デジモンアドベンチャーMAGI   作:龍気

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今回はこの作品初の戦闘です。

そして太一の中で眠っていた力が覚醒。


第6話『襲い掛かる牙!!目覚める太古の力!!』

無数にある星の僅かな光と、月の光で照らされた暗い森の中、微かに虫の羽音と、鳥の鳴く声のみが聞こえる中、

太一とコロモン、そして刹那の姿があった。

 

そこからかなり離れた場所から、スコープで彼等の周りを監視する真名がいた。

 

学園長の依頼で、麻帆良の到る所で時折現れる魔物や侵入者を討伐する、「狩り」と称するパトロールに参加する事となった太一とコロモン。

 

彼等と共に狩りをするメンバーとして、クラスメートで狩りのベテランである刹那と真名が選ばれ、共に狩りをする事となったのだ。

 

だが太一と刹那の間には、ギスギスとした思い空気が漂っていたのだった。

 

 

 

―――『襲い掛かる牙!!目覚める太古の力!!』―――

 

 

 

狩りを開始してから30分が経過し、見回るコースを何事も無く進み、時折真名への定時連絡を済ませながら歩を進めていた。

 

だが狩りを開始してから今まで、太一と刹那との間に会話と言える様な会話は1つもなかった。

 

刹那が前を行き、太一がコロモンを頭に乗せたまま刹那の後を着いて行く形で進んでおり、太一はコロモンとボソボソと何やら話をしてはいたが、

刹那はそんな様子に聞く耳も立てることも無く、先へと歩を進めるのだった。

 

 

(・・・つらい・・・・・会話が無いのはしかたないにしろ、この重くギスギスとした空気はつらい・・・。)

 

 

デジタルワールドを旅していた時は、無駄に体力を消費しない為と会話をしないで歩いていた事はあったが、

それでもこんな空気にはならなかった、むしろさせない様に太一がしていたのだ。

 

しかし1度蔓延してしまった場の空気とは中々晴らすのは難しく、この空気を作り出す原因を作ってしまった太一は、

内心少し後悔もしていたが、如何しようか考えていた。

 

 

「太一・・・失敗したね・・・・。」

 

「言うな・・・・俺だって思ってるよ、だから如何しようか考えてるんだろ。」

 

「火に油を注ぐことになると思うけど・・・・。」

 

「・・・やっぱり?」

 

「うん・・・。」

 

 

長い付き合いだからわかるのか、コロモンは太一に、女の子である刹那の機嫌を良くするのは無理、むしろ余計に悪くしかねないと感じたのだった。

 

 

「はぁ・・・太一って落ち込んでいる人を元気付けるのは上手いけど、怒らせるのも上手いよね・・・空とか。」

 

「いっ・・・今空は関係ないだろ?」

 

「でも本当でしょ?」

 

「うっ・・・・・確かによく怒らせちまっていたけど・・・・。」

 

「仲直りするのも時間が掛かるし、なんとかしようとして余計機嫌を悪くしちゃうし。」

 

「・・・・はぁ・・・分かったよ・・これ以上刹那の機嫌を悪くしない様に余計な事は言わない様にす・・・・。」

 

「八神さん。」

 

「んっ!?・・・・何?」

 

 

先程まで沈黙を保っていた刹那がいきなり太一達の方を振り向き話しかけた。

 

いきなりの事に太一は驚きながらも、平静を装い刹那の話を聞くのだった。

 

 

「・・・何を話していたのかは分かりませんが、これから時間が経つにつれて奴等が現れる可能性が上がっていくので、

気を引き締めてください。」

 

「んっ・・あぁ・・・・すまない。」

 

「それと・・・確かコロモンさんは、そのままでは殆ど戦えないと言っていましたね。」

 

「あぁ・・・良くて酸性の泡を飛ばして威嚇するぐらいだ。」

 

「でしたら今の内に、戦える形態にしておいてください・・・何時襲ってくるのか分からないので、足手まといにだけはならないでください。」

 

「あぁ・・・忠告ありがとう。」

 

 

太一の返答を聞いて刹那は、呆れているのか、冷たく冷めた目で太一を見て口を開く。

 

 

「皮肉も分からないのですか?・・・あなたは・・・。」

 

「さあな・・・でも、先輩の言葉として受け取っておく、俺達はこの仮に関しては素人だからな。」

 

「ちっ・・・そうですか・・・。」

 

 

刹那の皮肉も太一にとっては、「気にする様な事でもない」と感じたのか、刹那は苛立ちを募らせ、小さく舌打ちをし、太一から顔を背け、

再び前を向き歩き出そうとする。

 

だがそんな刹那を知ってか知らずか、太一は刹那に声をかける。

 

 

「なぁ刹那・・・。」

 

「・・・・・・何ですか?」

 

「素人の俺がこんな事言うのもなんだが・・・・真名も聞いてくれるか?」

 

『あぁ構わない。』

 

 

通信機を通して真名に連絡を入れ、すぐ真名から返答が返ってきたのを確認すると太一は口を開いた。

 

 

「先ずは、コロモンはギリギリまでこのままだ、一旦成長期まで進化してしまったら、幼年期に戻るのは難しいからな。」

 

 

太一達のデジモンは1度成長期まで進化してしまったら自分の意志では幼年期まで退化できないのだ。

 

幼年期まで退化するには、今の彼らではかなり難しく、完全体か究極体の時にかなりのエネルギーを消費した後で退化しなければならないのだ。

 

特に前の戦いで、紋章の力無しで完全体に進化できるようにと、デジタルワールドの東のエリアを守護する、

「四聖獣」の一角「チンロンモン」のデジコアから放たれた力の影響により、それも不可能に近いものとなった。

 

ちなみに、太一が麻帆良に来る前に最後に会った時はアグモンだったが、空達がゲンナイに頼んで、なんとかコロモンにまで退化させてもらったらしく、

最低でも、自分の部屋からデジタルワールドに行ける様になるまでは、なるべく進化させたくないのである。

 

 

「お前達の言う秘密保持には、少なからず俺達の事も含まれているし、いずれはデジモンと人間が共に歩んで行けたらって俺達は思っているけど、

それまでは無闇に混乱させたくない、幼年期ならヌイグルミとしてごまかしやすい、だからこのままの方が色々と困らないんだ。」

 

「・・・・・分かりました・・・そう言う事でしたら構いません・・・では判断はあなたに任せます。」

 

『私もそれで構わない。』

 

「ありがと・・・まぁ・・こいつはこいつで頼ってくれよ。」

 

「えへへ・・・。」

 

「用件はそれだけですか?」

 

「いや、もう1つある。」

 

 

太一は先程と違い真剣な顔で、刹那と向き合い話し出す。

 

 

「戦いになったら、俺の指示で動いてくれ。」

 

「なっ!?」

 

『ん?』

 

「太一?」

 

 

太一の言葉に、刹那と真名は思った、「何を言い出すんだ。」と、太一は確かに戦闘経験がある、しかし今回の様な魔物との戦闘に関しては素人である、

そんな人間の指示で戦う事は、彼女達にしては自殺行為に他ならない事であった。

 

太一の発言にしばし言葉を失い、暫くの間沈黙が太一達を包んだ、そんな中刹那が口を開いた。

 

 

「・・・あっ・・あなたは何を・・・。」

 

『何か考えがあって言っているのか太一?』

 

「龍宮!?」

 

 

しかし刹那が全てを言い終える前に真名が割って入って来た。

 

 

「あぁ・・・確かに俺は今回の事に関しては素人だ、そして実際に戦うのはこいつだ。」

 

 

頭の上にいるコロモンの頭を軽くポンポンと叩く。

 

 

「今回戦う事になった場合、正直言ってベテランのお前達に合わせて動くのや、指示に従って動くのは難しい、

だから俺が指示をして動いた方が、リスクが少ないと思うんだ。」

 

 

太一の考えはある意味正しかった、今回の事に関してベテランである自分達の動きや指示に合わせて戦うには、

今回初めて狩に参加した太一達が動くのは確かに難しい事であった。

 

それには理解したものの、刹那は納得できないでいた。

 

 

(確かに八神さんの言う事も一理ある・・・しかしそれは私達にも言える事だ、昨日今日会ったばかりの人間の指示など、

不安であると同じに信頼できるものではない。)

 

『理解した、ならば我々は太一・・・君の指示で動こう。』

 

「たっ・・・龍宮!?」

 

『刹那・・・お前の言いたい事もわかるが・・・彼は出来ない事は言い出さない人物だ、それだけは言える・・・だろ?太一。』

 

「まあな・・・俺は元々こいつを進化させるだけじゃなく、指示を出すのが役目だからな、それが1人2人増えた所で問題は無いよ、

それにもし俺の指示が的確でないと思ったら無視しても構わない・・・。」

 

「・・・分かりました・・・・・あなたの指示に従いましょう・・・しかし!!」

 

「ん?」

 

「あまりにも見当はずれの指示を出すようでしたら、今後は私か龍宮に従っていただきます。」

 

「あぁ分かった。」

 

 

取り決めを終え、太一達は移動を再開した。

 

移動の間太一は狩のルートを示した地図を見ながら歩き、コロモンは太一の頭の上で、目をつぶり、頭の触覚を揺らしていた。

 

その光景は何処かシュールで、それを見た刹那と、スコープで見ていた真名は、微妙に笑いを堪えていた。

 

 

ピクッ

「ん!?」

 

 

移動を再開し十数分経過した時、コロモンが何か人でも動物でもデジモンでもない気配を感じ取った。

 

 

「太一!!」

 

「ん・・・俺も今感じた。」

 

「えっ!?」

 

「真名!!」

 

『今探している・・・いたぞ!!あれは小物だな、そこから南に1K程の位置から・・・そちらに向かって移動している、

後3分程で接触するぞ・・・数は・・30はいるな・・・。』

 

「分かった・・・他にはいないか?」

 

『今のところ奴等だけだ・・・如何する?』

 

「何時でも攻撃出来る様に準備していてくれ。」

 

『了解だ。』

 

「さてと・・・どうするかなぁ・・・。」

 

「やりますね。」

 

「ん・・・何が?」

 

「この地は他の地よりも魔力が充満している所為か、魔力での探るは難しく、気配も消しているので、初めてこの地で狩りをする者は大抵が、

接近を許してしまうのですが・・・。」

 

 

刹那は太一とコロモンの、気配を察知する能力の高さは知っていたが、改めてその探知能力の高さに素直に評価し、太一の隣に立つ。

 

 

「でっ・・・如何します?約束どおりにあなたの指示に従います。」

 

「相手がどんな動きをするか分からないからな・・・こっちに近づいているのなら動かずに来るのを待とう。」

 

「分かりました・・・。」

 

「魔物に関してはお前の方が詳しいんだ・・・どんな魔物か確認が出来たら特長とかを教えてくれないか?」

 

「はい・・・。」

 

「太一・・・来るよ!!」

 

ババババババシュ

「グルルルル・・・・・。」

 

「キ・・キキキキィ・・・・・。」

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・・・。」

 

 

太一達の目の前の叢や木々の間から黒い影が次々と現れ、月明かりに照らされ何とか相手の姿が確認できた。

 

その姿はまさに異形で、地球と言う星の自然上では誕生するにはありえない生物、この世界とは違う世界に生息する者達、

魔物の姿があった。

 

スマートではあるが筋肉質な1mも無く小柄だが、1メートルを越す者もすこし混ざっており、黒い体毛で全身を覆われた灰色の身体に、

三股に分かれた長さの違う尻尾、顔の上半分を占める1つだけの巨大な真紅の瞳、下顎から上に伸びる長く太い犬歯、

地面に着くほど長い腕が特徴で、全体を見渡せば猿に近い見た目で、西洋風とも東洋風とも見える魔物が30匹以上現れた。

 

 

「刹那・・・こいつは?」

 

「「モース」と呼ばれる低級な魔物ですが・・・見た目から分かる様に、猿の様に身軽で素早い動きで移動して、

あの腕は倍に伸ばす事もできるので気を付けて下さい。

そして背後に回られてもあの長さの違う3本の尻尾を巧みに使い、相手を惑わしながら攻撃してきます。

知能は低く主に人でも何でも動く物に襲い掛かってきます。」

 

「じゃあこの場合、今は完全に俺達を狙ってるって事か?」

 

「そうですね・・・主に1度狙った獲物を殺すまで他の獲物には目もくれないので、私達が奴等に殺されない限りは、

麓の町や学園は安全です。」

 

「なるほどな・・・真名、他に魔物は表れてないか?」

 

『確認した・・・今の所奴等のみだ、それに元々魔物は1度現れたらその日に更に現れる事は稀だ、他の魔物が現れる心配はまず無いだろう。』

 

「分かった・・・・それと・・・・・。」

 

『何?ちょっと待て・・・・そこから反対の方角で2k程先だ。』

 

「ありがと。」

 

 

太一は真名のみに聞こえる様にボソボソと、何やら調べる様に指示し、真名からの返答に刹那は疑問を感じた。

 

 

「・・・・よし!!真名は、奴等の攻撃が俺達に届くと判断したら狙撃してくれ。」

 

『了解した。』

 

「刹那は、俺が指示するまで攻撃しない、良いな?」

 

「えっ!?でも・・・分かりました・・・。」

 

 

太一の指示に刹那は、一瞬戸惑いと不満げな声を上げるも、太一の指示で動く約束なので渋々と従った。

 

 

「よし・・・じゃあ・・・・・。」

 

ドクン・・・ドクン・・・

(如何する気だ?八神太一・・・・。)

 

ドクン・・・ドクン・・・

(君の力・・・見せてもらうぞ。)

 

「「「ぐるるるるるるるる・・・・・。」」」

 

 

太一の雰囲気が先と違い一変したのを刹那だけでなく、モース達も感じた。

 

刹那と真名は、太一が何を考え、如何動くかを気にしていた、自然と鼓動が上がり早くなっていた。

 

モース達も戦いになるのを感じたのか、目の前の獲物である太一達に対し臨戦態勢を取り始めた。

 

そして・・・。

 

 

「よし!!コロモン!!刹那!!」

 

「うん!!」

 

「んっ!!」

 

ガチャ

(動くか!?)

 

 

その場に緊張が走り戦いが始まると思ったその時・・・。

 

 

クル

「・・・・・・。」

 

「えっ?」

 

『はっ?』

 

「「「???」」」

 

 

太一は突如反対方向に向きを変え。

 

 

「逃げるぞ!!」

すたこらたった・・・

 

 

逃げ出した。

 

 

ズルッ

バキューーーーン

「『はああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』」

 

「「「・・・・・・・・・・。」」」

 

 

太一の行動に先程の緊張は一気に解け、刹那と真名は思わずズッコケ、その弾みで真名は何も無い天に向かって発砲してしまう。

 

モース達も巨大な目を点にし、中には鼻水をたらしながら呆然としているのもいた。

 

 

「ほら何こけてるんだ?急ぐぞ!!」

 

「えっ?あっ・・・ちょっ・・・・待ってください!!」

 

 

太一の声にハッとし、戸惑いながらも焦って太一の後を追う刹那。

 

 

「「「・・・・・・・・・・・。」」」

 

ポクポクポクポクポクポクポクポク・・・・チーーン

「「「ハッ!!」」」

 

「グルアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「キキイイイイイィィィィ!!」

 

「グルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!」

 

 

さっきまで呆けていたモース達も太一達が逃げた事に気付き、怒ったのか各々様々な怒りを込めた叫び声を上げて太一達を追い始める。

 

 

「ぐっ・・・うぅ・・い・・今のは・・・さすがの私もズッコケてしまった・・・思わず発砲してしまったぞ!!」

ガシャ

 

 

遠い地点から援護する真名も気を取り直し、無駄に発砲してしまった一発分をライフルに装填した。

 

 

「弾だってそんなに安くは無いんだぞ、無駄にした一発分、この狩りが終わった後で請求してやる。」

 

 

一方太一達は。

 

 

「や・・・八神さん戦わないんですか?」

 

「今は逃げる事だけを考えろ・・・この先に木々が生えてない広い場所がある、そこまで一気に走るぞ。」

 

「・・・・さっき龍宮に確認させていたのはそれですか?」

 

「そっ。」

 

 

先程の通信で太一は、「近くに木生えてない広い場所は無いか?」と真名に確認して貰っていたのだ。

 

そして太一達は今そこへ向かっている。

 

 

「しかしモース程度でしたら、あの数なら少し手を焼く程度ですが問題はありません!!」

 

「それはお前と真名のみの時じゃないのか?」

 

「えっ?」

 

「今日は素人が1人と1匹参加してるんだ、そして俺は指示を出す側、なら其れなりのやり方がある。」

 

「しかし・・・。」

 

「太一!!刹那!!追いついてきたよ!!」

 

「「んっ!!」」

 

 

後ろを見ると、モース達が徐々にではあるが確実に太一達との距離を縮めて来て、その姿が確認できるほどまでに迫ってきたのだった。

 

モース達は、辺りにある木から木へと飛びながら移動する者、両腕を前にやり反動をつけ身体を前へやるなどの移動をしながら追ってくる姿は、

まさに猿であった。

 

 

「よし・・・じゃあ刹那。」

 

「はい?」

 

「少しの間こいつを頼む。」

 

「へっ?」

 

ぴょーーん

ポス

「へっ?」

 

「しつれいしま~~す。」

 

「えええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 

太一は、後ろを走っている刹那に向って、ヘディングの動きでコロモンを飛ばした。

 

飛ばされたコロモンは刹那の頭の上に見事に乗った。

 

刹那はいきなりの事に多少混乱気味だが、そこはプロの刹那、すぐに気を取り直し太一に問いかける。

 

 

「あの・・・八神さん・・・。」

 

「後ろの事は真名とコロモンに任せて、俺達は逃げる事にだけ集中。」

 

「しかし・・・・。」

 

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「はっ!!」

 

 

1匹のモースが太一達のすぐ背後まで迫り、襲いかかろうとしていたが。

 

 

「ぷぅ!!」

ポワワ~ン

 

パーーン

「ぐうぉあ!?」

 

 

コロモンは口からシャボン玉の様なアワを吐き出し飛ばし、そのアワは見事モースのたった1つの目に命中し、

そのモースは目を押さえながら、バランスを崩し地面に転がった。

 

コロモンが口から出したアワ、コロモンの唯一の技「酸のアワ」である。

 

威力は無く威嚇ぐらいにしか使えないが、狙い所によってはそこそこ使える技である。

 

 

「ナイスコロモン!!」

 

「後ろは任せて太一、刹那。」

 

『中々の腕・・・いや口か?だが頭は小さいから、頭のみを狙うのはお勧めできないな!!』

バキューーーーン

 

「ぎゅぐおぉぉ!!」

バシューーーーン

 

『がっ・・・急所には違いない。」

 

真名が撃った弾丸は、別の方向からもう一匹のモースに命中し、その身体を貫いた。

 

そして貫かれたモースは煙を体から上げ消えていった。

 

 

「・・・・なぁ・・今消えた奴って、元いた世界に戻っただけなんだよな?」

 

「はい・・・退魔師とは言え出来るのは送り返す程度、最も奴等と同じか、全く違う特別な力なら奴等を殺す事は可能だと聞いた事はありますが・・・。」

 

「そうか・・・なら遠慮はいらないな。」

 

「・・・・少し良いですか?」

 

「何だ?」

 

「手短で良いので答えてください。」

 

「何を?」

 

「何故わざわざ移動する必要があるのですか?戦うなら最初の場所でも出来たはずです。」

 

 

刹那は場所を移動する意図を問いただそうとした。

 

戦うならさっきの場所でも十分だったのだが、わざわざ2Kも離れた場所まで移動して戦う必要あるのか疑問に感じ、

刹那は聞かずにはいられなかったのだった。

 

その質問に太一は。

 

 

「あそこじゃ戦い難いと判断したんだよ。」

 

 

率直に答えた。

 

 

「戦うとなればコロモンは進化させないといけない、アグモンやそれ以上の進化形体の主な技の属性は火、

無闇に技を出せば火事になるのは目に見えている、そうなれば俺達の動きも制限されるし危害が及ぶ、だからあの場所では戦わない方が良いと判断したんだ。」

 

「そうでしたか・・・。」

 

「それと、あれだけ木々が生茂っていると、障害物となって真名の援護に支障をきたすかもしれないし、刹那の刀も思うように振れないだろ?」

 

「つまり・・・移動した理由は。」

 

「俺達が戦い易い様にする為。」

 

 

シンプルな理由だった、「戦い難いから、戦い易い場所に移動する。」簡単だが最も合理的な理由だ。

 

だがそれで良いと刹那は思った。

 

彼等は後ろから追って来る者共を狩る為に来たのだ、その為には勝つしかないのだ、依頼の為でもあるが、

少なくとも太一と刹那は違う、守る為に、守り抜くには勝たねばならない、負けられない、ならば自分達が有利になる様にするのは当然、

そう勝つ為に。

 

その後もコロモンと真名の援護により、ようやく林をぬけ目的地であるひらけた場所に出たのであった。

 

 

「よし!!ここならいいだろう・・・刹那、コロモンサンキューな。」

 

 

コロモンは刹那の頭から飛び降り、太一の足元に下りた。

 

 

「真名もご苦労さん。」

 

『君の指示に従ったまでだ、与えられた以上その期待に応えたまでだよ。』

 

「じゃあ次も頼むぜ、刹那待たせたな、もう戦ってもいいぜ。」

 

「はい。」

 

「真名は引き続き援護を、判断は任せる。」

 

「了解。」

 

「コロモンどうだった?」

 

「成長期で十分だと思うよ。」

 

「よし・・・・行くぞ!!」

 

 

太一達が戦闘を開始しようとする直前、彼等を監視する2つの視線があった。

 

 

「ふん・・・多少は考えて動けるようだな、だがそんな物は戦いでは、基本中の基本、初歩の中の初歩だ。」

 

 

エヴァそして茶々丸の2人(1人と1機)だった。

 

 

「在確認したモースの数は23体、八神さん達を囲む様に展開しています。」

 

「ふむ・・・妙だな・・・。」

 

「マスター?」

 

「いや・・・何でもない・・が、茶々丸・・・言おうと思ったが、この私にいけ好かない事を堂々と言い放った奴に、

「さん」付けなんぞ使うな。」

 

「分かりました・・・では、太一はどの様に動くで「ちょっと待て!!」・・・・なんでしょう?」

 

「何故に名前の方で呼び捨てだ?」

 

「はい・・・彼がそう呼ぶ様にクラスの方々に申してらしたので、私も・・・。」

 

「・・・最初の言い方でいいから、今の言い方は二度と使うな、私の従者ともあろうお前が、あんな輩如きを、

フレンドリーに名前を呼んでいるなどと聞きたくも無い。」

 

「分かりました・・・では間を取って太一さんと呼んでもよろしいでしょうか?」

 

「別に間を取れとも、名前の方で呼べとは言ってないが・・・このボケロボは・・・・まぁいいだろう・・・好きにしろ・・・。」

 

 

上空で何やら観客のいない軽い漫才を披露している内に、地上の太一達に動きがあった。

 

 

「さて・・・八神太一よ・・・この私にあれだけの事を言ったのだ、貴様とその使い魔モドキの力見せてもらおうか。

もし・・・その力が・・・・・フフフフフ・・・。」

 

 

エヴァは不敵に笑いながら太一達を見た。

 

 

「マスター、太一さんから未知のエネルギー上昇を確認しました。」

 

「何?」

 

「同時にコロモンさんからも同等のエネルギーを確認、尚も上昇中。」

 

「まさか・・・これが奴の言っていた・・・。」

 

 

視線を地上の太一達へと向け、エヴァは呟くのだった。

 

 

「進化の・・・前兆なのか?」

 

 

そして太一は・・・。

 

 

「進化だコロモン!!」

 

 

腰からデジヴァイスを取り出しコロモンへと掲げる。

 

 

ヴオンオンオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 

 

するとデジヴァイスから、眩いばかりの光が放出され、同時にコロモンの体が輝きだした。

 

 

「コロモン進化・・・・・アグモン!!」

 

 

光がおさまるとコロモンが居た場所には、子供ほどの身長で黄色い二足歩行の恐竜が立っていた。

 

 

『「アグモン(AGUMON)」、世代・成長期、種族・爬虫類型、属性・ワクチン種。

コロモンが進化して2本の足で歩けるようになった成長期の爬虫類型デジモン。

体はまだ成長の途中なので、力は弱いが、勇敢な性格で頼りになる。

成長期デジモンの代表的な存在でもあり、個体差も大きく、亜種もいくつか確認されているデジモンである。

必殺技は、口から火炎の息を吐き出す「ベビーフレイム」と、炎を一気に吐き出す「ベビーバーナー」だ。』

 

 

「これが・・・デジモンの進化・・・・・。」

 

 

刹那は驚愕し。

 

 

「これ程まで変わるとは・・・・恐ろしいがその先を見てみたくなったぞ・・・コロモン・・いや・・・・アグモン。」

 

 

真名は何処か楽しく。

 

 

「コロモンさんが進化した形態アグモン・・・我々の予想を遥かに超える変貌です。」

 

「しかもあの光・・・まさか・・・。」

 

 

エヴァはデジヴァイスから放たれた光に何かを感じたのか、少し震えていた。

 

 

「よしアグモンは、なるべく大きい奴を狙って接近戦で戦ってくれ。」

 

「OK太一。」

 

「刹那も前に出て戦ってくれ。」

 

「分かりました。」

 

「よし行くぞ!!」

 

 

太一の掛け声と共にアグモンは、近くにいた一番大きなモースに向かって駆け出し顔近くまで飛び上がり、牙の間から少し炎を漏らし、そして・・・。

 

 

「ベビーフレイム!!」

 

ボン!!

 

「「「「!!!!!!!?????????」」」」

 

しゅうううううううぅぅぅぅぅ

 

必殺の火炎球「ベビーフレイム」を放った。

 

放ったベビーフレイムは、モースのたった1つの巨眼にヒットし、途端にモースの顔全体が燃え出し、モースはそのまま後ろに倒れ動かなくなった。

 

 

「「まずは一匹!!」」

 

 

太一とアグモンは、同時に同じ言葉を叫び、倒れたモースを見る。

 

するとモースの体は徐々に消えていき、あっという間に消えてしまった。

 

他のモースたちは動けないでいた、目の前の白い饅頭みたいなのがいきなりでかくなり、姿形が変わった。

 

変わったと言っても自分達の小さい仲間と変わらない大きさのトカゲであったから特に危険視はしなかった。

 

しかし、それがいきなり自分達の中で一番の巨体の仲間を口から出した炎によって一撃で倒されてしまった。

 

モース達には大した知識は無い、だからであろうか目の前のトカゲ・・・アグモンの秘めた力に本能が反応し動けないでいた。

 

今のモース達にはアグモンが・・・いやアグモンの纏ったオーラが自分達では敵わないほど巨大で強力な龍に見えていた。

 

 

「今夜は何時になく大人しいな・・・。」

 

「ギ・・・!?」

 

ザシュ

ブシュ

ガシュ

ザシャ

 

「「「「・・・・・・・・。」」」」

 

チン

 

ドササササ・・・

 

 

アグモンに気をとられて動けないでいたモース達の背後に、刹那が回り込み、愛用の野太刀「夕凪」を抜き、目の前の数匹のモース達を、

数匹素早く切り捨てていき、再び鞘に夕凪を収めると6匹のモースが、縦や斜めに割れそのまま消えていった。

 

 

「・・・今夜はいつもより楽に終われそうだ・・・・。」

 

「・・・・・すげ・・・。」

 

「かっこいい・・・。」

 

 

太一とアグモンは初めて見る刹那の剣技に一瞬見とれた。

 

 

「「「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!」」」

 

 

「動かなければやられる。」と悟ったのか、先程まで静止していた残りのモース達が雄叫びを上げアグモンと刹那に襲い掛かろうとした。

 

 

「来たぞアグモン!!刹那!!」

 

「よし僕が相手だ!!」

 

 

何匹かのモースは腕を伸ばしアグモンと刹那を捕まえようとするも、刹那はその全てを紙一重でかわし、かわすさいに伸びきったモ-スの腕を全て切り落とした。

 

アグモンも伸ばされた腕を難無くかわすも、後方より太一が。

 

 

「伸びた腕を掴め!!」

 

 

指示を出し、アグモンは即座にその腕を掴み、腕の収縮する力を利用し一気に接近した。

 

 

「ギギ!!」

 

「マッハジャブ!!」

 

ボグ!!

ガシュ!!

ドガ!!

 

 

素早く繰り出すパンチをモロに喰らい、吹っ飛ばされ後ろの木に激突した3匹のモースは消えた。

 

 

「小さいのはあれ位で十分か・・・。」

 

「はっ!!八神さん!!」

 

「グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「ん?」

 

 

太一の背後で巨大なモースが腕を大きく振り上げ太一を潰そうとしていた。

 

いち早く気付いた刹那が駆け寄ろうとしたが、もう間に合わない。

 

そう思った瞬間。

 

 

バシュウウウウウウウウン!!

 

「あっ!?」

 

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?」

 

「ナイス真名。」

 

 

太一達が居る所から遥か後方に居る真名が発砲した弾丸が太一の背後に居たモースの頭を撃ち抜いた。

 

 

「私は只君の指示に従い援護したまでだ・・・何より餌が良いらしくのこのこと無防備に群がってくる。」

 

『俺は餌かよ。』

 

「違うのかい?」

 

『いや・・・正解。』

 

 

真名は太一の狙いを理解していた。

 

指示を出す為太一は、常にアグモンと刹那が目に入る位置に居なくてはならない、その為に太一は無防備になる、

それはモースにとって格好の良い標的であった。

 

しかし太一はそれを逆に利用しようとし、自らを囮とし、真名に「援護してくれ。」と指示を出したのだった。

 

そして太一の狙い通りのこのこと太一を襲おうとしたモースは、真名の狙撃によって、送り返されたのだった。

 

 

『それにしても無茶な事をする・・・私が気付かなかった時や打ちぞんじた時は如何するつもりだったんだ?』

 

「確かにな・・・でも・・・。」

 

『「でも」何だ?』

 

「不思議と不安や無茶だ何て感じなかったよ。」

 

『・・・・・そうか・・・・・。』

 

「じゃあ引き続き頼む。」

 

『了解だ。』

 

「うん・・・刹那!!」

 

「あっ!?・・・はい!!」

 

「アグモンと協力して小型のを主に倒してくれ。」

 

「分かりました。」

 

「アグモンはでかいのを頼む。」

 

「分かったよ太一!!」

 

 

その後もアグモンと刹那は協力し合い太一の指示通りに動き順調にモース達を撃退していく。

 

 

「グルオアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

ブン!!

ブン!!

ブン!!

ブン!!

 

「そんな攻撃当るもんか!!」

 

 

大型のモースの腕から繰り出される攻撃を、素早く避けながら近づき。

 

 

「アッパーカット!!」

 

バキイイイイイイイイイイイイイ!!

 

「グガアアアアアアア・・・・。」

 

ドシーーーーーーン!!

 

 

下から突き上げるパンチ「アッパーカット」を喰らい、堪らず倒れる大型モース。

 

刹那はアグモンが戦っている後で小型のモースと戦っていた。

 

 

「刹那前に飛べ!!」

 

「えっ!?」

 

「アグモン!!」

 

「スピットファイア!!」

 

ボン!!

 

 

アッパーカットを放ち、空中に上がった状態でいたアグモンが、体を反転させ刹那に向かい、ベビーフレイムより小さい炎「スピットファイア」を放った。

 

 

「なっ!?くっ・・・。」

 

バシュ

 

ドカーーーーーーーーーン!!

 

 

刹那はスピットファイアを前に飛んでかわしアグモンに迫る。

 

 

「いったい何を・・・?」

 

 

刹那は文句を言おうとしたが、自分がさっきまで居た所を見ると、地面を掘って顔を出しているモースが居た。

 

そしてそのモースはアグモンのスピットファイアにやられ黒焦げだった。

 

 

(さっきのはあいつを狙って・・・。)

 

「刹那そのまま行け!!」

 

「え!?」

 

 

太一の声に再び前を向くと、そこには空中で身動きの取れないアグモンを狙おうと2匹のモースが迫っていた。

 

 

「くっ・・・。」

 

「アグモン!!」

 

「刹那来て!!」

 

「えっ?」

 

 

アグモンは腕をクロスし、刹那と目を合わせた。

 

それを見て刹那は、アグモンを土台にし、2匹のモースに向かって飛んだ。

 

 

ザシュザシュ

 

「ガアアアアアアアアアアア!!」

 

「キィイイイイイイイイイイイイイイ!!」

 

 

すれ違いざまに二匹のモースを切り捨て、そのまま消えて行くモース。

 

刹那はそのまま着地し、太一とアグモンを見た。

 

 

(掛け声だけで何を伝えようか理解でき合えるのか?それほど彼等は心が・・・あの時の・・・私達の・・・。)

 

「刹那後ろだ!!」

 

「はっ!?」

 

「キキイイイイイイイイイイイ!!」

 

 

刹那のすぐ背後にモースが迫っていた。

 

刹那はすぐに動けず、モースの巨腕が刹那に振り落とされようとしていた。

 

 

「くっ!!」

 

「ベビーフレイム!!」

 

バシューーーーーーーーーーーン!!

 

ドカーーーーーーーーーーーーン!!

 

「あっ・・・・。」

 

「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

アグモンのベビーフレイムと、真名の弾丸を喰らい、モースを撃破した。

 

モースが消えるのを確認するとアグモンは刹那に駆け寄った。

 

 

「刹那大丈夫?」

 

「えっ・・・えぇ大丈夫です・・・すみません。」

 

『お前らしくも無いな、どこか痛めたのか?』

 

「いや大丈夫だ、すまない龍宮・・・。」

 

『・・・・・・ならいいが・・・・・・。』

 

 

そこに、太一がアグモンと刹那の許に近づいてきた。

 

 

「2人とも大丈夫か?」

 

「うん。」

 

「私は大丈夫です。」

 

「よしあと少しだ・・・一気に行くぞ。」

 

「よし!!」

 

『援護は任せろ。』

 

「・・・行きます!!」

 

 

それから数分全てのモースを撃破した太一達は一ヶ所に集まり、真名に回りに打ち漏らしや他に魔物が居ないか確認を取らせていた。

 

 

「ふぅ・・・お腹すいた・・・。」

 

「ほらよ・・・一応食っとけ。」

 

 

太一は上着のポケットから某有名栄養調整食品を取り出しアグモンに渡した。

 

その時の太一は、もう戦いは終わったはずなのに、まだ戦闘中かの様に何処か気を張り詰めていた。

 

 

「・・・・・・如何かしたんですか?」

 

「いや・・・少し気になってな・・・。」

 

「・・・・何がですか?」

 

「さっきの戦い・・・戦いが始まって少しして・・・いや、この場所に着いて戦いが始まる前から違和感を感じてな・・・。」

 

「えっ?」

 

「さっきの戦い・・・あいつ等知能が低いにしては、妙に纏ってて、そして何処か連携が取れていた。」

 

 

先の戦い、モース達はむやみやたらに襲い掛かってくるだけでなく、太一達を取り囲む様に展開したり、穴を掘って隙を突く、

はたまた大型の背中に隠れ大型に気を取られている隙に襲い掛かろうとするなど、これは真名の援護射撃で切り抜けたが、

明らかに連携や頭を使っての戦いを見せていたのだった。

 

そしてこの事に気付いた人物が太一達より離れた上空に居た。

 

 

「奴等は本来群れで行動する事はあっても、今の戦いの様に連携する事は無い、只己の力を使い猪の様に何も考えずに暴れるのみ、

今回は私から見ても異常だ・・・あの男も気付いていたか・・・・・・。」

 

 

エヴァも太一と同じく、モース達の纏っていた行動に疑問を感じ警戒をしていた。

 

 

「マスター・・・データベースと接続し、過去の記録と生態に関してのデータを検索した結果、今回の様な記録や事例は存在しませんでした。」

 

「当然と言えば当然だが・・・・となると、考えられるのは・・・・・。」

 

ピピピ・・・

 

「マスター!!太一さん達がいる付近から、強大な魔力の反応が!!」

 

「何だと!?」

 

 

強い魔力反応をセンサーで感じ取った茶々丸はエヴァに伝える。

 

少し遡り地上の太一達。

 

 

「確かに・・・私も何度かモースの討伐に当った事はありましたが、あんな動きをしたのは初めてです。」

 

『私もだ。』

 

「・・・考えられるのは二つ・・・あいつ等に知識を与えられる何かがあったか、もしくは・・・・・。」

 

「・・・・何ですか?」

 

「此方と同じく、あいつ等を指示し操った何者かがいるかだ・・・。」

 

『その通り・・・。』

 

「「「!?」」」

 

 

何処からとも無く・・・いや太一達が居る周囲の木々や地面ありとあらゆる方向から不気味な声が聞こえてきた。

 

しかし、森はすぐに静寂に包まれ、聞こえるのは己の呼吸音と心臓の鼓動のみとなった。

 

 

「何処だ!?」

 

「太一・・・。」

 

「あぁ・・・・モースでもない・・・それ以上の強い力を感じる・・・。」

 

「これは・・・まさか・・・・・。」

 

『ど・・・した・・・せつ・・・・た・・ち・・・・アグ・・・・・何が・・・・・。』

 

「真名?・・・・真名!?」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』

 

 

無線機から真名の応答があったが、ノイズが酷く聞き取れず、ついには応答不能となった。

 

太一達は辺りを警戒した。

 

しかし、魔物どころか生物の気配も感じられなかった。

 

だが、力は感じるのだ、禍々しく何処か冷たい悪意に満ちた力を、辺り一面に感じるのだ、まるでその力の持ち主の腹の中にいるかの様に。

 

その所為か、刹那も何処に何がいるか、はっきりとした気配も感じられないでいた。

 

 

(力は感じるが気配は感じない・・・それはこの場にいないからか・・・・しかし今いるこの場に何かをしているのは確かだ・・・。)

 

「何処だ・・・何処に・・・・。」

 

ズズ・・・ズズズ・・・・・・

 

「!?」

 

 

微かな殺気を感じ、太一はその殺気を感じる方を見た。

 

そこには、月明かりに映し出された刹那の影から伸びる、先端が鋭く尖った触角の様な物が刹那を狙っていた。

 

 

「刹那!!」

 

「はっ!?」

 

 

太一の声に反応し振り向く刹那だが、すでに触覚は刹那に向かって、その鋭く尖った先端で、刹那を貫こうとしていた。

 

 

「くっ(動けない!?)。」

 

 

刹那の体には何も無かった、しかし彼女の影の手足にあたる箇所には縄に結ばれる様に何かが巻き付いていた。

 

その所為か、刹那の体は自分の力で体を動かす事は出来なかった。

 

 

(やられる・・・此処で・・・・私は・・・また・・・・。)

 

 

刹那は迫り来る触角を前に死を感じ、そして目を閉じた。

 

 

ドン!!

 

ザシュ!!

 

「えっ!?」

 

 

何かに押され自分の体が動いたのを感じた、そして何かを貫いた様な音が聞こえたが、自分ではない、

そして刹那はゆっくりと目を開けると、その視線の先には・・・。

 

 

ポタッ・・・ポタタ・・・・・

 

「ぐっうぅ・・・・。」

 

「太一いいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

「・・・・や・・・八神さん!!」

 

 

その視線の先には、左脇腹を刺し抜かれ血を流し苦しんでいる太一が居た。

 

刹那が触手に貫かれそうになる一瞬、太一が刹那を押し出し、刹那は触手の攻撃を免れたが、しかし太一は回避が間に合わずに、

触手に左脇腹を面向かれてしまったのだった。

 

 

ズブリ

 

ゴプッ

 

「かはあ・・・・・・。」

 

びしゃああぁぁ

 

バタ・・・・・。

 

 

嫌な音をたてて触手は太一の脇腹から抜けた。

 

そして抜けた痕から血が噴出し、太一自身も口から血を吐き出し、力無く倒れた。

 

そして太一の元に駆け寄るアグモンと刹那。

 

そして、その様子を見ていた真名は・・・。

 

 

「太一!!くそ!!一体何が起きたんだ・・・何!?」

 

 

太一達がいた地点に突如として、禍々しい力と邪気を帯びた壁の様な物が、覆う様にして現われ、ドーム状になって太一達を包み込んだ。

 

 

「これは・・・私だけではどうにもならんかもしれん・・・・・他の魔法先生達に援護を求めなければ・・・・。」

 

 

そう言い、真名は携帯で学園長に連絡をした。

 

 

「・・・・・応援が着くまで耐えてくれよ刹那、アグモン・・・・そして生きていてくれ太一・・・・。」

 

 

上空のエヴァ達。

 

 

「これは・・・上位悪魔クラスの結界だ・・・しかもあの小童は重症・・・・かなりやばいな・・・・。」

 

「マスター如何しますか?」

 

「ふん・・・・本来なら恩を売り私に屈服させて二度とあの様な戯言を言えなくして、下僕とするところだが・・・。」

 

 

エヴァはふと夜空に浮かぶ月を見た。

 

今宵は綺麗な三日月が、静まった大地を柔らかく照らしていた。

 

 

「今の私では満月の夜でなければあの壁を破壊するのは難しい・・・・まっ・・タカミチ辺りが救援に来るだろうから大丈夫だとは思うが、

それまでの間、無様に甚振られるあの男の様子が見られないのが少し残念だがな・・・・。」

 

 

エヴァは邪悪な笑みを浮かべながら、茶々丸は何処か複雑そうに太一達がいた地点を見ていた。

 

 

「これは・・・・結界?」

 

「太一・・・太一・・・ねぇ刹那・・・どうなってるの?」

 

 

結界の中では、倒れた太一を守る形で刹那とアグモンが今起きている事を分析していた。

 

 

「今分かっている事は、上位クラスの魔物がこの結界を張ってる事と、そいつが現れようとしている事です・・・。」

 

『いや・・・もうすでに来ていますよ・・・あなた達の前に。』

 

「「!?」」

 

 

先程の声がまた聞こえた。

 

しかし、今度ははっきりと何処から聞こえるか分かった。

 

 

「わ・・・私の影から・・・・。」

 

 

その声は、刹那の影から聞こえてきたのだった。

 

刹那の影は、光もないのにより一層黒く伸びて行き、結界の丁度中心地辺りまで伸びると、影は刹那の足元から離れた。

 

影が離れると、刹那の影は元に戻ったが、離れて行った影は、結界の中心地で円形に広がり、直径3m位まで広がると、

影に不気味で見た事の無い文字で描かれた魔方陣らしき物が浮かび上がり、影の中心部が盛り上がって来た。

 

影はある程度盛り上がると、膜のような物が翼を広げる様に開いた。

 

その中からは、2m以上はある長身に、胸部を除き細長い手足に鎧を纏った様に見える体、膜のようだった物はそのまま巨大な漆黒の翼となり、

長く先端が鋭く尖った尻尾、胸はまるで目蓋のような物で何かを閉じている様だ、そして頭部には巨大で湾曲して胸にまで届く角のみで、

顔の部分には口も鼻も目もなく、まるで鏡の仮面を被っているかのように、滑らかな表面をした頭を持つ悪魔が、腕を胸辺りでクロスさせ、

地面より数十cm程離れ浮いていていた。

 

 

「あれが・・・悪魔・・・。」

 

「ふむ・・・・さすがに付け焼刃程度に与えた知識だけではこの程度か・・・・。」

 

「では貴様があのモース達を操っていた張本人か?」

 

「いかにも東洋の剣士よ・・・そして・・・・。」

 

 

その滑らかな頭部に、刹那とアグモン、そして太一を映し喋りだした。

 

 

「我等魔に属せぬ者・・・そして・・・その主よ・・・。」

 

「お前が太一を!!ベビーフレイム!!」

 

 

アグモンは悪魔に向けてベビーフレイムを放った。

 

しかし・・・。

 

 

「フン!!」

 

ドカーーーーーーーン!!

 

「何!?」

 

 

悪魔の影が突如盛り上がりベビーフレイムは影の壁に当たり、悪魔にとどく事はなかった。

 

 

「我が名は「シャグル」!!上位悪魔の中でも名を轟かす我に、そのような炎、効きはせんわ!!」

 

 

悪魔シャグルは、影の形を無数の槍に変えアグモン達に向かって放った。

 

 

「こいつは影を操るのか!?」

 

「まずい・・・太一・・・・・・。」

 

 

アグモン達の後ろには、倒れたままの太一がいて避ける事が出来なかった。

 

影の槍はすぐ目の前まで迫ってきて。

 

 

ドカーーーーーーーーーーーーーーーン!!

 

 

そして無数の影の槍は全てアグモン達のいた地点に命中し砂煙が巻き上がり、もはやアグモン達の生存は絶望か・・・しかし。

 

 

「・・・・・ほう・・その傷で抗うとは・・・・面白い・・・。」

 

 

アグモン達に命中したかに思われたが、砂煙が晴れると・・・。

 

 

「はぁ・・はぁ・・・。」

 

「ん?・・たっ・・・太一!?」

 

「八神さん!?」

 

 

砂塵の晴れたそこには、血を流しながらもアグモンと刹那を抱き抱えている太一の姿があった。

 

そのすぐ隣に、影の槍が当った事によって穴だらけになり荒れた地面があった。

 

太一はあの状況でアグモンと刹那を抱え間一髪のところで無数の槍を回避したのだった。

 

 

「人間にしては大した生命力だ・・・本来ならそのまま死を待つだけであろうに。」

 

「はぁ・・・はぁ・・・生憎・・今よりやばい状況を経験済みでね・・・そう簡単に諦めてたまるか・・・・。」

 

 

太一は脇腹の傷を抑え、苦しそうにかすれた声で答えた。

 

 

(だけどこれは・・・不味いな・・こいつは最低でもグレイモンに進化させないと対抗できない・・・。)

 

 

だが太一は、最早立っているのも辛く、気を抜けばすぐに倒れ込んでしまうほど血を流しすぎていた。

 

 

(真名とは連絡が取れない・・・この結界が原因だと思うが・・・この状況からして、真名からの援護は期待できないな・・・、

でも真名なら救援を呼んでいるはず・・・・それまで持ち堪えられたら・・・・まだチャンスはある・・・。)

 

ガクッ

 

 

太一は足に力が抜けバランスを崩し倒れそうになり、それを刹那が受け止めた。

 

 

「八神さん大丈夫ですか!?」

 

(刹那・・・数秒でいい・・・あいつの注意を俺から逸らしてくれ・・・・・。)

 

(えっ?)

 

(アグモンを成熟期に進化させるまででいいんだ・・・たの・・・む・・・・・・。)

 

(解りました・・・。)

 

 

太一から指示を受け、刹那は太一をゆっくりと横にし、夕凪を構えシャドルに切り掛かった。

 

 

「フン・・・・・。」

 

 

シャドルは体の回りに禍々しいオーラを纏わせると、胸の目蓋の様な物が開き、そこから胸いっぱいの巨大な目が現れ、

次に頭部に縦筋が一本浮き上がり、それが開き縦に割れた口が現れた。

 

するとシャドルの体には不気味な模様が浮き上がり、シャドルは戦闘時の姿となった。

 

刹那の鋭い斬撃に対し、シャドルは広げた自身の影を無数の触手に形を変え、刹那の斬撃を迎え撃った。

 

 

(今だ!!)

 

 

その隙に太一はアグモンを進化させる為に意識を集中させた。

 

それに呼応する様にデジヴァイスが光を放ち始めた・

 

 

「よし・・・アグモンしん・・・。」

 

 

アグモンも進化しようとしていた。

 

しかし・・・・。

 

 

「あまい・・・。」

 

「なっ!?」

 

 

突如太一の影から触手が伸び太一のデジヴァイスを奪った。

 

 

「しまった!!」

 

 

その為アグモンの進化は失敗し、グレイモンに進化できずアグモンのままだった。

 

触手はデジヴァイスをシャドルへと放り投げ、シャドルは縦に割れた口を開き。

 

 

ゴクン

 

 

太一のデジヴァイスを飲み込んだ。

 

 

「あぁ!!」

 

「デジヴァイスが・・・・・。」

 

「これで貴様らの切り札は消えた・・・・・フン!!」

 

ドウゥゥゥゥゥゥン!!

 

 

シャドルは太一に手を向け、掌から邪悪な波動を放った。

 

 

「ぐわああああああああああああああ!!」

 

 

シャドルの波動により太一は吹飛ばされ、何度か地面に叩き付けられた後にようやく止まり、太一は動かなくなった。

 

 

「あの人間は放って置いても死ぬだろう・・・・絶望を抱き・・・苦しみぬいて・・・散るがいい・・・。」

 

「太一いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

「ハア・・・・・。」

 

 

太一の元に駆けつけようとするアグモン。

 

だが、アグモンの影から2体のシャドルに似た悪魔が現れた。

 

 

「何だこいつ等!?」

 

「我が分身「ドール」だ・・・・貴様の相手はそいつ等だ・・・・・。」

 

「くそ!!どけ!!」

 

ボン!!

 

 

アグモンは1体のドールにベビーフレイムを放った・・・しかし。

 

 

すぅ・・・・・

 

「何!?」

 

 

ベビーフレイムはドールの体を通り抜けてしまった。

 

 

「影であるドールにそんな物は通じん・・・・此方からの攻撃は通るがな。」

 

「くっ・・・・。」

 

 

2体のドールはアグモンに襲い掛かった。

 

アグモンはドールの攻撃を避けるも、2体のコンビネーションに徐々に追い詰められていく。

 

 

「この場の影は全て我の意のままに操る事が出来るのだ!!この場にいる限り貴様等に勝ち目は無い!!」

 

「神鳴流奥義・斬岩剣!!」

 

ガキーーーーーーーーーーーーーーン!!

 

 

刹那は渾身の力を込め、岩をも両断する神鳴流の奥義、「斬岩剣」でシャドルに切り掛かったが、影の壁にはばまれ、

シャドルには傷1つ付かなかった。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・。」

 

ドグ!!

 

「ぐはっ・・・・。」

 

「フン!!」

 

ドウゥゥゥゥゥゥン!!

 

「ぐああああああああああああああああああ!!」

 

しゅるしゅるしゅる

 

ビシイイイイィィィィィィィィン!!

 

「あうっ・・・・。」

 

 

刹那は影の攻撃により浮かび上がったところを、波動で吹飛ばされ、蜘蛛の巣の様に編まれた影に捕まり身動きが取れなくなった。

 

 

「くそ・・・動けない・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・・。」

 

ザシュ!!

 

ピッ

 

「くっ!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・。」

 

ベロン

 

ジュル

 

「・・・・・・・・・・・やはり・・・・・。」

 

 

シャドルは刹那の頬を少し切り裂き、傷口から出た血を指に付け、その血を舌で舐めた後、何かを確信したかの様に刹那を見た。

 

 

ガシッ!!

 

「ぐぅ!!」

 

ギリギリ・・・・

 

ぽろ・・・・・

 

ザシュ・・・・・・・

 

 

シャドルは夕凪を持つ刹那の腕を強く握った、その力に思わず夕凪を放してしまい、夕凪は地面に突き刺さった。

 

刺さった夕凪を、シャドルは地面から抜き、夕凪を放り投げた。

 

 

「娘よ・・・・我の手足として働かぬか?」

 

「な・・何をふざけた事を・・・ぐう・・・・。」

 

ギリ・・・・

 

 

影の糸を締め付け苦悶の表情を浮かべる刹那にシャドルは冷たく言い放った。

 

 

「口の利き方に気をつけよ・・・人間であり人間でなき存在、魔であり魔でなき存在・・・・魔と人間の両方の血をその身に流す半端者の分際で・・・・。」

 

「なっ!!」

 

「えっ!?」

 

ガシッ

 

「うわ!!」

 

 

シャドルの言葉に気を取られ、その隙にシャドルのドールに捕まり身動きの取れなくなるアグモン。

 

 

「何を・・・馬鹿な!!」

 

「血の味で分かる・・・貴様のその身には、恐らく東洋の魔物か魔族・・・確か・・妖(あやかし)と言うのか?その者達の血が流れておる。」

 

「くっぅ・・・。」

 

 

シャドルは続けて言った。

 

 

「だからか・・・貴様の影は中々良かったぞ・・・・魔族との混血である事もあるが、貴様自身が心に闇を抱いているだけあって、何の苦もなく忍ぶ事が出来た。」

 

「私の心に・・・闇?」

 

「見えるぞ・・・影を通し貴様の心が・・・・混血であるが故に、自ら他者と距離を置き孤独に過ごし、

混血者故に人間からも、同族からも忌み嫌われ、虐げられた日々、その悲しみ、怒り、憎しみ、醜さが・・・そして何よりも!!

その様な性を受けこの世に生まれた、自分自身を恨む・・・貴様の心が・・・・。」

 

「私の・・心を・・・覗くなああああああああああああああああああああ!!」

 

 

刹那は狂う様に叫び暴れた。

 

目の前の悪魔を殺そうと暴れた。

 

しかし、目の前の悪魔を斬り殺そうにも手には夕凪は無い、殴り殺そうにも影の糸によって動けない、

殺そうにも・・・いや、傷をつけるどころか攻撃を当てる事も出来ないほどに、今の刹那は無力だった。

 

自分の心を覗く目の前の悪魔を憎んだ。

 

心を覗く悪魔に何も出来ない無力な自分を憎んだ。

 

様々な憎しみが刹那の心に広がってゆく、その様を感じシャドルは高々に笑った。

 

 

「フハハハハハ・・・・良い・・・まことに良いぞ娘・・・・もっと我を憎め・・その憎しみが心の闇を広げ、心を闇で染めるのだ!!」

 

「ぐぅ・・・誰が貴様の・・・・。」

 

「口では何とでも言えよう・・・だが、どれ程強がろうとも、どれ程気丈に振舞おうとも・・・心の弱さは隠せんのだ!!」

 

「くっ・・・・・うぅ・・・・・。」

 

 

刹那の目に自然と涙が溜まる。

 

全てを見透かされ、何も出来ない自分が惨めに感じ、悔しくたまらない気持ちであった。

 

 

「そろそろ良いだろう・・・・・フン!!」

 

ブオオオンブオオオオン・・・・・・・・・

 

「ぐっ・・あぁ・・・あああああああああああああ・・・・・。」

 

 

シャドルは胸の巨眼から、先程の手から発したのとは違う波動を刹那に浴びせた。

 

刹那は苦しみ、次第に意識を奪われていく。

 

 

「貴様の心に入り込めば、貴様の心は完全な魔と化し、我は何時でも貴様の影を通し我が力を使える・・・そうなれば我は、

あの町に住む人間どもの魔力を・・・命を吸い、誰も我に敵わぬ・・・あのサウザンド・マスターでさえ凌ぐ力を手にするのだ!!

フハハハハ・・・フハハハハハハハ!!そして共に殺戮の快楽でこの身を満たし、心酔わすのだ!!フッハハハハハハ・・フハハハハハ!!」

 

(・・・・麻帆良に住む・・・人達・・・の・・・いの・・・・ち・・・わた・・しが・・この・・ちゃ・・・ん。)

 

 

失われて行く意識の中で、刹那は木乃香の顔が浮かんだ。

 

そして思い出す幼い頃の記憶。

 

毎日が楽しかった、毎日が嬉しかった、木乃香と一緒にいらえる時が嬉しかった、木乃香の笑顔が好きだった。

 

しかし守れなかった、自分が付いていながら木乃香を守れなかった、怖い思いをさせた、悲しませた、泣かしてしまった、

そして心に誓った、約束した「このちゃんを守る為に強くなる。そしてもう二度と悲しみ泣かせない、あの笑顔を守る。」と、

その為に、血の滲む様な修行をして来た・・・強い魔物と戦ってきた。

 

そしてこの町に来た、誓いを胸に、この課を守る為に。

 

木乃香に悲しんでほしくない、迷惑をかけたくない、傷付けたくない。

 

だから自分を偽り、距離を置き、誰とも接する事も無く、気丈に振舞ってきた・・・全ては木乃香の為。

 

自分の守るべき人。

 

そして初めての大切な友達。

 

そんな彼女を守る為なら・・・・・。

 

 

『お前の目は違うって言ってるぜ。』

 

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・。)

 

 

ふと・・・その言葉が脳裏を過ぎった・・・狩りが開始される前に言った太一の言葉が。

 

 

『お前の目は悩んでいる奴の目だ、それも自分に対し、友達に対してな。』

 

(何故?あの人の言葉が今になって駆け巡る・・・・悩んでなど・・・迷ってなどいない・・・。)

 

『・・・・お前あいつの・・。』

 

(「あいつの・・。」お嬢様の事か?あの人は何を言おうとしたんだ?・・・何故こんなにも気になるあの言葉の続きが、

あの人の言葉が何故こんなにも気になる・・・何故?)

 

 

真名の通信でその先を聞く事無く終わった、最後の言葉の続きが、今どうしようもなく気になってしまっていた。

 

しかし、そんな考えはある者の声で消え去った・・・目の前の悪魔の声によって。

 

 

「フハハハハハ・・・さあ・・混血の娘よ!!その心を我に委ねるのだ・・・そして共に殺戮の快楽に酔いしれようぞ!!」

 

(させない・・・入れるものなら入ってみろ・・・・例え私の心が貴様に喰われ全てが消えようとも・・・このちゃんを守るその想いだけは、

貴様ごときなんかに消させはしない!!貴様が入ったが最後・・・この命と共に貴様を地獄に送ってやる!!)

 

 

刹那はシャドルが、自分の中に入った時、自らの舌を噛み切り死ぬ気であった。

 

今の刹那の心は「自分の体を使って、このちゃんを殺させはしない!!」その一心だけであった。

 

 

刹那は倒れている太一を見た。

 

 

(八神さんはまだ息がある・・・そろそろ学園側から救援が来る、そうすれば八神さんは助かる・・・八神さんならこのちゃんを守り抜いてくれる、

・・・・どうしてだろうな?今日少し一緒に戦っただけなのに・・・あの人にこんなにも期待している・・・そして、

この覚悟を裏腹に・・・今にも立ち上がると私自身が期待・・・信じ・・望んでいる・・・・だけど・・・後をお願いします・・・八神さん・・・。)

 

 

そして、その時が訪れようとしていた。

 

 

「フハハハハ・・・さあ・・・我を受け入れよ!!」

 

(さよなら・・・このちゃん・・・・。)

 

 

そこで、刹那は目を閉じ、意識を手放し、自らの死を覚悟した。

 

 

ズブリ!!

 

「ぐうあああああああああああああああああああ!?」

 

 

しかし、何かを突き刺した音の後すぐに、シャドルの叫び声が聞こえた。

 

刹那は閉じていた目蓋を開き、目の前の悪魔を見た、そこには・・・・。

 

 

「ゆ・・・夕凪?」

 

 

刹那の愛刀夕凪が背中から刺さり、胸の巨眼を貫かれ苦しむシャドルがいた。

 

 

「な・・・?何故・・?この剣が?」

 

 

刹那はシャドルの背後に目をやった、そして目を見開いた。

 

そして、シャドルも背後を振り向き驚愕した。

 

その視線の先には・・・。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・・。」

 

ぽた・・・ぽた・・ぽたた・・・・

 

「貴様・・・・何故?」

 

「はぁ・・・がはっ・・・はぁ・・。」

 

「あっ・・・あぁ・・・・・。」

 

「へへ・・・信じてたよ・・・でも・・・・・心配かけすぎだよ・・・・。」

 

「はぁ・・・すまねぇ・・・・。」

 

「太一!!」

 

「八神さん!!」

 

 

シャドルに投げ捨てられた夕凪のあった場所に、傷口を押さえながら立ち上がっている太一の姿があった。

 

その後ろには、太一が倒れていた場所から引きずった様な跡が続いていた。

 

 

「きっ・・・貴様・・・何故?」

 

「はぁ・・・言ったろ?今よりやばい状況を経験済みだって・・・あの時に比べたら・・・拳を握れる手が・・・・立ち上がる足もある、

そして・・・自分がまだ生きている実感がある分・・・・それだけで・・・・ぬるいよ・・・貴様の言う絶望は・・・。」

 

 

太一は不適に笑い、シャドルを見た。

 

そんな太一にシャドルは、激しい怒りをその身を満たした。

 

 

「に・・・人間風情が!!よくも!!よくもこの私の体に傷をつけてくれたなああああああああああああああああ!!」

 

ズブリ

 

 

シャドルは刺さった夕凪を力任せに抜き、太一へと向かって猛スピードで飛翔した。

 

太一は動かなかった、いや、動けなかった彼の足にはもう走って逃げるほどの力は無く、フラフラであった。

 

 

「そんなフラフラの体で何が出来る?所詮貴様は私の怒りをかい、より惨い死に方を選んだだけだ!!」

 

「八神さん!!」

 

 

シャドルは両の腕を振りかざし、その鋭い爪で太一を切り裂かんと振り下ろした。

 

シャドルも爪が太一に届こうとした・・・。

 

 

ギロ

 

ビクッ!!

 

ピタ・・・・・・

 

「止まった?・・・・いや・・止めた・・・・・。」

 

 

しかし、爪は太一の頭の寸前で止まった・・・いや、シャドルが止めたのだ。

 

太一の目を見て。

 

太一の強く生きようとする意志が、諦めない意志が、そして仲間との共に培って来た己の全てを瞳に宿し、シャドルを睨みつけていた。

 

その迫力にショドルは思わず攻撃の手を止めてしまったのだった。

 

 

(・・・・何故!?何故私はこの爪を止めた?そうすればこの人間を殺せるのに・・・何故?あの目を・・・こいつの目と合った時、

私は無意識に振り下ろした爪を止めてしまった・・・・何故?私が恐怖していると言うのか?たかが人間の・・・致命傷の傷を負った人間の童なんぞに!!

上位悪魔のこの私が・・・・悪魔である私が・・・・・下等な魔力も無い・・・己だけでは何も出来ない・・・人間の小僧如きに・・・・。)

 

 

シャドルは半不安定な状態で、今一度腕を振りかざし、叫び声を上げ太一へと爪を振り下ろさんとしていた。

 

 

「恐怖する筈が無いのだあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

ギロリ

 

ビクッ!!

 

「くっう!!」

 

ザシュ

 

「があっ・・・・・。」

 

ドサ

 

 

シャドルは先程と同じ感覚に包まれ、手元が狂い太一の胸を切り裂くだけに終わった。

 

太一は吹飛ばされ倒れたが、再び立ち上がろうとしていた。

 

その光景にシャドルは恐怖した。

 

 

(間違いない・・・私は恐怖している・・・悪魔である私が・・・・何の力も持たない人間の小僧如きに・・・・危険だ・・・、

こいつは今完全に殺してしまわねば・・・もし生き残ろうものなら・・・・サウザンド・マスターに匹敵・・・・いや・・それ以上の驚異になりかねん。)

 

 

シャドルは、立ち上がろうとしている太一の元にゆっくりと寄って行き、止めを刺そうとした。

 

しかし・・・。

 

 

ガシッ!!

 

「何!?」

 

「へへ・・・太一に気が向いててこっちの力を緩めたね・・・・。」

 

 

アグモンは、シャドルが太一に気を取られていた時、ドールの力を思わず弱めてしまい、その隙を付きドールの拘束を解き、

シャドルの肩にしがみ付いたのだった。

 

 

「これ以上太一を傷付けさせない・・・ベビーバーナー!!」

 

ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

 

「ぐああああああああああああああああ!!」

 

 

息を大きく吸い込み、炎を一気に吐き出す、アグモンのもう1つの必殺技「ベビーバーナー」を至近距離から受け、シャドルは苦痛の叫びを上げていた。

 

シャドルも影を使いアグモンを振り払おうとするも、アグモンはシャドルの体に爪を食い込ませていて中々離れなく、苦戦していた。

 

その間にも太一は立ち上がり、刹那の元へ駆けつけようとしていた。

 

 

「・・・刹那・・・・今・・助ける・・・。」

 

「八神さん!!私の事はいいです!!ですからそれ以上動かないでください!!」

 

「そうは・・・いか・・・ねぇ・・ん・・・・・・だよ・・・。」

 

「え?」

 

「仲間を・・・・・見捨てられる訳無いだろうが!!」

 

「・・・・・違います・・・・・聞いていたと思いますが・・・・・私は・・・・人間では・・・・。」

 

「それ以上言うな!!」

 

「!?」

 

 

太一は立ち上がり、脇腹を押さえていた手を大きく横に振り、出来る限りの大声で刹那に向かって叫んだ。

 

 

「例え・・・魔族と人間との間に生まれたハーフでも・・・・お前は人間だ!!俺達と一緒にいていい!!人間でいていいんだ!!」

 

 

太一の言葉に刹那は何の言葉も出ず、太一を黙って見詰めていた。

 

 

「それに・・・お前が居なくなったら・・・木乃香は・・お前が守るべきあいつは如何するんだ!!」

 

「・・・・・・・大丈夫です・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

「貴方が居ます・・・・私が居なくても・・貴方やコロモン・・・アグモンさんが居ます・・・貴方達なら・・・お嬢様を守り抜いてくれます。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

 

刹那が言葉を発するにつれ、太一の表情は徐々に怒りの表情に変わっていった。

 

それを知ってか知らずか、刹那は話を続けた。

 

 

「それに・・・私みたいな化物が居なくなっても、お嬢様はこれまでの様に笑顔で毎日をあの人達と過ご「ふざけるな!!」!?」

 

 

太一は刹那の最後の言葉を言わせまいと、力の限り、傷の痛みも忘れ叫んだ。

 

 

「何が「私が居なくなっても。」だ?何が「笑顔で毎日を過ごす。」だ?木乃香は・・・・お前の友達は、

大切な友達が居なくなっても悲しまない様な薄情な奴とでも、お前は思っているのか!?」

 

「そ・・・それは・・・・・。」

 

 

「違う。」刹那はそう心で呟いた。

 

自分の守るべき人は、大切な人は友達の死に何も感じない様な人では無い。

 

頭では、心は理解していたが、刹那はそれ以上に踏み込めないでいた。

 

 

「刹那・・・あの時言いそびれていた事だが・・・。」

 

「え?」

 

「お前・・・木乃香の本当の笑顔を見た事があるか?」

 

「何を・・・?」

 

「お前は木乃香を・・・・本当に守っていると思っているのか?」

 

 

太一の問いに刹那は迷う事無く。

 

 

「はい・・・・私は木乃香お嬢様を御守りする事を誇り、私自身の全てとし今まで守ってきました・・・そのためならこの命・・・捨てる覚悟は出来ています。」

 

 

その言葉に太一は。

 

 

「・・・・・・はは・・ははは・・・・・。」

 

 

かすれそうな声で笑い出した。

 

 

「・・・何が・・・・何が可笑しいんですか!?」

 

 

太一のその様子に刹那は怒る。

 

 

「・・・・いやな・・・・・守れてもいない奴が、守ってるって言うのが可笑しくてな・・・・。」

 

「・・・・・・何ですって?」

 

 

太一の言葉に刹那は完全に怒り太一を睨む。

 

 

「貴方に何が分かるというんですか!?何も知らない貴方が!!私がどれほどお嬢様を思い、どれ程あの方を守ってきたか、

どれほどあの方の為に強くなろうとしたか・・・・何も知らない・・つい最近この町に来たばかりの貴方に・・・何が分かるんですか!?」

 

「・・・・・じゃあ・・・なんで木乃香は悲しんでいるんだ!?」

 

「!?」

 

 

太一の言葉に刹那は先程までの怒りが一気に冷め、太一を見た。

 

 

「どういう事ですか?」

 

「・・・・あいつはな、お前が自分と話さないのは、距離を置くのは、お前が笑顔を見せなくなったのは、自分がお前に嫌われる事したと思ってるんだよ。」

 

「!?」

 

「あいつその事で・・・・泣いてたんだぞ・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・・。」

 

「お前はあいつを守る為、あいつ自身の為と思い自分から距離を置いて遠くから守っていた様だが・・・それが逆にあいつを悲しませる事になってたんだよ。」

 

「そ・・・そんな・・・・・。」

 

 

刹那は気落ちし、力無く頭を下げ地面を見詰め、ボソボソと呟いた。

 

 

「私は・・・お嬢様を御守りするなどと言いながら・・・結局はお嬢様を悲しませていただけだったのか・・・・。」

 

「でっ・・・・・どう・・・する?」

 

「えっ・・・・・?」

 

「そ・・れを・・・知って・・・・お前はどう・・する?・・・・・どうした・・・・いんだ?」

 

「わ・・・私は・・・・・・。」

 

「守ると誓ったんだったら・・・・・全てを守れ!!あいつの全てを・・・今も過去も未来も・・・あいつの幸せを・・・笑顔を・・・全てを守ってみせろ!!」

 

「あ・・・あぁ・・・・・。」

 

「あいつの笑顔一つ守れないで・・・・守ったなんて言うんじゃない!!あいつの前から居なくなろうとすんじゃねえ!!死のうなんてすんじゃねえ!!」

 

「はぁ・・・あぁ・・・。」

 

 

太一の叫びに刹那は沈黙し、静かにその頬を一筋の涙が流れた。

 

 

「もう一度聞く・・・・お前は如何したい?神鳴流の剣士としてとか・・・そんなのは関係無い・・・・お前自身・・・

人間・・桜咲刹那として・・・お前は如何したいんだ!!」

 

「わ・・・・私は・・木乃香お嬢様を・・・・いや・・ウチは・・・このちゃんと一緒に居たい!!・・・このちゃんの笑顔を守りたい!!

このちゃんに・・・・このちゃんに・・・謝りたい・・・そして・・・・また昔の様に一緒に笑顔で居たい!!」

 

 

刹那は泣きながら叫んだ。

 

本当は話がしたかった、笑いたかった、一緒に勉学を学び、遊び、時には喧嘩もし、別れた時から麻帆良で再開するまでの間の分を埋める以上の思い出を共に作りたかった。

 

今刹那の心は「生きたい。」と何度も強く叫んでいた。

 

 

「・・・・・・じゃあ・・今のこの状況を何とかしないとな・・・・・・。」

 

「・・・・・はい!!」

 

 

太一と刹那は微笑みながら軽く頷いた。

 

 

「ぐわあああああああああああ!!」

 

ずざざ・・・・

 

「アグモン!!」

 

「ぐっ・・・・うぅ・・・・・ごめん・・太一・・・・・。」

 

 

シャドルを足止めしていたアグモンが吹飛ばされ、アグモンはそのまま地面に強く叩きつけられ動けなくなった。

 

 

「おのれ・・・この虫けら共が・・・・・・・。」

 

 

シャドルの身体は所々、ベビーバーナーによって焼き爛れていたが、焼き爛れた箇所は少しずつゆっくりではあるが、

自己再生で回復していくのだった。

 

 

「この私に・・・・これほどの傷を・・・貴様等如きにいいいいいいいぃぃぃぃ!!」

 

ずしゃあああああああああああああああああ

 

ビシイイイイイイイイイイイイイ

 

「がああああああああぁぁぁぁぁ!!」

 

「太一!!」

 

「八神さん!!・・・・・・っぁああああああああああ!!」

 

ギリギリ

 

 

太一の影から無数の触手が伸び、太一の身体を強く締め付けながらどんどんと触手は太一の身体に巻きついて、太一の身体を埋め尽くそうとしていた。

 

刹那の身体に巻きついていた触手も、締め付ける力を強くし、刹那の体身に食い込んで行った。

 

 

「貴様はこいつ等だ!!」

 

ドシュンドシュンドシュンドシュンドシュンドシュンドシュンドシュンドシュンドシュンドシュンドシュンドシュンドシュンドシュンドシュン

 

 

シャドルは翼を大きく開き、その影から無数のドールが現れアグモンに襲い掛かった。

 

 

「皆殺しだ!!貴様等全て皆殺しだ!!俺の身体に傷を付けた事を地獄で後悔しやがれええええええええええええええええええええ!!」

 

 

シャドルの口調は怒りで変わり、その迫力も数段と上がり、より悪魔らしく、怒りに任せむやみやたらに力を乱射させていた。

 

 

(や・・・やべぇ・・・・意識が遠のく・・・・・。)

 

 

大量の出血により太一の命も風前の灯であった。

 

その間にも触手は徐々に太一の身体を埋め尽くそうと太一に巻き付いていった。

 

 

「死ねえぃ!!その後てめえの身体は魔界に送り魔物共の餌となるんだああああああああああああ!!」

 

 

そしてついに太一の身体は触手で埋め尽くされ、足元の影が円状に広がり、太一を引きずり込もうとしていた。

 

 

「た・・・た・・い・ち・・・・・・・。」

 

「や・・やが・・・・み・・・・・・・た・・太一さん!!」

 

 

刹那とアグモンが叫ぶが、太一には僅かに届かなかった。

 

場所は変わり、お台場。

 

 

がばっ!!

 

「太一!?」

 

「空!?」

 

「今・・・・太一の声が聞こえた気がした・・・・。」

 

「空・・・実は私も、太一とアグモンが苦しんでいる声が聞こえたの。」

 

「ピヨモンも?・・・太一・・・。」

 

 

空とピヨモンは、麻帆良に居る太一とアグモンの危機を感じ取り、布団から出て、夜空を見上げた。

 

それは彼女達だけではない。

 

 

「太一・・・。」

 

「アグモン・・・。」

 

 

ヤマトとガブモンも。

 

 

「太一さん・・・。」

 

「アグモン・・・。」

 

 

光子朗とテントモンも。

 

 

「太一・・・。」

 

「アグモン・・・。」

 

 

丈とゴマモンも。

 

 

「太一さん・・・。」

 

「アグモン・・・。」

 

 

大輔とブイモンも。

 

 

「太一さん・・・。」

 

「アグモン・・・。」

 

 

賢とワームモンも。

 

 

「太一さん・・・。」

 

「アグモン・・・。」

 

 

京とホークモンも。

 

 

「太一さん・・・。」

 

「アグモン・・・。」

 

 

伊織とアルマジモンも。

 

 

「太一さん・・・。」

 

「アグモン・・・。」

 

 

アメリカに居るミミとパルモンも。

 

 

「太一さん・・・。」

 

「アグモン・・・。」

 

 

タケルとパタモンも。

 

 

「お兄ちゃん・・・。」

 

「アグモン・・・。」

 

 

ヒカリとテイルモンも。

 

仲間の選ばれし子供達が、太一とアグモンの危機を感じ取り、不安な表情で夜空を見上げるも、太一達の無事を祈った。

 

 

「太一・・・大丈夫だよね・・・。」

 

 

そしてその頃、太一の意識は漆黒の闇の中にあった。

 

身動きも取れずに、暗く冷たい闇の中で、ただ沈んでいく事のみ分かった。

 

 

(くそ・・・さんざん偉そうに刹那にあんだけ言っといて、俺自身がこの様かよ・・・・くそ・・・・。)

 

 

そして太一の脳裏に、今までの事がフラッシュバックの様に映像の様に流れた。

 

 

(やべっ!!これって走馬灯って奴じゃないのか?)

 

 

その映像の中で太一は色んな事を思い出していた。

 

自分の名前を覚えた時、妹のヒカリが生まれた時、空と初めて出会って一緒にサッカーをした時の事、ヒカリを死なせてしまいそうになった時の事、

デジモンと初めて出会った時、デジタルワールドを仲間と冒険した時の事、ヤマトとの喧嘩、アポカリモンを倒した時の事、

世界中の人々のメールを受けオメガモンが誕生しディアボロモンを倒した時の事、デジタルワールドの安定の為に紋章の力を使った時の事、

後輩の大輔達が選ばれし子供達となった時の事、アグモンがイービイルスパイラルによってデジモンカイザ-の手先になってしまった時の事、

クリスマスのあの日に空の背を押した時の事、アーマゲモンにオメガモンが敗れた時の事、

そして麻帆良学園に転校した事、

これまでにあった様々な事が頭の中を駆け巡った。

 

 

(こんな物を見るなんて・・・・そろそろ俺もやばいかもな・・・・・。)

 

 

太一は意識を手放そうとし、目を閉じようとしたその時。

 

 

(しっかりしろ!!)

 

(太一に諦めるなんて似合わないよ。)

 

「ヤマト・・・ガブモン・・・・。」

 

(太一さん、頑張ってください。)

 

(太一はんの良えとこは、決して諦めない事でっしゃろ?)

 

「光子朗・・・テントモン・・・・。」

 

(太一さん、ファイト!!)

 

(頑張れ太一!!)

 

「ミミちゃん・・・パルモン・・・。」

 

(僕より確りしていた君が、此処で確りしないで如何するんだ?)

 

(大丈夫、太一なら出来るよ。)

 

「丈・・・ゴマモン・・・・。」

 

(太一さんなら絶対乗り越えられます!!)

 

(突っ走れ太一!!)

 

「大輔・・・ブイモン・・・・。」

 

(太一さんなら大丈夫だって信じています。)

 

(諦めないでね太一。)

 

「賢・・・ワームモン・・・・・。」

 

(太一さんなら大丈ビンゴー!!)

 

(大丈夫!!)

 

「京・・・ホークモン・・・・・。」

 

(太一さん頑張ってください!!)

 

(頑張るだぎゃ!!)

 

「伊織・・・アルマジモン・・・・・。」

 

(太一さん諦めないでください、あなたは仲間を残して居なくなる様な人じゃない!!)

 

(希望を持って。)

 

「タケル・・・・パタモン・・・・。」

 

(お兄ちゃん・・・待ってるからね・・頑張れ!!)

 

(ヒカリを悲しませると許さないよ・・・だから頑張れ。)

 

「ヒカリ・・・・テイルモン・・・・・。」

 

(皆太一の事、だ~~~い好きだよ。)

 

(太一、そんな所に居ないで早く皆の所に行こ!!)

 

「ピヨモン・・・・アグモン・・・・・・。」

 

 

仲間達の太一を励ます声が聞こえた。

 

その声に太一は手放しそうになった意識を繋ぎ止め、目を開けた。

 

 

(しっかりしなさい!!)

 

「!?」

 

(皆があなたを待ってるよ。)

 

「そ・・・・空・・・・・・・。」

 

 

空の声が聞こえ辺りを見渡すが、何も見えない、闇しかない、声は太一の心に響いていたのだった。

 

それに答えるように太一も心の中で呟く。

 

 

(私も待ってる・・・・だって・・・あなたは私達の太陽なんだから。)

 

「太陽?」

 

(うん・・・・・どんな暗い闇の中でも輝いて、心が闇に落ちても暖かく包み込んで皆を導いてくれる・・・皆の太陽、

そんなあなたが皆大好きなんだよ。)

 

「・・・・・・・・。」

 

(だから・・・・諦めないで・・・あなたは誰よりも強く輝く暖かい光を持っているから。)

 

「空?・・・・空!?」

 

 

空の声が聞こえなくなり、静かになった闇の中で、自分の胸に手を当て先程の空の言葉を呟いていた。

 

 

「強く・・・暖かい光・・・・・どんな闇の中でも輝き・・・皆の心を照らす・・・・太陽・・・・そうだよな、諦めるなんて俺らしくないな、

・・・俺は諦めない!!どんな絶望の中でも俺は心の中の光を絶やしはしない!!」

 

カッ!!

 

「なっ!?」

 

 

突如辺りが輝きだした。

 

いや、太一の胸から光が溢れているのだ、太陽光に似た山吹色をした暖かい光の粒子が太一の胸から溢れ、

辺りを照らし、光の粒子は太一に再び集まって来た。

 

そして光が空間を完全に照らしてし、光で何も見えなくなる刹那、太一はその光の先に仲間達の姿を見た気がした。

 

 

「・・・・・・・・・行って来る。」

 

 

そして太一は一際輝く光の先へと歩んで行った。

 

 

「・・・ピヨモン。」

 

「何?空?」

 

「今太一と話した気がしたの。」

 

「私も。」

 

「ふふ・・・もう大丈夫だね、きっと・・・大丈夫だね。」

 

 

それは空だけでなく、他の選ばれし子供達も同じであった。

 

「大丈夫」そう安心し、皆は再び夜空を見上げた。

 

 

そして結界の中では。

 

 

「ああはははははははははは!!死んだ死んだ!!死んじまった!!俺にたて突くからこうなるんだよクソが!!」

 

「太一さん・・・・・。」

 

 

シャドルは太一の身体を魔界に引きずり込もうとしていた。

 

 

「このままでは・・・・・。」

 

「無駄だ!!直に手前も後を負わせてやるよ!!魔物共の腹の中で精々感動的な再会をしな!!」

 

「くぅ・・・・・・。」

 

「大丈夫だよ。」

 

「え?」

 

「太一はもうすぐ戻ってくる。」

 

 

無数のドールと抗戦しながら、笑顔で刹那に話しかけるアグモン。

 

その顔には微塵の不安も絶望も感じられなかった。

 

 

「何言ってやがる?死んだ人間が戻ってくる訳が・・・。」

 

「生きている!!太一は生きている!!」

 

「んっ!?」

 

「刹那も信じて!!希望を持って!!」

 

「アグモンさん・・・・・・分かりました・・・私も信じます・・太一さんを。」

 

 

刹那も、アグモンの言葉を聞き、太一の事を信じる事にした。

 

その顔には先程の悲しみや悔しさは無く、希望に満ちていた。

 

 

「フン!!そんな奇跡・・・起きるわけが無いだろうがあああああああああああ!!」

 

ビシィ!!

 

「んあ?」

 

ビシビシビシビシビシ

 

「何だ!?」

 

 

突如太一の全身に巻き付いていた触手の束の一本一本が千切れだし、その隙間から山吹色の光が漏れ出した。

 

 

「何だ!?一体何が!?」

 

チュイーーーーーーーーーーーーーーーーン

 

「があああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

 

突如シャドルは胸を押さえながら悶え苦しみだした。

 

胸にある巨眼からは、涙の様な透明な液体を流し、その中央は光り輝いていた。

 

 

「あれは・・・・?」

 

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおお!!ヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!ぎゃあああああああああああああああああ!!」

 

「デジヴァイスだ・・・デジヴァイスは暗黒の力を浄化する力を持っているんだ。」

 

「では何故今になって?」

 

「太一だ・・・・。」

 

「え?」

 

「太一のデジヴァイスを使えるのは太一しか居ない・・・・太一の心が強くなっている・・・。」

 

「では・・・まさか!!」

 

「ぐうおわああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

シャドルの胸が光を中心に盛り上がり、そして・・・・。

 

 

ボオオオオオオオオオオン!!

 

「ぎいやああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

シャドルの胸が弾き、中から太一のデジヴァイスが出てきた。

 

それによりシャドルの胸はえぐれ、叫び声も出せないまま蹲った。

 

デジヴァイスはそのまま太一に巻き付いている触手の束の方へと向かって飛んだ。

 

 

「させるかああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

シャドルは左腕を伸ばしデジヴァイスを破壊しようとした。

 

 

「ぶっ壊れろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

しかし・・・。

 

 

ズボッ!!

 

カッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

 

ジュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ・・・・

 

「があああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

 

触手の束から腕が飛び出し、そこから漏れた光を浴びたシャドルの左腕は消滅した。

 

そしてそこを中心とし、触手の束が次々と消滅し中から。

 

 

「「太一(さん)!!」」

 

 

光に包まれた太一が現れた。

 

しかし髪の色は薄くなり、瞳の色は山吹色に変わっていた。

 

 

「これは・・・・高畑先生や他の魔法使いの方達と少し違うが魔力?それと気?それが融合している・・・まるで咸卦法だ・・・、

だがあの光は?」

 

 

太一はゆっくりと歩き始めた。

 

そしてデジヴァイスを手に取ろうとしたが、デジヴァイスは太一の纏った光を受けた途端、デジヴァイスは形を変えて、

太一の左手首に装着された。

 

 

「デジヴァイスが・・・変わった・・・。」

 

 

アグモンが太一のデジヴァイスが変わった事に驚いている中、太一は刹那に向かって手を翳す。

 

 

カァァァァァァァ

 

しゅうううううううう・・・・・・

 

「うわ!?」

 

 

太一の手の先から光が放たれ刹那を光が包んだ、すると刹那を拘束していた触手は消滅し、刹那は開放され地面に落ちた。

 

太一は先程と同じ様に、アグモンの方に向けて手を翳す。

 

 

しゅうううううううう・・・・・・・

 

「あぁ・・・・すごい・・・・。」

 

 

太一が放つ光に当ったて、アグモンと抗戦していたドールの半分以上が消滅し、アグモンだけがいる状態となった。

 

それを見たシャドルは驚きふためき。

 

 

「その力・・・その光・・・・・まさか・・・貴様・・・「太陽の欠片」!!」

 

「お前だけは許さない!!」

 

 

太一は力を込めた眼光でシャドルを睨み叫ぶのであった。

 

 

おまけ

 

 

太一達がシャドルと交戦している同時刻の麻帆良学園中等部女子寮の一室にて。

 

 

「コラーーーーーーーーーーーーー!!ネギいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!?」

 

「あんた又人の布団にもぐりこんで!!」

 

「ゴメンナサーーーーーーーーーーーーーーーーイ!!」

 

「2人とも仲ええなあ・・・。」

 

 

もう1人の主人公はなんとも平和に過ごしていた。

 

 

続く

 

 




次回予告
シャドルを追い詰める太一だったが、
影を操る悪魔は更なる猛攻で太一達を襲う。
その時、闇夜に輝く太陽の光を浴びて、
アグモンの新たな進化を呼び覚ます。
次回
デジモンアドベンチャーMAGI
『太陽の力!!新たなる未来(進化)ジオグレイモン!!』
今・・・冒険が進化する。
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