真実とは神罰、毒の味がする   作:八堀 ユキ

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ゲームでは「最も退屈な最終ステージ」などとも言われたりしていますが。
読む、最終ステージとしてなら最悪の場所となるでしょう。


最強・最後の戦場

 人の気配にハッとして体を起こそうとするが、力が入らない。

 すぐに床にぺたりとまた転がってしまう。

 

 私は今――クワイエット(静かな狙撃手)はソ連軍に捕らわれているのだ。

 

 

==========

 

 

 スカルフェイスの死後。

 ダイアモンド・ドッグズは急激に嵐の中に投げ出され。

 その中で翻弄されるように”仲間同士”で血を流すようになっていった。

 少年兵の反乱、声帯虫の暴走、法のない世界で行われる一方的な裁判。それら全てが私を追いつめていった。

 

 救いのない、絶望的な現実を潜り抜けても。

 その全てにあの男は立ち向かい、さらに傷を増やしたとしても以前と変わらずにそこにいつづけた。

 ビッグボス、私の戦場での相棒。

 自分とは少し違う、人でありながら化物になってしまった男。

 

 はじめてあったときから彼は私にとっての英雄(ヒーロー)でありつづけた。

 

 暗殺という汚いやり方だが、彼は祖国を捨てた死ぬべき英雄だった。

 どんな人外の化け物が戦場に姿を現そうと、彼は常にそれに勝利して生き残る。伝説が真実となる英雄だった。

 その中にスカルフェイスにも負けない鬼を住まわせていたが、やさしく笑うことができる英雄の顔も彼のものだった。

 

 私は子供を「お前は大人だ」と呼んで戦争する彼は見たくはなかった。

 自分の喉に仕掛けられたスカルフェイスの英語株の声帯虫。その暴走した様を見たくはなかった。

 他人の思惑と感情だけで裁こうとする法廷が、すぐそこにあることを見たくはなかった。

 

 それらはまだ人間の女だった頃の私が受けた罰を思い出させる。

 私のような化物の居場所はついに、世界からなくなってしまった。もうどこにもいられない、生きることさえ許されない。

 

 静寂はダイアモンド・ドッグズから消えたほうがいい。

 

 だが神は、皮肉がお好みらしい。

 ダイアモンド・ドッグズから離れた途端に私はソ連軍に捕らわれた。誰もいない荒野の中で、突如降り出した雨が通り過ぎたと思ったら。ソ連の部隊が私一人を完全に包囲していた。

 さらに彼等は”私の肉体”の情報も知っているようだった。

 

 

 彼等は拘束するよりも先に私に服を着せてきた。

 それがどれだけ私を苦しめるのかを理解して、そうしてきたのだ。

 肌を覆い隠す服はすぐに熱を持ち、皮膚から水分を余計に奪っていく。真綿で首を締め付けられるのと似た苦痛、カラカラに干からびた私は朦朧とした意識の檻に閉じ込められた。

 

 

 数人の兵士達は、私を口汚くののしりながら。髪を掴んではひっぱり、蹴飛ばし、つばを吐きかけてきた。

 

 この空気は自分もよく知っている。

 

 捕虜を嬲り殺すための準備をしている。こうやって気分を盛り上げていって、外道な行いをこれから”自分達が行うことも当然だ”と男らしく気合いを入れている作業をしている。

 私を殺し、まだ温かさの残る女の形をした化け物に跨ってやると健気にもこいつらは自分を奮い立たせているのだ。女性ならばそんな男達の獣性を軽蔑すべきなのだろうが、今ならばわかる。

 

 そうやって汚しつくさねば、戦場で与えられた女狙撃手からの恐怖を彼等は乗り越えることが出来ないのだ。

 

 

 だが残念な話だが私は絶望していたが、殺されたくはなかった。

 そして生き残るために今、一番必要な水場が近くにあることを本能がさっそく嗅ぎつけていた。

 

「○×●□×▲」

 

 蹴り上げようと足を上げたところに、潜り込むようにして無様に転がることで鍵がかかっていない扉の外へと出ることが出来た。

 このチャンスを逃すと次はもう歩けないかもしれない。

 そんな恐怖を感じながら、最後の力を振り絞ってよろけながらも水場を目指す。

 

 

 気がつくと、私は水槽タンクに沈められながらソ連兵の一人に首を絞められていた。

 自然に水分が皮膚から吸収され、意思とは別に体が反応してばたつき始める。思考は完全に停止し、いつもの開放感からくる快楽として認識してしまう。

 だが、この兵士は知らなかったようだ。

 自分が人ではなく、化け物を絞め殺そうとしているということに。

 

 潤いがまた体中へといきわたると、あのなんともいえない情事の後のような気だるさを感じて動きが止まる。

 だが、呼吸は不完全とあってまだ苦しさが体の芯に残っている。男の趣味に付き合って”首を締めながらファック”をすると、こんな感じになるのだろうか――。

 

 

==========

 

 

 クワイエットが意識を取り戻したのは、ソ連兵が最後だとばかりに勢いよく彼女のズボンを脱がせ。下腹部を露わにさせた瞬間だった。

 いきなり元気を取り戻したクワイエットは、自分のズボンを降ろしている男の頭を脚で挟み込むと上半身を振り子がわりにして豪快に相手の体を空中に投げ飛ばして見せた。

 

 あまりに超人的な力。

 その想像をはるかに超える動きに対処できる人間はここにはいない。

 

 続いて驚き、動けないでいる後ろの2人にむかって走り出す。アフガニスタンの冬の冷たい土の上を、裸足で半裸のクワイエットは重力を無視する動きであっという間に彼等を殴り(正確には蹴りだったが)殺してしまう。

 

 長く空中から地面へと叩き落とされ、受け身も取れずに口をパクパクさせていたズボンをずり下ろした兵がようやく体を起こす頃。

 クワイエットは後ろ手にされた拘束から、自力で解放され。今度は頭がおかしいのか、上に着せていたソ連軍服を自分の手で引き裂くようにして脱ぎ散らかしていた。

 

 相手のみっともない、羞恥心を文字通りかなぐり捨てる姿で男は度肝を抜かれた。

 ようやく彼は理解した。この女は狂っている、絞め殺して犯そうとしている男達の前で。どこの世界に一糸まとわぬ裸となる女がいる?それも、このアフガニスタンという冬の戦場の大地で?

 

 その彼は驚きに満ちた自分の目で。つい、クワイエットの目を見てしまった。

 むしゃぶりつきたくなるような豊満な肉体の持ち主の目は血走り、獣の目を兵士に向けていた。

 

 遅れて襲ってきた恐怖の中で、報復心をむき出しにしたクワイエットは兵士めがけて片足を頭上高くまで持ちあげてから振り下ろす。

 男の下腹部が、化物の怪力を込めた一撃のせいで文字通り”踏みつぶされ”ると。か細い声を上げながら白目をむいた男は喉に自分の吐しゃ物をつまらせ、そのうち気絶したまま息絶えた。

 

 

 だがクワイエットは安心してはいなかった。

 ここはソ連軍の駐屯地の中、すでにその皮膚が冷たいナイフにも似た男の視線を感じとっていた。

 彼女は振り向くと――その場に凍りつくように固まり、呆然とした。

 

 クワイエットの側に、なぜかスネークとDDが立っていた。

 

 獣であるDDは尻尾を振って嬉しそうにしていたのはわかるが、スネークも「元気そうだ」と口にするだけ。

 再会したというのに、逃げた自分を攻めないし、事情を聞いても来ない。いや、それどころか素っ裸になって今しがた3人のソ連兵を殴り殺した危険な女にかける言葉が元気云々とは。

 それでもスネークはクワイエットに手を差し出してくる。

 

 クワイエットは。

 彼女はその差し出されたスネークの手を――突き飛ばした。

 

 

 複数の兵士達が持つライフルが火を吹くと、スネークが今しがたいた場所に弾丸が飛んでいく。

 クワイエットは兵士達の存在に気がつき、すでに次の行動に写っていた。スカルズにも負けぬその肉体で瞬時に射手達に接近していくと、再びためらうことなくソ連兵達を徒手空拳で八つ裂きにしていく。

 

 この銃声に気がついた建物の中の兵が飛び出そうとしているのに気がつき、クワイエットは死んだばかりの兵士の体をムンズと片手だけでつかみ上げ。そいつの体を盾にして建物の中に向かって駆けこんでいく。

 

 中で手榴弾の炸裂音がするがそれで死んだ者は誰もいない。なぜなら、白煙がそこからあふれ出ると割れた窓から黙々と灰色の煙を空に向かって吐き出しているからだ。

 

(スモークグレネードだったか)

 

 戦女神よろしく、大活躍のクワイエットを見てもスネークはあわてて加勢するそぶりもなく。悠々とのんきに目の前の騒ぎをDDと並んで見学としゃれ込んでいる。

 

 煙の中から入り口から出てきたソ連兵は、咳と涙で動けなくなっているようで地面に四つん這いになって顔も上げられずに苦しんでいる。

 煙の中からは「気をつけろ」とか「まだいるぞ」といった声がするが、すぐにけたたましい銃声がそれらをかき消してしまう。

 

 彼等は煙の中のクワイエットを撃とうとしていたが、誰もそれに成功することはなかった。

 誰かの弾が暖房器具を破壊したらしく、煙に続いて火がメラメラと壁際を這い上っていく中。裸のクワイエットは亡霊のように出現を繰り返し、兵士達を1人ずつ丹念にくびり殺していく。

 

 スネークは1人入り口で苦しんでいた兵士の頭を撃ちぬくと、そのままそこに立って終わるのを待っている。

 しばらくは中から悲鳴と銃声が聞こえるが、すぐにそれも静かになっていく。

 煙が白から黒へと変わり、建物が炎に包まれる頃。入り口にクワイエットがようやく姿を現した。

 

 男達の返り血で真っ赤に染まるが、中にあったらしい彼女の衣装と靴を履いていていつもの姿に戻っている。

 その手にはRPGが握られていた。

 恐ろしく、おぞましいはずの彼女にスネークはDDと共に平然と近づいていく。

 

『スネーク!?大変だ、ソ連軍だ。奴等、あんたの所に向かって大部隊が進軍している。急いでそこから――』

「カズ、クワイエットと合流した。武器をよこしてくれ」

『なんだって!?おい、ボス。それは――』

 

 遠くで号砲が鳴るのが聞こえた。

 戦車と並んで、兵士達がこちらに向かって接近してきていることが遠目からでもはっきりと確認できた。

 

「クワイエット、それは俺が使おう」

「……」

「お前なら、こっちの方がいい」

 

 そう言うとスネークは持ってきた自分のアンチマテリアルライフルをクワイエットに差し出す。

 クワイエットは黙って交換に従うと、スネークはにやりと笑って言う。

 

「どうやらこれは罠だったようだ。大軍が来る、俺たちで片付けるぞ」

 

 DDは一声大きく遠吠えを上げ、クワイエットはうなずくと高所に向かって飛び上がる。

 スネークは塹壕まで走っていって、身を隠した。

 

 

 今、この時。

 クレムリンの思惑はついに明らかとなった。

 彼等はようやくのことダイアモンド・ドッグズを。サヘラントロプスという超大国が生み出すはずの兵器を無意味化し、それを誇るようにして海上にさらし続けていたビッグボスへの報復を果たそうとしているのだ、と。

 

 

==========

 

 

 ソ連軍の戦闘車両が火を吹く、逃げろと叫び続ける声と共に歩兵たちは散り散りとなって。炎に包まれた車の中から人が飛び出してくるが、その全身はすでに火傷によって見るも無残な姿となっていて。それでも必死に逃げようとする。

 逃げた先で力尽きるとしても、そこで焼け死ぬことだけはごめんなのだ。

 

 3台目が爆音と共に火の中に沈むが、ソ連軍の進軍に乱れはなかった。

 彼らには何としても襲撃された駐屯地を奪還せよ、との命令が下されているのだろう。スネーク達が生きている限り終わらない戦場。悪夢だが、それこそが彼等にふさわしい場所でもある。

 

 

 クワイエットはスコープを動かし、人を、車両を。

 目についた先から構わずに撃ち倒していく。狙撃の基本は、一撃一殺で敵に確認されないように常に動き続けることにある。

 

 だが、今日の彼女はそこから動かない。

 朽ちかけた建物の最上部に腰を据えて、砲火に身をさらしている。その後ろ、階段下にはDDが耳をぴくぴくさせてじっと伏せている。

 そしてスネークは――。

 

「コイツ、狂ってるぞ!」

 

 奥歯に仕込んだカプセルを噛み砕く、世界がゆっくりと動きを止めていく中。スネークは素早くサブマシンガンで兵士達の頭部、心臓、腹を撃ちぬいて駆け抜けていく。

 穴ぐらに飛び込むと、走ってきた道すがらに出来上がる死体と死に損なった兵士達。放っておいてもいい、ソ連軍は容赦しない。スネークを狙って発射される砲弾が、彼等を静かにしてくれるだろう。

 

 指が震える。

 恐怖ではない、武者震いだ。

 ポケットから新しい錠剤の入ったカプセルと1つ出すとまた口に含む。アドレナリンを薬物で噴火させることで超人的な動きをおこなっているのだ。

 それでも薬の力にも限界がある、オーバードーズしては自滅する。

 

 

 伏せて静かにしていたDDの鼻が動き、顔を上げた。

 クワイエットを狙ってスネークを回避したソ連軍地上部隊が崩れかけた建物内に侵入してきたことを悟ったのだ。

 ウゥ、低く唸り声を上げる。

 

 下の階では暗視装置を付けた男達が、一列になって建物の廊下を静かに進んでいる、間違いない。

 

 風となってDDは駆けだす。

 

 闇の中を、正確な動きで部屋を駆け抜けると廊下に面した部屋の中から兵士に向かって飛びかかる。DDほど大きな犬となればその突撃は馬や熊のそれとほとんど変わらない。

 不意をつかれて慌てた兵士は、階下に落ちて動かなくなる。続けてDDは廊下の兵士達に向かって牙をむく。

 兵士はあわてて視界一杯に広がる鋭い牙のある口に銃口を向けようとした。

 

 

==========

 

 

 マザーベースではカズとオセロットは真っ青になっていた。

 ありえないことが起こっている。クワイエットは確かにソ連軍にとって憎むべき、報復すべき相手のはずだ。だが、それがこの救出を見越したかのように投入される凄まじい量のソ連正規軍の大戦力。

 

 まず、場所が最悪だ。

 背後にはせり立った崖に囲まれ、スネーク達が逃げるなら前面に広がる砂漠しかないのだが。そこをソ連軍がうめつくしているのである。

 

 これでは救援を、ヘリが出せない。

 そしてこれほどの大戦力をまえにしては、いくら伝説の傭兵と相棒達とはいえど耐えられるはずもない。3人で100人はいる正規軍精鋭部隊と戦えるはずがないのだ。

 

「オセロット、ヘリポートから戦闘班がっ。出動させろと騒いでます!」

 

 険しい顔をしたままオセロットは通信機をよこせという。

 

「オセロットだ」

『戦闘班はいけます!2チームは戦えます、いかせてください!』

 

 ワームだった。

 スクワッドを解散しても、彼はあの死んだゴートやアダマを思わせる”考える兵士”へと成長を続けていた。

 その若者に冷酷にオセロットは告げる。

 

「駄目だ、現地はソ連兵で埋め尽くされている」

『ですがっ、このままではビッグボスは』

「とにかく待機だ、今行ってもボスを助けられんぞ」

 

 作戦室のディスプレイを見上げる。

 

 ここにいる連中全てがそれを見ている。酷い状況で、絶望的だった。

 敵を意味する赤い光点が3つの光の前にびっしりと配置されているのだ。だが、その3つは強い。赤い光は次々近づくと消えていくが、それらはまったく倒れる気配がない。しかし赤の数は減っているのかもわからない。

 

「ビッグボスは倒れない」

「――気休めを口にしても無駄だぞ、カズヒラ。彼は無敵のヒーローじゃない。誰とも同じように、殺されれば死ぬ。そして!今は最も危険な状態だ!」

「オセロット……」

 

 呆然とするカズヒラに続けて何かを言おうとして、オセロットは”それ”を飲み込んだ。

 これは今言っても仕方のないことだ。

 

(ビッグボス、あんた殺されるぞ。今度こそ、今度こそ)

 

 付近に接近した諜報班から送られてくる現地の映像はみただけで背筋が凍る。

 戦車をはじめとした砲塔が、一斉に崩れかけた廃墟めがけて撃ちこまれている。拡大すれば、その先には姿をさらし。先ほどから度々、流れ弾をくらって何度もよろけるクワイエットらしき姿がうつっている。

 

 囮になっているのだ。

 ということは、スネークは?

 

 作戦室にどよめきの声が上がる。

 戦車の一台がフルトンで回収されていく。その影にいた人影は、なんと”味方のはずの別の攻撃車両”にむけてRPGロケットを発射してみせたのだ。

 

「ビッグボス!!」

 

 誰かの歓喜の声は、すぐに悲鳴に変わる。

 道路沿いに進軍してきた新たな車両と兵が、スネークとおぼしき人影を確認すると攻撃を開始し始めたのだから。

 

「ボス、ボス……」

 

 カズはもう壊れかけたオルゴールになりかけている。

 だが、それは自分も変わらない。オセロットは、自分が役に立たないことの無力さを噛みしめているしかなかった。

 

 

==========

 

 

 DDはゴボゴボと咳をする。

 食いちぎった人の肉が渇き、口の周りが真っ赤になっている。人肉に含まれる脂肪がよだれと混ざって砂の上へと零れ落ちていく。

 ヘリの墜落音で集中が切れたか。クワイエットは巨大なライフルを思わず放り出してしまった。

 体の虫が、傷ついてむき出しにするわき腹の中身を修復することで内臓をはみ出させずに済んだ。

 そしてスネークは――。

 

 攻撃ヘリに追いかけ回され、ギリギリで建物まで飛び込んだ自分がまだ動ける奇跡を感謝した。7台目の戦闘車両を撃破した時に薬は切らしていた。

 助かったのは、ひとえに相棒達が一緒にソ連兵達を容赦なく死人へと変えていく作業を続けてくれたからにほかならない。だが、それもさすがに限界が近づいていた。

 

 砂漠に砂嵐の前兆である厳しい風が吹き始めていた。

 そのせいだろうか、ソ連軍の前進がようやくにして止まった。攻撃の再開はあるだろうが、その前にここから脱出する算段をつけなければならない。

 

 そとでDDが吠えているのを聞き、よろよろしながらもスネークはそこへむかう。

 DDは貯水槽に向かって吠え続けている。「どうした?」そういって水槽の中をのぞくと合点がいった。

 水の中に手を突っ込むと、どうやらそこに落下したらしいクワイエットを引きずり出した。

 

「クワイエット、砂漠で溺れ死ぬつもりか?」

「……」

 

 わかっている、そうじゃない。

 ダメージをおっていて、足を滑らせるついでに落ちた。だが、なぜ浮かび上がらず沈んでいた?

 スネークがみると、クワイエットの手には新しいミサイルランチャーが握られて放そうとしなかった。どうやらそのせいで水中から出られなかったらしい。

 

「俺に持ってきてくれたか、助かる」

 

 そう言って手を差し出した。

 だが、クワイエットは手渡す寸前。顔色を変えてスネークは再び突き飛ばした。

 砂嵐の向こうにいつのまにか戦車が3つの影に向かって慎重に狙いを定めていたのに気がついたからだ。

 クワイエットが発射するのと同時に、夜の砂漠から砲弾が彼等に向かって撃ちこまれた。




それではまた明日。

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