魔法少女リリカルなのは〜夜天に浮かぶ月〜   作:すこすこノ助

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今回を含め残すところ後三話。



第22話 心残り

気を失ったはやては本局の医務室に搬送された。

いきなり魔法を使った事で負担がかかり気を失っただけという検査結果を受けてカイトと守護騎士達は安堵した。

 

「お前達に話がある。」

 

はやてが眠る医務室でリインフォースが突然口を開いた。

カイトと守護騎士達はリインフォースの話を聞いて苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべていた。

 

 

「そんな!せっかくこれから一緒にいられるのに…」

「もう決めた事だ。」

 

カイトはリインフォースとシグナムを連れて、医務室で聞いた話をクロノ達にも聞いてもらう為に大食堂に来ていた。

リインフォースの話というのは、闇の書を完全消滅させるという事だった。

 

「闇の書の闇」すなわち自動防衛プログラムは切り離して消滅させたが闇の書の無限再生機能は残ったままだ。

その再生機能が再び防衛プログラムを再生してしまう可能性が多いにあるので再び暴走の危険性がある。

しかし、防衛プログラムが切り離されている状態なら闇の書の完全消滅は可能だ。

ならば消滅させればいい。

暴走の危険性と主の身の安全を考慮した上でのリインフォースが下した決断だった。

 

「その…シグナム達も消えるの?」

「いや、我々は残る。」

「あぁ。消えるのは私だけだ。」

 

リインフォースが言うには守護騎士システムも防衛プログラムと共に切り離したので消滅するのはリインフォースのみらしい。

 

「…ユーノ。無限書庫で対処法を探せないか?」

「探せば出てくるかもしれないけど、いつになるかは分からないね…」

「そんなに時間は無い。対処法が見つかる前には再生してしまうだろう。」

 

本当に消滅以外の道が無いのかクロノは思案するが、頼みの綱の無限書庫でさえも何十年かかるかユーノは検討すら付かなかった。

 

カイトも話を聞いた時に頭をフル回転させて考えれる方法を片っ端からリインフォースに進言したが全て却下されている。

それもそのはず、デバイスであるリインフォースの演算能力で出せない答えなのに、人間である魔導師に導き出せるはずが無かった。

 

そこにいる全員が暗い顔をする中、リインフォースだけは淡々となのはとフェイトに消滅の儀式への協力を打診していた。

 

「ねぇ。リインフォース。」

「どうした?」

 

儀式の段取りを決めてはやての病室に向かう廊下の途中でカイトは不意にリインフォースを呼び止めた。

カイトは、今までザフィーラ以外の守護騎士達と直接話しをしていなかったが、他の守護騎士達もザフィーラと同じ理由でカイトを家族同然だと考えており少し話しただけだが、すぐに打ち解ける事が出来た。

 

「リインフォースはさ…心残りとか…無いの?」

「…無いと言えば嘘になる。今、私は綺麗な名前も貰い主と共に闘う事も出来た。だが…この手で守る事は出来ていない…それだけが唯一の心残りだ。」

「…うん。そうか!分かった!教えてくれてありがとう!」

 

リインフォースの心残りを聞いたカイトが何かを思い付いた様な表情をしてはやての病室へ向かって走り去って行った。

 

「お、おい!」

「ほら!リインフォース!シグナム!はやての所に戻るよー!」

 

走り去るカイトを見てリインフォースとシグナムはお互いに疑問符を浮かべた表情のまま顔を見合わせていた。

 

 

 

翌日の早朝、闇の書完全消滅への儀式の準備が着々と進んでいる頃。

カイトは未だに目を覚まさないはやての傍にいた。

リインフォースが消滅する事を、はやては知らない。

このまま黙って消滅してしまうのは、はやてにとって心残りになるだろう。

それは、カイト自身が三年前ミッドチルダに行く時に思った事だ。

行き先がミッドチルダという事情もあり黙って行く選択肢もあったが相談もしていた事もあって結果的に見送られて別れた。

もし、黙って行っていたらと考えるとはやての事が気になって気になって仕方が無かっただろうとゾッとする。

 

 

そんな事を考えていると儀式が始まったのを感じ取ったのか、はやては目を覚まし飛び上がる様な勢いで体を起こした。

そして、キョロキョロと辺りを見回し傍にいるカイトを見付けると目をパチクリさせて、こてんと首を傾げた。

何とも愛らしい仕草に小さな笑みをこぼしたカイトは、気を取り直しリインフォースが消滅する事を伝えた。

 

「どうする?って聞くまでも無いか。ほら手伝ってあげるから早く準備しよう!」

「カイ君…おおきにな。」

「だから気にすんなっていつも言ってるじゃん。」

「ふふ、それでも…おおきにな。」

 

リインフォースの消滅の事を聞いた時はやては暗い顔をしていたが、今は覚悟を決めた様な表情を浮かべている。

そして、久しぶりに交わす毎度のやり取りに懐かしさが込み上げ自然と笑顔になっていた。

 

 

「リインフォースッ!!」

 

はやての乗った車椅子を押して雪道を駆け抜け儀式が行われている場所にたどり着き姿が見えた瞬間にはやてが叫んだ。

はやての声に儀式途中の魔導師達が目を見開き驚く。

 

「主はやて?何故…」

「リインフォース!黙って消えるなんて許さへん!」

「申し訳ございません…しかし主はやてに辛い想いをさせたくは無かったのです。」

「なぁ…リインフォース…ほんまに消える以外の選択肢は無いんか?」

「ありません。時間が経てば自動防衛プログラムはいずれ再生し確実に暴走してしまいます。」

「わたしがちゃんと抑えるって言っても駄目なんか?」

「はい。確実に暴走を抑える事は出来ません…」

「そっか…」

 

リインフォースが消滅するのは決定事項で暴走を止める手立てが無い事も、闇の書の主として覚醒した時に与えられた知識ではやては理解しているが、本人から直接聞いておきたかった。

 

「でも!お別れぐらいちゃんと言わせて?わたし達は…家族なんやから…」

「ッ!主はやて…私は世界で一番幸福な魔導書です。綺麗な名前を貰い主と共に闘えて…その上家族と呼んでいただいた…」

「うん…」

「主はやて…最後に一つお願いが…私はこれから何の力も持たない小さなカケラへと変わります。どうかそれを後に主が手にするであろう魔導の器にしてください。」

「うん…分かった…約束や。」

 

はやての瞳から涙が溢れそうになるが必死で我慢してリインフォースと約束する。

別れは辛いが泣いてばかりだとリインフォースが安心出来ないと思い、はやては涙を堪える。

 

「リインフォース。」

「カイ君?」

 

二人に割って入るかの様に今まで黙っていたカイトが口を開いた。

はやては少し驚き自分の後ろにいたカイトがリインフォースの前に移動するのを目で追った。

 

「お前には本当に世話になった。改めて礼を言わせてもらう。」

「うん。リインフォース…あのね?これから先はリインフォースの代わりに俺がはやてを守るよ。約束する。」

 

カイトの突然の宣言にリインフォースが目を見開く。

はやても驚いていたが徐々に頬を赤らめていった。

 

「俺だけじゃないよ?なのはやフェイト…そして何より守護騎士のみんながいる…だからリインフォース?これでもう心残りは無いよね?」

「あぁ…お前達なら安心出来る。これで私は心残り無く逝ける…」

 

主をこの手で守れなかったというリインフォースの心残りは、これから先カイト達に託せばいいのだ。

 

「しかし、これから消える私と約束などしても意味が無いのではないか?」

「大丈夫だよ。リインフォースも知ってるでしょ?約束は消えないよ。永遠に続くんだ!」

 

闇の書はずっとはやてと共にいた。

三年前、はやてにカイトが別れ際に言っていた言葉をリインフォースは思い出した。

 

「そうか…そうだったな…ありがとう騎士カイト。約束だ。」

「うん!約束!」

 

またこの少年に救われた気がしたリインフォースは、もう何も心残りが無くなり穏やかな表情をしていた。

 

「それでは…我が主はやて。行ってまいります。」

「おやすみ…リインフォース。」

 

別れを告げ儀式に戻ったリインフォースは最愛の主の笑顔に見送られ空に向かって消えていった。

そして、リインフォースが消滅した空から剣十字を(かたど)ったペンダントがゆっくりと落ちてきた。

はやてが手を伸ばして落ちてきたペンダントを受け止めて胸に抱き締めると今まで我慢していた涙が溢れてきた。

 

「はやて…」

「う…ぐす…カイ君ごめん…でも…ぐす…わたし…笑顔で見送れた。」

「よく頑張った。もう我慢しなくていいから…」

 

リインフォースを笑顔で見送る為に必死で涙を我慢していたはやてはカイトの胸の中で(せき)を切った様に思い切り泣いた。

 




リインフォースは原作通り消滅しました。
しかし、カイト君の一言で心残り無く逝けたと思います。
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