ーグルメ界の王達ー   作:塗る壁

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 どうも塗る壁です。ふと思い付いたので書いてみました。設定など大分捏造してますので原作と違う部分あると思いますが、読んでいただけると嬉しいです。


その王達の日常(前)

 あらゆる環境が、あらゆる天災が、あらゆる猛獣が、入り乱れる群雄割拠のグルメ界。8つの大陸によって構成されているその世界は八匹の獣の王達によって均衡が保たれていた。

 

 これは神にも近い猛獣達の、日常の物語――

 

 

 

◇◇◇

 

 

 そこに並ぶは多種多様の巨馬の列。雲にも届かんばかりの苔に覆われた馬、大きな翼に額から伸びる角を持つ馬、縞模様が特徴的な不気味な馬等々、それぞれがその気になれば天変地異すら起こしかねない程の力を持つ強力な猛獣達――そんな巨馬達が揃って(こうべ)を垂れる存在が居た。

 

 頭を垂れる巨馬の列の前を威風堂々と歩む者、名を――ヘラクレス。グルメ界の頂点に君臨する八匹の獣の王、その馬の王。

 ヘラクレスは突如その歩みを止める。そして、ゆっくりと顔を上げ、静かに周囲の大気を吸い始める。吸い始めてたった十数秒後、体内に貯まった空気の総量は約1000億トン。これ程の莫大な空気もこの王にとって通常の3分の1にも満たないが今回はこれだけで十分である。ヘラクレスは体内で空気を圧縮し、一気に吐き出した。放たれた大気のミサイルは重力を振り切り、分厚い曇り空に大穴を穿ち、宇宙空間であっても霧散せず一直線に突き進み、一つの小惑星を粉砕する。

 

 ヘラクレスが星を砕くと同時に巨馬の列が讃えるように天へと吼える。だが、馬の王は退屈そうに喉を鳴らしたという――

 

 

◇◇◇

 

 

 その大陸では多くの生物が忙しく動いていた。特に急がしそうなのは50億頭もの猿達だ。山のように巨大な猿、腕を何本も持つ猿など種族はバラバラだが2つだけ共通点がある。それは皆とある武術を学ぶ門下である事、そして皆何かの準備をしている事。

 

 ある所では山よりも巨大な猿が地面を何度も叩き、真っ平らにしていく。平らにしたら次は巨大で強靭な草や葉、蔦など編んで輪っかを作る。最後にその輪っかを綺麗な円になるように半分程埋めて出来上がりだ。

 

 またある所では何億頭もの猿達が巨大な植物を大陸中から集めて編んでいく。集めては編む、集めて編む、何度も何度も同じ作業を繰り返して出来上がったのは長い長いロープ。猿達はそのロープの半分をしっかりと掴む。“彼”が何時来てもいいように。

 

 それぞれの場所で猿達や他の動物達が準備をしていると、その声は大陸中に轟いた。――“彼”が起きたのだ。

 猿達は慌てて配置につく。“彼”がやって来たのは地面を平らにしていた猿の下、巨大な猿の目の前に現れたのは自分と比べればとても小さな一匹の猿。“彼”こそ八匹の獣の王の一角、猿の王――バンビーナ。

 巨大の猿は足を広げ、腰を下ろし、両腕の拳を地につける――相撲だ。バンビーナは笑みを浮かべ自身も同じように構えを取る。違ったのは次の動作。バンビーナは右膝を掴み、右足を空へと上げ、真っ直ぐ伸ばして地に下ろす。その瞬間、大陸全土が揺れた。

 

 巨大な猿は冷や汗をかきながらバンビーナと向き合う。

 巨大な猿は全身を持って、全霊を込めて、全力でバンビーナを殺しにかかる。バンビーナはそんな彼を眺めながら軽く、その掌を突き出した。たったそれだけで巨大な猿もろとも周囲を吹き飛ばす衝撃波が放たれる。

 

 バンビーナは不思議そうに周囲を見渡した。軽く突き出しただけなのに相手が消えてしまった。バンビーナは数秒考えた後、相手は降参して帰ったのだと勝手に解釈して次の遊び場に向かったのであった。

 

 その日、沢山の猿が空から降ってきたそうな。

 

 

◇◇◇

 

 

 暗い暗い海の底で6匹の猛獣がその闘志を燃え上がらせていた。珊瑚の巨人、化石のような巨大亀、クラゲのようなアメーバのような何か、雷電を纏う鮫、足が蛇のようになっている蛸、鱗に覆われたウーパールーパーのような生物。本来ならもう1匹居るのだが、今は関係ないだろう。

 この6匹の猛獣はこの海の王に次ぐ実力を誇る7匹の猛獣の中の6匹、彼等は偶然にもこの場で出会い、臨戦態勢に入った。何時巨大な戦いが起きても可笑しくはない、周囲の生物達は一斉に逃げ出した。そして6匹の猛獣は同時に動く、遂に戦いが始まってしまった――かに思えた。6匹の猛獣は動きを止め、同じ方向を見る。

 

 来る、“ヤツ”が来る。偶然か、気まぐれか、いやどちらだろうとどうでもいい。重要なのは“ヤツ”がこちらに近付いてきているということだ。彼等はじっとその方向を見ていた。彼等は動かなかった、否、動けなかった。今にも呑み込まれそうな引力にじっと耐える他なかったのだ。

 

 そして――“ヤツ”が、静かに現れた。海の頂点など生ぬるい、正真正銘この星の頂点。その一角である鯨の王、ムーンと呼ばれる最強の悪魔。

 

 6匹の猛獣は凄まじいまでの敵意を、殺意をムーンに向ける。ムーンの視界に映るのは――その奥に居る小さな小さな光る魚。彼等の事など視界にすら入っていなかったのだ。

 

 後日、体のほとんどを失い、再生に勤しむ6匹の猛獣の姿があった。何があったかは、周知の事実である。

 

 

◇◇◇

 

 

 そこには森が、いや楽園があった。青々しく生い茂る植物、屈強な猛獣達が共に暮らしていた。もちろん争いはあったが、だがそれは生きる為、更に最小限にである。ほとんど猛獣達がこの楽園では協力し合い暮らしている。

 しかし、それは決して彼等が温厚という訳ではない。例えば、もしこの楽園に害なすものが現れたなら彼等が一斉に牙を剥くだろう、容赦などしないだろう。

 

 ある日、この楽園に侵入者が現れた。ソイツは森を荒らし、猛獣達を殺していった。多くの猛獣達が協力してソイツに立ち向かうが、敵わない。何故ならソイツは3つ目の大蛇、あの王達と並び称される事もある伝説の魔獣である。

 

 象の猛獣がソイツに向かって突進していく、一瞬で丸飲みにされた。炎を纏った熊の猛獣が爪で引っ掻く、弾かれて大量の消化液で炎を消されて溶かされた。猛獣達は焦っていた、このままでは楽園が荒らされると。その意味を楽園に暮らす猛獣達は知っていたのだ。そして、次の瞬間森が揺れた。猛獣達は瞬時に理解してしまった。怖れていたことが起きてしまったと。

 

 理解出来ていないのはソイツだけ、ソイツは急に動きを止めた猛獣達が不思議であったが格好の獲物と襲いかかる。だが、ソイツが猛獣達を食らう瞬間は訪れなかった。何故ならソイツの肉体は干からびていったからだ。腹が減る、喉が渇く、目の前に餌があるのに動く事すら叶わない。

 ソイツはやっと理解した、自分が手を出したのがどんな所だったのか。自分は怒らせてしまったのだ、その背に楽園を作り上げた獣の王の一角。王の中でも最も優しく穏やかな鹿の王、スカイディアを。

 

 ある日から1匹の伝説の魔獣がその楽園で暮らし始めた。スカイディアは安心すると、また静かに眠りについた。




読んでいただきありがとうございました!面白かったなら嬉しいです!

読んで気付いた方もいらっしゃると思いますが今回の話はセリフとかがありません。実は自分の小説を読み返して何だか地の文とか少ない気がして、ならばセリフとか無しに書いたらどうなるのか実験的な意味でも書きました。まあ、キャラクター同士が話すような物語ではなかったので難易度は低めだと思いますが(汗)

そして、誤字脱字などありましたらご報告ください。

それではご感想をお待ちしてます!
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