アクセル・ワールド~蒼き閃光~   作:ダブルマジック

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 黄のレギオンとの戦闘の最中に突如として現れた《災禍の鎧》《クロム・ディザスター》。

 元は赤のレギオンの《チェリー・ルーク》である彼の登場により、場の空気は一変。

 その狂暴性を恐れた黄のレギオンはそれにより撤退。

 テルヨシ達も急な出現にどうしたものかと思考していたところで、撤退する黄のレギオンを追おうとしたディザスターの前に《カーマイン・ボンバー》、バーちゃんが立ち塞がった。

 

「もう、やめにしようではないか、チェリー。これ以上、主は堕ちてはならん」

 

 そのバーちゃんは、正面で低く唸るディザスターに構えもせずに言葉を紡ぐと、その言葉を理解できないというように首を傾げたディザスターは、その足をゆっくりと前へと動かしてバーちゃんへと近付いていく。

 しかしそれでもバーちゃんはディザスターに対して戦意を見せる素振りがなかった。

 ヤバイ。本能的にそう思ったテルヨシは、勝算などといったものを考えずに一直線にバーちゃんの元へと走り出す。

 

「儂も主への理解が足りんかった。じゃが、こんな強さを得ても無意味。今の主を見て、いったい誰がその戦いに胸を踊らせる? 誰が戦いを楽しいと思えるのじゃ?」

 

 ゆっくりと近付いてくるディザスターに、必死に訴えかけるバーちゃんだったが、それを聞いてもディザスターの動きに何の変化も見受けられなかったことがわかったテルヨシが、あと5秒あればバーちゃんの元に辿り着くまでに迫ったところで、バーちゃんの目の前まで来たディザスターは、その右手の剣をゆっくりと振り上げて、一閃。

 情けも容赦もない袈裟斬りをバーちゃんへと振り下ろし、それを防御もせずに受けたバーちゃんは、左肩から右脇腹へと抜ける傷を残して、そこから激しい火花を散らしながら力なく後ろへ倒れてしまった。

 

「ディザスタァァアア!!」

 

 怒号。

 無抵抗なバーちゃんが倒される様を見せられたテルヨシは途端、ディザスターへの激しい怒りを覚えて、叫びながらに接近した勢いを利用して右足の蹴りをお見舞いするが、ディザスターと化したチェリーはその蹴りを左腕1本で受け、激しい衝撃波が周囲へと拡散するが、その勢いを完全に殺して受け切ってみせた。

 

 ――お前は誰だ? お前はもう、オレの知ってるチェリーじゃない。クロム・ディザスター……心まで堕ちたお前は、今ここでオレが殺す!――

 

 渾身の攻撃を受け切られながらテルヨシは、その足に力を加え続ける。

 許さない。倒す。殺す。増幅する憎悪が全身を包み込む感覚を覚えながら、

 

「殺す!!」

 

「ルウゥゥゥゥ!」

 

 目の前の敵にテルヨシがそう叫んだ瞬間、ディザスターは右手の剣でテルヨシを斬り伏せようとしたが、それより速く、それは起こった。

 全く動かなかったテルヨシの右足が、ディザスターの左腕のガードを吹き飛ばして、その体ごと近くの建物へと物凄い勢いで突き刺したのだ。

 そのテルヨシは、若干呼吸を乱しながらも、崩れてきた瓦礫を押し退けて立ち上がったディザスターから一瞬たりとも目を離さない。

 今のテルヨシの頭にあるのは、ただ目の前の敵を全力を以て殺すことだけ。

 視界は真っ赤に染まり、照準しているディザスターはそこに浮かび上がる黒い人型のシルエット程度にしか判別がついていない。

 そんなテルヨシを危険視したのか、ディザスターはその視線を明確にテルヨシへと向けて咆哮。

 次には左手をテルヨシへと向けて不思議な動作を見せるが、これにテルヨシもクンッ。

 不思議な回避動作で屈んで、そこから信じられない瞬発力でディザスターへと一直線に接近し、構えられた剣と右足で正面から激突する。

 ここで初めてテルヨシは、自分の両足に《黒いオーラ》が纏われていることに気付くが、そんなことはどうでもいいとばかりに攻撃に集中。

 周囲に衝撃波を生み出してディザスターを釘付けにする。

 

「《デス・バイ・ピアーシング》!!」

 

 ディザスターがテルヨシによって動きを止められた絶妙のタイミングで必殺技を放って割り込んできたのは、黒の王《ブラック・ロータス》こと黒雪姫。

 黒雪姫がテルヨシの背後から飛び越えて放った必殺の突き攻撃はしかし、野性の勘とでも言うべき反応速度で退いたディザスターの左の角の1本を斬り落とすに留まり、テルヨシの前に着地した黒雪姫とテルヨシから少し離れた位置で低く唸った。

 

「……ほう、今のを躱すかよ」

 

 テルヨシに背中を向けてディザスターを正面に捉える黒雪姫が感心したようにそう漏らすと、その左手を横へと持ち上げた。

 

「テイル、お前はもう戦うな」

 

 その動作はテルヨシに対して制止を促すサインだった。

 黒雪姫の言葉に納得のいかなかったテルヨシは、黒雪姫を押し退けてディザスターへと突撃しようとしたが、それより少しだけ早くテルヨシの正面と背後から抱きついてその動きを止める人物がいた。

 正面からは《エピナール・ガスト》ことガストが、震える体で必死にテルヨシを制止させ、背後から抱きついたバーちゃんは、直前に受けた斬撃のダメージによっておそらくは瀕死の状態で、体を襲う痛みも相当なものだろうに、それでもテルヨシの元へと駆けて今の精一杯の力で抱きついていた。

 

「ダメよテイル! あんたは『そっち』に行っちゃダメ!」

 

「主は……その優しさ故に『そっち』へ引き摺られやすいのじゃ……儂は大丈夫。じゃから止まってくれ……頼む……」

 

 2人のあまりに必死な制止で、ようやく頭の血が抜けていったテルヨシは、赤一色だった視界に色が戻っていくのを確認しつつ、その体に入っていた力を抜いていき、両足にまとわりついていた黒いオーラも消えていった。

 

「テイル、お前にはいずれ、私達バーストリンカーの『秘めたる力』を教えねばならないようだ。そうしなければお前は遠からず、あれと同じ末路を辿ることになるかもしれない」

 

 完全に落ち着いたであろうテルヨシを雰囲気で悟った黒雪姫は、振り向くことなくテルヨシにそう言って左手を下ろし、いま目の前で対峙するディザスターを右手の剣の先で指して示した。

 バーストリンカーの秘めたる力とは、一体なんなのか。

 今のテルヨシには見当もつかないが、それを教わらなければ、チェリーと同じ末路を辿るかもしれないと聞けば、その危険性については伺い知れる。

 しかし、どういうわけか今はあり得ないほどの疲労感がテルヨシを襲ってきていて、そこにそれ以上の思考を費やせなかった。

 

「…………バーちゃん……傷は?」

 

 押し寄せてきた疲労で膝をついてしまったテルヨシは、動けない自分達に配慮するようにディザスターと交戦しながら離れていった黒雪姫を確認してから、体を支えてくれているバーちゃんに話しかける。

 

「大丈夫……とは言えんの。痛みとショックで意識も飛んでおったし、HPも1割残っておらん。しかしの、儂のせいで怒りに身を任せて戦う主がおっては、呑気に倒れておるわけにもいかんじゃろうて」

 

「ったく、強がるんじゃないわよボンバー。いくらチェリーがあんたの子だって言っても、今はディザスター化してるのに、その前に無抵抗で立ちはだかるなんて無謀にも程があるわ」

 

 テルヨシの問いに対して、少し弱々しい声色でそう返したバーちゃんは、呆れるように口を開いたガストの言葉に苦笑。

 そこには「そうかもしれないな」という意味があったようにテルヨシは感じ取る。

 

「やっぱ、バーちゃんとチェリーは親子だったか……今まで聞いたりしたことなかったけど、なんとなくそうなんじゃないかなって思ってた」

 

「子の責任は親の責任じゃからな。その結果として儂が全損することになっても仕方なしという覚悟で臨んでおったが、そうもいかんかったの。ガスト、主はロータスの援護に行ってやれ。手負いの儂と疲労困憊のテイルでは役に立たん」

 

「私、ロータスとはまだ色々ある……がああ! 今はそんなこと言ってる場合じゃない……ディザスターは強敵だし、仕方ないか。テイル、ボンバーのことちゃんと守りなさいよ?」

 

「了解。女を守るのは男の使命だからな」

 

 それを聞いたガストは、テルヨシから離れて地面に置いていた《ブレード・ファン》を持って立ち上がり、激しい戦闘を繰り広げ始めた黒雪姫の元へと走っていった。

 それを見届けてから、背中合わせにテルヨシと座り込んだバーちゃんは、黒雪姫達の戦闘を横目に話をする。

 

「以前、主がどうして儂がレベルを上げないかを聞いたことがあったの」

 

「ああ、オレが復帰した日のバトロワでそんなこと聞いたっけ。あの時ははぐらかされたけど」

 

「……儂なりの、気遣いじゃった。チェリーへの。あれの子はもう、主も知っておるじゃろう?」

 

「あそこにいるレインだな。前にパドから聞いたことある」

 

 黒雪姫達の戦闘を見ながら、テルヨシは回復に集中しつつバーちゃんの話に耳を傾ける。

 そこからわかる事実として、幸か不幸か、今この場にはバーちゃんから始まる親子3代が顔を揃えていることに気付いた。

 

「知っての通り、レインは誰もが驚く速度でレベル9へと駆け上がって、新しいプロミの王として君臨しておる。親であるチェリーを軽く飛び越えての。親が子よりレベルが低いというのは、少なからず精神的に影響が出てくる。儂もチェリーからそれは薄々感じておったし、儂自身、いわば《孫》に抜かれてしもうて何も感じなかったわけではない。じゃからせめて儂はチェリーと一緒に歩んでいこうと決めたのじゃ。それができなくなってしもうたレインに替わって、儂がの」

 

 つまりバーちゃんは、自分の子であるチェリーと歩幅を合わせるために、レベルアップを見送ってきたということ。

 初代赤の王の退場によるプロミ解体がなければ、まだ王と呼ばれるまでには至っていなかったはずのユニコ。

 そのユニコにチェリーが教えるべきことはたくさんあったはずだが、それすらも満足にできないまま追いつき、追い越されたチェリーの内心は決して穏やかではなかったはず。

 そんなチェリーの内心を察したバーちゃんは、チェリーが腐ったりしないように、これまでずっとそばにいてあげたのだ。

 それは親としての愛ゆえにできる立派なこと。

 

「じゃが、それもチェリーにとっては辛かったのかもしれん。自分のせいで儂がいつまでもレベルを上げられない。本当ならもうレベルを上げていてもおかしくないのに。そうやって良かれとした儂の行いが、かえって焦りを生み出させていたのかもしれんな。そんな焦りが、チェリーにあの鎧を着けさせる原因になったと思うと、儂がチェリーにしてあげられた最良とは何なのか、わからなくなってしもうた……」

 

「……人の心なんて他人には完全に理解できないもんさ。オレも最近まで何でもわかってるつもりだった幼馴染みの本当の気持ちを、言葉で伝えられて気付かされたよ」

 

「…………儂は、きっと慢心しておったのじゃ。親子なら、言葉などなくとも互いの気持ちは伝わるじゃろうと。じゃが、結果はこの様。情けないにもほどがあるのぅ……」

 

 それでも、自分のためと思ってバーちゃんがしてくれたことを、チェリーが気付いていなかったということはないと、テルヨシは思う。

 何故なら、ここにいるカーマイン・ボンバーという女の子が、どうしようもなく優しいことを、テルヨシは知っていたから。

 レベル4に上がったばかりのテルヨシを、同じレギオンでもないのにこの無制限中立フィールドに誘い、丁寧な説明をしてくれたり、その後も親がいないとわかったテルヨシにパドと同様に助言を惜しまなかった。

 誰が頼んだわけでもないのに、自然とそうしてしまうバーちゃんの優しさを、子であるチェリーが気付かないわけがない。

 

「……きっと、チェリーはバーちゃんみたいになりたかったんだよ。バーちゃんみたいな親に、なりたかったんだ。でも、そうなる前にレインがレベル9になって、王になって、自分を越えてしまった。だからそんなレインの親であり続けるために、強さを欲して、バーちゃんの優しさが辛さに変わって、鎧にまで手が出た。誰が悪かったわけじゃない。ただ、みんな『弱かった』んだと、オレは思う。もちろんオレ含めて、ね」

 

 途中から何を伝えたかったかよくわからなくなっていたテルヨシだが、今回の件でバーちゃんが悪かったわけじゃないと結果的に述べてみれば、そのバーちゃんはくくっ、とテルヨシに預ける体重を増やして寄りかかる。

 

「どのみち、ディザスターとなってしもうたチェリーはもう加速世界にはいられん。そうしてしまった儂は、この件を1つの戒めとして忘れることは許されん。じゃが、主の言うように、儂の『弱さ』が原因だったのなら、もう2度と同じ過ちを繰り返さないように『強く』なることが、できるかの」

 

「できるさ。バーちゃんはイイ女だからな。イイ女はみんな『強い』ってのは、昔から決まってるんだよ」

 

「弱い儂を支えてくれるイイ男が現れるという乙女チックな展開も夢見てみたいものじゃな」

 

「オレの隣はいつでも空いて……」

 

「ノーサンキューじゃ」

 

 プッ、クククッ。

 そこでひと笑いを入れたことでネガティブムードを払拭したテルヨシとバーちゃんは、いつまでも休んでいるわけにもいかないと互いを支え合って立ち上がった。

 ――ドシュゥゥウウウウ!!

 テルヨシとバーちゃんが立ち上がったタイミングで、紅色の閃光が2人の視界を埋める。

 放たれたのは、もう何度も見てきたために目で確認するまでもなく理解できたユニコの主砲。

 おそらくはディザスターに対して放たれたその主砲によるビームは、くぼ地の中心から外周の一部を抉って遥か遠くのビルの1つに大きな穴を穿って、その恐ろしい威力の跡を残していた。

 しかし、それよりもテルヨシとバーちゃんが目を疑ったのは、そのビームの通った跡の付近で力なく倒れる黒雪姫の姿と、開いたブレード・ファンの半分以上を消失させて、明らかにユニコの方向を向いてガードをするガストの姿。奥の方では一番のダメージを受けていそうなディザスターの姿もあったが、その惨事を見れば、いま何が起きたかを予測するのは容易なことだった。

 話の最中にハルユキとタクムも合流してディザスターに立ち向かっていたのを確認していたテルヨシだが、その2人が大きなダメージを受けずに倒れる黒雪姫へと走り寄っているところを見ると、直前で黒雪姫辺りが庇った可能性が高いだろう。

 

「ちょっとレインちゃん? さすがのお姉さんもちょーっと言及したくなるかなぁ」

 

 ブレード・ファンが耐久限界だったのか、光の粒子となって消えた後に口を開いたガストは、いつもより明らかにトーンの低い声でユニコへと言葉をぶつける。

 テルヨシが現状を見てわかったのは、ディザスターと交戦してる黒雪姫やガストごと、ユニコが攻撃を放ってダメージを与えたということ。

 確かにレベル9である黒雪姫やベテランであるガスト。おまけにハルユキとタクムも一斉に相手していれば、いくらディザスターといえど目の前の敵に集中せざるを得ない。

 そこに放たれるユニコの攻撃は理屈で言えば効果的。

 しかし、特に打ち合わせたわけではないところで放たれた不意の攻撃は、当然味方への不意打ちにもなる。

 

「スカーレット・レイン!! 忘れたわけじゃないだろう……き、君に倒されたら……、ブラック・ロータスは、ポイントを全損してしまうんだぞ!!」

 

 ガストの声で言葉にならなかった言葉を吐き出すように叫んだのは、ハルユキ。

 ハルユキの言うように、今の攻撃で黒雪姫のHPがなくなれば、その時点で黒雪姫はレベル9同士のサドンデスルールによって加速世界を永久退場させられるところだった。

 

「それがどうした」

 

 そんな糾弾に対して、ユニコは持ち上げていた主砲を下げつつ、そんな冷たい言葉で返して続ける。

 

「バーストリンカーにとって、自分以外のあらゆるバーストリンカーは敵だ。敵に倒されりゃポイントは減る。ゼロになりゃ永久退場させられる。そんだけの話だろ」

 

「で……でも……僕らは……君と、僕たちは……」

 

「仲間だ、か? お前らの甘ったるさには反吐が出んだよ! いいか、最後に1つだけ教えてやる。加速世界にはな……信じるべき何ものも存在しやしねえ!! 仲間、友達、軍団……そして親子の絆すら、幻想でしかねえんだよ!!」

 

 ハルユキに対して何かを吐き出すようにして放ったユニコの言葉に、今の今まで反省会のようなことをしていたテルヨシとバーちゃんは、言葉通りにその意味を捉えることができなかった。

 そのユニコは言葉の後にくぼ地の端まで移動を終えて強化外装《インビンシブル》をストレージへと戻し、その小さな本体を晒して地面へと降り立つと、右手にハンドガンを持ってダメージによってまともに動けなくなっているディザスターへと歩みを進めていく。

 

「…………あいつを処分したあと、てめぇらもまとめて片付けてやる。それが嫌なら今すぐ逃げな。次に会う時は……敵同士だ」

 

 それを最後にユニコはまっすぐその視線をディザスターへと向けて、這ってでも逃げようとするディザスターに容易に追いついてその体を足で踏みつけて自由を奪うと、右手のハンドガンをディザスターの胸へと当てがった。

 

「…………王って呼ばれるようになっても、やっぱり中身はまだ、子供なんだよな……」

 

「……そうじゃの。じゃからこそ、儂らが支えてやらねばならん。信じさせてやらねばならん。この世界にも、小さくとも確かな絆があることを」

 

 先ほどユニコが言ったことは、全て強がりだ。

 自らの一番強い絆で結ばれた親がディザスターになってしまい、それが辛くて、寂しくて、その感情をどうしていいかわからずに周囲に撒き散らしてしまっているだけ。

 それがわかってしまったから、テルヨシもバーちゃんも若干呆れ気味にレインの行動を見届け、明らかに変なユニコから察したガストも、何を言うでもなくそれを見届けていた。

 しかし、ユニコのハンドガンから《断罪の一撃》が放たれる直前、何かをためらった素振りを見せたユニコの隙を突くように、ディザスターがその右腕を弾いてハンドガンを吹き飛ばしてしまい、あれほどのダメージを受けながら、もう動けるようになったディザスターは、目の前のユニコの首を掴んで立ち上がると、その口のような牙を生やした顔で無抵抗なユニコを喰らおうとした。

 それを見たテルヨシは、世話の焼ける子だと思いつつも、十分に回復したその体に力を込めて前へと踏み出すと、今まさにユニコを喰らおうとするディザスターの腹へと全速力からの蹴りをお見舞いし、ほぼ同時に飛び出していたハルユキの右拳も、ディザスターの顔面に叩き込まれて、それを受けたディザスターは盛大に吹き飛んで地面に大の字で倒れた。

 

「て……てめぇら……なんで…………」

 

「女を助けるのは男の宿命なり」

 

「オレたちは……仲間だからな」

 

 ディザスターの手から離れて地面に降りたユニコが、目の前に立つテルヨシとハルユキに対してそんな疑問をぶつければ、2人とも当然のようにそう答えてみせる。

 

「ほら、もうひと息だろレイン。早くあいつを……チェリーを解放してやれ」

 

 続けるように近くに落ちていたハンドガンを拾ってレインに手渡した。

 それを乱暴に取り返して立ち上がったユニコは、もううごめくことしかできなくなっているディザスターへとその視線を向けた。

 

「チェリー。もう、終わりにしよう。辛くて、苦しいだけのゲームなんて、続ける意味ないよ」

 

 こみ上げる寂しさを抑えて絞り出したユニコの言葉に、ディザスターは自分の終わりを悟ってるように未だ逃げようとするが、もうあがくことしかできていない。

 そう思ったのも一瞬。

 テルヨシはあがくディザスターがその中で見せたわずかな異変を見つけてその動きを完全に止めようとしたが、それより早く予備動作もなしに浮き上がるようにして斜め上方向に高速移動したディザスターに、一同は驚いた。

 

「ひ……《飛行》アビリティ!?」

 

「違う、超長距離ジャンプだ!」

 

 それを見てハルユキ、ユニコと声をあげるが、テルヨシはその2つともを否定して声を張り上げた。

 

「違う、《ワイヤー・フック》だ!」

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