アクセル・ワールド~蒼き閃光~   作:ダブルマジック

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Acceleration3

 テルヨシの衝撃のデビュー戦から一夜明けた朝。

 誰よりも早く梅郷中学校の校門を潜って教室へと入ったテルヨシ。

 昨日はデビュー戦のみで対戦を終わらせたテルヨシは、そのデビュー戦のあと騒ぐギャラリー達に退場する前にあることを言っていた。

 

『6大レギオンに属するバーストリンカー達に頼む。あんたらのマスターと直接会えるように掛け合ってみてくれないか。都合はそっちに任せるし、もちろん拒否してくれても構わない。明後日の午後5時ジャストに新宿第1戦域で対戦をする。その時にギャラリーにでも入って返答してほしい』

 

 そう言い残してテルヨシは対戦を終わらせて加速を解いた。

 加速世界は情報の伝達が速い。こういったメッセージ性の言葉は昨日のデビュー戦を見ていたギャラリーから別のバーストリンカーに話が広がり、そうやって半日くらいで東京23区全域まで広がるのだ。

 今頃テルヨシのメッセージは6大レギオンのマスター達。つまりは黒雪姫と同じレベル9バーストリンカー、純色の六王の耳にも届いているはずだ。

 それはそれとして。

 と、テルヨシは頭を切り替えてから、昨夜にリストアップしていたある案件を決めるため、視界にあったファイルの1つを開いて、その内容をむむぅ、と唸りながら吟味し始めた。

 

「何を見ていますの?」

 

 そこへ声をかけてきたのは、昨日で仲良くなった若宮恵。

 恵は虚空を真剣に睨むテルヨシの正面からニコニコしながらそう尋ねてきて、テルヨシは他に誰もいないことを確認してから、少し思案して鞄から1本のXSBケーブルを取り出して自分のニューロリンカーの端子にケーブルのプラグの片方を挿入し、もう一方の先端を恵に手渡した。

 恵は最初それに顔を赤らめたが、少し考える素振りを見せてから、もう1度テルヨシの顔を見て決心し、そのケーブルを受け取り自分のニューロリンカーに挿入した。

 するとテルヨシの視界には《ワイヤードコネクション》の警告表示が出てからすぐに消える。

 有線直結通信。

 略して直結と呼ばれるこの行為は、互いのニューロリンカーを繋ぐことで、その人とネットワークを通さずに相互通信を行えるようになる。

 しかしその際には互いのニューロリンカーのセキュリティー。防壁が9割は無効化されてしまうため、プライベートメモリなどを覗いたりもできてしまう。

 だから直結は普通、信頼できる相手、家族や恋人に限られている。

 故に恵は始めそれに対して恥じらいを見せ、次に警戒。しかしテルヨシの含むところのない表情を見て決心して直結を許したのだ。

 

『殿方と直結なんて、初めてですわ』

 

『そりゃ光栄だ』

 

 直結した者同士なら、発声せずに思考での会話を可能とする思考発声ができる。

 今2人はそれで会話をしているのだが、これが苦手な人は口も一緒に動いてしまう。しかしテルヨシも恵もそんな様子はない。

 

『それで何を見ていましたの?』

 

『これだよ』

 

 会話も短く、早速本題に戻った恵に、テルヨシは見ていたファイルのコピーを恵に送信。

 受け取った恵はすぐにそれを開き中を確認する。

 

『アルバイトの、リストアップですの?』

 

『そうなんだよなぁ。オレこれで1人暮らしなわけよ。そうなると自給自足しなきゃだから、アルバイトは必至。そんでオレのやれそうなアルバイトを昨日探して候補をリストアップしたんだ』

 

『これが昨日言っていた個人的な用ですの?』

 

『それは別件。いや、これも個人的な用ではあったけど、家でも出来たし、一緒に帰らない理由にはならないだろ?』

 

『まぁそうですわね』

 

 そんな説明で一段落した2人は、そこで本来の目的であったファイルの送信を終えたことでケーブルを抜いて直結をやめると、改めて目の前にあるファイルを見ながら話を再開する。

 

「でもその足でアルバイトとなるとかなり職種も限定されましたわね。近場ではここにある3つしかありませんの?」

 

「うんにゃ、この3つはオレのスキルとか適性を考えて選んだ。その他にならまだ5つくらいやれそうなのあったけど、向いてなさそうだったし」

 

「…………ねぇ、テル。あなたどうやってこの教室まで来ましたの?」

 

 話を再開してすぐ、テルヨシの乗る車椅子を見ながら普通に質問した恵だったが、テルヨシの回答を聞きながらじっとその足を見つめてからそんな疑問を口にした。

 それもそのはず。この教室は校舎の『3階』にある。そこまでの道のりにエレベーターもエスカレーターもない。あるのは階段のみ。

 それを車椅子のテルヨシがどうやって登り降りするというのか。

 その質問に対して、テルヨシはニヤリと笑みを浮かべて車椅子を動かして教室を出ていき、その直前で恵を指でついてくるようにクイクイっと招いて、それに従って恵はテルヨシのあとをついていった。

 辿り着いたのは階段。

 その前で立ち止まったテルヨシは、ふっ、と軽く息を吐いて車椅子を後ろに倒して後転の要領で両手を床について倒立。車椅子を体に固定した状態、そのままの姿勢で静止してみせた。

 

「えっ!? まさかそれで!?」

 

「曲芸師みたいだろ? 惚れんなよ?」

 

 そんな冗談を言いながら恵にウィンクしてみせたテルヨシは、その手を交互に前進させて、器用に階段を降り始めた。逆立ちのまま。

 それで階段の中腹。踊り場のところでUターンしたテルヨシは、今度は降りた道を器用に登っていって、再び恵のいる最上段へと辿り着くと、グッ! と両腕をバネのように使って前宙を決めて着地。

 スプリングでも内蔵されてるのか、車椅子は衝撃を緩和させて壊れる気配を見せなかった。

 

「こんな感じ? やっぱり人がいると危ないし、こうして早くに登校したわけ。昨日も最後まで教室にいたのはこれが理由でもあるな。まぁ移動教室とかあるし人前でやることにはなるけど、極力避ける感じだな」

 

 そんなテルヨシに恵はポカーン。開いた口が塞がらない。

 

「お前達は何をしているのだ?」

 

 そこへ階段からやって来たのは、これまた昨日仲良くなった黒雪姫だった。

 黒雪姫は階段の前で話す2人を見て何事かと首を傾げていた。

 

「ひーめー、グッモーニンッ!」

 

「お、おはよう姫」

 

「あ、おお、おはよう。ではなくて、何をしていたかと聞いたのだが?」

 

「恵にオレがどうやって教室まで行ってるかを実践してみせたとこ」

 

「ん? そういえばお前はどうやって階段を登ったのだ? まさか逆立ちして登ってきたなんて言うなよ?」

 

「あはは……姫せいかーい……」

 

 そんな恵の回答に、冗談のつもりで言った黒雪姫もさすがに我が耳を疑ったが、何故か自慢気に胸を張るテルヨシを見て乾いた笑いを漏らしたのだった。

 

「アルバイトだと? テルが?」

 

 教室へと戻ったテルヨシ達は、再びアルバイトの話を始めると、恵からファイルのコピーを貰った――テルヨシとの直結を嫌がったから――黒雪姫が意外だと言うような声を出す。

 

「まぁ、アメリカでちょいちょい稼いでたからまだ余裕はあるんだけど、逆算してみると中学卒業まで賄えそうになくてな。そん時になって慌てるより、今のうちから稼ぐ方が余裕も出てくるだろって話よ」

 

「アメリカで稼いでいたって、何をしていましたの?」

 

「大学の准教授。幼なじみの父親の補佐的な?」

 

「ふむ、それで心理学が関わってくるわけか。そんな奴が入学したいと言ってくれば、学校側も特別枠を設けるわけだ」

 

「これ内緒な? オレ教授に結構な無理を言ってこっち来て入学したし、あんま騒がれたくないんだ。日本に来た理由も聞くなよ。プライベートだからな」

 

 そう念を押したテルヨシの顔は今までで一番真剣だったため、2人もそれに頷いて、話を本筋に戻す。

 

「えーと、テルが選んだアルバイトは『スーパーのレジ打ち』『試作アプリのテスター』『ケーキ屋の厨房スタッフ』ですね」

 

「前の2つはいいとして、最後の厨房スタッフは本当に意外なのだが」

 

「そりゃ男はケーキの1つや2つ作れた方がモテるだろ……うん、冗談だからそんな目で見ないで……」

 

 平然とボケるテルヨシに昨日から「軽い男」のレッテルを貼りかけていた2人は、それで本当に軽い男と判断して白い目で見ると、テルヨシは耐えられなくてすぐにボケだとバラす。

 

「ケーキはまぁ、アメリカで毒味させられてたから、味直しで自分で作るうちに自然と、な……ふ、ふふ……」

 

「「……御愁傷様」」

 

 そうして本当の理由を遠い目をして語ったテルヨシに、2人はそう言うしかなかった。

 

「で、ですけど、この3つでは厨房スタッフが一番時給が高いですわね」

 

「だがここだけ場所が練馬区だな。桜台駅近辺といえば、杉並区からそう遠くないが」

 

「この程度なら問題ないさ。オレの家は高円寺駅近辺だから、そこから半径4、5キロ圏内で探したし、このケーキ屋、募集枠が1つしかないから悠長なこともしてられないんだよなぁ」

 

「でしたらここでいいのではなくて? それにテルが作ったケーキ、食べてみたいですし」

 

「恵になら言ってくれればいつでも作るよ。ついでに姫にも」

 

「ついでならいらん」

 

「ははっ。んじゃ、早速放課後に申し込んでくるか。採用されたら食べに来な」

 

「そこは『昨日作りすぎたからお裾分けな』と言って学校に持ってくるべきでは?」

 

「おお! それもらい! いつかやるから楽しみにしてろ」

 

 軽い男はさりげない男らしさみたいのとは無縁だなと、恵と黒雪姫はそんなテルヨシに期待半分、呆れ半分の笑顔を浮かべたのだった。

 

「え? なになに? 皇くんケーキ作れるの?」

 

「えー! いいなー!」

 

 そこへちょうど教室へと入ってきたクラスメートの女子達が、聞こえてきた話でテルヨシに近寄ってきてそのまま雑談となり、黒雪姫と恵はいつの間にか隅に追いやられてしまった。

 それからあっという間に昼休みになり、用があるからと一緒の昼食を断った恵と別れて学生食堂へとやって来たテルヨシと黒雪姫は、適当に料理を注文してから並んでいた長テーブルの端っこで向かい合って着き、食べながらボリューム控え目で話を始めた。

 

「それで? デビュー戦の方はどうだったのだ?」

 

「ビクトリー。楽しかったぜ」

 

「相手はどこのどいつだ? レベルは?」

 

「名前はフロスト・ホーン。レベルは4。青のレギオン所属だったな」

 

「そうか。そいつは加速世界でも名の知れた当たって砕けろ(ゴー・フォー・ブロークン)野郎だ。勝率を度外視した対戦を繰り返すから、これからたくさん乱入されるぞ」

 

「確かにそんな感じの奴だったなぁ。というか、姫はオレが格上相手に勝ったことを驚かないのな。ギャラリーの奴等は例外なく驚いてたが」

 

「うむ、デビュー戦も終えたし、もう話していいか。テル、君はすでにして新人と呼べる実力ではない。もちろんアバターのポテンシャル面ではレベル1だが、それを『補って余るだけのモノ』を持っている。昨日の1手でそれがわかったのでな。私はある意味で君の勝利に納得している」

 

「補って余るだけのって言っても限界はあるだろ。まぁ、デビュー戦前にそれ言われてたら萎えてたかもしれないから感謝するけど」

 

「私の見立てでは、おそらく相性もあるがレベル5相当くらいの実力はあるだろうな。もちろん対策もされるからいつまでもレベル1で高レベルを相手にできないだろうが、同レベル相手ならまず負けないだろうさ」

 

 そこで黒雪姫は話を1度区切って、目の前のミートスパゲッティに手をつけ、テルヨシはレベル9の上級者からのそんな評価に頬杖をついて右手に持つフォークで同じミートスパゲッティをクルクル巻き取っては解く。

 

「レベル5相当ねぇ……オレの親もレベル1で相手になる奴はいないだろうとは言ってたけど、実質まだ3人……ああ、姫入れてな。たったそんだけの対戦人数でオレ自身の実力がよくわかんねぇわけよ。実感っていうの? そーゆーの」

 

「それこそこれから数多の対戦を繰り返せば自ずとわかってくるものだ。得手不得手含めてな。今は私の言葉など忘れて、がむしゃらに対戦をしていればいい。もちろんポイントに余裕があればだがな」

 

「そっちは問題ない。親から初期ポイント100+20くらいは稼いだから。マジで死にかけたけど……」

 

 そうやって語ったテルヨシは、クルクルと遊ばせていたフォークを止めて、その時を思い出したのか身震いをした。

 

「そこだよテル。結局行き着くのはそこなんだよ」

 

「……どこなんだよ」

 

 少し前の記憶を掘り起こしていたテルヨシに、ビシッとフォークの先端を向けた黒雪姫は、突然そんなことを言うが、当のテルヨシには何の話かわからなく、視線だけ黒雪姫に向けると、黒雪姫ははぁ、と息をひとつ吐いてから話を再開する。

 

「君の親だ。今のテルがそこまでの実力を持っているのは、ひとえにその親の指導があってのことだろう?」

 

「だろうな。実際地獄の1週間だったし」

 

「それはお前の顔を見ればわかる。だがそこまでのスパルタ教育をするバーストリンカーなど、私の知る限りでは1人しかいないな。差し支えなければ君の親のデュエルアバター名を教えてくれないか?」

 

「うーん、タダで教えるってのもなぁ……まいっか。じゃあオレの親のこと知ってたら教えてくれないか? あいつ自分のことは全く教えてくれなかったからさ」

 

「ん? 過去形なのが気になるが、私が知っていれば可能な限りの情報を提供しよう」

 

「んじゃ決まりな。オレの親は《レイズン・モビール》って人だよ」

 

 テルヨシが何気なく口にしたその名を聞いた瞬間、黒雪姫は持っていたフォークをカチャンと皿に落とし目を丸くして固まる。

 

「レイズン……モビール……《複合兵器(ハイブリッド)》がお前の親なのか……いや、それならばテルが親との対戦だけでそこまでの実力を持てたことにも説明がつくか……」

 

「あのぅ姫? 頭の整理は終わった?」

 

「ん、完了だ。そうか、あいつの子か。これは面白いな」

 

「なに1人で盛り上がってるんだよ。わかるように教えてくれ」

 

「いやいや、とてもこの休み時間だけでは語りきれない。お前の親はそれほどに加速世界では有名なのだ。私もよく苦汁を飲まされたものだ」

 

「姫も勝てないのかよ……」

 

「あのなぁテル。私が最初からレベル9のバーストリンカーだったとでも思っているのか? 皆初めはレベル1。レベル上げの過程で敗北を知らない奴など1人としていない」

 

「まぁ確かに。ごもっとも」

 

「だからといって負け越していたわけでもないぞ。まぁそれはそれとしてだ。お前の親については古参のハイランカー達がよく知っている。だから私が全てを語らずとも、お前がモビールの子だと知れれば自ずと情報はお前の耳に届くはずだ。その景気付けとして最初の情報をやろう。――モビールは加速世界で複合兵器の異名で知られている、緑のレギオン《グレート・ウォール》のレギオンマスター《グリーン・グランデ》の子だ」

 

 放課後、予定していた通りに練馬区の桜台駅近辺にあるケーキ屋目指して移動を開始したテルヨシは、その最中のバスの中で色々と考えていた。

 考えていたのは自分の親であるモビールのこと。

 自分のことを一切話さないでいたことについては、自分が有名であることを隠すためにあえて伏せたのだろう。

 テルヨシが最初からモビールの子だ、などとデビュー戦の時に言っていれば、きっとあれ以上の衝撃が走り、テルヨシの名は音速で加速世界を駆け巡っただろう。

 しかしそうなるとテルヨシはバーストリンカー《レガッタ・テイル》としてではなく、レイズン・モビールの子として目を向けられてしまう。

 だからモビールは余計なプレッシャーを与えないようにしたのだ。

 モビールの子としてではなく、1人のバーストリンカー、レガッタ・テイルとしてデビューさせたかったのだと。テルヨシは自然とそうと思えていた。

 それでもテルヨシはその行為に対して少しばかり怒りを覚えていた。

 ――オレはそんなプレッシャーで潰れないし、モビールの築いた歴史すら塗り替える存在になる――

 そんな強い意思と向上心を、バーストリンカー、レガッタ・テイルになって加速世界の存在を知った時からすでに持っていたから。

 

「……これから、だな」

 

 何はともあれ、それを現実にするのはこれからの自分次第。

 と結論付けたテルヨシは、そこで丁度バスを降りてしばらく移動し、目的のケーキ屋へと辿り着く。

 小規模な商店街の並びにちんまりと佇む可愛らしいその店は、看板に『パティスリー・ラ・プラージュ』と書かれていて、テルヨシ的には好印象。

 親しみやすさという点では高級感などを出していないから、学生でも気兼ねなく入れるだろう。

 中もイートインのスペースが確保されていてくつろげる空間もある。

 思いつつ入った店内には、今は客がいなく、レジに歳の近そうな背の高いメイド服姿の女性店員が1人。

 長い黒の後ろ髪を三つ編みにしているその女性店員は、「いらっしゃいませ」と言ってから視線を遠くに向けた。テルヨシが車椅子でも全く気にならないらしい。

 

「あのぅ、アルバイト募集に応募したんですけど、店長さんと話せますか?」

 

「……K。ちょっと待って」

 

 け、K? と思いつつ、店の奥に引っ込んだ女性店員を見送りつつ、それがOKの略語なのだと理解。

 そこから察すると彼女は待つのも待たせるのも嫌いなのかな、と予測しつつ、すぐに店長らしき女性と戻ってきた女性店員にお礼を言いつつ、店長と一緒に店の奥へ。

 面接はすぐに終了。特に問題もなく採用されたので、そのままシフトの話と連絡先の交換を始めたテルヨシだったのだが、

 

「君、グローバルネットに接続してないのかな? 悪いけど色々と手続きも含めてあるから、ネットに繋いでもらえる?」

 

「あ、はい……」

 

 これは少々問題がある。

 何故ならテルヨシはバーストリンカー。そしてここ練馬区全域を領土とするレギオンは、赤のレギオン《プロミネンス》。

 そんなところでグローバルネットに接続すれば、この話の最中に対戦を挑まれかねない。それは困る。

 そう考えてニューロリンカーにゆっくり手を伸ばしていると、その場にさっきの女性店員が資材を取りにやって来て、何事もなかったように退室。

 しかし部屋を出る前にチラッとテルヨシの首元、手を伸ばすニューロリンカーに目を向けたように見えたテルヨシは、それを少し気にしつつも、先手を打つことを決意して、グローバルネットに接続した。

 ――バシィィイイ!!

 その数秒後、タイミングを計ったように加速したテルヨシは、自らが加速する前に乱入されたことに驚きながら、変わりゆく世界を見つめて、視界に表示された【HERE COMES A NEW CHALLENGER!!】の炎文字をまっすぐ捉えた。

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