アクセル・ワールド~蒼き閃光~   作:ダブルマジック

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 加速世界でわずか7人しかいないレベル9バーストリンカーの1人、《ブラック・ロータス》こと黒雪姫と対面を果たしたテルヨシは、そのあと最初に話しかけてきた少女、若宮恵(ワカミヤメグミ)ともネームタグを交換。

 恵は話に突然割り込んできた黒雪姫とも物怖じすることなく自己紹介をしていた。

 ちなみに黒雪姫は1人だけ他の生徒とは違う黒でコーディネートされた制服を着ていたのだが、本人談で校則にはギリギリ抵触しないらしく、テルヨシは黒が好きなんだなと思わざるを得なかった。

 それから学校もすぐに放課となり、早速出来た新しい友達や先輩と共に帰る。部活動見学に向かうなどで騒がしく教室を出ていくクラスメート達を、テルヨシは何気なく見ながら待機。

 十数分後には教室にテルヨシと黒雪姫、そして恵だけとなっていた。

 

「お2人はこれからご予定でも?」

 

「恵は彼氏でも待ってるのか?」

 

「テルはずいぶんストレートですわね。ですが違いますわ。彼氏もいませんし」

 

 先程の休み時間ですでに呼び捨てと愛称で呼び合うようになったテルヨシと恵は、さながら昔からの旧友であるかのように自然な会話をする。

 

「そいつは意外だ。恵なら彼氏の1人や2人や5人くらいいそうなのに」

 

「テル、それは私が遊んでいるとでも言いたいのでしょうかね?」

 

「まさか! 恵は可愛いよって例えをだな……って、話が逸れたな。姫と一緒に帰るんだろ?」

 

「ええ、そうしようと思ってたところでしたけど、何でわかったんですか?」

 

「こいつは今まで教室にいた生徒を『観察』していたのだ。大方そこから得た情報から推測したんだろうさ。心理学というのは学ぶと人間観察が趣味になるのか?」

 

 テルヨシの心を読んだような言動に対して、黒雪姫はそんなトゲのある言葉で予測したことを言う。

 

「オレはまぁ、行動心理をやってたから癖でなんだが……何でもかんでもわかるわけじゃねーよ。さっきのだって選択肢を減らすための質問だぜ?」

 

「彼氏がどうこうの話か? なるほど、そうやって取捨選択していくのか。いやらしい癖だな」

 

「恵ぃー、姫がいじめるよー」

 

「わたしも探られてるみたいで良い気持ちではないですけど、職業病のようなものなのでしたら、なるべくしないように努力してくださいね」

 

「保証はできない。何故ならそれがオレを構成する要素の1つだからだ!」

 

「「胸を張るな」」

 

 そんな調子のテルヨシに思わず黒雪姫と恵も声を揃えてツッコむ。

 それには言った本人達がお互いの顔を見合って笑っていた。

 

「一緒に帰るのだったな。では恵、途中まで行くとしよう」

 

「ふふっ。ええ、行きましょう。ではついでにテルも一緒に帰りますか?」

 

「ついでってなんか悲しい響き……でも悪いな。オレはちょっと個人的な用があるから遠慮するよ。また今度誘ってくれ。もちろんデートでも全然歓迎するぜ!」

 

「軽いですわね」

 

「軽いな」

 

「日本人って冷たい……」

 

 知り合った初日でもう2人に『軽い男』のレッテルを貼られたテルヨシは、最近まで暮らしていたアメリカとの違いに本気で落ち込んでいた。

 そんな調子のテルヨシを見てまた笑いが込み上げた2人は、からかうのもそれでやめて改めて帰ることを告げると、教室を出ていった。

 そして1人になったテルヨシは、恵に言った通り『個人的な用』を果たすために少し思案し始めた。

 個人的な用とは、先程の黒雪姫。ブラック・ロータスとの対戦の最中に言った『デビュー戦』。

 悩んでいるのはそのデビュー戦を飾る戦域についてだ。

 本来そこまで深く悩むことではないが、これからたくさんの対戦を重ねる中で、テルヨシのリアルを割ろうとする輩が出ないとは限らない。

 そうした時にテルヨシが『よく出没する戦域』を特定して、そこからリアルが割れるかもしれない。

 そしてデビュー戦ともなると、その戦域内に住居がある可能性を匂わせる。

 だからこそテルヨシは自分の住居があるこの杉並区でのデビュー戦を避けようとしていた。

 その後も戦域で偏りがないように対戦することも考え、以前に親に教えてもらった集団《レギオン》の占有する戦域を思い出し今回のデビュー戦の戦域を決めた。

 レギオンとは、オンラインゲームなどでのギルドなどと同じバーストリンカー達が1つのチームとなって作る軍団を指し、レギオンは区分された戦域を占領することでその戦域内での対戦拒否など様々な権利を得ることができる。

 現在東京23区で最大級のレギオンは6つ。黒雪姫を除く《純色の六王》がレギオンマスターの6つのレギオンである。

 その中で同じ区内にそのレギオンがぶつかる戦域境界があり、今回テルヨシはその辺りでデビュー戦をしようと考えた。

 その場所は杉並区から東にある中野区。赤のレギオン《プロミネンス》と青のレギオン《レオニーズ》が半分ずつ占領戦域を分け合っている。

 そうと決まったら善は急げ。

 テルヨシは1つ大きな息を吐くと、これから始まる対戦に心踊らせながら教室を出るため、車椅子を動かそうとしたが、視界に割り込んできた新着メールにその動きを止められた。

 誰からかと思ったが、グローバルネット接続を切られている学内でなら、学内の生徒か教師からしかあり得ない。

 テルヨシはすぐにそのメールを開いて内容を確認すると、差出人は黒雪姫。

 おそらく校門を潜る前に送ってきたのだろう。文章はたった一言「吉報を待つ」とだけあった。

 メールは内容にブレイン・バーストを少しでも匂わせるものがあれば消すように親に言われていたので、削除くらいはしておき、端的な文章にはなっていたが、それでもそんなメールに会ったばかりながらも『らしさ』を感じてしまったテルヨシは、1度笑ってから改めて車椅子に手をかけて教室を出て校舎をあとにして校門を潜り、中野区目指して車椅子を走らせていった。

 その際、校門を潜った時点で学内ローカルネットから切断されてグローバルネットに接続されるが、あらかじめグローバルネット接続を切っていたテルヨシに乱入できるバーストリンカーは1人としていなかった。

 到着した中野区は、戦域としては赤のレギオン、プロミネンスが北側の中野第1戦域、青のレギオン、レオニーズが南側の中野第2戦域の2つの戦域を分け合っている。

 同じ区内でも対戦フィールドの境界。つまりは行動可能戦域を定められているため、広い区内では戦域をいくつかに分けられており、中野区は2つ。テルヨシの住む杉並区では3つの戦域に分けられている。

 移動可能戦域を定める理由としては、そうしなければ対戦でファーストアタックを決めて、そのまま残り時間を果てしなく逃げるなんてことも可能としてしまうからとか、対戦が始まってから相手を見つけることすらできずに対戦が終わってしまう、なんてことを避けるためだとか色々推測は立てられるだろう。

 そんなわけで中野区に進出したテルヨシは、その2つの戦域の中で新宿区に近い第2戦域。つまりは青のレギオンが占領する戦域へと足を踏み入れていた。

 テルヨシとしてはどちらでも良かったのだが、せっかくのデビュー戦なら、派手に殴り合いでもと考えていたので自然とそちらに足が行ったのである。

 デュエルアバターには、必ずその名前に《色》を含んでいる。

 テルヨシのレガッタは純度の高い青。黒雪姫のブラックは文字通り黒であるように、その色にはアバターの能力が深く関わっている。

 青系統ならば《近接直接攻撃》、赤系統ならば《遠距離直接攻撃》、黄系統ならば《間接攻撃》、それぞれの中間色ならば、その系統にまたがった能力というように、デュエルアバターの色でその能力を大体ではあるが区分することができる。

 中には色ではなく《金属》を含むメタルカラーもいるが、そちらは基本的に防御能力に秀でていると言う特徴を持つ。

 それを踏まえると、青のレギオンには青系統のバーストリンカーが多くいる、わけではないが、他のレギオンよりは青系統と当たる確率が高いとも思えてしまうわけで、テルヨシは我ながらバカらしい理由だと思いながらも、近くにあったハンバーガーショップに入って注文をして席に着いてから、首のニューロリンカーを触ってグローバルネットへと接続した。

 これでテルヨシは中野第2戦域のマッチングリストに加わったことになる。

 最初は自分から加速して相手を選ぼうとも思ったが、それでは面白くないと考えたテルヨシは、おそらくもう数分以内に現れるであろう乱入者の登場を待っていた。

 ――バシィィイイ!

 予想通り、グローバルネットに接続して2分くらいでテルヨシに対戦を挑んできたバーストリンカーがいて、その瞬間、テルヨシの周りの世界は青く凍りつき、視界には【HERE COMES A NEW CHALLENGER!!】の炎文字がごうっと浮かび上がり、次に店内にいた客や店員達が消滅し、壁や床がうっそうとした木々や土へと変わり、テルヨシはその姿を丸みのある青いフォルムのデュエルアバター《レガッタ・テイル》へと変えて、すぐ外の道路に降り立った。

 対戦フィールドでは、そのフィールドによって進入禁止エリアというものも存在するため、テルヨシがいた店内などがそのエリアに該当する場合がある。

 そういった場合はそこから近いフィールドにスタート地点がズレる。

 

「《原始林》ステージか。ここ視界悪いから嫌いなんだよなぁ」

 

 フィールドに降り立ってのテルヨシの第一声はそんなものだった。

 今回の原始林ステージの特徴は、とにかく生い茂る木々や草花で視界が悪いこと。

 そしてオブジェクトの小動物や肉食獣がたまに出現し、それらに攻撃すると反撃される。といったもの。

 それはそれとして、テルヨシが次に見たのは、視界右上の相手情報。

 

《Frost Horn[Level4]》

 

 フロスト・ホーン。レベルは4。

 それを見た瞬間、テルヨシはあまりにもズレた感想を抱いた。「レベルが低い」と。

 これはテルヨシの親がそれ以上のレベルで、つい数時間前に黒の王と会ってしまったから出た感想であって、実際はテルヨシより3つもレベルが高い。

 対戦経験という意味でもあちらの方が多いに決まっているのだが、それでもテルヨシに慌てる素振りはなく、視界下に表示される対戦相手の大まかな方向を示す《ガイドカーソル》を腕組みしながら観察していた。

 ガイドカーソルはブレることなくまっすぐに同じ方向を指していて、その間に相手のHPゲージ下の《必殺技》ゲージが徐々に溜まっていくのが確認できていた。

 対戦格闘ゲームと言えば、必殺技がなくては面白くない。

 このゲージは相手にダメージを与えたり、逆にダメージを受けたりすることで溜まるが、フィールド内の壊せるオブジェクトを破壊することでも溜めることができる。

 おそらく相手は接近しながら周りのオブジェクトを破壊して必殺技ゲージを溜めているのだ。実に戦略的である。

 ガイドカーソルは相手との距離が一定距離まで近付くと消えるので、テルヨシはただそのカーソルが消えるのをじっと待ち、対戦相手が姿を現すのを今か今かと待ち構えていた。

 対戦開始から70秒ほどでガイドカーソルが消え、最後に示していたその方向から高い木々がなぎ倒されてテルヨシの前の少し開けた通りに出現したのは、今回の対戦相手であるフロスト・ホーン。

 全体的に薄い青色の重装甲で、額と両肩から巨大なツノを生やしたその外見から、相手がバリバリの近接型だと悟ったテルヨシは、組んでいた腕を解いて伸び運動。余裕の行動を見せる。

 

「へいへい新人! ずいぶんな余裕だが、ひょっとして俺ちゃんをナメてやいねぇか?」

 

「いやいや、そんなことは全然。むしろばっちこーい! と当たって砕けろくらいの開き直りだ」

 

「うはははは! こいつは面白ぇ新人だ! そんじゃ先輩として華々しく散らせてやるぜぃ!」

 

「おお! そんな負けフラグ立てるとは、素晴らしい先輩だな!」

 

 対面して初めての会話でそんなやり取りをすると、そこで周りからワッ! と笑い声が聞こえてきた。

 見れば原始林の木々の枝や苔付きの岩などの上から他のデュエルアバター達がテルヨシとフロスト・ホーンを見ていた。

 彼らは観戦者(ギャラリー)

 おそらくフロスト・ホーンが対戦をすると自動で加速するように設定していて、ガイドカーソルを頼りにここまで移動してきたのだろう。

 もちろん観戦者は対戦に関われないし、観戦者同士で戦うこともできない。

 しかし声だけは障害なく認められている。

 

「おいホーン! 新人に負けてるぞー! 色んな意味で!」

 

「新人くんがんばれー!」

 

 周りから色々な言葉が行き交う中、いつまでも黙ってるわけにもいかないので、テルヨシは伸び運動をやめてホーンをまっすぐ視界に捉えると、腰を落として重心をほんの少し下にして構える。

 それを察したホーンは、うおっしゃあ! の声と共にテルヨシに突進。

 そのツノの生えた右肩をテルヨシに向けてのショルダータックルを仕掛けた。

 テルヨシはそのショルダータックルを観察しながら、ギリギリのところで横っ飛びで回避して難を逃れるが、勢いそのままに木に突っ込んだホーンは、そのショルダータックルでいとも簡単になぎ倒してみせた。

 当たったら腕の1本くらい吹っ飛ぶな。

 と思ったテルヨシは、またこちらを向いたホーンを正面に捉えて構え、再度突進してきたホーンの、今度は直前で体を沈めてからの右足での回し蹴りで足払いを仕掛けて転倒を狙った。

 狙い通り前進する足を払われホーンは、あっ。と一言漏らしたあと、ズッデーン!

 前に倒れてそのままゴロゴロと何回か転がって、正面の木にぶつかって動きを止めた。

 テルヨシは視界右上のホーンのHPゲージを確認。そのゲージは1割ほど削れていて、同時に自分の必殺技ゲージも1ドットほど増加していた。

 

「おいホーン! 新人だからって単調な攻撃してるからそうなんだよ!」

 

(オトコ)見せろやー!」

 

 ギャラリーのそんな声でガバッと起き上がったホーンは、野次を飛ばすギャラリーに怒鳴って黙らせると、またテルヨシを見据えてビシッ! と指差す。

 

「どうやら全くの初心者ってわけでもなさそうだな! なら俺ちゃんも本気でやらせてもらうぜ!」

 

「またそんな負けフラグ立てて……もはや称賛に値するな」

 

 それでまたギャラリーがワッ! と湧く。もちろん笑い的な意味で。

 

「見よ! これが! 漢の! 生き様だ!」

 

 ギャラリーの笑い声もテルヨシの言葉も無視したホーンは、言ってから両腕を左右に構える。

 

「《フロステッド・サークル》!!」

 

 そうして必殺技の技名発声と共に、ホーンの3つのツノが発光し、その光はすぐに周囲に広がりテルヨシもその光を浴びるが、HPゲージにも必殺技ゲージにも変化はない。

 必殺技にはそれを使うためのモーションと技名発声が必ずある。

 もちろんテルヨシにも必殺技はあるが、まだ必殺技を使うためのゲージは全然足りない。

 対してホーンは接敵する前にすでに必殺技ゲージを満タンにしていた。

 自分への直接的な攻撃ではないとわかったテルヨシは、次に周囲に目を向けると、オブジェクトの木々や岩、地面に白い霜が降りていて、空中にはキラキラと光の粒子が舞い、その発生源がどうやらホーンのツノらしいことがわかった。

 必殺技ゲージも微量ではあるが徐々に減少していってるのが確認できている。

 

「うーん、フィールド干渉型か?」

 

 その霜をテルヨシも浴びながら考察するが、一向にダメージはないしオブジェクトにも変化は見られない。

 

「いっくぜー!」

 

 そこへ再びホーンが突撃。

 テルヨシも相手が同じことを繰り返すような相手ではないだろうと少し警戒しつつ、回避行動に移ろうとしたが、その体はさっきより重くなっていて初動が遅れてしまい、ホーンの突き出していた肩のツノをかすられてしまった。

 テルヨシのHPゲージはガリッ! と1割強減り、当てられた右肩に少しの痛みが走る。

 

「……なるなる! 重量増幅か。あとは熱源探知の無効とか視界の遮断もあるかもな」

 

「なっ!? 俺ちゃんのフロステッド・サークルを初見で看破するたぁ驚きだ……」

 

「当たった? おっしゃ、ならあんたの土俵で真っ向勝負だな!」

 

「え? 俺ちゃんとガチの殴り合いする気か? パワーじゃ絶対負けねーぜ?」

 

「いいから来いよホーン。勝算なしにこんなこと言わねーって」

 

 テルヨシはそう言ってホーンを挑発。

 レベル1のテルヨシに挑発されたとあっては、ホーンも乗らないわけにはいかず、その霜で重量の増した突進を再度仕掛けてきた。

 フロステッド・サークルはその霜で重量の増加をする効果と、遠距離からの視界を悪くする効果。さらに熱によるホーミングや探知も無効化できるフィールド干渉型の必殺技らしい。

 発生範囲はホーンを中心に一定距離をカバーできるみたいで、その中では機動力は落とされて殴り合いは必至。

 だからテルヨシはあえてその土俵で戦う選択をした。

 というよりテルヨシには遠距離で戦う術がないのだから仕方ないと言えばそうなる。

 突撃したホーンは、当たれば大ダメージ確実の突進でテルヨシの真っ正面から仕掛けるが、そんなホーンにテルヨシは相手に見えはしないが、不敵の笑顔を浮かべてから、なんの予備動作もなしに突如として真上に跳躍し、そこから前方にくるりと回りつつ、その勢いから右のかかと落としをホーンの突進を躱してカウンター気味に頭頂部へと叩き込む。

 それを受けたホーンはガンッ! という鈍い音と共に地面に倒れて顔面を強打。

 HPゲージは一気に3割ほど削れて、残りが半分ちょっとになった。

 その一撃には見ていたギャラリーも驚きの声をあげる。

 

「な、なんだ今のは? おめー、いま浮かなかったか?」

 

「さぁ? どうだろうね? もう1回試すか?」

 

「おうともよ! わかるまでやったる!」

 

 倒されたホーンは、今のテルヨシのモーションの謎が解けないまま、再び突撃を開始し、テルヨシはまた同じ動作でホーンの頭頂部にかかと落としを決めて地面に沈めた。

 それでもホーンはまだどうなっているのかわからない。

 しかしHPゲージは今ので残り3割まで減らされてしまったので、もう突っ込めない。

 そこでテルヨシをよく観察してきたホーンは、テルヨシの後頭部から尻尾のように生える装甲を発見し、それをよく見た。

 そしてその尻尾のような装甲はひゅん、と意思を持つかのように勝手に動いたのだ。

 

「おっと、気付いちゃったか。こいつはオレの《強化外装(エンハンスト・アーマメント)》、《テイル・ウィップ》だ。こいつは手に持って使うと普通の鞭なんだが、体に接続すると自在に動かして尻尾みたいに使えるんだ。こんな感じでな」

 

 ホーンにバレてしまったので、特に隠す素振りも見せないテルヨシは、言いながらクネクネと後頭部から生えるテイル・ウィップを動かして、その先端を地面に押し付けてバネのように伸縮させて先程の予備動作なしの跳躍をしてみせた。

 これを真正面から見れば確かに浮いたように見えただろう。

 

「さらに! あんたのフロステッド・サークルのおかげでかかと落としの威力も上がったわけだ! ご馳走さまです」

 

「おめー、本当に新人かよ……明らかに戦い慣れてんだろ……」

 

「その質問にはノーコメント! さって、今のでオレの必殺技ゲージも溜まったんだけど、受けてみる? オレの必殺技」

 

 言われてホーンはテルヨシの必殺技ゲージを確認。そこには7割ほど溜まって輝くゲージが。

 

「俺ちゃん、初見で避けられる?」

 

「うーん、無理だな」

 

「……マジ?」

 

「マジ」

 

 それから2人は乾いた笑いを漏らし、そのあとホーンは当たって砕けろといった感じでテルヨシに突撃し、テルヨシは右足を1歩引いてグッと地面を踏む力を強くして、自らの技名を叫んだ。

 

「《インパクト・ジャンプ》!!」

 

 瞬間、テルヨシのアバターはホーンの視界から消え、次にはホーンの腹に右足を撃ち込むテルヨシが、その全力を以て振り抜いていた。

 そして受けたホーンはあまりの威力で吹き飛び、岩に激突。

 テルヨシが踏み込んだ足場からはバァンッ! という炸裂音が響き、それを背中にテルヨシが静かに着地した。

 

「おま……いま……ジャンプって……」

 

「イエス! 本来はハイジャンプなんだが、向きを変えてやるとあら不思議! 突進攻撃に早変わり!」

 

 そこでテルヨシは倒れるホーンにグッ! と親指を立てて勝ち誇り、今の一撃でHPゲージがなくなったホーンは、「そんなのありか」と言い残して消滅し、その場に敗北を示すマーカーが現れた。

 この状態になると、デュエルアバターは加速を終えるまで動けない言葉を発せないの浮遊霊のようなものになる。

 そしてテルヨシの視界には【YOU WIN!!】の炎文字が現れて、リザルト画面に切り替わった。

 しかしそれよりも衝撃を受けたのは、その対戦を見ていたギャラリー。

 皆が皆驚きの声をあげ、何やら慌ただしく言葉を交わしていた。

 それもそうだろう。

 レベル1の見たことも聞いたこともない新人が、3つもレベルが上の相手を倒したのだ。

 これを驚かないバーストリンカーなどほとんどいない。

 こうしてテルヨシのデビュー戦は、白星で華々しく飾ったのだった。

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