アクセル・ワールド~蒼き閃光~   作:ダブルマジック

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 3月も下旬へと差し掛かり、学校はポツポツと終業式を迎えて進級と進学の準備期間となる春休みに突入していた。

 テルヨシの通う梅郷中学校も本日22日金曜日で終業式を迎え、明日から春休みとなっていて、マリアの通う松乃木学園も同日で終業式。

 週明けにはマリアの本格的な引っ越しの予定があったりする。

 そのマリアもバーストリンカーとしてのデビューからすでにレベル2へと上がり、対戦もずいぶん手慣れた感じになってきていた。

 同じ学校のバーストリンカーとも仲良くなれたようで、今はテルヨシと黒雪姫のように学校で1日1度は対戦をして経験値を稼いでいるとかを本人談で聞いていた。

 レギオンの勧誘もそれなりで、特にユニコからは顔を合わせる度に1度はプロミに誘われてるが、マリアなりに何か考えてるようで、未だどこのレギオンにも加入してなかった。

 そういった変化もあって迎えた春休み初日。

 テルヨシのバイトも午後からとあって、今日はマリアと一緒にホーム同然の中野第2戦域に出向いてタッグ戦をやる予定だったため、朝からやる気がみなぎっていた2人は、さらに元気になるためにピザトーストを朝食にエネルギーをチャージしていた。

 しかしそこへ唐突に玄関のチャイムが鳴り響き、時間にして朝の8時とあって誰だよと思いながらもテルヨシが玄関の扉を開けてみると、そこにはボーイッシュなパンツと服を着た白穂梓桜の姿があり、意味があるのかつけていたサングラスを外してテルヨシにハグをしてきた。

 

It's a long time!(久しぶりね!)

 

「サクラ!? 何で日本に来てんだよ!?」

 

Since father went by work here, it came about it.(パパが仕事でこっちに行くからついてきたの)Because that it was silent wanted to surprise.(黙ってたのは驚かせたかったから)

 

「……いや、わからん」

 

 相変わらず標準語が英語のサクラは、テルヨシが聞き取れない英語で話すため日本語で話せと言いつつ引き剥がすと、サクラはテヘッと舌を出して改めて日本語で説明。

 そんな騒がしいやり取りをしていたら、当然マリアも気になって玄関に顔を出すと、そこでサクラと目が合い反射的にテルヨシの後ろに隠れる。

 

「ん? んー? えーと……ああ! その子がテルの言ってたマリアね。はじめまして、テルの従姉弟で幼馴染みの白穂梓桜って言います。よろしくね」

 

 そのマリアを見てサクラはテルヨシから話にだけ聞いていた子だとわかり、すぐに目線を合わせて屈んで握手を求めて手を差し出すと、マリアも話にだけ聞いていたサクラにおそるおそる手を出して握手を交わした。

 

「滞在期間は3日くらいなんだけど、その間はここで寝泊まりしてもいいよね? パパの許可はもらってるし」

 

 マリアとの挨拶を終えて早速話を切り出してきたサクラは、持ってきていた小さなキャリーバックを引っ張り出してそのまま部屋へと上がり込んでリビングに行ってしまい、それを追う形でテルヨシとマリアもリビングへと入ると、いきなりテルヨシのピザトーストを食べていたサクラに呆然とする。

 

「その代わりってわけじゃないけど、寝泊まりする間は私がご飯作ってあげるから、喜びなさい」

 

「なん、だと……」

 

 ピザトーストを食べながら、有り難がれと言わんばかりのサクラに対して、テルヨシは一瞬で顔から血の気が引く。

 何故ならサクラは、料理を作るとあれな人物だから。

 それを知る由もないマリアは、そんなテルヨシに首を傾げるが、自分の分のピザトーストが食べられそうになって慌ててサクラを止めに入っていた。

 

「よしわかった。お前は何もするな。ここにいる間は客人として扱うから何かを手伝う必要もない。頼むから料理だけはするな」

 

「えー、折角久しぶりに腕を振るえると思ってたのにぃ。テルのいじわる」

 

「そんなこと知ったこっちゃない。こっちは生きるか死ぬかの2択なんだ。迷う余地がないって……」

 

 と、サクラの暴動を事前に止めつつ話していると、またも家のチャイムが鳴り響き、3人で顔を合わせてからテルヨシが玄関に行き扉を開けると、そこにはテルヨシと同じくらいの背格好の黒髪の見るからに爽やかな少年がいて、テルヨシを見るや否やおいっす! みたいな挨拶をしてきたが、テルヨシはそれを無視して無言で家の扉を閉める。

 おかしい。どうやら幻覚を見ているようだ。

 そんな風に思いながら1度深呼吸してから再度扉を開けると、そこには呑気に手を振る少年。

 

「…………オレの従兄弟は連絡もできないアホばっかりなのか」

 

「折角驚かせてあげようと思ったのに、そういう反応はシラケるよ。しかも何さその複数系の言い方。あっ、本当に車椅子卒業したんだね」

 

 少年はテルヨシの反応に不満があるらしく、グチグチと言ってくるが、話でだけ歩けるようになったことを聞いていた少年は、そこにもしっかり反応する。

 しかし玄関で騒がれても迷惑なのでとりあえず中へと通してリビングに戻ると、何故かもう意気投合したマリアとサクラが仲良さそうに話をしていて、ピザトーストも完食されている。

 

「あれ? その人誰よテル」

 

「ああ、こいつは……」

 

 と、テルヨシと一緒にリビングに入ってきた少年を見ながらに質問してきたサクラに紹介しようとしたら、その少年はサクラに視線を固定して固まってるので、テルヨシも何事かと声をかけると、首を傾げるサクラを見ながらに少年は、

 

「…………テル、一目惚れって本当にあるんだね」

 

「…………はっ?」

 

 そんなことを言ってきたのだった。

 まさかサクラに一目惚れする人間がいるとは夢にも思ってなかったテルヨシは、少年の言葉に耳を疑ったが、どうやら本当のようで、早く紹介しろと急かすのに押されてそれぞれの紹介をテルヨシがする。

 

「こっちが白穂梓桜。んで、こっちが押留竜司(オシドメリュウジ)。2人ともオレの従兄弟だけど、オレの両親の兄弟夫婦の子だから……まぁいっか。んでこっちが悠木麻理亜。最近オレと一緒に暮らし始めた子だ」

 

 そうやってそれぞれの紹介をすると、3人も改めて挨拶の言葉を一言二言交わして握手などする。

 しかしサクラもリュウジも申し合わせたわけでもないのに同じタイミングで来るなど奇跡に近い。

 サクラはアメリカ、ワシントンD.C.から。リュウジはフランスのパリから来ているのだから。

 紹介が終わると、早速サクラからアドレスを聞き出したリュウジ。

 それを横目にテルヨシはマリアを呼び寄せて耳打ちであることを教えておく。

 

「マリア、先に言っておくけど、あいつがオレの親だ」

 

「じゃあ、私のおじいちゃん?」

 

「プッ。それあいつに言ってやれよ」

 

 そうやってマリアに告げたように、リュウジはテルヨシにブレイン・バーストをインストールした張本人であり、加速世界において《複合兵器》などという大層な通り名を持つ《レイズン・モビール》なのだ。

 そのモビールことリュウジは、グイグイいってサクラとアドレス交換に成功し、嬉しそうに登録してテルヨシに報告。

 それを鬱陶しく思いながらも、サクラに聞こえないように一応話は聞いておく。

 

「お前さ、グローバル接続は切ってるよな?」

 

「あーそれね。実はここに来る間にうっかり忘れてて1回乱入されてさ。久しぶりの対戦で勘が鈍っててギリギリ勝利。負けたら全損してたから焦ったのなんのって」

 

 はははっ、と笑いながらに空恐ろしいことを平然と言ってのけるリュウジに、テルヨシは呆れてしまう。

 実はリュウジはフランスに発つ前にそのポイントのほとんどを注ぎ込んでテルヨシの育成に当てた――1日100戦の時の加速とポイント移動によって――ため、その時には残り1桁までポイントがなかったのだ。

 それなのにグローバル接続を切るのを忘れていて乱入されてる辺りはアホとしか言えなかったが、こうしてまたリュウジとブレイン・バーストの話ができるのがなんとなく嬉しかったのはテルヨシの胸の内に秘めておく。

 

「お前はどっか無防備なんだよな。まぁいいや。マリアがオレの子なのは言っとく」

 

「へぇ。テルも子を作るまでに成長したのか。あとで見せてくれな、対戦してるとこ。マリアちゃんも」

 

「それはこれからすぐにできるけど、お前、そもそも何でこっちに来たの?」

 

「親が夫婦水入らずで旅行したいって言うから、1人で留守番してるのも嫌だし往復費は出してくれるって言うから遊びに来た。2日くらいで帰るから、その間は泊めてください」

 

 本当に唐突な従兄弟2人に頭が痛くなるテルヨシ。

 しかし基本的に優しいテルヨシは特に拒む理由もないために2人の宿泊を許可してしまう。

 サクラも泊まるとあってリュウジが歓喜するのはとりあえず放っておき、予定まで狂わされるのは避けたかったテルヨシは、これから少ししたら出かけることを伝え、2人もそれに同行することに了承。

 昼からはバイトのためどうするかを今のうちに聞くと、サクラはバイト先までついてきて、リュウジは用があるとかで夕方までは別行動を取るという。

 おそらくだが、引っ越す前の友達にでも会いに行くのだろうと予想したテルヨシは深く追求しなかった。

 そうして9時半頃に中野の公園に出かけた4人。

 今日は雲も少ない晴天で春を感じさせる暖かさがある中で、元々活発な方のサクラは年甲斐もなくいきなり滑り台へと走り出し、それを見送りつつ3人は素早くグローバル接続をしてテルヨシとマリアはタッグ登録。

 さらに3人ともがそれぞれ観戦登録を完了させて、サクラに怪しまれることなく対戦の準備を整えた。

 ここですぐに加速して誰かに対戦を挑んでも良かったのだが、リュウジが挑んでくる相手に勝つ方がカッコ良いとかわけがわからない理屈を言ってきたために乱入を待つこととなり、そのままはしゃぐサクラに合わせて遊んでいると、テルヨシの頭によく聞き慣れたバシィィイイ! という加速をした時の音が鳴り響き、来たかと思っていると、視界に現れた炎文字は乱入されたことを示す文章ではなく、観戦者として入った時のものだった。

 いったい誰が対戦をするのかと思いながら、デュエルアバターへと変身し対戦フィールドが構築されてから視界上の表示を見ると、そこには

 

《Epinard Gust[Level7]》

《Raisin Mobile[Level6]》

 

 そんな両名の名前が表示されていた。

 1人は言わずと知れた《エピナール・ガスト》ことガストで、もう1人はテルヨシの親である《レイズン・モビール》。

 つまりテルヨシとマリアの対戦を見せるはずが、リュウジが先に乱入を受けてしまったということだ。

 だからさっさと対戦を挑めば良かったものをと、なってしまった現実に乾いた笑いを漏らしつつ、構築された《月光》ステージでまずはマリアと合流。

 めちゃくちゃ近くにいたためすぐに合流できたので、次に同じようにスタート位置が近かったリュウジを探すと、白い木のオブジェクトの影からデュエルアバターとなったリュウジが姿を現す。

 モビールの姿は暗い紫の装甲色で、腕や足、胴体などの各部位を関節を区切りとしていくつもの直方体でくっつけたような昔のロボットのような出で立ちで、四角い顔からは金色のアイレンズが輝いていた。

 

「ほほう。君がソレイユ・アンブッシュだね。色は《灼熱(ザ・バーニング)》に近いかな」

 

 観戦者のため10メートル離れた位置からまじまじとマリアを見るリュウジは、短くそんな感想を漏らすと、ガイドカーソルの示す方向に体を向けてガストの到着を完全に待つ姿勢になる。

 

「ちょっと予定とは違ったけど、良い機会だし2人に僕の戦いを見てもらおうかな」

 

「それはいいけどお前、負けたら全損とかにならないよな?」

 

「ギリギリ大丈夫! 負けても1ポイント残るよ!」

 

 やる気があるリュウジに何も言うまいとは思ったテルヨシだったが、ついさっきポイントの話をして余裕がなかったことを危惧して問いかければ、何故か明るく即答し2人に親指を立てて大丈夫と示すが、全然大丈夫ではない。

 その回答にマリアはテルヨシの腕をつついて「あの人大丈夫なの?」と心配の声を漏らすが、それがリュウジの何を心配してかは聞かないでおく。

 それから数十秒ほどでちらほらと他のギャラリーも集まり始めて、さすがガストと褒めるべきかその数は相当数。

 4つの大レギオンに挟まれた中立地帯とあって、毎日対戦が盛んな中野第2戦域だが、ギャラリーから聞こえる声はわずかに驚きが含まれていることに気付く。

 なにせほとんど引退していたモビールが、約2年の歳月を経て公の場で対戦をするのだから、モビールを知るバーストリンカーが騒ぐのも無理はなかった。

 

「おらぁ!! モビール!!」

 

 そんな怒声に近い声色で走ってやってきたガストは、リュウジが見えてギリギリの距離感で止まってズビシッ! と指を差して言葉を紡いだ。

 

「もう引退したとかなんとか聞いてたけど、あんたの名前見つけたら反射的に対戦挑んじゃったわよ! それもこれもあんたが通算戦績で私より1勝多いことが原因なの! だから今日ここでイーブンにしてやるわ!」

 

 物凄い迫力でそう言ったガストに、テルヨシもマリアもリュウジですらちょっと引くが、ガストから伝わってくるプレッシャーは並みのものではなく、ギャラリーのテルヨシですらその気迫にたじろぎそうになっていた。

 

「待って待って《エッピン》! 僕、対戦は久しぶりだから最初からトップギアはついていけないかもしれないんだって!」

 

「んなこと知るかぁ!」

 

 リュウジの言葉など聞く耳持たないガストは、その手の扇子型強化外装《ブレード・ファン》を振りかぶってリュウジへと突撃。

 慌てた様子を見せるリュウジだったが、テルヨシにはそこに余裕がないようには見えなく、どこか不思議な期待を持っていた。

 ガストの突撃で幕を開けた対戦は、まず最初にガストの右から左に振るったブレード・ファンがリュウジを襲うが、それをバックステップで躱してみせる。

 しかしガストはすかさずブレード・ファンを広げて、返しの横凪ぎでリュウジに突風をぶつけて吹き飛ばそうとして、それを反射的に踏ん張って堪えたリュウジだったが、それが狙いだったかのようにガストはまたブレード・ファンを閉じて体重が前に行っていて硬直するリュウジを再度横凪ぎで狙った。

 ――ガギィイイイン!

 避けようがない完璧なタイミングで振るわれたブレード・ファンは、しかしリュウジを捉えることはなく、直前でそれを阻んだものがあった。

 それはリュウジの腰の辺りからいつの間にかニュルリと伸びたサソリの尻尾のような強化外装。

 横幅はおよそ30センチほどで、厚さが3センチ程度のその尻尾は、ブレード・ファンとリュウジの間に割り込んでしっかりとブレード・ファンを受け止めていた。

 

「なーにがトップギアにはついていけないよ。ちゃんと反応できてるじゃないの」

 

「違う違う! これオートディフェンス! 自動だから!」

 

 至近距離でそんなやり取りをする2人は、互いに1度後退することでその距離が開くが、リュウジが出したサソリの尻尾は上へと伸びた状態で後ろに待機していて、その姿はどことなくテルヨシに似ていた。

 

「あれなに?」

 

 それを見たマリアが当然のようにテルヨシへと質問するので、テルヨシも親らしく懇切丁寧に強化外装の説明をしてあげる。

 

「あれは《スコル・スカル》っていう強化外装で、直接攻撃に反応して自動で使用者を守るちょっと便利な盾、かな。まぁ、1度防御すると5秒間動かなくなって連撃には対応できないし、耐久値を超える攻撃も受けられないから、万能ってわけでもないんだけど」

 

 そんな説明にマリアはへぇ、と一言漏らしてからまた沈黙。

 しかしこうやってわからないことを積極的に聞くのは、それだけマリアもブレイン・バーストが楽しめているのだと考えるとテルヨシも嬉しくなる。

 

「エッピンは相変わらず突撃姿勢だね。今までその突撃に何度苦しめられてきたか」

 

「攻撃は最大の防御。それが私の信条だからね。まぁ、あんたの親の《グランデ》にはそれも完封されてイラッとしたけど……っていうかエッピンやめて」

 

「グラちんはそういう戦い方だから文句言わないでやってほしいな。あとエッピンは可愛いだろ」

 

 テルヨシが説明をしている間に短いやり取りをしていたガストとリュウジだが、何故か緑の王《グリーン・グランデ》の話が持ち上がっていて、そのグランデをグラちんなどと呼べるリュウジは、やはり彼の子なのだと思わせる。

 テルヨシ自身、未だその姿すら見たことがないグランデは噂でしか聞いたことがなかったが、彼は通常対戦においてただの1度もHPが半分を切ったことはないらしく、その鉄壁の防御から《絶対防御(インバルナラブル)》などという2つ名を持っている。

 

「グランデもグランデならあんたもあんたよね。グランデが確固としたスタイルを持ってんのに、あんたはその逆。色んな状況に合わせてコロコロと戦い方が変わる。まるでカメレオン」

 

「誉め言葉ってことで受け取っておくよ」

 

 ここでそんな会話をしたことで、マリアがまた首を傾げてテルヨシにどういうことかを尋ねてくるが、先に何かを話してしまうのはつまらないので見てればわかると言って、再び動き始めた2人からマリアも目を離さなくなった。

 スコル・スカルの出現で攻め方を工夫する必要が出てきたガストは、オートディフェンスの特性を利用しようとまずは隙の少ない小振りの殴打で防御を誘発する。

 それをさせまいと2度ほど回避したリュウジだったが、このままではジリ貧になるのは目に見えてたので、3度目はあえて前へと出てガストの小振りの殴打をスコル・スカルで受けると、懐に潜り込んで右手で腹へと一撃入れるが、離れ際に左足の爪先でリュウジの顎を真下から蹴ってカウンターを入れたガストは1度地面に背中をつくがすぐに立ち上がり打たれた腹を押さえる。

 そして顎を打たれたリュウジは軽い脳震盪でも起きたのか足元がふらつきそれをなんとか堪えてガストから目を離さないが、その隙にブレード・ファンを18本の展開剣へと変化させたガストは、そのうちの2本を両手に装備して残りを後ろで待機させ突撃。

 息もつかせない連撃を繰り出し始めて、リュウジはそれをスコル・スカルの防御とステップ回避でしのぎ、無理な時は両腕も使っての最小ダメージにしていたが、終わらないガストの連撃に動きが鈍り出す。

 そうして鈍った動きで出来た完璧な隙を見逃さずに鋭い一閃をそこへと放とうとしたガストだったが、不意にリュウジが握った右手の拳をガストに向けた。

 ――ぐおぉぉおおおおんッ!!

 すると突然、聴覚を揺さぶるほどの獣の咆哮が対戦フィールドに響き渡り、それによってガストは攻撃を中断して1度後退。

 咆哮の発生源の一番近くで受けたせいで何度か頭を叩く動作をして、忌々しげにリュウジを見た。

 そしてそのリュウジの右手にはいつの間にかライオンの顔を模したグローブが装備されていた。

 

「《ライオン・バインド》。こんな至近距離から撃ったのは初めてだよ」

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