にいる魔導師達に協力を仰ぐと全員二つ返事で了承した。

暴走した防衛プログラムに対してクロノが用意したプランは極めて強力な凍結封印魔法で封印するか、アースラのアルカンシェルで消滅されるかの二つだったが、前者は封印しても完全ではないとクロノは考えており、後者は地球に向けて発射すると地球に甚大な被害が出る為、地球に住んでいるなのは達に却下された。

 

「あと10分ないよー。」

 

エイミィが暴走までの時間を知らせてくる中、クロノは守護騎士達に自分の持ってきたプランより良い方法が無いか聞くが闇の書のプログラムの一部である守護騎士達も直接暴走に立ち会った経験が無い為に良い方法は思い浮かばなかった。

 

「ここじゃないどこかでズバッとやっつける訳にはいかないのかい!?」

 

先程から思考を張り巡らせ良い方法が無いか考えていたカイトはアルフの一言で光明が見えた気がすると一気に頭の中でプランが組み上がっていった。

 

「あと5分!」

「ねぇクロノ。こんなのはどう?」

 

エイミィに急かされる中、カイトが思いついたプランをクロノに告げると、通信越しにエイミィが実現可能か計算してくれている。

こうゆう時のコンビネーションは流石だなとカイトはプランを話しながら思った。

 

カイトが思いついたのは暴走を開始した防衛プログラムに威力の高い魔法で攻撃しコアを露出させ、コアを軌道上に待機しているアースラの前に転送してアルカンシェルで消滅させるというプランだった。

エイミィが計算上は実現可能と知らせるとクロノは守護騎士達に防衛プログラムの特長を聞き作戦を立てる。

 

防衛プログラムの防御結界は魔力と物理の複合四層式なので、クロノはまず現場の魔導師達の意見と各自の能力を聞きながら防御結界を破壊する攻撃組とそれをサポートするサポート組に分けていく。

 

「カイト。君は待機だ。何かあった時の為にサポートに回ってくれ。」

「えぇ!何で!?」

「君の魔法では高火力の攻撃なんて無理だろう?」

「いや、クロノには言ってないんだけど砲撃魔法があるんだ。」

 

カイトがサポートに割り振られた事に対して不満をぶつけるとクロノは至極当然な理由を述べた。

しかし、今のカイトには少し前に完成した砲撃魔法があった。

 

「そうか。では、その砲撃魔法とやらにはどんな欠点があるんだ?」

「何で欠点から聞くんだよ…」

「君はこの状況で使えない魔法の事を言うほど馬鹿じゃないからだ。しかも僕も知らないという事は最近完成したんだろう?ならば何かしらの欠点があると考えるのが普通だ。」

「普通じゃない気がするけど…クロノの言う通りだから何も言えない…」

 

普通か普通じゃないかは置いといて欠点があるのには変わらない為、クロノにチャージに時間がかかるのとチャージ中は完全に無防備になるという欠点を伝えた。

 

「ユーノ。カイトのサポートも頼めるか?」

「うーん…暴走した防衛プログラムの動きを止めながらってなると…ちょっと厳しいかな?」

「そうか。アルフはどうだ?」

「そうだねぇ…アタシもユーノと同じでちょっと厳しいね。」

 

クロノはユーノとアルフにカイトのサポートを頼んでみるが、やはり無防備な人間を守りながら星一つを軽く破壊する程の力と相対するというのはかなり厳しいのは明白だった。

 

「今は少しでも火力が欲しい。何とかならないか?」

「あ、あの!すんません!それやったらこっちに任してもらってもいいですか?」

「はやて?」

「ザフィーラ。いけるか?」

「お任せを。」

 

クロノが再度二人に頼んでいると、はやてが突然話に割り込んでザフィーラに指示を出す。

ザフィーラの頼もしい返答にはやては笑顔を見せていた。

 

「えっと…ザフィーラさん?結構厳しい役割ですいません。」

「私は盾の守護獣。守るのが私の役目だ。主の命令とあらば尚更な。」

 

全ての役割が決まり各自行動しやすい位置に散らばって暴走まで待機している時にカイトはザフィーラに話しかけた。

 

「それに主はやてと家族同然の者なら我々にとっても家族の様なものだ。」

「あ、ありがとうございます。ザフィーラさん。」

「敬語は不要だ。言っただろう?家族の様なものだと。」

「そうでし…いや、えっと…そうだね。ありがとう。ザフィーラ。」

「それでいい。騎士カイト。」

「え?騎士?」

「そうだ。闇の書に飲み込まれた主はやてを救ってくれた時のお前は騎士そのものだったぞ?」

 

真性ベルカの騎士たるザフィーラに騎士カイトと呼ばれ、カイトは何だか嬉しいやら恥ずかしいやら何と言っていいか分からない感情に処理が追いつかない状態になっている。

 

「来るぞっ!」

 

クロノの一言に我に返り海上の黒い淀みを見ると、淀みはドンドン大きくなっていき中から何とも形容しがたい怪物が現れた。

六本の脚が付いた巨大な体躯には首が無く胴体にそのまま付いている様に見える怪物の顔には鋭く大きな牙が並んでいる。

そして、その顔の上には女性の上半身が生えており耳を(つんざ)く高い声で悲鳴とも歌声とも取れる鳴き声を上げている。

 

怪物のいたる所から触手が現れ、こちらに攻撃しようとしているところをユーノとアルフがバインドで拘束し隙を作った。

 

「よし!月下(げっか)。」

《術式展開。チャージ開始》

 

カイトは魔方陣を展開し両手を開いて前に出し、目を(つぶ)って砲撃のチャージを開始した。

 

 

「ちゃんと合わせろよ!…高町なのは!」

「うんっ!ヴィータちゃんこそ!」

 

複合四層式の防御結界を破壊する為の攻撃が開始され、第一陣のなのはとヴィータのツーマンセルが飛び立った。

 

今までちゃんと名前を呼ばなかったヴィータが名前を呼んでくれた事に嬉しくなり笑顔を見せたなのはは先行するヴィータに迫る攻撃を魔力弾で撃ち墜としていく。

なのはの完璧な援護を受けたヴィータは怪物の真上に到着するとカートリッジをロードしグラーフアイゼンを振り上げる。

 

《ギガントフォルム》

「轟天爆砕!ギガントシュラーク!」

 

ヴィータは身の丈の十倍以上の大きさになったグラーフアイゼンを振り回し怪物に振り下ろすと防御結界の一枚が砕け散った。

 

「次!フェイトちゃんとシグナム!」

「いくぞ。テスタロッサ。」

「…はい。シグナム。」

 

シャマルの号令を受けたフェイトとシグナムの第二陣が飛び立つ。

怪物の前に位置取ったシグナムがカートリッジをロードしレバンティンと鞘を合わせると弓の形に変化する。

 

()けよ!(はやぶさ)!」

《シュツルムファルケン》

 

弓から放たれた矢は炎を纏い真っ直ぐ飛んで行き防御結界を破壊した。

続いて怪物の後ろに位置取ったフェイトはカートリッジをロードしザンバーフォームのバルデッシュを構える。

 

「撃ち抜け!雷刃!」

《ジェットザンバー》

 

フェイトがバルデッシュを振り下ろすと雷を纏った斬撃が防御結界を斬り裂いた。

残る防御結界が一枚になったところで怪物が反撃しようと触手を動かす。

 

「撃たせん!縛れ!鋼の(くびき)!」

 

カイトの目の前にいるザフィーラが怪物の触手に白い杭の様な物を打ち付けて拘束していく。

怪物の反撃が封じられると、みんなの視線がカイトに集まる。

 

「ありがとう。ザフィーラ…おかげで目一杯集中出来たよ。」

「カイト!行けるか?」

「問題無いよ。クロノ。」

 

ザフィーラが護衛してくれているという安心感から本当に集中出来たカイトはゆっくり目を開いてクロノに返事を返した。

カイトが前に突き出した両手の先にある魔力の塊は今にも爆発しそうな勢いだ。

ザフィーラが射線から退避したのを確認すると目の前の標的にしっかり狙いを定め魔力の塊を一気に放出する。

 

雲心月性(うんしんげっせい)月光(げっこう)!」

 

カイトがコマンドワードを発すると両手の先にあった魔力の塊が巨大な光条となって怪物に向かっていく。

今あるほとんどの魔力を注ぎ込み、更にカイトの魔力資質により圧縮された強烈な砲撃が防御結界を破壊した。

 

「ハァハァ…次!はやてっ!」

 

魔力をほとんど使ったカイトは息を切らしながら、はやてに号令をかける。

はやてが持つ魔導書のページがめくられ最適な魔法を導き出すと、右手の杖を振り上げ魔方陣を展開させた。

 

「彼方より来たれ、宿り木の枝。銀月の槍となりて撃ち貫け。石化の槍!ミストルティン!」

 

詠唱完了と共に杖を振り下ろすと突き出した杖の前にある魔方陣から合計七本の白い光条が発射された。

七本の槍が突き刺さり怪物が悲鳴を上げた束の間、怪物が石化する。

微動だにしなくなった怪物はしばらくすると石化を解いて再び動き出した。

 

「やっちゃえー!クロノ君!」

 

通信越しにエイミィが叫ぶ声が号令の代わりとなり、デュランダルを持ちリフレクターを周りに展開していたクロノが白い息を吐く。

 

「悠久なる凍土、凍てつく棺のうちにて永遠の眠りを与えよ。凍てつけ!」

《エターナルコフィン》

 

クロノが詠唱するとリフレクターが飛び立ち怪物の周りを囲む様に配置されると、突き出したデュランダルの前に展開された魔方陣から強力な凍結魔法が発射された。

怪物に直撃した凍結魔法は勢いあまって飛び散るが周りに配置されたリフレクターに反射され再び怪物に凍結魔法を浴びせ怪物を凍結封印していく。

 

氷の塊になった怪物はしばらく動きを止めていたが次第に氷に(ひび)が入り始めると凍結封印を破って怪物が姿を現した。

 

「全力全開!スターライトー!」

「雷光一閃!プラズマザンバー!」

「響け終焉の笛!ラグナロク!」

 

なのは、フェイト、はやての三人がそれぞれのデバイスを振りかざす。

怪物が凍結封印されている間にチャージは完了している。

 

「ごめんな…おやすみな…」

 

はやては闇の書の闇と呼ばれた自動防衛プログラムが具現化した怪物の姿を見て呟いた。

 

「「「ブレイカーッ!」」」

 

三人が同時に叫ぶと桜色、金色、白色の奔流が怪物を飲み込んでいく。

三人の最大威力の魔法が直撃し生体部分が崩壊していく。

 

「捕まえ…た!」

「長距離転送!」

「目標!軌道上!」

 

シャマルがクラールヴィントを展開し旅の鏡を発動させて怪物のコアを補足するとユーノとアルフが転送魔法で軌道上に待機しているアースラの射線上まで転送する。

 

「アルカンシェル発射!」

 

物凄い速さで再生しながらアースラの目の前に現れたコアに向かってリンディがアルカンシェルを発射させた。

魔導砲が直撃したコアは文字通り跡形も無く消滅した。

 

「目標完全消滅!再生反応…ありません!みんな!お疲れ様!」

 

エイミィからの通信を聞いた現場の魔導師達は歓喜に包まれた。

カイトは近くにいたザフィーラと笑顔で拳を突き合わせた後、クロノに近付いて力強くハイタッチを交わした。

 

「はやて!」

「はやてちゃん!」

 

ヴィータとなのはの焦った様な声が聞こえたカイトは声のした方を向くとユニゾンを解き普段の髪色に戻った幼馴染が気を失い守護騎士達に抱きかかえられている姿が目に入った。

 




全力全開とかの掛け声をカイト君にも言わせたくて月が付く四字熟語を調べていると雲心月性を見付けました。
意味は「名声や利益を求めず雲や月の様に清らかな心や性質を持つ人の事」です。
もう正にカイト君の事だと思い即採用しました。
闇の書の暴走体を何と呼称するか散々迷いましたが何の捻りもない「怪物」で押し通しました。
映画版のナハトヴァールにすれば良かったんですが、ナハトにするなら色々加筆しなければならなかったので諦めましたw
それでは最終回まで後少し!次回もお楽しみに!
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