アクセル・ワールド~蒼き閃光~   作:ダブルマジック

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 バーちゃんの自分を犠牲にした解決策は、テルヨシ達の命令を無視した介入によって破綻し、結局黄のレギオンとの抗争へと発展してしまった現状で、ついに動き出した黄のレギオンに応じるようにテルヨシ達も行動を開始した。

 

「とりあえずあれだ。レイン達は一旦離脱しろ。レディオに狩られでもしたら1発退場だし、《零化現象》のお荷物ロータスじゃ役に立たん」

 

「それがよかろう。包囲網は儂らでこじ開ける」

 

「あーあ。私レディオって昔から苦手なのよね。やることがセコいし」

 

 周囲の黄のレギオンメンバーが一斉に動き出した中でテルヨシ達は各々での行動を即決すると、ユニコ達を庇うような陣形で一点突破を開始。

 迫り来る実弾・光線・爆弾その他を防ぎながら順調な形で走り抜けようとするが、そうそう上手くはいかない。

 

「……《愚者の回転木馬(シリー・ゴー・ラウンド)》!!」

 

 テルヨシの耳にわずかに聞こえたレディオのその声と同時に、テルヨシ達の見る景色は途端にグルグルと回り始め、自分が前進してるのかどうかも定かではなくなる。

 おそらくは間接攻撃に特化したレディオの五感に作用する必殺技だと判断したテルヨシ。

 

「フィ……フィールドが、回って……!?」

 

「回ってるように見えるだけだ! 本当は何も動いちゃいねぇ! 眼をつぶって走れ!」

 

 この状況に黒雪姫を抱えたハルユキが混乱し、ユニコの声によって多少は落ち着くが、次にユニコとタクムが進むべき道を差した方向は全くの逆で思わず硬直する一同。

 そこに迫り来る周りからの掃射。

 

「これだからレディオは嫌いなのよ!!」

 

 そこで痺れを切らしたガストが、その手の巨大扇子《ブレード・ファン》を広げて豪快に振り回すと、それによって発生した暴風で実弾系の攻撃を強引に軌道変更して近くに着弾させ、光線系の攻撃を開いたブレード・ファンで防いでみせた。

 

「ボンバー、これって確か最大1分くらい続くわよね」

 

「ゲージが満タンならの」

 

「んじゃ久々に『アレ』やるわよ。レインちゃん! 強化外装出して土台確保!」

 

「んあ!? 『アレ』やんのか!? しゃーねーな。来い! 《インビンシブル》!」

 

 掃射の一波を防いでからガストは確認するようにバーちゃんとユニコに声をかけると、ユニコは指示通りに自慢の強化外装インビンシブルを召喚し、たちまちテルヨシ達の目の前に巨大な火力コンテナが出現。

 それを確認したガストとバーちゃんは、レディオの必殺技の最中でユニコの上へと乗ると、何かをする素振りを見せた。

 

「あんたら! レインちゃんにしっかり掴まってなさい! じゃないと大変なことになるわよ!」

 

「えっ!? でもせ……ロータスが……」

 

「クロウ、ロータスはオレが持つ。今は指示通りレインに掴まっとけ」

 

 ガストの有無を言わせない指示に従って、テルヨシは意識のない黒雪姫を《テイル・ウィップ》で掴んで、それを見たハルユキとタクムも安心してユニコの足元にしがみついた。

 

「んじゃ蹴散らすわよ!」

 

「よく見とけよテイル、クロウ、パイル。こっからは《混沌の舞姫》の独壇場だ」

 

「……マズイ! 全員この場から離れなさい! 物陰へ待避を!」

 

「もう遅い!!」

 

 ユニコもレディオも意味深な言葉を放つため、テルヨシ達はこれから何が起こるのか少し怖くなってしまうが、そんなこともお構いなしにガストはブレード・ファンでバーちゃんを真上へと吹き飛ばすと、天高く上がったバーちゃんはその到達点で必殺技発声。

 

「《ボンバー・カーニバル》!!」

 

 しかしその必殺技は『一定速度で回転し続ける限り爆弾を無限生成する』普通使用時は自爆技に等しい扱いの難しいもの。

 単純に考えればこの後テルヨシ達の近くにバーちゃんが作り出す大量のリトル・ボムが降り注ぐことになる。

 現にそのあと数秒で数えるのも恐ろしくなるほどのリトル・ボムが降り注いできて慌てふためくテルヨシ達。

 だが、それを見てガストは待ってましたとばかりにその手のブレード・ファンを広げて横凪ぎに振る構えを取ると、そこから必殺技発声。

 

「《リベレイション・ストリーム》!!」

 

 ――ゴワッ!!

 必殺技発声と同時に360度回転するように振るわれたブレード・ファン。

 その後一瞬だけ、その場の音を消し去ると、次には360度。全方位に物凄い突風を発生させて吹き荒れ、落ちてきていたバーちゃんのリトル・ボムも、迫っていた実弾系の攻撃も全て外側へと吹き飛ばしてしまう。

 そして巻き起こった現象は、バーちゃんのリトル・ボムによる周囲の無差別破壊。

 くぼ地の周りにいたバーストリンカーは、その風圧と爆撃によって等しく吹き飛び、そびえ立つ建物オブジェクトも、一番近くにあった物のいくつかがひび割れて、柱のいくつかが折れたりと、その威力を物語っていた。

 リベレイション・ストリームはフルゲージ消費で使用できるガスト本人を中心とした範囲攻撃系の必殺技で、その威力は周囲のオブジェクトを大抵は破壊するほどの暴風。

 ほとんどのバーストリンカーは踏ん張りなど効かずに遥か彼方へ吹き飛ばしてしまうほど。

 今の一撃で必殺技を持続できなくなったレディオは、なんとか直前で避難に成功していたようだったが、他の黄のレギオンメンバーは建物に激突したり、バーちゃんのリトル・ボムが当たって負傷していたりして、包囲網は完全に打ち破られていた。

 そうして空へと上がっていたバーちゃんが、悠々とユニコの上に着地してから、周りの光景を唖然としながら見ていたテルヨシがようやく口を開く。

 

「……いやーん、ワイルド」

 

「ワッ!? テイルさん!?」

 

「そんなふざけた感想を言えるのは流石ですね……」

 

「よく覚えとけよお前ら。これが旧プロミで最強のタッグだった混沌の舞姫の連携だ。これを出された日にゃ、全員揃ってチートだなんだと騒いだもんだぜ」

 

 はっはっはっ。

 そう笑いながらに自分のことのように自慢するユニコに、テルヨシやハルユキは苦笑するしかなく、今の連携を放った2人はひょいっとユニコから飛び降りてテルヨシ達のそばへと寄って、しかしまだ警戒を怠ることなく周囲へと意識を向ける。

 

「まっ、中堅リンカー以上ならこれ知ってるやつがほとんどだし、予備動作も大きいから備えられると見た目ほどダメージが出ないのよね」

 

「うむ。じゃが群がる連中を一掃する時には有効じゃ。今のようにの」

 

「……ハイランカーって、みんなこんなに凄いの、パイル……」

 

「ど、どうかな。僕もこの目でこんな技を見るのは初めてだから……」

 

 とはハルユキとタクムの感想だが、テルヨシも2人が似たような通り名を持ち、2人合わせた通り名を持つことから、ある程度の連携技があると踏んでいたが、まさかここまで凄まじい連携技があるとは思わず、今後はこのタッグと備えなく戦わないようにしようと心に誓った。

 ともあれ、ガストとバーちゃんの協力連携技で活路を開いた一同。

 必殺技ゲージの消費から2発目は無理なので、この隙にくぼ地から脱出してしまおうとした時、テルヨシ達に暗い影が落ちてきて、何事かと皆が真上を見ればそこにはくぼ地をすっぽり埋めてしまうほど大きな岩が出現していて、テルヨシ達を押し潰さんと迫っていた。

 

「…………ウゾ……」

 

「ウホー! テンション上がるわ!」

 

「もはやテイルさんのリアクションが色々と超越してる……」

 

 ハルユキがまともに言葉が出てこなかったのに対して、何故か楽しむような声で驚くテルヨシにタクムがツッコむ。

 実際に楽しんでいる場合ではないのだから当たり前。

 

「逃がしませんよ! たかだか3人加勢した程度で総崩れするほど私のレギオンも脆くはありません。それに見ての通り、こちらもそれなりの戦力を揃えてきたということです!」

 

 頭上を浮く巨大岩の出現に思わず足を止めてしまったテルヨシ達に、先程の定位置へと戻ってきたレディオが執念深く逃がすまいと、隠していた戦力を投入しつつ言葉を放ってくる。

 その間にガストによって吹き飛ばされていた黄のレギオンメンバーも再びくぼ地の縁へと姿を現してきて、再び包囲網が完成してしまった。

 

「なぁレディオ。こんなん出せるんだったら、最初から出せばこっちの士気を削げたんじゃないか? でもそうしなかったのは、これが『直接的な攻撃力を持たない』ハッタリ用のものだからだろ」

 

 包囲網が完成してしまった後、足を止めたことを後悔したテルヨシは、今のレディオの言い回しから出し惜しみする必要があったのかという疑問が生じ、仮説も交えてレディオへそう言葉を返すと、レディオはその貼り付けたような笑顔のフェイスに右手を持っていき、怪しい笑いを漏らした。

 

「フッフッフッ。まったく、あなたは憎らしいまでに優れた観察力をお持ちだ」

 

 そう言った後、レディオはガンッ!

 と両手を叩いて何かの合図を出すと、途端に頭上に浮いていた巨大岩が姿を消して、テルヨシ達を覆っていた影も消えてしまった。

 それでテルヨシ達は今の巨大岩が幻覚系の必殺技だったことを確信した。

 

「最初から足止め目的のハッタリでしたし、バレたならバレたで仕方ありません。しかし、状況は再び振り出しです。さあ! 最終演目の続きを楽しみましょう!!」

 

 それを皮切りに黄のレギオンの猛攻が再開。

 近接型もくぼ地を滑り降りてテルヨシ達へと攻撃を仕掛けに来た。

 

「…………ふぅ」

 

 それをざっと見回したテルヨシは、大きな深呼吸をひとつして、そのアイレンズに深紅の鋭い光を点して、迫る近接型アバター達を視界に捉え、それを見たガストとバーちゃんは、敏感にテルヨシの変化を察知して行動を決定。

 

「ロータスの鴉に元レオニーズの子! あんた達はお互いにフォローしながらテイルと協力! レインちゃんを守りなさい! レインちゃんは言わなくてもわかるわね」

 

「へっ! こうなったらコイツらを全滅させて堂々抜け出てやるよ!」

 

「クロウにパイルよ。テイルには巻き込むくらいの援護をして構わんぞ。どうせ『当たりはせん』からの」

 

「あの、お二人は?」

 

「「2人で暴れる!!」」

 

 ガストとバーちゃんの指示に従って、先程テルヨシから受け取っていた黒雪姫をユニコの近くに横たわらせながらに質問したハルユキ。

 それに同時に即答した2人は、ユニコが放った掃射によって迫っていた遠距離攻撃を迎撃した際に生じた爆発を皮切りに近接型アバターの群れに突撃。

 テルヨシはそんな2人を見送りつつ、接近されてはまともに戦えないユニコと、零化現象によって動けない黒雪姫を守れる位置で迎撃体勢を整え、ユニコを囲むような三角形の位置取りでハルユキとタクムも戦闘体勢に入った。

 近接型アバターの群れに突撃したガストとバーちゃんは、バーちゃんを前に置いた一列編隊で先頭とぶつかると、フワッ、とバーちゃんが自身の体重の軽さを利用してガストを飛び越えるバック宙を披露。

 それと同時にガストはブレード・ファンを広げて前方を遮るように自身の体を覆い隠して、突撃してきた槍型の強化外装で攻撃してきたアバターから身を守る。

 

「《リトル・ビッグボム》」

 

 そのタイミングでガストのやや後ろまで後退していたバーちゃんが必殺技発声。

 並みのアバターなら一撃で屠る殺戮兵器をガストのブレード・ファンの向こうへと放って、その後ガストと一緒にブレード・ファンの影へと隠れると、ドォォオオオオンッ!!

 凄まじい爆発と音が周囲に広がり、ブレード・ファンで無傷で防御したガストがそのブレード・ファンを閉じて見た向こう側では、3本の光の柱が空へと上がって消えていった。

 それはこのフィールドにおける死亡を示すエフェクト。今の一撃で3人を倒したということである。

 

「混沌の舞姫は囲んでからの挟撃による波状攻撃が有効です! それに1人は1、2発当てれば沈みます! 集中攻撃を!」

 

「うっさいのよ黄色いの! 人海戦術とか数の暴力でしょ!」

 

「それが許されるのがこのフィールドじゃろうて」

 

 今の一撃を見て怯みかけたレギオンメンバーに、レディオは鼓舞するような攻略法を叫んで伝えると、ガヤは黙ってろとばかりにガストのツッコミが入っていた。

 その間に遠距離攻撃アバターを自慢の火力で消し飛ばしていくユニコだったが、近接型もそれを阻もうと全力でユニコを狙って駆けてくる。それを迎撃するのはテルヨシ。

 テルヨシは今、バトルロイヤルの序盤。乱戦の時になる極限集中モードを発動している。

 これが発動している間のテルヨシの生存率は通常時の倍以上。持続時間は5分ちょっとが最長だが、とにかく『生き残る』ことに特化したモードであり、これがテルヨシを《逃走王》と呼ばせる所以に当たる。

 まずは一番近くに迫っていた青系の格闘型アバターの右ストレートを左足の蹴りで迎撃し弾き返すと、弾いた右手にテイル・ウィップを巻き付けて自分を軸に振り回し、1回転したところですぐ近くに迫っていた2人のうち1人のアバターへと投げつけてぶつける。

 その隙に目の前まで迫ったもう1人を、今度はテイル・ウィップを顔面に巻き付けて視界を奪って身動きを封じ、近くで交戦を始めたタクムの相手へと投げつけてフォローした。

 ――キィィイイイインッ!!

 各々が奮闘してユニコの防衛をしていると、突然そんな聴覚を揺さぶる超音波としか言えない音が頭に響き渡り、それによって若干動きの悪くなったテルヨシ達。

 さらには超音波の影響でユニコの放っていたミサイルなどのホーミング機能が失われたようで、放たれたミサイルなどは本来の狙いから逸れてあらぬところへと着弾していた。

 

「《エレクトリック・セラピー》!!」

 

 これを好機とばかりに失速気味だった黄のレギオンも盛り返してきて、超音波の妨害によって動きの悪くなったテルヨシは、それでも自分の防衛ラインを維持していたのだが、ハルユキのいる方向から誰かの必殺技発声が聞こえてチラリとそちらを見れば、右足にロープのような物を巻き付けられて、身動きを封じられたハルユキが、ロープから流されているらしい電撃によってスタンさせられていて、そうなればハルユキの防衛ラインは割られ、そこから近接型が抜いてユニコへと殺到していた。

 これはまずいと即断したテルヨシは、すぐにそちらの対処に乗り出そうとする。

 

「《マグネトロン・ウェーブ》!!」

 

 しかし、それを阻むように響いた必殺技発声のあと、テルヨシの体はその自由を奪われ、何かに引き寄せられる力が働く。

 突然の異変に反射的に力に抗いながら、引き寄せられる方向を向いてみると、そこには両腕の先がU字型の磁石のようなアバターが自分にその腕を向けているのを発見。

 その腕の形状と技の名前から磁力系の技と判断したテルヨシは、チャンスとばかりに自分に殺到していた近接型を無視して、拘束者へと突進。

 これには拘束者本人も予想外だったのか、判断が遅れてその場で硬直したところで、勢いを利用した右足の飛び膝蹴りを拘束者の顔面にお見舞い。

 そこからくるりと前宙を交えながら拘束者の背後へと着地の体勢を整えたテルヨシは、そのついでに倒れかけていた拘束者の首にテイル・ウィップを巻き付けてぐわんっ!

 真上へと放り投げて着地。すかさず頭から落下してきた拘束者の背中に強烈な右回し蹴りをクリーンヒットさせてピンポン玉のように吹き飛ばした。

 

「あぁあああああっ!!」

 

 テルヨシが拘束者を退けたのとほぼ同時。

 そんなユニコの悲痛な叫びが耳に届いてユニコを見れば、ハルユキを抜いて殺到した近接型の1人が丁度ユニコの左の主砲を根元からもぎ取ったところで、もぎ取られた主砲の接続部にはちぎれたユニコの左腕がぶら下がっていた。

 

「うっしゃあ! 赤の王なんてこんなモンだぜ! お前ら、皮ぁ全部剥いてあのガキ引き摺り出せっ!! ゲージがなくなる直前まで、たっぷりいたぶってはずかしめ……ぼっ!?」

 

 主砲をもぎ取った近接型が声高々に叫んで仲間を鼓舞しつつ次の装甲に手をかけた時、近接型の目の前で蒼い光が走って、それを認識するよりも早く近接型は冗談のように吹き飛びくぼ地の端へと転がり、それに唖然としたユニコに殺到していた他の近接型も蒼い光が走った瞬間に四方八方へと吹き飛んで地面に転がった。

 その後レインの装甲の上にどこから現れたのか、テルヨシが静かに着地してズビシッ! とレディオに指を指した。

 

「レギオンの方針だとかでうちのバトロワ祭りにあんま参加しなかったのが仇になったな、レディオ!」

 

「蒼き閃光……!!」

 

 憎々しげに発せられたレディオの声にしてやったりといった雰囲気を出したテルヨシは、それで次に下のユニコの心配をしてあげると、

 

「けっ、助けんならもっと早くしろボケ」

 

「ゲージが足りなかったんだからしょうがないだろ。わがままなお姫様だこと」

 

 左腕をもぎ取られてもいつもの調子なユニコにとりあえずは安心したテルヨシは、今の自分の行動で動きの止まった黄の軍勢を一望。

 睨みにも似た眼光で周囲を威嚇した。

 《インビジブル・ステップ》。

 テルヨシの必殺技ゲージをフル消費して発動するその必殺技は、わずか5秒という短い時間ながらも、時速360キロの3メートルショートジャンプを連発できる連続高速移動。

 そこから放たれる蹴りは凄まじい威力を発揮し、並みのアバターではその場に留まることすら叶わない、現状のテルヨシが持つ最強の必殺技。

 それを初めて目の当たりにしたハルユキとタクムは、先ほど何が起きたのかを遅れて理解して我に返る。

 そしてこの場が少し静寂に包まれたところで、不意にテルヨシの後ろに隠れていたらしい近接型が強襲。

 反応が若干遅れたテルヨシだったが、振り向き様の視界にあるものを捉えて行動を決定。即座に『回避』へと転じた。

 

「《ライトニング・シアン・スパイク》!!」

 

 テルヨシを強襲した近接型は、その背後から伸びてきた光の杭に体の中心を貫かれてその動きを止められ、テルヨシは貫通してきた光の杭を紙一重で躱すことに成功。

 体の中心を貫かれた近接型は、それが致命傷だったのか光の柱となって消えていき、光が収まった後に前方で右腕の杭打ち機の先端をこちらに向けるタクムにテルヨシは右手の親指を立ててナイスと示した。

 

「良い判断だが、オレも死ぬわ!」

 

「いえ、当てるつもりでフォローしろと言われてたので」

 

 そういえばバーちゃんがそんなこと言ってたな。

 と、タクムの言葉を聞いて戦闘前のやり取りを思い出したテルヨシは、なら仕方ないかと割と軽いノリで返しつつタクムの後ろから敵が迫ってることを伝えてからユニコの上から飛び降りると、近くに未だ力なく横たわっていた黒雪姫のそばまで寄り、その目の前でひと昔前のヤンキーのような座り方で顔を近づけた。

 しかし、覗き込んだ黒雪姫の顔にはやはりいつものヴァイオレットの光は宿っていなく、それを見たテルヨシはなんのためらいもなく突然、黒雪姫の額の部分をコツンと拳で小突く。

 それには未だ拘束されてるハルユキも応戦中のタクムも注視してしまう。

 

「ほら、可愛い後輩達と敵を目の前にしていつまでそんな醜態を晒してるんだ? しかも王が2人もいるこの場で情けないったらねーよ」

 

 今の黒雪姫には聞こえていないかもしれない。

 それでもテルヨシは今この状況で未だ指ひとつ動かせずにいる彼女を放っておくことができなかった。

 黒雪姫はこの状況で何もしない、できないような弱い人間ではないことを、テルヨシは知っていたから。

 テルヨシにもできた過去のトラウマの克服を、彼女ができないわけがないと、知っていたから。

 だからテルヨシは彼女の背中を押してあげる。

 たとえその背を支えることができなくても、その背中を押して前へと進ませることはできると、信じていたから。

 

「今のお前には、背中を支えてくれる存在がいるだろ。だからいつまでも寝てるなよ。《黒の王》ブラック・ロータス!」

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