デジモンアドベンチャーMAGI   作:龍気

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夜の警備前の話です・・・そしてここから太一の不幸がエスカレート・・・。


第5話『狩の準備、仲間の背中』

太陽が少し昇り、辺りに軽く朝霧がかかり、小鳥の囀りが聞こえる、早朝の麻帆良学園。

 

麻帆良に住む者達から「世界樹」と呼ばれる大木の前の広場に、コロモンを頭に乗せ歩く太一の姿があった。

 

 

「太一こんな朝早くに何処行くの?」

 

「ここで一番偉いジジイのとこだよ。昨日連絡したらお前に会いたいって言ってな、まあ一応お前と一緒に住んでいいか聞かなきゃならねえからついでにだよ。」

 

「大丈夫なの?」

 

「ジジイは一応俺達の事を知っている、何処で知ったかは分からねえがな。」

 

 

昨日の内に、学園長に「俺のパートナーデジモンが届いた。」と言ったら、「ぜひ会いたい。」と言ってきて、

今から学園長室に向かうところであった。

 

他の生徒や教師達に見つかると不味いので、誰も出歩かない時間帯を選んで来たのだが、如何せん早く来すぎた為、

約束の時間まで散歩をしながら時間を潰そうと思い、世界樹前広場の辺りをブラブラとしていたのだった。

 

 

「それにしても広いねこの学校。」

 

「俺も初めて来た時も同じ事思ったよ。」

 

「こう言うのを「税金の無駄遣い」って言うんだっけ?」

 

「本当に同じ事考えるな。」

 

「「・・ぷっ・・あっははは・・・・・。」」

 

 

などと談笑しながら、朝の麻帆良を散歩する2人(1人と1匹)であった。

 

 

 

―――『狩の準備、仲間の背中』―――

 

 

 

約束の時間が近づき、誰もいない第1校舎の廊下を歩き学園長室へ向かう太一とコロモン、しかしこの時太一は、

何か違和感の様な、いや異様な力を感じていた。

 

 

(何だろうな?この学園に来てから、何か変なんだよな・・・辺りから昨日ネギに掴まれた時に感じたのと似た様な力みたいな物を感じる。)

 

「どうしたの太一?」

 

「なぁコロモン、何か感じないか?」

 

「?何も感じないけど、何か感じるの?」

 

「あぁ・・・だけどもう感じない」

 

「大丈夫なの?」

 

「だと思うが・・・まぁ・・後で纏めて言うけど、ここは場所も人も少し特殊らしいからな、そのせいかもな。」

 

 

そんな話をしてる内に、学園長室の前に到着し、太一は2・3回軽くノックをした。

 

 

「ジジイ・・約束通り連れて来たぞ。」

 

「・・・・・入ってよいぞ。」

 

 

中からの返事を聞いて扉を開く、学園長室内には、学園長と高畑としずなの他に、太一のクラスメートの、

刹那に、中学生とは思えない身長とスタイルの龍宮真名に、どう見ても小学生の留学生エヴァンジェリン・A・K・マグダウェル、

そして明らかにロボットの格繰茶々丸が居た。

 

太一は刹那を除く彼女達がここに居る事に、昨日の予想が当った事を確信し、「やはりか」といった顔をする。

 

一方太一の頭に乗っているコロモンは、他の者達に聞こえない様に小声で太一に声をかけた。

 

 

(ねぇ・・・太一・・。)

 

(何だ?)

 

(あの頭長いの・・デジモン?それにあの緑色の髪の人・・ひょっとしてロボット?)

 

(あの子は・・・俺から見てもロボットだ・・詳しくは分からんが・・・後あの妖怪ジジイは一応人間らしい、

信じられねえけど、あれがここで一番偉いんだから、この学園ある意味で終わってるよ。)

 

「今なんか失礼な事考えておらんか?わし限定で・・・。」

 

 

妖怪ジジイこと、学園長の問いをとりあえず無視して、学園長に近づき、頭に乗せたコロモンを机の上に置いた。

 

その最中に刹那がやって来て、学園長はそれを見て太一に、目を合図した。

 

 

「ほら、皆に挨拶しな。」

 

「え~~と・・・皆さんはじめまして、僕コロモンです。」

 

「なっ!?」

 

「喋った!?」

 

「うむ・・・・・はじめましてコロモン君・・わしがこの学園の学園長を務めとる近衛近右衛門じゃ・・よろしく。」

 

 

この場にいる全員が驚く中で、とりあえず学園長との挨拶を済ませ、その後に続く様に、高畑としずなも挨拶をする。

 

 

「僕はタカミチ・T・高畑・・・よろしく。」

 

「私は源しずな、八神君のクラスの副担任をしているの、よろしくね。」

 

「こちらこそよろしくお願いします。」

 

「ふむ・・・知能は高いみたいじゃのぉ・・・。」

 

「同じ種族でも喋らないのもいるけどな。」

 

「なるほど・・・コロモン君・・・・君はわし等について、太一君から何か聞とるかのぉ?」

 

「ん~ん・・何も、只おじいさんがここで一番偉いってのだけ聞いたよ。」

 

「そうか・・・コロモン君、今から話す事は全て事実じゃ、しっかり聞いてもらいたい。」

 

 

そして学園長は、昨日太一に話した様に、自分達魔法使いやその関係者達の存在と信念、そして自分達がコロモン達デジモンや、

太一達選ばれし子供達をどう見ているかを話した。

 

さすがに自分達デジモンの事や太一達選ばれし子供達を、どう見ているか聞いた時はさすがに、コロモンも良い顔はしなかったが、

太一の言葉で、今は信じてみようとしている方に向いていると聞いて、安堵の表情に戻る。

 

魔法使い達の話の後に、太一が如何してこの学園に呼ばれ、今ネギと言う子供先生のクラスで、彼を影ながらサポートしている話を、

話し出した。

 

それを聞いてコロモンは太一に哀れみの目を向ける。

 

 

「太一・・・年下の子に勉強教えて貰うほど・・・。」

 

「冗談でもそれ以上言ったら怒るぞ・・・・。」

 

「はは・・・じょ・・冗談だよ。」

 

 

などと話していると後ろからいきなり声が上がった。

 

 

「ふん・・・さっきから聞いていたらとんだ甘ちゃんだなぁ・・そんな奴にぼーやのサポートが務まるのか?」

 

「マスター・・・。」

 

 

エヴァンジェリンであった、彼女は見た目かとは似つかない邪悪な笑みを浮かべ、太一とコロモンを見下した視線で交互に視線を移し、

更に見下した言葉を吐く。

 

 

「それに・・・そのデジモンに選ばれし子供達だったか?選ばれたというその転校生の方は取るに足らんそこらにいる人間と変わらんし、

その丸っこいのからは特に強い力は感じられん、それだとデジモンと言う生物も、他の選ばれし子供達と言うのも大した事ないと言う事だな。」

 

「エヴァ!!」

 

「そうかもな。」

 

「うん。」

 

「なっ!?」

 

 

しかし返ってきた言葉は、彼女の予想から大きくずれていた、本来なら見下した事に腹を立て、

突っ掛かるかと思いきや、彼等は自ら認めたのだ、それに対しエヴァは驚きを隠せ無かった。

 

 

「えっと・・・エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マグダウェル・・・だったかな?」

 

「なっ!!」

 

「「あっ・・・・。」」

 

「えっ・・・?」

 

「キ・・キティ・・・?」

 

 

なにやらおかしな空気に包まれ、エヴァは驚きの表情を、高畑と茶々丸は「あっ」っと口を開け、刹那と真名はポカーンとしていた。

 

エヴァは咄嗟に太一に飛び掛り、両足を太一の腹に当て両手で襟を掴み、なんともみっともない格好で太一の首を激しく前後に揺らした。

 

 

「き・・・貴様!!何故私のミドルネームを知っている!?」

 

「えっ!!・・・昨日ジジイに教えてもらった・・・。」

 

「じじぃ!!」

 

「ふぉふぉふぉ・・・なにクラスメートの正確なフルネームを知っといた方が良いと思ってのぉ・・・。」

 

「ふざけるなぁぁぁぁぁ!!」

 

(このジジイ・・・こうなる事知ってて教えたな・・・。)

 

 

 

太一や高畑そしてしずなは、同じ事を思ったに違いない、3人が呆れた目で学園長を見ているのだから。

 

しかしここで約1名皆に背を向け蹲っているのが1人いた。

 

 

「ぷっ・・・ぷぷ・・・キ・・キティ・・・・。」

 

「龍宮・・・失礼だぞ・・。」

 

「すまん・・・・だが・・・普段の・・彼・女・・を見・て・・る分・・可愛くて・・・な・・・ぶふっ・・・。」

 

「そこっ!!笑うなぁぁぁぁ!!」

 

「ふぉふぉふぉ・・仲が良い事は良き事かな・・。」

 

「黙れ!!ボケじじぃ!!」

 

 

などと少々ぼけはあったが、口論が終わり、エヴァは太一の方を向くのだった。

 

 

「見苦しいとこを見せてしまったな・・・ジジイの所為で聞きそびれたが、さっきの言葉・・・否定しなかった訳を聞こう。」

 

「あぁ・・ある意味あってるから否定出来ねえんだ。」

 

「うん・・・。」

 

「何だと?」

 

「俺自身は魔法みたいな特別な力が無いから戦う時はいつもコロモンに頼ってばかりだし。」

 

「僕は太一が居ないと自分の意思だけじゃ幼年期以上に進化できないしね。」

 

「幼年期?進化?それは何かね?」

 

「あっ!!それは話して無かったな、デジモンは「デジタマ」と呼ばれる卵から生まれ、「幼年期Ⅰ」から始まり「幼年期Ⅱ」に進化する。

そして「成長期」「成熟期」「完全体」「究極体」の順で進化・・まぁ人間で言う子供から大人に成長していく様なもんだ。

コロモンは幼年期Ⅱの段階だ、次の成長期に進化するまでは殆ど戦う力は無いんだ。

それと環境やステータスそして心しだいで、例えばコロモンでも様々な違うデジモンに進化する事が出来るんだ。」

 

「でも僕や他の仲間のデジモンは、選ばれし子供達のために、特別に調整されていて、普通のデジモン達とは違って自分自身では成長期までしか進化できないんだ。」

 

「俺のこの「聖なるデヴァイス」と呼ばれる「デジヴァイス」が俺の心に反応して、コロモンを成長期以上の形体に進化させる事ができるんだ。」

 

「聖なるデヴァイス・・・。」

 

「デジヴァイス・・・・・・。」

 

 

その場に居る全員が太一のデジヴァイスに注目した。

 

大きさはポケベル程度しかないが、これには様々な奇跡を起こす聖なる力が秘められている、もちろんそれは誰が持っても扱える訳ではない事を、

太一とコロモン意外は知らない。

 

 

「ふんっ・・・つまり一緒にいて無いと何の力も出せない1人と1匹で1人前の集まりで、互いの傷を舐め合い戦う集団、

それが選ばれし子供達と言う事か・・・フフ・・・・ますます甘ちゃん集団だな。」

 

「・・・・そうかもしれない・・・でもな。」

 

「ん?」

 

「それはとても大切な事じゃないのか?」

 

「何だと?」

 

「確かに誰かに頼りっきりってのは良くないよ・・・でも、どんな人も支えてくれる存在がいるから、生きていられるんだと思うんだ。

それに互いを信じて手を取り合い力を合わせる事で、どんな事でも乗り越えて行けると俺は思ってる。」

 

 

太一の言葉にエヴァは、先程の見下した表情からしだいに怒りの表情へと変わっていった、そしてその声にもしだいに怒気が込め始めてきたのだった。

 

 

「「手を取り合う」や「支えられている」と言う考えが甘いと言うんだ!!誰にも頼らず己の力のみで生きる!!

それが無ければ生きていけるものか!!」

 

 

エヴァは殺気を放ちながら、怒気とどこか悲痛な感じを込め太一とコロモンに叫んだ、それに反応した周りの者達は焦りだした、

このままでは太一達に襲い掛かると思ったからだ、しかしその殺気と怒気を真っ向から受けた太一は怯む事なく真っ向からエヴァに言い放った。

 

 

「でも・・・俺はそれを恥だとも甘えだとは思わない・・いや・・・思っちゃいけない。」

 

 

太一は強い意思と自分の信念を込めその言葉を放った。

 

その言葉の前にエヴァは何も言えなくなった、そしてエヴァはしばし黙り込む。

 

 

(私の殺気を浴びといて何なんだこいつは?こんな人間今まで見た事無いぞ・・・何も知らない小僧の分際でこの私に真っ向から戯言をほざくなど・・・。

だが、その戯言に何故何も言い返せん?こんな1人じゃ何も出来ない様な奴の戯言ごときで・・・。)

 

「お前は自分の力のみで生きて行く事にこだわってる様だけど、お前にもきっとだ・・・。」

 

「私には!!」

 

「!!」

 

「私に支えなど必要ない!!私は己自信の力のみで生きて行く今も・・・これからもだ!!行くぞ茶々丸!!

今日はどこかの無知な男の所為で気分が悪い、学校は休ませてもらうぞ!!ぼーやに言っておけ。」

 

「エヴァ!!」

 

「・・・すみません高畑先生・・今日の授業マスターと私は欠席します。」

 

「・・・・分かった・・。」

 

その言葉を聞いてエヴァは学園長室から出て行った。

 

高畑はどこか納得できない様な、もしくは何か別の事で悔やんでいる顔で彼女達の欠席を許可したのだった。

 

 

「八神さんにコロモンさんも・・・マスターが失礼を、申し訳ありませんでした・・。」

 

 

そういうと茶々丸は太一とコロモンに頭を下げエヴァの無礼を謝罪する、それは妹の無礼を代わりに謝罪する姉の様に見えた。

 

それを見て太一とコロモンは全く気にして無い感じで。

 

 

「いや・・俺もアイツの気に入らない事言った様だし、俺にも非があるよ。」

 

「僕も気にして無いよ。」

 

「しかし・・・。」

 

「今はあの子の傍についていてやりな、それにもし謝るとしたら君じゃない、あの子自身だ、君が謝る必要は無い。」

 

「・・・・すみません。」

 

「ほら・・行ってやりな。」

 

「はい・・・では失礼します。」

 

 

茶々丸は駆け足でエヴァの後を追い学園長室から出て行った。

 

残された者達の内、刹那と真名としずなの3名が冷や汗を流し、高畑と学園長はやれやれと言った感じで、エヴァ達が出て行った扉を見ていた。

 

 

「しかし・・・妹・・じゃないクラスメートなら友達か?マスターだなんて変わった関係だな。」

 

「茶々丸君はエヴァの「従者(ミニステル・マギ)」だからね。」

 

「従者?」

 

「簡単に言えば魔法使いのサポートをするパートナーよ。」

 

「僕と太一みたいな?」

 

「えぇ。」

 

 

そして茶々丸はこの学園の工学部で作られ、エヴァの魔力で動いていており、科学と魔法の融合した全く新しいタイプのアンドロイドだと聞かされ、

太一とコロモンは男心をくすぐられ、目を輝かせていたと言う。

 

 

「さて・・・ではそろそろ本題に入ろうかのぉ?本当はエヴァもいてくれた方が良かったんじゃが仕方ない。」

 

 

学園長の言葉に、全員真剣な顔になり学園長の方を向いた。

 

 

「太一君・・・魔物と言うのを聞いた事はあるかのぉ?」

 

「物語の中だったら。」

 

「うむ・・魔物や悪魔に幻獣と言った存在は御伽噺の中だけの存在ではなく、実際に存在しておるんじゃ。」

 

「主に魔獣と言われる大した知性の無い者達が夜に現れては僕等の様な学園側の魔法関係者達が狩ってるんだが。」

 

 

そこまで聞いて太一とコロモンは学園長達が何を言いたいか察し、互いに目を合わし肩を落とす?(もっともコロモンは肩が無いので頭の触覚を下げる)

 

 

「何を言いたいか分かった様じゃな。」

 

「俺達にその狩りの手伝いをしろってんだろ?分かった、引き受けた。」

 

「よいのかね?」

 

「その魔物や魔獣ってのを野放しにしておくと、ここに住む人達に危害が出るんだろ?だったらやってやるよ・・・な?」

 

「うん!!」

 

「だが危険な依頼だよ?それでも良いのかい?」

 

 

高畑が神妙な顔で太一に問いただすが、太一はニンマリとした顔で。

 

 

「依頼ってのは相手を信用してるから頼むんだよ?俺達を信用してるから頼んだんじゃないの?」

 

「それに危険な事は今まで沢山やってきたしね。」

 

「・・・そうじゃな、会って間もないとは言え、君達の言葉と強い意志を信用して頼もうとしたんじゃ、

逆にこちらが引きとめようとするのは失礼じゃな・・・うむ・・では、太一君にコロモン君、君達に今夜から夜の魔獣狩りに参加してもらう、

本来ならエヴァ達とチーム分けの相談をしたかったんじゃが、今回は刹那君と龍宮君達と組んでくれ、

報酬については後日連絡しよう。」

 

「いや・・・報酬なんか要らないよ・・俺達は俺達に出来そうな事をしようとしてるだけだから。」

 

「まぁまぁ・・・これは君達学生や客人に危険な依頼を頼んだわし等に唯一出来る事なんじゃ、受け取ってくれ。」

 

 

ネギの面倒を見る事で食費程度では有るが報酬は貰う事になっているので、いかに危険な依頼をさせるからと言って、

太一はこれ以上報酬を受ける気は無かったので、少し渋る感じであったが、学園長の好意を無碍に返すのも失礼かと思い、

仕方なく受け取る事とした。

 

そして太一は振り返り刹那と真名の方へ歩むのだった。

 

 

「よろしくな刹那・・・それと・・龍宮だったかな?」

 

「初めてとは言えパートナーを組むんだ、私の事は真名でいい・・・私も太一と呼ばせてもらおう。」

 

「あぁ・・・じゃあよろしくな真名。」

 

「よろしくお願いします。」

 

「よろしく・・・。」

 

 

話を終えいつの間にか、他の生徒達が登校しだす時間となった、今日学校に行ってる間コロモンは、今日は高畑がしずなの代わりにネギの付き添いをする事にして、

しずなに預ける事にした。

 

コロモンを預ける時しずなはどこか、ほわ~んとした顔でコロモンを受け取ったらしい。

 

 

「じゃあ行くか?」

 

「あぁ。」

 

「えぇ。」

 

「あぁ・・太一君、君は少し残ってくれんか?」

 

「?いいぜ。」

 

「では・・私達は学園長室の外で待ってる、色々と話したい事もあるしな。」

 

「分かった。」

 

 

太一達が学園長室を出ようとした時、学園長に呼び止められ、刹那達を学園町室前に待たせ、太一は学園長のとこに戻った。

 

 

「実は・・・エヴァについてなんじゃが・・・。」

 

 

学園長が太一にエヴァについて話そうとしていた丁度その頃、麻帆良市内にあるとある林道でエヴァと茶々丸が帰路にたっていた。

 

 

「あの小僧め・・・只の人間の分際で私に意見するなど・・・・。」

 

「マスター・・・今日1日はどうなさるおつもりですか?」

 

「夜まで寝てる・・・まぁ・・あの小僧の所為でぐっすり寝れるか分からんがな・・・それにあのじじぃの事だ、

今夜の狩りにあの小僧とあの丸っこいのを参加させる気だろう、私はその狩りの様子を見学させてもらうとするか・・・。」

 

 

ここでしばしエヴァは今日学園長室で会った太一について思い返していた、自分の殺気を真っ向から受けても怯む事無く自分の意志を伝え、

見下そうとも、決して怒ることなく「そうかもしれない」と認め、自分の弱いとこやみっともない事を話す人間、

そんな人間に会った事の無いエヴァは、少し太一にある興味を抱いていた。

 

そしてもう1つ彼女は気になる事があった。

 

 

(あの小僧・・・確かに私達の様な力は常に感じられなかったが・・・時折感じるあれは何だ?まるで接触の悪い電球みたいに、

現れたり消えたり・・・まぁ・・消えてる間の方が長く、現れても直ぐに消えていたが・・・。)

 

「マスター。」

 

「ん?何だ茶々丸?」

 

「いえ・・・八神さんとそのパートナーであるコロモンさんが、マスター達魔法関係者の事を知ってしまったので、

例の件に支障が出るかもしれませんので、それに関してマスターはどうお考えなのですか?」

 

「確かに・・・じじぃの事だ、あの小僧に私の事をおそらく話すだろうが・・・そうなれば確かに面倒になるかも知れんが、

それは今夜の狩りの様子しだいで計画を変えることのしよう・・・。」

 

「分かりました。」

 

「しかし・・・フフフ・・あの小僧私の正体を知ったら如何するのかな?妙に正義感が強いようだから・・私を退治しに来るかも知れんな・・・、

吸血鬼の真祖たるこの私を・・・。」

 

 

その顔は繋って来ようとも返り討ちにしてやると言わんばかりに不敵な笑みで満たされていたのだった。

 

 

「吸血鬼?」

 

 

一方学園長室では学園長が太一とコロモンにエヴァが吸血鬼である事を告げていた。

 

エヴァは600年程生きた吸血鬼の真祖で、かつては「闇の副音(ダーク・エヴァンジェル)」「不死の魔法使い(マガ・ノスフェラトゥ)」等の異名で知られ、

悪の魔法使いとして魔法関係である裏の世界では恐れられた存在であったが、15年ほど前に、ネギの父であり、

サウザンド・マスターのナギが掛けた「登校地獄」の呪いによって、麻帆良学園に通う事になったが、ナギ本人が失踪してしまった為、

エヴァは卒業する事もできずに今現在までの15年間、この麻帆良を出る事もできず学生をしているのであった。

 

 

「・・・あいつも苦労してるんだな・・・あんた達でその呪いを解く事はできないのか?」

 

「解けるのであれば解いてやりたいんじゃが・・・。」

 

「ネギ君のお父さん・・ナギの魔力は僕等とは比べ物にならないほど強大で、解こうとしても力負けしてしまうんだ。」

 

「なるほど・・・。」

 

「この事は魔法先生方は知っとるが、生徒達は極一部しか知らん、無論ネギ君には知らせてはおらん。」

 

「分かってる・・・ネギに知られない様にしろだろ?ちゃんと理解してるよ。」

 

「うむ・・・では・・もう行きなさい、女の子を待たせ過ぎる訳にいかんしのぉ。」

 

「あぁ・・そうするよ・・・じゃあ・・しずな先生放課後までコロモンをお願いします。」

 

「えぇ・・・この子の面倒はきちんと見るから安心して。」

 

「太一・・・。」

 

「昼飯頃に来るから・・・それまで待ってな・・・。」

 

「・・・分かった・・。」

 

 

コロモンは少し納得のいかない顔で了承した。

 

 

「お昼頃も学園長室に居るから、その時にまた来なさい。」

 

「はい・・・じゃあなコロモン、しずな先生お願いします・・・あっ!!そうそう・・そいつ普通にトイレとか行くんで、

気を付けて下さいいよ!!あと人間が食べる物なら何でも食べますんで。」

 

「分かったわ、気を付けるから行ってらっしゃい。」

 

「行ってらっしゃ~~い。」

 

 

コロモンはしずなから一旦離れ、ぽんぽんと弾み、太一に少し近づき、頭の触覚を左右に振って太一を見送った。

 

 

「・・・・・・かっ・・カワイイィ・・。」

 

 

しずなはそんなコロモンを見て、顔を赤くし両手を頬に当てプルプルと震えていたらしい。

 

学園長室を出た太一、刹那、真名の3人は大通りの近くまで来ていた、そこで見た光景に太一は唖然とした。

 

この学園の生徒達の殆どは学園内にある各駅を経由し各校舎に近い駅で降り、大通りを使い自分達の校舎へと向かう、

太一たち中等部が使う大通りの入口とも言える「麻帆良学園中央駅」から優に千人は超す程の生徒達であふれかえっていた。

 

駅から路面電車に乗り換えて通う者、スケートボードやローラースケート等を持参し路面電車に摑まる者に走る者、

それ以外殆ど自分の足で走り通う者達だった。

 

時折「購買部」と書かれた旗を掲げ、バイクの二人乗りをした人達が走行しながら走っている生徒達にパン等の販売をしていた。

 

 

「すごいな・・・。」

 

「始めてみる者は皆そう言う・・・私も始めて見た時は驚いた。」

 

 

太一達もその流れに乗って、早歩き程度の速さで自分達の校舎に向かった。

 

その最中周りの生徒達に聞こえない程度に今夜の狩りについてと、自分達の戦闘スタイルについて簡単に話し合った。

 

どうやら狩りとは現れた時のみに行い、普段はパトロールだけで済むらしい、そして主に魔獣と呼ばれる者が多く出現し、

魔獣より強い力を持ちハッキリした知性を持った魔物叉は悪魔と呼ばれる者も時に出現するがまれに現れるだけで、殆ど遭遇しないらしい、

そして中には麻帆良に侵入した不審者の対応、これは主に魔法関係者で何らかの目的に侵入し、学園側にいる魔法関係者達に危害を加える者達が多いらしく、

その者達の撃退なども入っている。

 

そして真名の戦闘スタイルは、魔法処理を加えた弾丸での長距離射撃戦術、幼い頃より銃での戦闘を経験しており、スナイパーとしての腕も一流らしく、

実力は魔法関係者の生徒の中でもトップクラスの実力者らしい。

 

刹那は刀身に気を込め強化した刀で戦う剣術での接近戦、彼女は「京都神鳴流」と呼ばれる退魔剣士の流派の使い手で、

実力は真名に並ぶトップクラスだと言う。

 

 

「じゃあ2人ともベテランなんだ。」

 

「まあな・・・君の戦い方はどうなんだ?」

 

「さっきも言った様に、俺が相手の強さに合わせコロモンを進化させて、その後はサポートするだけだ。」

 

「では・・・その進化後の特長を教えてください。」

 

「ん~~まずは成長期、名前は「アグモン」。」

 

「名前変わるんですか?」

 

「あぁ・・・進化すれば見た目や名前だけじゃなく種族や属性も大きく変わるのもいるぞ。」

 

「そうか・・・でっ・・そのアグモンとやらは何が出来るんだ?」

 

「アグモンは、見た目は小さい恐竜だな身長も俺の腰ぐらいだ、二足歩行で腕も生えてかなり戦闘向きになってる、必殺技は口から吐く火炎弾「ベビーフレイム」。

そして成熟期の「グレイモン」、恐竜型のデジモンでアグモンに比べるとかなり大きくて4~5メートル位あるかな?

頭には角が生え兜の様に硬い皮膚に覆われている、戦闘能力もアグモンの時と比べるとかなり上がっている、

必殺技は口から吐く巨大な火炎弾「メガフレイム」で、他にも角や爪を使った技を持っているから接近戦向きだな。

完全体は「メタルグレイモン」、体の半分を機械化したサイボーグ型デジモン、目立つ部分として頭と左腕全般と胸が機械化されてるな、

羽も生えて空中戦も可能だ、必殺技は胸のハッチから放つ有機ミサイル「ギガデストロイヤー」、他に機械化した左腕を飛ばす「トライデントアーム」もある。

完全体はデジモンの中で戦闘に関して完璧なステータスを持つ形体で、その戦闘能力はかなり高い。

最後に究極体の竜人型デジモン「ウォーグレイモン」、メタルグレイモンの時と比べると小さくなって人型になっているが、

これによって人間らしい動きが出来るようになった、「クロンデジロイド」と呼ばれる金属で出来た鎧を身につけている、

飛行能力を持ち、背中のウィング部分は盾にもなる、両腕にはドラゴンタイプのデジモンに有効なクロー状の武器、

「ドラモンキラー」を装備していて、それを合わせ竜巻の様に高速回転しながら相手に突っ込む「ブレイブトルネード」なんかもある、

必殺技は大気中のエネルギーを凝縮して放つ「ガイアフォース」がある、そして究極体はデジモンの最終進化形体にして、

戦闘に関し完璧な能力を持つ完全体を凌ぐ、完全を超えた究極の形体だ、魔獣や魔物がどれ位の力があるか分からないが、

もし完全体や究極体で戦う時は気を付けてくれ。」

 

 

一通りの説明が終わった頃には、周りはだいぶと静かになっていて、目の前には校舎が見え始めていた。

 

 

「・・・面白い生物だなデジモンとは・・しかし話だけでは今一強さが分からんな・・何か比べられる物は無いか?」

 

「種族や必殺技の特性にもよるが、成熟期のグレイモンなら戦車50機位なら戦っても余裕で勝てるかもな。」

 

「「えっ!?」」

 

「あっ!!確かメタルグレイモンのギガデストロイヤーは核弾頭一発分の破壊力はあるって聞いたな。」

 

「「はああああぁぁぁ!?」」

 

 

その桁外れの強さに思わず2人は大声を上げ驚いた、それに気付き何人かの生徒が太一達を見る。

 

太一は「何でも無い、何でも無いです。」と言いながら自分達に注目する生徒達に頭を下げながらそそくさとその場を立ち去った。

 

 

「いきなり大声出すなよ。」

 

「すみません・・・。」

 

「すまない・・・だが・・さっきの話が本当なら・・今日の狩の時は進化する時は私達に一言言ってからと、

なるべく成熟期までにしてくれ。」

 

「あぁ・・・分かった・・・。」

 

「太一君!!」

 

「ん?」

 

 

突如後ろから声を掛けられ振り向くと、そこには車椅子に乗った昨日友達になった少女がいた。

 

 

「レイ・・・。」

 

「おはよう太一君、刹那さん、龍宮さん。」

 

「あぁ・・おはよう。」

 

「おはようございます。」

 

「おはようレイ、1人で大丈夫なのか?」

 

「うん、いつもお兄ちゃんとお友達に送ってもらって、途中からは私だけで通う様にしているの、おかげで腕だけ変に力がついちゃった。」

 

「教室まで押そうか?」

 

「大丈夫、それに少しでも早く歩ける様に体力をつけとかないとね。」

 

「そうか・・・頑張れよ。」

 

「うん・・ありがとう・・・あれ?そのゴーグル如何したの?」

 

「そう言えば昨日はしてなかったな。」

 

 

レイは太一の頭に付けていたゴーグルに目が行った、昨日はしてなかったので、余計に気になったのであった。

 

 

「あぁ・・・これは俺の宝物だよ、わけあって後輩に譲ったんだけど、昨日俺宛に「元気出してください」って言って、

送られたんだよ。」

 

「ふ~ん・・・なんか・・しっくり来るね、初めて見たのに。」

 

「そうなんだ・・・私もそう思ってたんだ。」

 

「何故か私も。」

 

「そうか?」

 

「うん。」

 

「あぁ。」

 

「はい。」

 

 

やはり太一にはゴーグルを着けた姿がしっくりする(と我等は思うのです)。

 

そんな話をしながら4人は校舎の中に入り、自分達の教室へ向かおうとしたら、後ろからネギ、明日菜、木乃香の3人が近寄って来た。

 

 

「皆さんおはようございます。」

 

「よおネギ、おはよう。」

 

「太一さん・・・昨日はすみませんでした。」

 

「ほんと・・・転校早々あんたも大変な目に合ったわね・・・。」

 

「もういいよ・・・過ぎた事だし、これからは気を付けろよ。」

 

「な~な~昨日何があったん?うちにも教えて~。」

 

「あ~~昨日こいつ身分証明書兼教員免許書落として泣きべそ掻いてたんで、一緒に探したんだよ。」

 

「たっ・・・太一さん」

 

(話を合わせろ、落としたのは事実だし半べそ掻いてたのも本当だろ?明日菜も良いな?)

 

「(分かった。)本当にガキなんだから。」

 

「(うぅ・・分かりました。)すみません・・・。」

 

「ふ~んそうなんや、ネギ君これからは気を付けなあかんで、あっ!!せっちゃんおはよ~。」

 

「あっ・・・。」

 

 

木乃香が刹那に挨拶をするも、刹那はどこか困った表情で木乃香を見ていた、そしていつもの冷静な表情に戻り。

 

 

「すみません、用事がありますので私はこれで。」

 

「えっ?おい・・。」

 

 

そう言い残し少し頭を下げそそくさとこの場から去って行く刹那、そんな刹那を不思議に思う太一と、

どこか悲しそうに刹那の背を見る木乃香だった。

 

 

「せっちゃん・・・。」

 

「・・・・・・・。」

 

 

その後教室に入った太一達だが、刹那の姿は無く、ホームルームが始まる直前にようやく刹那が教室に入って来た。

 

そしてホームルールが始まると、今日はコロモンの面倒を見て貰っているしずなの代わりに、高畑がネギの付き添いとしてネギと一緒に教室に入って来た。

 

予想外の高畑の登場に明日菜のテンションは一気にハイになり、高畑にお上品に接しようとするも無駄に上がり切ったテンションの所為で、

所々で言葉はカミカミで何を言っているのか分からないが、明日菜自身がそれに気付かず口を動かし思いっきり恥じの上塗りをしている様を、

高畑を含むクラスにいるほぼ全員が苦笑いで眺めていた。

 

そしてお約束で委員長であるあやかが突っ掛かり、これまたお約束で喧嘩が勃発し、どちらが勝つか賭けが始まり、

ネギが涙を流しながら止めに入るもあえなく弾き飛ばされる、その様子にいち早く気付いたあやかが逆上し喧嘩はエスカレート、

それに合わせクラスのテンションも一気にヒートアップした。

 

そんな中で太一は苦笑いしながらもその光景を余所目に、木乃香と刹那を見ていた。

 

木乃香は明日菜達を笑顔で眺めつつ時折刹那の方を見ていた、刹那は相変わらずでネギに呆れた感じで俯いており、

木乃香はそんな刹那を見て少々悲しい表情であった。

 

 

「・・・なぁレイ。」

 

「えっ何?」

 

「近衛と刹那って仲悪いのか?」

 

「このちゃんと桜咲さん?ん~・・・仲が悪いって訳じゃないと思うけど、近衛さんが話し掛けてもさっきみたいに直ぐどっか行っちゃう事は多いわね。」

 

「そうか・・・。」

 

「私もよく分からないの、桜咲さんってあまり人と関わりを持とうとしないみたいだし、登校の時太一君と一緒にいた事だけでも結構ビックリしたよ。」

 

「そうなの?」

 

「うん、でも近衛さんは桜咲さんの事最初から「せっちゃん」って呼んでるから、前から知り合いだとは思うけど・・・。」

 

「ふ~~ん。」

 

「2人の事気になるの?」

 

「あぁ・・・どうも・・ああ言うのほっとけないんだ。」

 

「優しいんだね。」

 

「お節介とも言えるがね。」

 

「うわぁぁぁん!!皆さん席に着いてくださ~~~い!!」

 

「・・・・・(こっちも何とかしないといけないのか)はぁ・・・。」

 

 

ネギの悲痛な叫びと共に、太一もこれからの襲ってくる心労を思うと溜息を漏らすのであった。

 

太一が溜息を付いたその後、高畑の助けもありホームルームは何とか終わり、その後の午前中の授業も難無く終わり、

その際も、木乃香が何度か刹那の方を気にしていて、何度か声を掛けていたが、刹那はそそくさとどこかに行くばかりであった。

 

昼食の時間になったので、約束通りコロモンが待つ学園長室へ向かう事にした太一は、鞄の中から弁当を取り出し教室を出ようとしていた。

 

 

「太一君、お昼一緒に食べない?」

 

「ごめん・・・先約があるんだ・・また今度な。」

 

「そう・・・じゃあまた今度ね。」

 

 

レイの誘いを痛む良心を押し切り、コロモンとの約束を優先し学園長室へ向かうが、最中ある人物と遭遇した。

 

 

「私もご一緒して良いかな?」

 

 

真名であった、その手には彼女の昼食であるパンが入っている袋が吊るされていた。

 

どうやら今夜の事でコロモンとも話しておきたいらしく、付いて行くと言うのだった。

 

 

「いいぜ、じゃあ刹那も居た方がいいな・・・。」

 

「いや、刹那は来ないよ、あいつは別の任務でそっちの方に行ってるからな。」

 

「別の任務?」

 

 

詳しくは真名から聞けなかったが、刹那は狩の時や、学園長や魔法先生からの緊急の呼び出し等が無い限りは、

その任務を常に実行しているらしい、その任務が誰からの任務で、何時から始まっていて何時終わるのかは教えてもらえなかったが、

刹那は進んでやっているらしく、特にそれ以上は聞こうとはしなかった。

 

2人が学園長室に着くと、室内には学園長とコロモンを抱えたしずなが待っていた。

 

 

「太一~~~。」

 

 

コロモンは太一の姿が見えると、すぐさましずなの腕から飛び降り太一の方へ飛び跳ねて行き、太一の頭の上に着地した。

 

 

「お待たせコロモン・・・しずな先生ありがとうございました。」

 

「いいのよ太一君、コロモンちゃんとってもいい子だし、先生のお手伝いもしてくれて、ありがとコロモンちゃん。」

 

「えへへ・・・。」

 

 

まるで幼稚園児の弟を迎えに来たお兄さんと保育園の先生との会話であった。

 

 

「待っとたぞ2人とも。」

 

「桜咲さんは・・・いつものやつね。」

 

 

しずなの反応を見てどうやら学園側、主に魔法先生方には刹那の任務について知っている様だと気付いたが、

太一は刹那の任務が気になったもののあえて聞かない事にした。

 

その後、太一と真名はコロモンを交えて昼食を食べながら、今夜の狩についてと、真名と刹那の戦闘スタイルについて簡単な説明をし、

コロモンの進化について軽く注意をした。

 

もちろん、コロモンの進化後の戦闘力を聞いてなかった学園長としずなは、コロモンが進化した後の力を聞いて、

目を丸くして絶句したらしい。

 

昼食を食べ終え太一は食後の散歩と言いコロモンを再度しずなに預け学園長室から出た、真名は銃の手入れをすると言い太一と別れた。

 

昨日昼食をとった場所の壁際辺りを歩きながらある事を考えていた。

 

 

(真名はともかく・・・刹那には・・まかせられるかな?昼飯での様子を見ると真名はコロモンとも仲良くやっていけそうだが、

刹那はな・・・狩をする前に出来るだけハッキリさせとくか。)

 

「きゃっ!!」

 

「ん?」

 

 

突如太一の頭上から女の子の小さく短い悲鳴が聞こえ、太一は何事かと思い上を向いた、すると。

 

 

「げっ!?」

 

 

頭上から太一目掛けて大量の本が落ちてきたのだ、しかも広辞苑並みの厚さで、厚紙で出来たケースに収まっているので、

かなりの重量と硬さが予想できる代物ばかりであった。

 

 

ガン

ゴン

バキ

ガス

ゲス

ドカ

ゴキ

バカ

ドゴ

グシャ

「ぶっぎょろぷしゃらけぶ!!」

 

 

咄嗟の事に避ける事もふせる事も防ぐ事も出来なかった太一は、落ちて来た本が全て顔面に当り(殆ど角で)、

鈍い音(最後に何かが潰れる様な音)がした後、何が何だか分からない奇声を上げその場に倒れるのだった。

 

太一が倒れた後直ぐ、その場に駆け寄る人物がいた、太一の頭上で本を落としてしまった本人、太一のクラスメートの「宮崎のどか」であった。

 

 

「大変!!今変な声が聞こえたけど・・・もしかして・・・。」

 

 

のどかは急いで階段を下り、声のあった方もとい本を落とした方へと向かい、そこでのどかは本に埋もれ悲惨な顔に変形し倒れている太一を発見した。

 

 

「あっ・・・あれって・・八神君?どっどど・・・どうしよう?」

 

 

無残な姿で倒れているクラスメートを見て、のどかは軽いパニック状態に落ち掛けていた。

 

 

「いっ・・痛たたた・・・・。」

 

「あっ・・・。」

 

 

しかし太一は痛む顔を手で押さえながらゆっくりと起き上がり、周りを見渡した後ゆっくりと上を見上げた。

 

 

「何で本が空から降って来るんだ?しかもこんな厚く重量級で硬いのばかり?俺此処に来て2日目だけど最悪な目にばっかり遭ってない?

・・・・ん?」

 

 

等とぼやきながら視線を戻すとそこには、何度か見た顔があった、何時も前髪で目の辺りを隠していて今一顔がよく分からないが、

本をよく読んでいて、クラスの1/3程の生徒が彼女を「本屋」と呼んでいる事位しか太一は知らない。

 

のどかが何時も本を読んでいる事を思い出した太一は、本を落としたのはのどかではないかと思い、のどかに問いかけた。

 

 

「あぁ・・・宮崎のどかだっけ?」

 

「はう!!・・・あっ・・あの・・その・・・・えっと・・・・はい・・・。」

 

「(何だこの子?只名前聞いただけなのに、異常なまでに挙動不審だな。)あのさぁ・・・この本・・・君の?」

 

「あう!!・・・これは・・その・・えっと・・・・これは・・あの・・はい・・・・それは・・・私が・・運んで・・いた・・・本です・・・。」

 

「・・・・・何で・・それが俺の顔に?」

 

「うぅ!!・・・・その・・・えっと・・・実は・・え~と・・・その・・・運んでいる・・・最中に・・・・転んじゃって・・・。」

 

「・・・そ・・そうか(この子・・・やりにくい、会話ってこんなに難しかったか?)、あっ・・・あのさぁ・・別に怒ってないから。」

 

 

木乃香との会話に少々疲れながらも、周りに散らばっている本を拾い上げ、半分ほど拾い終わると、木乃香に歩み寄った。

 

 

「これ明らかに女の子1人が運べる数じゃないだろ?運ぶの手伝うよ・・・ほら。」

 

「あうぅ・・・・。」

ススス

 

「ん?」

コッ

 

「はうぅ・・・・。」

ススス

 

 

のどかは太一が近づくにつれ、怯える様子で、同じ極同士で反発し合う磁石の様に離れるのだった。

 

 

「・・・あのさぁ・・・。」

コッ

 

「うぅぅ・・・・。」

ススス

 

ピキッ

「だからさぁ・・・・。」

コッコッコッ

 

「あぷぷ・・・・・。」

ススススススススス

 

ピキピキッ

「何で・・・・・・。」

コッコッコッコッコッコッ

 

「はわわわわ・・・・・・。」

スススススススススススススススススス

 

ビキビキビキッ

(こいつはぁ・・・・試しに後ろに一歩・・・。)

コッ

 

「あうぁうぁうぁ・・・・・・。」

ススス(更に後退)

 

ビキビキビキビキビキッ

「・・・・・・・・・・。」

 

 

近づいたら離れようとして、後ろに下がっても更に離れようとするのどかに対し、額に幾つもの青筋をうかべながらも、

なんとか平静を保ちながら、太一はのどかに半笑いだが落着いた静かな声で話しかける、そして・・・・。

 

 

「あのさぁ・・・さっきも言ったけどさ、別に怒ってないから・・・怖がらなくてもいいよ・・・。」

 

「はうぅ!!」

ブルブルブル

 

 

今度は後退するどころか、その場で蹲り両手で耳を押さえる様にしてブルブルと震えだすのだった。

 

これにはさすがに我慢していた太一も。

 

 

ブチーーーン

「何でだよおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 

キレた・・・・。

 

 

「俺そんなに怖い?それとも俺の後ろに何か見えなくて足の無い人でも居る?居るんだったら、九州に転任した雪女と結婚して、

村山元首領眉毛で、左手に何時も黒手袋をしている有名な小学校教師を、漫画だろうが!!テレビの中だろうが!!引っ張り出して除霊して貰うからなぁ!!

と言うか、何故か俺の中で、悪霊見たいのに取り付かれたらその教師に相談しろって、俺の中で叫んでる!!」

 

 

この時チラッと太一の方を見たのどかは、何か訳の解らない事を叫んでいる太一の後ろに、胸に「童守」と書かれたサッカーのユニフォームを着た、

短髪で前髪が少し跳ねた小学生位の少年がピースしているのが、見えた様な見えなかった様な・・・・。

 

一通り叫び終わった太一は、落ち着きを取り戻し、息を荒くしながらのどかを見た。

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・すまない・・・・今一瞬何かに取り付かれていた・・・けど・・何か懐かしい感じがしたなぁ・・・。」

 

「うぅぅ・・・・。」

 

「・・・・はぁ・・あのさぁ・・・・何もしないから・・・君の持ってた本を渡すだけだよ・・・。」

 

「はぅぅ・・・・・・。」

 

「ふぅ・・・・如何したらいいん・・・。」

 

 

太一が如何しようか悩んでいたその時、背後から近づく小さな人影に太一は気付かなかった。

 

そして、その小さな人影は何やら大きくて四角い物を持って、大きく振り上げ様としていた、そして・・・・。

 

 

「のどかを虐めるなです~~~~~~!!」

 

ドッゴオオオオオオオオオオオオン!!

「ぐはらばはああああああああああああ!!」

 

「夕映!?」

 

「大丈夫ですかのどか?」

 

 

広辞苑サイズの本3冊を束ね、角の部分で太一の後頭部を、ある種の殺意とも言える感情を交えて、勢い良くどついたのは、

背が小学生とも思えるほど低く、長髪でおでこがかなり広いのが特徴のクラスメート、「綾瀬夕映」だった。

 

夕映は太一をどついた後、太一が後頭部を両手で押さえながら蹲っているのを見ると、のどかの方へと駆け寄り、

彼女を守る様にのどかの前に立ち、太一に向かい叫んだ。

 

 

「おっ・・・おおぉ・・・・・・。」

 

「のどかに何をしようとしたのですか?もしかして先日の彩羽に引き続き、のどかにまで手を出すというですか?

何と言う下種な人間なんですかあなたは、そんな軽薄で軽い男だから振られるのは当然です!!あほな事はせずに己を自身、汚れた心の汚れを落とし、

己を磨き真に愛する人の為に愛の言葉を告げるのです!!」

 

「あ・・・あの・・夕映・・・・その・・・。」

 

「のどかは気にする必要は無いのです・・・悪いのは全てこの男なのですから。」

 

「い・・言ってくれるねぇ・・・・。」

 

「はっ!?生きていたですか?」

 

「殺す気だったんかい!?」

 

 

よろよろと立ち上がりながら夕映を睨む太一、夕映はと言うとまるで害虫を見る目で太一を見るのだった。

 

 

「女性を・・・しかも大人しいのどかを襲うなんて、そんな野蛮な人間に生きる価値無しです!!」

 

「理由も聞かずに後頭部にそんな凶器染みた物ぶつける様な奴に言われたかないわ!!」

 

「はうぅ・・・はうぅ・・・。」

 

「大体そんな古臭いゴーグルなんかしてかっこいいと思っているですか?今時の小学生のほうがまだオシャレです!!」

 

「これはそんなんじゃねえ!!俺の大事な宝物だ!!」

 

「あぷぷ・・・あぷぷ・・・・。」

 

「昨日からナンパばかりしているあなたがそんな事言っても信じられません!!」

 

「ナンパなんかして無いって何度も言ってるだろうがああああ!!」

 

「はわわ・・・はわわ・・・・・・。」

 

 

太一と夕映の口論が始まり、のどかは如何すればと混乱しウロウロしていた。

 

そんな3人を見ていた者達がいた。

 

 

「な~な~、そろそろ止めに入った方が良くない?」

 

「面白いからもっと見ていたいけど、さすがにこれじゃ彼が可哀想だね。」

 

 

ますますヒートアップする太一と夕映の口論を止めに入る為に近づいてくるのは、学園長の孫娘の木乃香と、

眼鏡を掛けた、頭の上に触覚の様に飛び出ている髪が特徴の「早乙女ハルナ」であった。

 

 

「はいはい、転校生君も夕映にのどかも落着いて。」

 

「ん?早乙女に近衛・・・。」

 

「あっ・・・ハルナ・・木乃香・・。」

 

「八神君頭大丈夫なん?」

 

「頭と言うか頭部で表す箇所全体と心が痛いよ・・・。」

 

「木乃香!!こんな男の心配する必要ないです!!この男の所為でのどかがどれほど怖い思いをしたか・・・。」

 

「でもな~夕映~・・・。」

 

「私達最初から見てたけど、主な被害者はこのゴーグルボーイなのだよ。」

 

「なっ!?」

 

「・・・・ん?おい。」

 

「のどかが落とした本全部下におった八神君に当って。」

 

「取りに来たのどかに怒りもせずに渡そうとしたのに・・・。」

 

「ほら・・・のどか男の子が苦手やろ?怖がってしもうて、蹲ってしもうたんや。」

 

「では・・・襲っていたのではなく・・・・。」

 

「本を渡そうとしてただけ、完全な夕映の勘違い。」

 

「あ・・・・・・・・。」

 

 

夕映はバツが悪そうに、ゆっくりと太一の方を向くと、明らかに怒り顔の太一に冷や汗を垂らし黙り込んでしまうのだった。

 

そして次に彼女の口から出た言葉は・・・・。

 

 

「・・・やっ・・ややこしい事するなです!!」

 

「謝れよ!!勘違いで人の頭殴ったんだから謝れよ!!それとお前ら見てたんなら助けろよ!!」

 

「いや~~悪いとは思ったんやけどな・・・。」

 

「面白かったからつい眺めてた。」

 

「ふざけんなあああああああああ!!」

 

「はぅぅ・・・はぅぅ・・・・。」

 

 

太一の悲痛な叫びが学園内に響き渡り、事態は収拾した。

 

 

「・・・ご免なさいです・・・・。」

 

 

不服そうに、太一に謝罪の言葉を口にする夕映。

 

太一は多少不機嫌ながらも、謝罪したのだからこれ以上怒っても仕方ないと素直に夕映を許すのだった。

 

 

「のどかも怪我は無いみたいだし、私達は本を返しに行くから、木乃香は八神君を保健室に連れてってね。」

 

「うん、わかった、ほな八神君行こか。」

 

「あぁすまない。」

 

「襲ったらあかんよ~。」

 

「襲うか!!そのネタもういいから、これ以上俺を疲れさせないでくれ!!」

 

「あはは・・・ごめんな~。」

 

 

太一と木乃香は3人と別れ、怪我を治療する為保健室へと向かう、木乃香は案内として付き添う事となった。

 

 

「八神君、夕映の事ごめんな。」

 

「もういいよ、ちゃんとあいつから謝って来たし(不服そうだったけど)、近衛が謝る事じゃないよ。」

 

「あっ・・・ウチの事は木乃香でええよ、八神君の事も太一君でええかな?」

 

「あぁ別にいいぜ・・・、なぁ木乃香・・・。」

 

「何?」

 

「木乃香って・・・刹那と何時からの知り合いなの?」

 

「せっちゃん?せっちゃんと私は小さい頃から友達やで。」

 

「小さい頃から?」

 

「うん。」

 

 

木乃香は懐かしむ様に刹那との事を話し出した。

 

木乃香と刹那は、木乃香がまだ幼く京都の実家で住んでいた頃に2人は出会って以来の、初めての友達で、

一緒に遊んだり、危ない時には何時も守ってくれたりと、とても仲の良い友達同士だったと話す。

 

刹那との思い出を話す木乃香の顔は、今日見た中で一番輝いている様に太一は見えた。

 

しかし刹那の剣道が忙しくなり会う機会が少なくなり、木乃香も麻帆良に引っ越してしまい、

刹那が麻帆良に引っ越して来た中学1年まで全く会う事は無かった。

 

 

「ウチ・・・。」

 

「ん?」

 

「何か悪い事したんかな・・・せっちゃん・・昔みたく話してくれへんよーになってて・・・。」

 

「木乃香・・・・。」

 

 

この時木乃香の目には、うっすらと涙がたまっていて、とても悲しく淋しい表情だった。

 

 

「あぁ・・ゴメンな・・・・こんな暗い話してもーて・・・。」

 

「いや・・・俺が聞こうとした事だから・・・お前が謝る必要は無いよ・・すまない。」

 

「ん~ん・・・でも何でウチとせっちゃんの事聞こうとしたん?」

 

「・・・今朝の事が気になってな。」

 

「あぁ・・・あの時の・・・ゴメンな・・気遣わせて・・・せっちゃんもあの時機嫌が悪かったかのかもしれんし・・・。」

 

「大丈夫だよ・・・。」

 

「え?」

 

「久しぶりに会って、どう接すればいいのかわからないだけだよ、恥ずかしがっているだけかもしれないし、

それが尾を引いていて、未だに話しかけられないだけかもしれないしな。」

 

「でも・・・。」

 

「俺の友達に・・・似た様な奴がいるんだよ・・・そいつも色々あってな、訳あって俺達と距離を置くようになったんだ。」

 

 

太一は仲間であり親友である「石田ヤマト」の事を思い出していた。

 

最初の冒険の時太一とヤマトは意見の違いから幾度となく衝突したが、それでも直ぐに仲直りはしていたが、

弟のタケルが自分を必要としないほど強く成長していると感じ、他の仲間が良い方向に変わってきているが、

自分だけが変わっていないと感じ始め、自分の内面を戦う様になり、1度仲間と別行動をとるようになった。

 

その後ヤマトのパートナーのガブモンの励ましにより、タケルの成長を受け入れ、他の仲間達との隔たりも消え仲間の元へ戻ってきたのだった。

 

 

「・・・その人とはどうなったん?」

 

「直ぐに仲直りしたよ、そいつ自身の迷いや不安を払いのけていな・・・だけどそれには決して自分1人だけで出来る事じゃない、

そいつを心から思い、信じ、支えられる仲間や・・・友達がいたから出来たんだ・・・木乃香みたいな友達がな、だから・・木乃香も刹那を信じろ、

あいつが悩んでるなら・・・苦しんでるなら、助けてやれ。

お前の知ってる刹那と今の刹那、今も昔も変わらないお前の大事な友達だと、そして何時か以前の様に笑顔で話し合える様に。」

 

 

太一の言葉に木乃香は、不安が消えたのか明るい顔で太一を見た。

 

 

「ありがと太一君、せやな・・・何時までたってもせっちゃんはせっちゃんや・・・もし何かで悩んでる事があるんやったら、

うちが助けたる、そして前みたいに笑いながら話せる様に・・・。」

 

「あぁ頑張れよ・・・。」

 

「うん!!」

 

 

今日はじめて見る一番の笑顔で答える木乃香であった。

 

そしてそんな2人を見詰める、いや睨みつけている人物がいた。

 

 

「案内してくれてありがと、後は自分でするから木乃香は教室に戻ってなよ。」

 

「じゃあそうするわ・・・太一君また後でな。」

 

「あぁ・・・(昨日より強い殺気だな・・・。)。」

 

 

太一はこの視線と殺気に覚えがあった、そして本人に気付かれない様に視線をずらし保健室に入って行った。

 

その視線の正体は・・・。

 

 

(刹那の任務ってのは木乃香に関係しているみたいだな、あの感じからすれば多分・・・まっ・・今晩一応鎌を掛けてみるか、

このままじゃあの2人すれ違うばかりだし・・・なにより刹那の為にもならねえしな・・・それに今のままじゃ安心して背中任せられねえや。)

 

 

その後、午後からは特に大した事も無く無事に授業は全て終わり、コロモンを向かいに行き、学生寮の自分の部屋に戻った太一達は、

今夜の狩の為、早めの就寝についた。

 

午後9時前、目覚ましが鳴り目を覚ました太一とコロモンは、買っておいたコンビニの弁当をたいらげ、顔を洗いすっきりしたところで、

約束の場所へと向かった。

 

午後11時から狩りの開始なので、その30分ほど前から集合との事だったので、太一が到着した時間は午後10時半だった。

 

だが集合場所には既に1人待っている人物がいた。

 

 

「よっ刹那。」

 

 

刹那であった。

 

 

「こんばんは八神さんコロモンさん。」

 

「こんばんは。」

 

「真名はもう指定の場所に居るのか?」

 

「はい・・・龍宮は既に狙撃ポイントで待機してます。」

 

 

真名はこの場にはいない、真名は後方支援として今回の狩のエリアである、麻帆良学園の裏側にある森を一望でき、

尚且つエリア内なら何処でも狙撃が出来るポイントである、崖の上で待機していた。

 

 

「・・・・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

 

太一と刹那の間に重い空気が漂った。

 

どちらかと言うと刹那から疑心の目と軽い殺気が向けられているからであった。

 

 

「・・・太一・・・。」

 

「何だ?」

 

「何で刹那怒ってるの?太一何かした?」

 

「いや・・・直接はして無いと思うよ・・・・これからするけど。」

 

 

そう言うと太一はコロモンを地面に置き刹那の方へと歩を進めた。

 

 

「刹那・・・。」

 

「・・・・・何か?」

 

「・・・今日の昼間、木乃香と何話したか教えようか?」

 

「!?」

 

「やっぱりな・・・詳しくは聞いてないが、お前が続けてる任務って言うのは木乃香に関する事か・・・おそらく護衛か何か・・・、

違うか?」

 

「・・・いえ・・・その通りです。」

 

 

一瞬驚きもしたが、直ぐにいつもの表情へ・・・いや、明らかにその瞳に怒りの色を浮かべながら太一を睨み、

太一の質問に答えた。

 

 

「ですがそれが何か?あなたには関係の無い事です。」

 

「確かにな・・・でも、俺にとっちゃ友達に関する事でもあるんだよな。」

 

「・・・・・。」

 

 

刹那は無言で太一を睨みつけたまま、太一の言葉に耳を傾ける。

 

 

「何故あいつを突き放す?護衛なら傍に居た方がやりやすいと思うけどな、友達なんだろ?いや・・・お前にとっては「友達だった」か?」

 

「・・・・・・。」

 

「図星か?今朝エヴァと話した時、お前と似た様で違う様気配・・力かな?そんな物を感じたが、

お前はもしかしてエヴァとおな・・・。」

 

「くっ!!」

 

ジャキ

 

「太一!!」

 

「来るなコロモン!!」

 

 

刹那は突如刀を抜き太一に向ける。

 

コロモンが駆け寄ろうとするが、太一がそれを止めた。

 

 

「・・・大丈夫。」

 

 

軽く笑いコロモンにそう言い、再び刹那の方へと顔を向ける。

 

 

「あなたには関係の無い事だと言ったはずです!!それ以上の詮索はやめて頂きたい。」

 

「・・・声には出さないが俺の予想通りなら、それが木乃香と距離を置く理由か。」

 

「確かに私は木乃香お嬢様の護衛を言い与えられています。

距離を置くのは・・・こちら側の事を知られない為と巻き込まない為です・・・それ以外の理由などありません!!」

 

「・・・・そうかい・・・・口では何でも言えるが・・・お前の目は違うって言ってるぜ。」

 

「何ですって?」

 

「似てるんだよお前の目は、俺のよく知ってる奴にな・・・お前の目は悩んでいる奴の目だ、それも自分に対し、友達に対してな。」

 

「・・・・・。」

 

「どうなんだ?」

 

「私は・・・これからもお嬢様を御守りする・・・これからも今までの様に・・・・これまで通りに・・・。」

 

「・・・・お前あいつの・・。」

 

ザザ・・・

『何をしている2人とも?』

 

「!?」

 

「真名?」

 

 

太一が何かを言おうとした時、事前に真名から渡されていた無線機から、真名からの通信が来て、

太一と刹那は急の通信に驚き、太一は慌てて無線機をとる。

 

 

『もうじき開始の時間だというのにお前達は何をしているんだ?』

 

「ゴメンゴメン・・・ちょっと気に触る事言って、刹那を怒らせちゃって・・・。」

 

「・・・すまない龍宮、大丈夫だ・・・問題無い。」

 

『そうか、なら良いんだが・・・命を落としかねんのだから気を引き締めてもらわなくては困る、特に太一とコロモンは、

今回の様な事は初めてなのだからな。』

 

「ゴメン。」

 

「ごめんなさい。」

 

『刹那も何を言われたかは知らんが、気を付けろ。』

 

「・・・・すまない。」

 

 

各々真名に注意され、各自申し訳なさそうに真名に謝るのであったであった。

 

 

『ところで真名、本当にそこから僕達が見えるの?』

 

「あぁ・・・よく見えてるよコロモン、丁度君が太一の肩に乗って無線機に話しかけているのもね。」

 

『すごいね・・・。』

 

「これぐらい出来なくてはスナイパーは勤まらんからな。」

 

『真名、俺達はお前の実力をこの目で見た事が無い、正直不安はある・・・。』

 

「それはそうだな・・・・。」

 

『だけど・・・。』

 

「?」

 

『仲間である限り、俺達はお前に背中を預ける、お前の腕信じてるぞ。』

 

「・・・・あぁ私もだ・・・もう直ぐ時間だ、後は定時連絡と状況報告のみにしよう、じゃあまた後で。」

 

『あぁまたな。』

 

 

通信を終えた真名は、無線機を置き壁にもたれながら呟いた。

 

 

「ふぅ・・・何なのだろうな?あいつの発する言葉は妙に説得力があって、普段なら初めて組む相手の事など信用できんのに、

あいつはそんな物関係無しで信用させられる・・・それがあいつの魅力であり力なのかも知れんな・・・。」

 

 

太一の言葉に、真名は妙な安心感を感じ、残り少ない狩りまでの時間を過ごすのだった。

 

そして・・・。

 

 

「11時になりました・・・行きましょう。」

 

 

狩りが始まった。

 

刹那を先頭にして森へと向かい始める太一達、コロモンは太一の頭の上に乗って、刹那に聞こえない様太一に声をかけるのだった。

 

 

(太一・・・大丈夫だった?)

 

(あぁ・・・大丈夫だよ、でも失敗だったな・・・狩りが始まる前に何とかしようとしたんだけどな・・・。)

 

 

太一は先頭を行く刹那の背を見詰めながら呟くのだった。

 

 

(お前が他人と距離を置き、自分自身に迷いがある限り、俺はお前に安心して背中をまかせられない・・・俺達にとって初めてのこの狩り、

何事もなければいいが・・・・。)

 

 

しかし、この太一の不安は現実の物となるのであった。

 

そして、そんなことを知るよしも無い2人と1匹は、漆黒の闇と化した森の中へと歩を進め、森の中へと消えていったのだった。

 

 

続く

 




次回予告
狩りを開始し、現れた魔獣と激しい攻防の中、
突如現れた悪魔が刹那の心を闇へと誘う。
デジヴァイスを封じられ、
刹那を救おうとする太一に、
邪悪な牙が襲い掛かる。
その時太一の内に眠る、隠された力が覚醒する。
次回
デジモンアドベンチャーMAGI
『襲い掛かる牙!!目覚める太古の力!!』
今・・・冒険が進化する。
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