後悔の音と約束の色   作:専務

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二次創作とはいえ物を書く人間としてこの投稿ペースはどうなのかと言いたい。己に。

たいへん遅くなりました。続きです。













episode1-2 早々の悲劇

左手が動く、時は止まっている。やることはひとつじゃないか。

俺は棚から適当な教本を取り出し、いそいそとギターを担ぐ。

…ふむ、基本的なコードとかは体が覚えてる。でも細かい動きが忘れてるな。これは、ちょっと時間かかるかもな。

 

「…何をしているんだい。」

 

「見てわからないか?練習だよ。」

 

「見てわかるから疑問形なんだろう。」

 

「その理屈はおかしい。」

 

意味不明な会話をしつつ聞き覚えのあるバンドのリフなんかを再現していく。ふふん、流石に弾いてなかった時間がでかいけど思い出すのも早いもんだ。俺の才能が怖い。

 

「…っと、こんなもんか。さて…」

 

馴染んできたギターをアンプに繋ぐ。安値で仕入れたエフェクターと部費で奮発した大きめのマーシャル。イコライザーをいじった後、デッキにマイクを取り付けアンプにつける。収録環境は整った。

 

「…これは、俺の後悔だ。」

 

「へぇ。」

 

「同時に、」

 

礼服の内ポケットを探る。やはり、元の服装元の姿に戻るなら、これも元に戻る。

スマートフォンを取り出して、準備を終えた。

 

「…これは、矢澤の未来の分岐点だよ。」

 

「…へぇ。」

 

同じことしか言わない時坂なる人間を横目に、俺はギターを弾く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「これを聞いて欲しいわけよ。」

 

そう言ってCDをデッキにセットする。ぐふふ、まさかこれがつい数分前にここから取り出されたものとは思わないだろう。

俺がやったのは所謂デモテープ作りだ。こいつらに印象を与えるには実際に弾いてやれば大概勝ちだ。

ギターによってバンドアレンジされたアイドルソングが数曲、さわりの部分だけ流れる。自分でも聞いててかっこいいと思う。自分が好きなようにやってるんだから当たり前だけど。

 

「…ふーん、なるほど。」

 

「どう?」

 

「曲はめちゃくちゃかっこいいけど、如何せん歌詞がなぁ」

 

「お前そんな歌詞に執着するタイプだっけ?」

 

「いやでも…好き、とか普通に入るし…」

 

「ぐふふ、いいことを教えてやろう。」

 

この程度の反論は予想済み。所詮男子中学生だ。

 

「女の子は、アイドルが好きだ。」

 

「おぉ。」

 

まぁ、俺の時代だとバンド好き増えたけどな。

 

「また、アイドルの曲は男目線が多い。特に女アイドルはまさにだ。」

 

「そういやそうだな。」

 

「つまり、だ。」

 

深く息を吸い、言う。

 

「男目線の歌詞故に自然に感情移入ができ、かつ女の子のファンが多いとなると!コピーすれば女の子から支持されるのだよ!」

 

「おぉっ…!」

 

決まった。決定打だ。俺もこれを狙ってた。

アイドルらしいストレートな歌詞、それにアレンジされたバンド音楽。そう、アイドルソングのコピーは、男のバンドにうってつけなのだ。

 

「さぁ、乗るか?乗らないか?」

 

「決まってんじゃねぇかよぉ…」

 

「水クセえな、なんで今まで隠してたんだよ。」

 

「…そうとなれば、早速練習だ。アレンジ付き合えよ。」

 

「おう!」

 

なかなか、いい感じだ。男子中学生…ちょろいな。

それから俺は楽譜を書き、他のメンバーは原曲を聞く。そんな感じで今日の放課後を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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帰路につくと、ふと思うことがあった。

 

「これ…実家に帰ってるんだよな?」

 

「当たり前じゃないか。」

 

「なんでお前は一緒に帰ってるんだ?」

 

「予め説明しただろう。私は君の家に住んでるんだよ。」

 

忘れていた。そんなこと自己紹介で言ってたな。

親戚だったか、これは面倒臭いな…

 

「…家族はどうなる?」

 

「そのへんはしっかりしてるよ。私を誰だと思ってるんだい?」

 

さぁな、誰だって構わない。

俺の家は父親が大手のPC会社の役員で、母親はこれまた大手航空会社の客室乗務員だ。出会いは知らない。

父親は短期の単身赴任が多く、母親も仕事柄夜に帰ってこないことも多い。1人っ子の俺は基本まさに1人だった。

1人暮らしもすんなり入っていけたし、ホームシックなんて全くなかった。かと言って家族を蔑ろにしていたわけでもなく、休みが合えば家族と過ごすこともある。至って普通の家庭だ。

 

「両親の略歴が普通のそれとは思わないけどね。」

 

「どこにだっているさ。」

 

適当に話をしていると家に着いた。今日は家族がいないらしい。

…うちの両親は本当に唐突に帰ってきたりするから、息子の俺でもわからない。それが()()だから。

 

「…ただいまー。」

 

「誰もいないとわかっていて声をかけるんだね。」

 

「習慣だよ。」

 

そういって家の電気を付ける。自分で言うことではないが家はかなり大きい。伊達に両親がいい職に就いてるわけではない。それなりな生活はしていた。

俺は帰宅してすぐ自分の部屋に向かった。部屋には数本のギターとアンプとエフェクター、録音機材とパソコン。変わりない昔の俺の部屋だった。

懐かしさと安堵の気持ちを覚えながら部屋を出ると、隣の部屋に目がいった。当時は俺のゲーム機やらネックが反れて使い物にならなくなったギター、壊れたアンプやらが置いてあったところだ。しかしドアには『Kuine』と書かれた板が下がっている。

 

「お前の部屋はここなのか。」

 

「君の荷物類は無かったことになっているよ。」

 

「…は?」

 

「なにか不都合があったかい?ただの物置のようだったから。」

 

…畜生、計画が狂った。ここにはこの先2年間はお世話になるのに。

 

「…矢澤にこと一緒に買うアイドルグッズとそれに紛れて買った同人誌くらい自分の部屋に置いたらどうだね。」

 

「うるせぇよ!」

 

くそっ、俺が言葉を濁していたというのに…。

元々両親は俺に過度に干渉することはないが、俺が個人的に掃除を手伝ってもらったりパソコンに関して父親に頼むこともあり、家に出入りすることはある。そんな時にバンド一筋だった息子の家にアイドルグッズが並んでみろ。卒倒するだろ。

 

「とにかく、一度この部屋を見せてくれ。」

 

「構わないけど…。」

 

返事を聞くまでもなくこの部屋を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

するとそこにあるのは多種多様な時計、本棚には歴史書や時間に関する書物が並んでいて、紅いマットの上にベッドと古めかしい木製の机がある、不思議な空間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お前の、趣味?」

 

「なかなかいい物だろう。机と時計はお気に入りだね。」

 

「お前一体いくつなんだよ。」

 

「女性に年齢の話は禁忌だよ、覚えておいた方がいいね。」

 

なんとなく濁された。こいつにもその程度の感情は残っているということか…まぁ、知ったことではないが。

 

「本格的にこの部屋は使えなさそうだな…」

 

「許可なく入ったら君に与えた能力を剥奪するからね?」

 

「プライバシー厳守かよ…俺のプライバシーは無視してるくせにな。」

 

「神の力だよ、仕方の無いことだ。それより夕飯にしようか。私が作ってあげよう。喜んでくれ。」

 

返事に困るが素直に受け取っておこう。家事をやってくれるのは助かるものだ。全国の主婦及び主夫の皆様方には頭が上がらない。

 

「明日からはくれぐれも気をつけてよ。今日みたいな発言は取り返しのつかないことになるから。」

 

「誰より俺がよくわかってる。順応してみせるさ。」

 

そうはいったものの、やはり気をつけねばなるまい。この世界と全く違う知識を持った人間であることを念頭に動かなきゃならんだろう。

未来人の気持ちを痛いほど体感しながら、リビングに赴いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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あいつ…悔音の作るものはかなり美味かった。基本技能は持っているようだったが、むしろこいつには何ができないのか知りたいほどであった。

スムーズに料理を進めながら洗い物もやる、家事スキルの高さには驚いた。俺は1人暮らしだったから洗い物なんて溜まったらやるくらいで、同時に進めることはなかった。時間を有効活用しているさまは、少し不思議に思えた。

 

「お前くらい時間を止めたり動かしたりできるやつが、そこまでする必要があるのか?」

 

「…時間は、有限だ。私だから、わかる。」

 

「…そうか。」

 

それ以上詮索するのは野暮だと思った。飯を食ってからは自室にこもった。練習は抜かりなくやっておく必要がある。

 

「…ふーっ、なんとなく昔を思い出してきたなぁ。」

 

独り言が出てしまうくらいに今の環境が嬉しかった。

ふと自分が今まで何をやってきたか振り返る。高校では音響のサポートだけで終わってしまった。変われるなら、高校でもやり続けたい。一時の夢でも、あの頃の思い出を変えてみたい。

でもそれだけじゃダメなのもわかってる。なんとしても矢澤を音乃木坂に入れて、あいつの夢も叶えたい。

はぁ、やることが多すぎるな。俺だって、いつ腕が動かなくなるかわからない。

 

「…どーすっかなぁ。」

 

「君は明日も学校ということを忘れてないかい?」

 

「……」

 

こいつが勝手に部屋に入ってきても驚かなくなった。嘘、少しびびった。なんでいるし。

 

「なにやら思い悩んでる様子だからね、その調子じゃ何をしても叶わぬままになりそうだしね。」

 

「そんなこと俺が一番わかってる。早いうちに…」

 

ピピピッ、と。初期設定から変えてない携帯のベルが鳴る。そういや、この時代はこんな携帯だったなぁと。

メールのようだった。何の気なしに開く。スマホでなれたこの手も、かつて使っていたものにはほどよく順応してくれている。

 

「…お、矢澤だ。」

 

メールを開くと、やけに高圧的な態度の内容だった。返信は2分以内だそうだ。後に返信に2分もかけてたら孤立するL〇NEなるアプリができるのはここだけの話。しかしこの時代のメールで2分は相当短いのだ。相手が送信した時間、自分が受信した時間、確認する時間、返信を考える時間、送信する時間、相手が受信する時間。細かく分かれたこれだけの時間を2分以内に収めなければならないのだ。

 

「……、まぁ適当で。」

 

カタカタと文字を起こしていく。内容は簡潔に当たり障りのないことを書いておいた。

 

「よし、これで2分以内だろうな。」

 

「打つのが早いじゃないか。君の時間軸からしたら前時代的なものだろうに。」

 

「仕事用の携帯がこのタイプだからな。もちろん、上司の連絡はスムーズに返さなきゃいけない。嫌でも慣れるさ。」

 

ほーん、と。悔音はそれだけ残して帰っていった。さてと、俺も寝るとするか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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その日の夜、俺は明日からの中学校生活を待つ入学したての頃のように何をしようか考えながら眠りについた。はずだった。

 

 

 

 

突如、激しい頭痛で目が覚める。嫌な感覚。初めてじゃない。嘘であって欲しいと思いながら真夜中に目を覚ます。

 

 

 

 

左手は、動かなかった。












今回もお読み頂きありがとうございます。

・まず、ここまで遅れてしまったこと。大変申し訳ないと思っております。土下座で許されると思っていないので全裸で逆立ちしながら校庭10周してきます。
かなり時間が無くて、満足に書けるようになったのがつい最近だったもので、申し訳ないです。

・投稿遅くなったからこんな超展開にしたんじゃないのか!いい加減にしろ!と思われる読者がいたら嬉しいとは思いますが違います。そしてまた矢澤が出ませんでしたね。仕方ないんや…矢澤が本当にガッツリ出るのはもうちょいしてからですね。この話はオリ主を中心に書いていくのでこうなってしまうのです。なんでラブライブでやったんや!と思われるかもしれませんが気長に見守ってもらいたい。いやほんとに。ほんとごめん。




亀更新は避けようと思ってた時期が私にもありました。少しずつ、この話を進められたらと思います。これからもよろしくお願いします。
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