アクセル・ワールド~蒼き閃光~   作:ダブルマジック

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 激しさを増す黄のレギオンとの戦闘。

 その最中にテルヨシは《零化現象》によって動けなくなり、力なく横たわっていた黒の王《ブラック・ロータス》、黒雪姫へと近寄って復活を試みていた。

 現在、テルヨシ達は黄のレギオンと拮抗状態を作り出すことはできていたが、その拮抗状態も長くは持たないことも予測できていた。

 現に今もジャミングを受けているせいでまともに攻撃できず、左の主砲をもぎ取られた赤の王《スカーレット・レイン》。

 黄の王《イエロー・レディオ》の的確な指示を受けた敵に悪戦苦闘する《カーマイン・ボンバー》と《エピナール・ガスト》のコンビ。

 電撃によるスタン攻撃を受けているせいで動けなくなっていた《シルバー・クロウ》に、数の差で徐々に体力を削られていく《シアン・パイル》。

 ここから誰か1人でも欠ければ、そこから今の拮抗状態は簡単に崩れてしまう。

 それがわかっていたテルヨシだからこそ、このタイミングで黒雪姫の復活を試みたのだ。

 この加速世界にわずか7人しかいない《純色の七王》の1人である、彼女の復活を。

 

「このまま姫が立ち上がらなきゃ、誰かがきっと泣くことになる。何より、立ち上がれなかった姫自身が、泣くことになるんじゃないか?」

 

 きっと自分の声は黒雪姫の心の奥底までは届いていない。そうは思っても語りかけないでいることができなかったテルヨシ。

 たとえ言葉が届いていなくても、やらない後悔よりやる後悔。そこにわずかでも可能性があるならやってみるのが、今のテルヨシだった。

 自分が再びその足で歩くことができるようになって、長年引き摺っていたトラウマを克服できたように、黒雪姫にもそれができると信じていた。

 しかし、テルヨシの言葉にも黒雪姫は何の反応も見せず、一時的に退けていた近接型が再び接近してきたのを確認したテルヨシは仕方なしに動き出そうとした。

 

「先輩……黒の王!!」

 

 そこで叫んだのは、未だ動けずにいたハルユキ。

 ハルユキは地に伏せられながらも、その視線をまっすぐに黒雪姫へと向けて、力の限り言葉を紡いだ。

 

「あなたにとって《加速》は! 《ブレイン・バースト》は!! 前人未到のレベル10に到達し、この世界の先を見たいというあなたの野望はその程度のものだったんですか! たかが男1人の思い出と引き換えられるほど安いものだったんですか! 人間の殻を超えようという人が……過去の後悔にとらわれて、いつまで無様に這ってるつもりなんです! あなたにそんなことをしている暇はない、あらゆる障害を斬り倒し、薙ぎ払って、最後の1人になるまで突き進むと決めたはずでしょう、ブラック・ロータス!!」

 

 自らの子であるハルユキの魂に訴えかけるようなその言葉に、親である黒雪姫は応えた。

 今まで光を失っていたゴーグルの奥のアイレンズが、いつものヴァイオレットの光を取り戻し、段々とその光を強くすると、それに合わせて剣の四肢が脈動するように揺れてから、ふわり。

 仰向けの状態から浮くようにしてその体が持ち上がり、浮遊状態で立ち上がると、1度周りを見回してから一番近くにいたテルヨシへ視線を固定。

 その視線を察してテルヨシは右の拳を黒雪姫にビシッと向けると、黒雪姫は自らの左の手、その腹でテルヨシの差し出された拳にシャンッ。

 軽くぶつけてから、自らを立ち上がらせてくれたハルユキの元へとまっすぐに移動していった。

 その後、電撃によるスタン攻撃に苦しむハルユキにアースの存在を指摘して危機を脱させた黒雪姫は、2、3言葉を交わしてから周りにいた近接型に睨みを効かせて牽制。

 その中の1人が負けじと果敢に投げ技を試みるも、黒雪姫のその剣の腕を掴んだところで指を斬り落とされてしまった。

 ああ、あれは理不尽なんだよなぁ。

 などと指を失って悶えのたうち回る近接型を見ながらに、テルヨシもかつて経験したことを思い出しつつ、完全に復活を果たした黒雪姫につい笑顔ができてしまった。

 そうやって自滅に近い形でのたうち回る近接型を無視して、1度テルヨシの元へと戻ってきた黒雪姫に、テルヨシは腕を組んで少しだけ考える素振りを見せてから口を開く。

 

「『頭』ってのは、取られるとそれが及ぼす影響ってのがデカいんだよな」

 

「ふむ、それには全面的に同意だが、任せてもいいのか?」

 

「だいじょぶだいじょぶ。姫のとこの騎士様2人もいるし、レインも元気100倍。バーちゃんとガッちゃんも踏ん張ってくれてるからな」

 

「《爆弾魔》と《猪突猛進》か。また懐かしい組み合わせだが、味方となると心強い。テルなどよりよっぽどな」

 

「黒いのと意見が合うのは嫌だが、あたしもそう思うぜ」

 

「あーあ、そうやって2人ともオレを雑に扱って。そんなこと言ってたら、レディオに寝返っちゃうぞ?」

「「それなら今すぐ倒してやる」」

 

 ひでぇ。

 こんな状況下にあっても自分の扱いがいつも通りなことに肩を落とすテルヨシだったが、次に軽く吹き出す2人に釣られて吹き出してしまう。

 しかし逆にこの状況でいつもと変わらないということは、行幸とも言える。

 つまりそれだけ精神的に余裕が出てきたということなのだから。

 

「では行くとするか。テル、この小娘のお守りは任せるぞ。クロウ! パイルももうひと踏ん張りだ!」

 

 テルヨシを少しからかってから、切り替えるようにして声を張った黒雪姫は、ハルユキとタクムへ鼓舞する言葉を放ってから、その視線をくぼ地の端で見下ろしてくるレディオへと向けてその距離を詰めていった。

 そんな黒雪姫の復活と進撃に、レディオは怒りを表すようにその手を震わせていた。

 

「なぜ今さら現れて、長年かけて準備した我がサーカスのカーニバルを邪魔するのです? 2年間もどこぞの穴倉にコソコソと隠れ続けておきながら、なぜ?」

 

 そこから放たれた言葉は、純粋な疑問。

 どうして赤のレギオンと関係もないあなたが、こうも邪魔をするのか。レディオにはそれが不思議でならないようだった。

 

「つまり、もう忘れたということですか? あなたが裏切り、首を刎ねた我らが友のことを? ……彼は今、どこで何をしてるんですかねぇ。2度と戻れない加速世界のことを……その原因を作ってくれたどこかの誰かのことを思い出したりしないんですかねぇ? 私なら、とうてい忘れられませんよ。尋常な対戦ならともかく、あんな不意打ちじゃあ……ねぇ?」

 

 しかし、そこでまた黒雪姫の戦意を失わせるような言葉をぶつけて、くっくっくっ、と嘲笑うように声を漏らすレディオ。

 そんな言葉を武器とするタイプの精神攻撃に対して、黒雪姫は何か大きな反応をすることはなく、落ち着いた動きで右の剣の先をレディオへと向けて言葉を返した。

 

「……お前は1つだけ勘違いをしている、イエロー・レディオ」

 

「ほう? 何をです? まさかあれが、卑怯な不意打ちではなかったとでも?」

 

「違う。私にとって、お前の首が、レッド・ライダーのそれと同じ重さを持つと考えていることだ。もう1つ教えておいてやろう……私はな……」

 

 先ほどまでレディオの言葉に心揺さぶられていたとは思えない落ち着いた声色で言葉を紡ぐ黒雪姫は、持ち上げていた右腕を真横へと振り払い一転。その声量を上げて叫んだ。

 

「初めて会った時から、お前のことが大嫌いだったよ!」

 

 それを聞いた瞬間、レディオは言葉に押されるように体をのけ反らせて、ぐっ、と声を漏らすが、そんな様子を見てテルヨシは腹を抱えて大笑い。

 その笑いには当事者である黒雪姫もレディオもギロッと睨んできて、悪いと思いつつ笑いを収めたテルヨシは、いつもの調子で口を開いた。

 

「いやぁ、ロータスもレディオも正直だなってな。レディオが好き嫌いのハッキリ分かれる奴だってのは初めて会った時から思ってたけど、それを本人目の前にして嫌いだなんて言うロータスと、何気にショックを受けてるレディオが面白くって。でもまぁ、オレはそんなレディオのこと嫌いじゃないぜ。男は野望の1つや2つ持ってこそカッコ良いしな」

 

「あれを嫌いじゃないと言えるお前もなかなかの変わり者だな、テイル」

 

「変わり者同士通じるところがあんだろ。気にしたら負けだと思うぜ?」

 

「ふむ、それもそうか」

 

 テルヨシが笑いの理由を話してみれば、黒雪姫とユニコから返ってきたのは冷ややかな言葉でガックリと肩を落とす。

 だが、仕切り直しとばかりに黒雪姫が再びレディオへとその視線を向けると、テルヨシ達も頭を切り替える。

 

「まぁ色々とあるが、今やることをしようじゃないか。では行くぞ!」

 

 黒雪姫がそんな言葉を放ってレディオめがけ突撃していったのを皮切りに、みんなが一斉に行動を開始した。

 まずは今の会話の間にハルユキが探していたジャミングをかけているアバターに向かって飛翔。

 テルヨシもただ場をシラけさせるために大笑いしたわけではないということ。

 そのジャミングをかけているアバターのそばには、当然のごとく護衛の役割を担う遠距離型のアバターがいたが、そちらはハルユキに全て任せてユニコの護衛に集中したテルヨシは、3人の近接型に囲まれていたタクムに走り寄って近接型の1人に飛び蹴りをしてフォローすると、すかさずタクムの腰に《テイル・ウィップ》を巻き付けてそのままブン回し、タクムもいきなり回されたことに戸惑いながらも瞬時に対応して、遠心力も加えてその右腕の杭打ち機から杭を撃ち出し周りの近接型にキツい一撃を与えていく。

 その隙にユニコに寄っていた1人にあらかた蹴散らしてからタクムを放り投げた。

 それにはさすがのタクムも変な声を出しながらなんとかギリギリで出した右足で飛び蹴りを繰り出していた。

 そこまでして、ようやく耳障りなジャミングが消えたため、ハルユキが上手く処理したなと思った瞬間、待ってましたとばかりにリチャージを終えたユニコが、その烈火のごとき遠距離火力を放って、黒雪姫へと放たれていた遠距離火力をいとも簡単に蹴散らして、おまけにくぼ地の端にいたアバターの何人かを葬っていた。

 ユニコの復活によって盛り返し始めたのを表すように、ほころびた所から一気にくぼ地の端にまで移動したバーちゃんとガストは、くぼ地の外周を時計回りに走って遠距離アバターを蹴散らしていく。

 2人が巻き起こす爆炎と暴風は、さながら小さな嵐といった表現がピッタリで、それを後押しするようにユニコの火力も次々とくぼ地の端へと突き刺さっていた。

 

「レディオ!!」

 

「ロータス!!」

 

 そうしてお膳立てされたように、障害を排除されて接近した黒雪姫とレディオが激突。

 ここまでのお返しとばかりにファーストアタックを仕掛けた黒雪姫の斬撃は、レディオの頭から伸びる2本の角の1つを捉えて斬り落とした。

 それとほぼ同時にストレージから長いバトンのような強化外装を呼び出してクルクルと回しながら黒雪姫と斬り結び始めたレディオは、その間接特化の色に相応しくない見事な接近戦を披露して黒雪姫と互角の攻防を繰り広げていく。

 その光景にいつも黒雪姫と手合わせをしているテルヨシは唖然とする。

 あの攻撃の鬼とも呼べる黒雪姫と全くの互角で斬り結べるレディオの実力もさることながら、その攻防のスピードたるや圧巻の一言で、観察眼に優れていると自負するテルヨシでさえ、その動きの全てを捉え続けるには一瞬の見逃しもあってはダメで、そうなればたちまち追えなくなるほどのもの。

 そんな2人がぶつかる度に、周囲へと衝撃が走り、その空気が遠く離れたテルヨシの元にまで届いている錯覚さえ起こす。

 いつしかテルヨシ含め、この場に居合わせた全員がその動きを止めて2人の戦いの結末を見届けるように沈黙していた。

 この加速世界において、おそらく初めて行われたレベル9同士の戦いの結末を。

 

「……そろそろだぜ」

 

 どれ程の時間が経ったか。戦いを見ていたユニコがポツリとそう呟くと、テルヨシもその言葉の意味を理解し思わず生唾を飲む。

 決着が近いのだ。

 あそこまでの撃ち合いをすれば、もう2人の必殺技ゲージが満タンになる頃。それが放たれた時が、決着の時。

 直接攻撃系の黒雪姫と、間接攻撃系のレディオ。

 種類の異なる2人の必殺技がその結末を左右するなら、勝負の明暗を分けるのは必殺技のスピード。

 どちらの必殺技が相手に先に命中するか。それで全てが決まる。

 その予測の通り、激しい激突から生じた衝撃で1度距離を開いた両者は、ここが正念場とばかりに同時に必殺技のモーションへと移行。

 右腕を持ち上げて左腕を添えて引き、突きの構えを取った黒雪姫と、両腕を体の前で交差して、バトンを指で挟んだレディオ。

 

「《デス・バイ・ピアー……》」

 

「《無意味な運命の車(フュータル・フォーチュン・ウィ)……》」

 

 しかし、両者の必殺技はその最後を言い切る前に中断され、その場を異様で不気味な静寂が包み込んだ。

 2人の必殺技を止めた出来事。

 それはあまりに突然に、レディオの背後から胸を貫いた剣の出現による。

 それはもちろん、レディオと正面から対峙している黒雪姫による攻撃ではなく、第三者による完全なる不意打ち。

 極限の集中力を見せていた黒雪姫とレディオも、2人の行く末を見守っていたテルヨシとユニコでさえ、その不意打ちに気付けなかった。

 それほどに突然、その剣は現れレディオを貫いたのだ。

 信じられない出来事から思考が回復したテルヨシは、そこでようやくレディオの背後に出現した1人のアバターの姿を視界に捉える。

 全体を黒ずんだ銀色で覆われた鏡面装甲。中世騎士のような重量感を持ち、頭部には後方へと伸びる2本の長い角があるそのアバターは、しかしフード状のヘルメットを被っていながら、その奥に見えるはずの顔面に当たる部分に光の一切が見えない漆黒が包んでいた。

 そしてその右手には自身の身の丈ほどの先細りした両刃剣を持ち、一直線にレディオを貫いていた。

 そのアバターを見て、テルヨシは確信に似たものを感じ取る。あれが……

 

「《災禍の鎧》……《クロム・ディザスター》」

 

 テルヨシの感じたことをそのまま口に出したのは、近くにいたレイン。

 

「なんでだ。早すぎる。丸1日は余裕があったはずなのに」

 

 次に放たれたユニコの言葉にはテルヨシはそうなのかと思うしかなかったが、それよりも何より、あれが自分の知る《チェリー・ルーク》であるということ自体が、テルヨシには信じられなかった。

 今の姿は、あまりにもチェリーの面影を残していないのだ。それこそユニコが口を開かなければ、チェリーだと認識できないほどに。

 テルヨシは今回、バーちゃんの頼みによってこの場にいるが、その目的は今ここにいるレディオの企てたであろう計画を阻止するため。

 実際はすでに当初の計画通りに阻止には至っていなく、強行策として力ずくの阻止になってはいるが、それが本来の目的であるテルヨシはチェリーがいつダイブするかを聞かずにダイブしていた。

 何よりユニコに「関わってほしくない」と涙ぐみながらに言われたため、テルヨシもレディオの計画阻止はするが、チェリーとは会わないことを密かに心に決めていた。

 

「ユルオォォォォォ……!」

 

 そんな思考が頭を巡って行動が停止していたテルヨシの耳に突如としてそんな不気味な咆哮が届く。

 人とも獣とも言えないその咆哮を発したのは、今まさにレディオの胸を貫いているチェリー。クロム・ディザスターだった。

 ディザスターは咆哮の後、フード型のヘルメットの下。その中の闇から上下で噛み合う牙を出現させ、顔全体が大きな口のようになると、その口を大きく開けて、目の前にいるレディオに食らいつこうとする。

 そこで今まで恐怖していたのか動かなかったレディオが、その胸に刺さる剣を引き抜いて離脱しようとするが、それより早くディザスターの牙がレディオの肩へと向かった。

 

「……《詐欺師の癇癪玉(デシート・ファイアクラッカー)》!!」

 

 その牙が肩へと到達する直前、レディオが叫び必殺技を発動。

 途端、毒々しい黄色の煙と共にレディオが爆発。その場から消失し、直後に少し離れた場所に同色の煙が出現して、そこから胸に穴を開けたレディオが出現。

 さらにディザスターから離れるようにバックステップして、自身のレギオンメンバーへと指示を飛ばした。

 

「飢えた犬めが、飼い主の恩も忘れて、演目を邪魔する気ですか……いいでしょう、それほど腹が減っているなら――目の前の《黒》を喰らうがいい! 食欲はそそらない色ですがね!!」

 

 その言葉のあと、レディオは撤退の音頭を取り始めたが、その様子を狙いを定めるようにして周囲を見回してから捉えたディザスターは、レディオの元へと集まっていた赤系のアバターの1人にその左手を向けると、そのアバターは突如としてディザスターへと引き寄せられてその左手が胸の装甲へと食い込んで止まった。

 そこからのディザスターは、先ほどレディオへと向けた牙を捕らえたアバターの肩へと情け容赦なく突き立てて、ガギンッ!

 勢いよく噛み千切ると、その痛みに悶えるアバターの首を右手の剣で音もなく斬り落とした。

 それによりアバターは光の柱となって消えていき、獲物を失ったディザスターは次なる標的を求めて、その視線を漂わせた。

 

「狂犬めが……仕方ない、惜しいですが演目中断ですね。皆さん、池袋駅のリーブポイントまで撤退しなさい!!」

 

 仲間が1人やられたことで、本格的にユニコを狩るのをやめたレディオは、そんな指示と同時に何らかの必殺技を使って周囲の仲間と一緒にその姿を半透明へと変え、くぼ地を囲んでいた他のアバターも指示の通りにまっすぐ池袋駅のある北西方向へと走り去っていった。

 

「くくく……赤、そして黒、我がサーカスの楽しい楽しいカーニバルに、またいずれご招待しますよ! その犬に喰われてなお、あなたたちに戦意が残っていれば……ですがね! くくく……くふふふふ…………」

 

 去り際にそんな捨て台詞を残したレディオの声は、途切れることのない嘲笑でフェードアウトしていき、この場に残ったのはテルヨシ達だけとなってしまった。

 黄のレギオンの撤退を見て、ディザスターはそこを追撃しようとしていたのだが、ここで行かせてしまってはレイン達の目的が果たせなくなってしまう。

 そう思ったテルヨシがディザスターを足止めするために動こうとし、黒雪姫も撃ち損じていた必殺技を放とうとしたが、それよりも速くダッシュする寸前のディザスターの前に立ち塞がり、行く手を阻んだ存在がいた。

 

「主を、行かせるわけにはいかんぞ、チェリー」

 

 もはや別人となってしまったディザスターを未だチェリーと呼び、その両腕を広げて精一杯の足止めをしたのは、先ほどまで黒雪姫達とはほぼ反対側のくぼ地の端にいたはずのバーちゃんだった。

 バーちゃんのその足止めに低く唸って動きを止めたディザスターは、その標的を逃げていく黄のレギオンから目の前のバーちゃんへと明確に変えたのがわかったテルヨシだったが、そうなってからも構えようとしないバーちゃんにこの上なく嫌な予感を感じて、その場から持てる限りの全力で地面を蹴ってバーちゃんの元へと走り出した。

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