最終話です。完結です。
「母さん!ただいま!」
「おかえりなさい!カイト!」
「わっ!母さん!?…苦しいよ…」
約二カ月振りに帰宅した息子を出迎え、その元気そうな姿を見て母エレナは思わずカイトを抱き締めた。
母の暖かい温もりに照れながらも安心感を得て、いつまでもこうしていたい衝動に駆られるが家の外で待ってもらっている少女の存在を思い出しエレナの抱擁を解いた。
「入っていいよ。」
「お、お邪魔します…」
カイトはドアを開けて外にいた少女を迎え入れた。
おずおずといった感じで玄関をくぐる車椅子に乗る少女を見てエレナは目を見開いて驚きの表情を浮かべた。
「は、はやてちゃん!?」
「お久しぶりです。エレナさん。」
実に三年振りとなる突然の再会にエレナは言葉を失った。
地球に居た頃の隣人であるはやてにはイタリアに引っ越したと言っていたはずで魔法の事もミッドチルダの事も伝えていないのに何故ミッドチルダに来ているのかが理解出来ずエレナは思考がフリーズしてしまっていた。
「ドッキリ大成功!」
そんな母の様子を見て肩を震わせ笑いを堪えていたカイトは少年らしい満面の笑顔で言い放った。
嘱託の仕事が終わりエレナに今日帰る事は伝えていたが、はやての事は一切秘密にしておいたのだ。
エレナのリアクションはカイトにとって満足のいく物だったらしく、実はドッキリにノリノリだったはやてとハイタッチを交わしていた。
「…カイト?きちんと説明してくれるかしら?」
「ッ!はい!ごめんなさい!」
ドッキリに引っかかり呆然としていたエレナは目の前でハイテンションな息子と娘同然の少女を見てワナワナと怒りが込み上げてきた。
エレナの底冷えする様な低い声を聞いて背筋が凍るのを感じたカイトは直様謝る事を選択したのであった。
怒られはしたがドッキリを成功させたカイトはリビングに移動して今回の事件とはやての事について説明を開始した。
今回の事件は特にロストロギア関連という事で機密事項が多いが事前にエレナには話していいとリンディとクロノの許可は得ている。
エレナは十一年前の闇の書事件の概要をリンディから以前聞かされて知っていたので闇の書自体の説明は必要無かった。
なので、はやてが現在の闇の書の主だという事と闇の書の完全消滅で事件が解決した事を説明したが、はやての手前グレアム提督が裏で色々動いていた事は伏せている。
「色々あったのね…でも、本当に無事で良かった…」
「心配かけてごめん…」
エレナはカイトの話を聞いて息子が結構危険な目に遭っていた事に驚いたと同時に無事に帰ってきてくれた事に少し瞳を潤ませていた。
「ごめんなさい!せっかく二人共無事なんだから湿っぽいのは無しよね!次は、はやてちゃんの事を聞かせてちょうだい!」
「わたしですか?」
「そうよ。私達が地球を離れてからの事が聞きたいの。」
意図せず少し重くなってしまった空気を何とか打破しようと、エレナははやてに話を振った。
はやてのことを本当の娘の様に接してきたエレナにとって、自分が傍に居られなかった三年間をどう過ごしていたか気にならない訳が無いのだ。
はやては少し考えてから口を開いた。
まずは、病院に行ったり図書館に行ったりご飯を作って一人で食べたりの繰り返しだった寂しい毎日に突然現れた新しい家族との楽しい半年間。
そして闇の書の暴走に取り込まれた時にカイトに救ってもらった事。
更には大切な家族の一員との別れ。
流石にリィンフォースの事を話す時は悲しそうな表情をしていたが、それ以外は終始楽しそうに話していた。
はやてはその時の感情も加えながら話すのでカイトは自分が登場する話を聞くと背中がむず痒くなるのを感じた。
「良かった…はやてちゃんには新しい家族が出来たのね…」
「そうなんですよ!みんな優しくてええ子達です。」
「本当に良かった…実は私ずっと後悔してたのよ。はやてちゃんを一人にしていいのか、一緒に連れて行った方が良かったんじゃないのかって…でも、間違いじゃなかったって思えたわ。だって新しい家族の事を話すはやてちゃんはとっても嬉しそうで楽しそうな顔をしてるんだもの。」
「エレナさん…」
「母さん…」
エレナは本当に安心した様な柔らかい笑顔を二人に見せていた。
母親の表情を見たカイトは、はやてと共に母親も救っていたのだとその時に初めて気付いた。
「それで貴方達はこれからどうするか考えてるの?」
「わたしはとりあえず裁判が終わったら家族全員で管理局にお世話になろうと思ってます。」
「はやてちゃん達も局員になるのね。カイトは?」
「俺も正式に入局する事を決めたよ。それで執務官の補佐をするってクロノと約束してるんだ。」
「あら、そうだったの?将来的には執務官を目指すの?」
エレナはこれまでの事を聞き終えると次はこれからの事を聞いてきた。
はやてに執務官とはどうゆう仕事かを説明しながら、今回の事件で執務官の仕事に興味が持ったので補佐をしながら近くで見てみたくなった事を母親に伝えた。
「知的好奇心が旺盛なのは本当に相変わらずね…」
「でも、それが無いとカイ君じゃないですよ?」
「ふふ、確かにそうね。カイト!頑張りなさい。」
「うん!ありがとう母さん!」
知的好奇心の赴くまま自分の進路を決めた息子にエレナは軽く呆れるが、はやての言うとおり興味を持った事には全力で挑むのがカイトだと納得し息子の将来を応援する事にした。
エレナに進路を相談し終わったカイトは地球の自宅に戻るはやてを転送ポートまで送る。
「なぁ、カイ君。お願いがあるんやけど…ええかな?」
「ん?何?」
転送ポートへ向かう道すがら車椅子に乗るはやてが口を開いた。
カイトは車椅子を押しながらはやての言葉に耳を傾ける。
「えーと…わたしを守るっていう約束やねんけどな…リィンフォースには悪いねんけど、あの約束…無しにしてもらってええかな?」
「えぇ!何で?」
「これからは守られてばっかりやったらあかんなって思ったんや。これからは…わたしがあの子達を守っていかなあかん。だから、わたしも強くなってあの子らを…家族を守りたいんよ。」
「そっか…じゃあ一緒に強くなろう。守る為に強くなろう。」
「守る為に強くなるか…うん…そうやな…わたし強くなりたい!みんなと楽しく暮らす為に強くなりたい!」
「じゃあ!約束だ。一緒強くなろう!はやて!」
「うん!カイ君!約束や!」
一方的に守られるだけだったこれまでの弱い自分に別れを告げ、これからは大切な人を守る為に二人で一緒に強くなる。
二人はどちらからともなく小指を差し出し指切りをして約束を交わし、顔を見合わせ笑顔を浮かべるとカイトが口癖の様に言っていた言葉を同時に口にする。
約束は消えないよ。永遠に続くんだ。
これにて堂々完結です。
昨年の十月頃から執筆を開始し、ある程度ストックを作ってから昨年のクリスマスに投稿を開始しました。
リインフォースの命日に投稿しようと思い立ち執筆を続けながら投稿し、苦しみながらですが何とかペースを乱す事無く完結させる事が出来ました。
書いてみて執筆作業の大変さを思い知ったのでこれからは只の読者に戻ります。
最後に主人公設定を投稿して終了となります!
読んでくださった皆様!本当にありがとうございました!