後悔の音と約束の色   作:専務

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劇場版ラブライブ見て泣いてました。早めに投稿できて嬉しいです。











episode1-3 動き出す物語

激しい頭痛と動かない左手に俺の脳内はパニックだった。どうしたらいい。わからない。過去にあったからこそ、2回目の体験により焦る。こういう時は…どうするんだ。

途端に少しの浮遊感に襲われる。この感覚、感じたことがある。状況を整理するより早くに隣の部屋からあいつが現れた。

 

「少し落ち着こうか。」

 

落ち着いてられるか。今も頭痛が…しない。

冷静になると先程の頭痛が収まっていたことに気付く。左手は…うん、いつも通りだ。

よく見たら時が止まっているようだ。もうこの程度驚かなくなっている。背丈も服装も戻る前の状態だ。

しかし、何故あの現象が起きたのか。兆候が見え始めるのはまだ後のはず。実際に左手が動かなくなるのはもっと後だ。

 

「ふむ…時に駆くん。嬉しい知らせと悪い知らせがあるけど。」

 

なんだその海外医療系ドラマとか戦争系映画にあるやつは。聞きなれたフレーズのくせに実際言われるとどっちを聞いたらいいのかわからなくなる。

 

「…いい方で。」

 

「君の左腕の件だが…もしかしたらこれからも普通に動くかもしれない。」

 

「本当か!?」

 

「但し……これからは悪い話だ。」

 

なんかコイツ楽しんでないか?

 

「おそらくこれから先、時間停止を多用することでその頭痛や一時的な左腕の機能停止が起きるかもしれない。」

 

「どういうメカニズムなんだ?」

 

「今まで言ったことも、これから言うことも私の推測だから確実とはいえないけれど…」

 

なんだよ、左腕が動くって知って少し喜んじまったじゃねぇか。

 

「時間停止を使用した時…君の精神体が行動することになる。なんというか、君の精神を実体化させる空間を作るのがその時計の能力なんだ。」

 

なるほど、時間を止めてる…というのは厳密には違うということか。

 

「精神体の行動は時間の干渉を受けないから、時間が止まっているようになるんだよね。

ここからが問題なんだけど、君の精神はあくまで今から未来の肉体に宿っていた精神だ。擬似的にだが、未来と過去を繋げているのが今の君と私の状態なの。時間停止を使って未来の精神を現代と繋げすぎると、未来の肉体における障害が現代の肉体に反映されるのかも知れない。」

 

うーん、難しい話だ。理解はできてるつもりだが。

 

「理解してくれてるなら幸いだ。実際には現代の肉体を使用しているはず、本来の君の障害はもっと先の話だから、今の肉体では起こりえない現象…逆に言えば、未来に起こるはずのものを今経験しているわけ。

この現状が今言ったことの通りのメカニズムで作用していたら、もしかすると耐性ができるかもしれない。」

 

俺の脳の障害については未だよくわかっていない。謎故に、今でも定期的に病院で検査を行っている。

もしこれが耐性をつけられるものなら…もしかしたら、という訳だが…。

 

「もしこれが耐性云々の問題ではなかった場合…」

 

「そう、最悪の場合より早く左腕が動かなくなることもある。今は動いているが、これによって早くに脳機能の障害を引き起こすかもしれない。」

 

「なんだかめんどくせぇことになってきたな。」

 

「それも含めて時間旅行さ。」

 

そんなもんかね、と思いつつ時計を閉じる。何の変哲もない、中学生の俺だ。目覚まし時計が3時半を過ぎた頃だと教えてくれる。カチカチと音を立てる秒針に少しの安堵を覚えて、寝る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ピピピっ、と。眠い目をこじ開けて音を止める。カーテンの隙間から差し込む白い光が否応なしに脳を働かせる。わかっちゃいるが学校ってのは面倒臭い。朝飯を食うために居間に向かうと、すでに味噌汁と納豆と白米の王道朝食が並んでいた。制服に着替えた悔音が台所で洗い物をしてる。朝からホントありがとうございますマジ。

 

「気にしないでくれ。起きちゃうんだよ。」

 

「なんだ、寝れなかったのか?」

 

「違う違う。自然と起きてしまうのさ。」

 

こいつはマジで何歳なんだと思いつつ朝飯を食べる。ん、やはり美味い。

歯を磨き、寝癖を直し、制服を着て、カバンを持つ。今日から学校に行くのか…職場じゃないのがものすごい違和感だ。

 

「いつもこの時間に出ているのかい?」

 

「あぁ。始業15分前に着くようにしてる。なんとなくだけどな。」

 

ふーん、と適当な相槌を打つ悔音を気にせず靴を履いて戸締りをする。今日は帰ってくるのだろうか…いや、考えた所で意味は無いしなんならどうでもいい気がしてきた。

歩き始めるとふと、あることに気がつく。

 

「…俺は、お前と一緒に登校するのか?」

 

「同じ家に住んでるんだし当たり前だと思うけど…気にするなら時間をずらそうか?」

 

「気にするような年でもねえわ。ただ、あいつらがなぁ…。」

 

「あいつら?」

 

「1年の頃から一緒に通ってる奴らがいる。そろそろ来ると思うが…てか来なかったら迎えに行かなきゃならん。」

 

「一体誰だい?」

 

「見た方が早いな。」

 

話しながら歩いてると、少し遠くに数名の人影が見えた。珍しく全員揃ってるようだ。

 

「よっ、おはようさん。」

 

「おー…って時坂お前、女連れてんじゃん。」

 

「福地知らなかった?いとこの悔音さん。同居中なんだってよ。」

 

「国木田知ってたのか。」

 

「同じクラスじゃない俺でも知ってたけどねー」

 

「冬木…お前も裏切り者か。」

 

「駆、この人達は…」

 

「お前見たことなかったっけ、バンドメンバーだよ。」

 

ちょろい奴らだけどな。これでいて、ちゃんとスキルを持った頼れるヤツらだ。

 

「しっかし親戚といえど女子と登校とは…貴様もやるようになったな。」

 

「何言ってんだお前。」

 

「福地はそういうの、まるでないからね。」

 

「国木田はいいよな、静岡に女の子いるし。」

 

「本家の人だからまず接点は無いよ…第一、寺の女の子に手を出したらあとが怖いよ。」

 

「冬木は仲間だろ!な?」

 

「いやまぁ、接点ないことに関しては同じだけど…。」

 

「馬鹿なことではしゃぐな。遅れんぞ。」

 

女が3人寄れば姦しいなら、男が3人よるとむさ苦しい。バカ3人ならなおのことだ。でも、不思議と元気になる。

 

「これで登校も賑やかになるね。」

 

「悔音さんいい事おっしゃる…。」

 

「福地いい加減にしとけよ…だからモテないんだよ。」

 

「お前らも一緒だろ!?」

 

本当にうるさい。うるさいけど、楽しいからいい。

いつも男だけだった空間に、こいつと言えど華がひとつ生まれただけ良かったのかもしれない。

…かといって、こいつらの変な湧きようはどうにかして欲しいが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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なんやかんやで学校に着く。校門を抜ける時、見知った赤いリボンと黒髪を見た。

 

「あっ…」

 

「ん?あぁ駆ね。おはよう。」

 

「おぉ。」

 

「随分大所帯なのね。」

 

「バンドメンバーと一緒だからな。」

 

「…そう。」

 

そういうと矢澤は行ってしまった。なんだよ、もう少し話してくれてもいいのに。

 

「おま、いつからそんなやり手になったんだよ…。」

 

「また福地か…。」

 

逆にお前はこんな男女のことに首突っ込みすぎじゃないか?

…と、相手は普通の人間だわ、脳内で語っても仕方ない。

 

「まぁ、時坂はしれっとそういうことしそうだもんな。」

 

「そういうことって何のことだよ。」

 

「んー、わからん。」

 

こいつは意味不明にも程がある。こんなんでよく楽器を扱えるものだ。

 

「じゃあ放課後なー。」

 

「おう。」

 

「あいつはアホだからなぁ、お前も大変だな。」

 

「冬木が1番あいつと対面して楽だもんな。」

 

逆に福地には冬木を見習って欲しい。これくらいの落ち着きを見せてほしい。

 

「まぁ、境遇が似通ってるというか、モテたい意欲が強いだけなんだけどねあいつは。」

 

「それが問題だろう…てか同じクラスだろ、行ってやれよ。また不貞腐れるぞ。」

 

「面倒だなぁ。じゃ、部室でまたー。」

 

「おうよ。」

 

冬木と福地は何故か仲がいい。お互い身内に女性はいないし女の影もないからだろうか。そんなので繋がってていいんかこれ。悲しすぎんだろ…。

 

「俺達も行かないと遅れるよ。」

 

「おぉ、国木田が一番まともだな。」

 

「何を比べてるんだよ。」

 

実家が仏具店で、本筋の家系が代々続く寺だとか。そりゃいいやつが育つわ。

 

「まとも度合いはともかく、早く行かないと。」

 

「急かすなって。」

 

そういって小走りに教室へ向かう。なんか久しぶりだから、ちょっと楽しいと思えるのは、大人だからだろうか。

当時は感じなかった懐かしさが、教室へと俺を駆り立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ねぇ駆。」

 

「お、どうした。」

 

席に着くや否や矢澤が話しかけてきた。朝の続きだろうか。

 

「…友達多いわね。」

 

やっぱりである。

 

「まあな。お前は少なそうだけど。」

 

「ちょっと、意外と気にしてんのよ?」

 

「悪いって。」

 

こんなことすらちょっと笑い話みたいになるのは、付き合いの長さからだろうか。最も、実際は昨日が初対面のはずなんだが。

 

「なんか、初めて会った気がしないわね。」

 

「そうか?」

 

「あんた、アタシの扱い方心得てるみたいだし。」

 

「そうでもねぇよ。」

 

「…まぁいいわ。」

 

そう言うと矢澤は頬杖をついて前を見る。話す気は無さそうだ。

前に会ったことある…ねぇ。お前は会ったことないはずなんだけどなぁ。

そうしていると教師が入ってきた。朝のSHRだろう。

 

「よーしみんないるなー、始めるぞ。日直ー!」

 

「起立!」

 

ガタガタと音を立てる。この音ひとつとっても懐かしい。黒板の色も、窓の外の景色も。始まるのだ。ついに。

 

「礼!」

 

「…お願いします。」

 

控えめに、決意を込めて言う。教師に向けた以外の意味が確かにあった。俺の未来に。こいつの、未来に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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しっかり教師にちゃんとお願いしますというべきだった気がする。

数学ってこんなに難しかったか?いやいや、中学レベルが本当にわからないわけじゃない。1度やってるしこの程度余裕っちゃ余裕だ。

面倒くさいのだ。こんなにも、脳を使うのが面倒くさいものだったか。

国語や社会は読んで知識を仕入れる程度。国語はまぁ読解力なり作者の心情とかあるけど、感覚的に処理できるから問題ない。理科はまぁ実験とか楽しいし、多少の計算は問題ない。

でも数学だけは許されない。なんだこれは。計算に次ぐ計算。脳の処理が限界突破している。

ふと隣を見ると、険しい顔で教科書に顔を向ける矢澤の姿があった。一応は勉強を試みているようだ。

しかし1分たたないうちにペンを置き、頬杖をついて黒板を見始める。きっと、板書なんて読んでいないのだろう。目に映る色を脳に取り込むだけの作業だ。

 

「おい、矢澤。」

 

見かねて話しかける。わからないわけじゃないし、教えてやろうと思ったのだ。

 

「…なに駆。アタシはもうペンは持たないわよ。」

 

「そう易々と勉強を放棄するな。教えられるところは教えるから。」

 

「いやよ!勉強する暇があるならアイドルについてすることね。」

 

「えっなにその上から目線。」

 

「時坂ー!ちゃんと集中しろよ?」

 

うげ、怒られた。周りもちょっと笑っとるしな。くっそ、中学レベルの数学なんて解けてるのに…授業態度がそんなに大事かよ。いや大事ですわすんません。

しぶしぶ教科書を読んでいると、隣から紙切れが届いた。ペン持たないって言ってたろうが。

 

『今日放課後ちょっと残って。』

 

一文。しかし俺にはそれですべてを汲み取ってしまう。そりゃそうだ。経験済みだからな。

今日の学校は、長くなりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






お読みいただきありがとうございます。前回が結構間を開けてしまったので、今回は短めにしました。

・前書きにも記載の通り、劇場版ラブライブを見まして、ラブライブシリーズを制覇致しました。遅いとの声が飛んできそうですが申し訳ない。忙しかったんや。

・次は7月中に投稿したいですが、8月にずれ込むかも知れません。ちょっとリアルが立て込んでいます。頑張ります。

ここから少しずつ中学生矢澤にこを動かしていきたいと思います。よろしくお願いします。
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