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副司令室の前に、すでに彼等は待っていた。
カズは部屋へ全員を招き入れると、最初にあいさつをする。
「スクワッドの諸君、今日は集まってもらってすまない」
そう口にすると、杖こそついてないが、まだ本調子ではないアダマが答えた。
「いえ、我々もまだ開店休業状態でして。今はオセロットに代わって、訓練や査定を手伝うだけの毎日ですから」
「オセロットは数日中には戻るが、その後も君達の今の業務は変わらないだろう。
知っていると思うが、ダイアモンド・ドッグズへの入隊希望者は増加する一方。これを選び、査定し、訓練するのをオセロット1人にまかせるのは物理的に無理だ」
「はぁ」
「諸君はボスのお墨付きがあるし、実際に経験も積んでいるからオセロットも俺も信用して任せられる。もちろん、ボスもそうだ。
君達にしたら現場から離れたくないというのがあるんだろうが――いい方法が思いつくまでは、諦めて手伝ってほしい」
「わかりました」
結成からわずかに半年と少し。すでに2度にわたる再編成を必要としたスクワッドであるが。
カズに言わせるならば、それこそこの部隊をつくった意味があるというものだ。それほどビッグボスの任務は苛烈に過ぎていて、傷つき、老いた彼一人に任せるのはどう考えても無理であった。
そしてその戦場をともに歩き、サバイバルに生き残った彼らもまた驚嘆すべき兵士達となった。
そうしたこともあって、ビッグボスはXOF討伐直後から意欲的に第3次となるスクワッドメンバーを選びだしに集中していた。第1次、そして2次を生き残ったゴート、アダマ、フラミンゴ、ハリアーをそのままに。
新たに男女1名ずつをこれに加えた6名が、新生スクワッドとして選ばれる。
新人たちは共にまだ20代前半だという2人だが、その技術は才能もあってしっかりとしていてまだまだ成長力があると感じさせた。
ワームは中国系アメリカ人男性。落ちついていて、機械工学に強く。実際先日までは支援班のエースの一人として活躍していたという経歴の持ち主。
一方、地元アフリカーナの女性。ウォンバットは医療班にいながら高い戦闘技術をもっていることはずいぶんと前から知らされてはいたけれども。声帯虫の騒ぎなどもあって医療班がなかなか手放そうとしなかったことから、彼女はこれまでの目の前にチャンスが転がってきても、それを泣く泣く棒に振っていた。
その彼女もついに、スクワッドに加入が決定した。昨今次々と入ってくる優秀な新兵達と、本人の強い要望についに医療班のチーフ達が折れたから実現したことであった。
本当ならばあと2人、候補はいないわけではなかった。
しかしビッグボスはすっかり飽きてしまったのか。急に醒めてしまうと今回はこの6人、と決定を下した。ボスの部隊にも変化が生まれたということなのだろう。
「呼び出しの理由、新しい任務と聞いてますが?」
「その通りだ、ハリアー」
「窺う前に聞いておきたいんです、その――ビッグボスは?」
可愛らしい声を上げる新人のウォンバットがそう疑問を口にする。
彼女が何を聞きたいのか、カズはすぐに察した。
「ボスの許可を心配しているな?大丈夫だ、君達のレベルなら全く問題はないものばかりだ。
それと聞いていると思うが、ボスは休暇――じゃないな、調査に出ている。しばらくはここに戻ってこれないが、それくらいでいいだろう」
カズの言葉の真意を理解して、古参となったスクワッド達は苦笑いを浮かべる。
このダイアモンド・ドッグズで一番ハードで、一番出撃を繰り返しているのは皮肉な話だがビッグボスである。彼の仕事狂いはかなり重症らしく、休んでいろと部下達に言われると文句をいいながら食糧庫からアルコールを持ち出し。他人の目の前で子供のように、わざとらしくそれを飲み散らかしてみせることは皆が知っていた。
カズはそんなボスの休暇代わりにと、調査の名目でどこか危険ではない外に行かせたのだろうと思われる。
数日前からここにいなくてはいけない人の姿が見えない理由が、こうして判明した。
「さて、話を戻そうか――まだサイファーが残っている!
だが俺も、ボスも。サイファーに集中する前にやっておきたいことが、終わらせなくてはならない仕事が多く残っている。それをどうやって解決するか、ここしばらくはずっとそれを考え、計画を進めていた。
が、もうそれもいいだろう。今は行動する時だ」
「……」
「XOF討伐で姿を公に見せたのでもう知っていると思うが、問題の一つはあのヒューイだ。今のダイアモンド・ドッグズには元MSFのメンバーも多く戻ってきている。こうなるといい加減9年前、MSF壊滅の決着をつけねばならない。
次が、クワイエットだ。
あの化物への調査は、実際のところ全く進めようがなくて医療班は困っている。だが、今回新たな提案がなされ、ある医療装置を導入することになった。安い買い物じゃなかったので、これを無事にマザーベースに運び込んでほしい。
次に――」
「え、まだあるんですか!?」
「ああ……そうだな、よく見たら10項目以上あるな。これを全て、ボスが帰還するまでは君達に任せたい」
「副司令官、やはり説明をお願いします」
「そうか、わかった」
そういうとカズは再びファイルに目を落とすと読み上げ始めた。
「次は――先日、我々の前線基地がついに潜入工作員に突破された騒ぎは知っているな?その過程で相手が誰で、何の目的かはこちらから送り出した報復部隊が回収してきたことである程度判明した。
とにかく、あの一件で我々の警備がまだまだ脆弱であることがわかった。これの強化のために、あらたな資材を買い求めた。
先ほどのクワイエットのもそうなのだが、こうした物販をそれぞれ厳重な警備をつけてマザーベースに運び込む予算はない。なので、警備を厳重にして他のと一緒に運び込み、そして壊さないように監督してほしい」
「なるほど――」
「次は、ある2重スパイを捕えたい。彼はアフガンで姿を消した。その足取りからソ連に戻ろうとしていたようだが、なにかがあった。
彼を回収し、ソ連と米国でサヘラントロプスの件がどう処理されているのか。新しい情報を知りたい」
「確かに、言われた通り10項目ほどになりますねェ」
「そこにはどれも重要で、大金がかかった任務だ。トラブルやミスがあっては困る、完璧を求めたい」
ワームが今度は手を上げて、発言してきた。
「それはいいんですが、この『少年』とはなんです?」
「……それか」
「少年の『血液の移送』、それと『本人の捜索』とありますが」
それは本当ならば、スネーク自身に求めたい任務であったが。
少年兵がからむとやはりスネークとの間には悪い空気が流れるのはわかっていた。カズは自分の考えを変える気はないが、ビッグボスとの不要な激突を避けておきたいという事情から、この件を彼らに任せるしかなかった。
「――ホワイト・マンバは覚えているか?ボスが連れてきた少年達を率いていた」
「ああ、クソガキだと有名ですね。先日はプラットフォームで暴れて、オセロットに張り倒されたとか」
「そうだ、イーライだ。困ったことにイーライは徐々にここの兵士達の動きを掴みだしているようだ。おかげで警護班ではついにイーライを取り押さえる専用のCQCチームを編成したくらいだ。
どうやら以前から戦闘班の隊員に喧嘩を売るふりをして、修行じみたことをしていたらしい」
「そりゃ、凄いガキだな」
「実は奴は例のXOF討伐の際の脱走以降も、諦めずに何度も脱走を試みていた。5回目にしてついに成功した。今は外に出ている」
「それを回収しろ、と?」
「そうだ。奴は以前に回収されたマサ村にもどっているらしい。諜報班が確認しているが、またCFAの手に落ちて少年兵にされるのはたまらない」
「なるほど――」
「血液というのは?」
「すまないが、それについては君達に話せることはない。外部の医療機関への依頼だ」
「わかりました」
カズは他に意見がないことを確認すると、解散を告げた。
また明日。
(設定)
・BIGBOSSの部隊(三期)
髑髏部隊との対決で戦力が半分以下にまで低下してしまい、またもや編成される。
前回は落選したゴートが復帰。さらに新人として得に若く才能にあふれた男女2名を加えただけの、これまでと違い6名となった。
リーダーはゴートに決定したが。それは前回は隊長であったアダマの希望でそうなった。
皮肉にも、これでついに部隊は男性3名、女性3名の均等がはじめて保たれたことになる。