アクセル・ワールド~蒼き閃光~   作:ダブルマジック

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Acceleration4

 練馬区のケーキ屋でグローバルネット接続した瞬間に乱入されたテルヨシは、構築された今回の対戦フィールドなど一切気にすることなく、その姿が自らのデュエルアバターへと変わってからすぐに視界右上の対戦相手を確認した。

 

《Blood Leopard[Level6]》

 

 ブラッド・レパード。レベルは6。

 黒雪姫が今のテルヨシをレベル5相当などと言っていたので、真っ向からではまず勝てないだろう。

 しかし今のテルヨシには全くと言っていいほど戦う意思はなかった。

 

「おお! あれが中野に現れたって言う新人か!」

 

 そこに今回の対戦フィールド、《繁華街》ステージの建物オブジェクトの電光掲示板に座るギャラリーが、早速テルヨシを発見してそんな声をあげると、次々とギャラリー達が合流。

 その数は20人近く。ギャラリーとしては少々多い……多すぎるくらいだ。

 

「おい新人! 昨日はホーンの奴に勝ったみたいだが、レパードさんに挑むのは早すぎるぜ!」

 

 その中の1人がテルヨシに対してそんなことを言うので、テルヨシはこのギャラリー達全員がレパードを観戦登録しているのだとわかる。しかも相当の実力者。

 

「違う。私が乱入した」

 

 そこで返事をしたのはいつの間にかテルヨシのすぐ横に姿を現したダークレッドの装甲のネコ科動物を思わせるフェイスを持った(女性)型アバターだった。

 その接近に全く気付かなかったテルヨシは、驚きのあまり少し距離を取るが、当の対戦者は戦う素振りを見せずにテルヨシをまっすぐに見る。

 

SRY(ごめんなさい)。今回は対戦目的じゃない。他のプロミのメンバーにも伝えて。今日はこの子に乱入しないでほしい」

 

「なんだよレパード。お前が新人をコテンパンにするところ見たかったのによぉ」

 

「レパード様が言ってんだから文句言うな! ではみんなにそう伝えておきますね」

 

「よろしく」

 

 そんな会話を最後にギャラリー達は一斉に退場。残ったのは対戦者同士だけ。

 

「……全部先手を打たれた……」

 

NP(問題ない)。これから何度も顔を合わせる同僚と打ち合わせは必要」

 

「あんた、店にいた店員さんだよな? じゃないとオレの事情を把握しすぎてる」

 

「そう。私のことはレパードかパドで。あなたのことはテイルって呼ぶ。K?」

 

「リアルとそんな違わないな。だがNP。オレはパドって呼ばせてもらおうかな」

 

 テルとテイル。そういえばリアルネームの間に1文字入っただけだな。

 と思いながら、せっかちそうな相手パドとの自己紹介を終えたテルヨシは、そのあとも話を続ける。

 

「今ので少なくともプロミのメンバーから乱入されることはないけど、無所属と他レギオンの人達はさすがに対処できない」

 

「十分だって。ありがとな、パド。でもそうだよなぁ。これからあそこで働くとなると、過度な乱入はやめてもらいたいし、何らかの対処は考えないと。パドはプロミネンスの所属で対戦拒否できるからいいよなぁ」

 

「ならテイルもプロミに入ればいい。私は歓迎する」

 

「それが最善だろうけど、まだ6大レギオンを全部見てないし、確認したいことも終えてないしでどうもその選択は選びづらいなぁ」

 

「確認したいこと? それが王との会談に関係がある?」

 

「さすが情報の伝達は早いな。まぁそういうことだ。言っても2、3質問するだけなんだけどよ」

 

「そう。じゃあ話の続きは現実で。これからここで働くなら遅かれ早かれ会うことになるから、紹介したい人もいる」

 

 そう話したパドは、テルヨシの返事も待たずにさっさと引き分けの要請を渡して自分はすぐにサイン。

 ものすごい視線で早くしろと訴えてくるパドに負けてテルヨシが引き分けの要請にサインした瞬間、パドはリザルト画面も確認せずにすぐにバースト・アウト。

 1人になっては何もできないので、テルヨシも続く形で加速を終了させたのだった。

 加速を終えて店長さんとの話し合いに戻ったテルヨシは、部屋のすぐ外に少しだけ見えた女性店員、パドをチラッと見る。

 パドは加速を終えてからすぐに誰かに連絡を取っているようで、声こそ聞こえないが、その口元が絶え間なく動いているのがわかっていた。

 あそこから自分を見て加速し乱入したのか。

 などと過ぎたことを考えつつ、テルヨシは淡々と話を進める店長さんと打ち合わせを終わらせていく。

 店での仕事は基本的にニューロリンカーに送信されるケーキのレシピ通りに作ればいいとのことで、ある程度の作業効率スキルがあれば誰でもできる内容。

 しかしそれには常にニューロリンカーをグローバルネット接続していなければならないという。

 まぁそちらについては少し腹を括ることにしたテルヨシは、このバイトのシフトを平日午後4時から閉店8時まで。土曜日を午後12時半から3時半までとして日曜日を休みにしてもらった。

 土曜日が休日なんて時代があったらしい昔と違い、今や土曜日も午前授業が普通に取り入れられている。

 そして土曜日の夕方はバーストリンカーにとっては数少ない集団対戦ができる時間となっているため、テルヨシもどうなるかわからない先を見越してそれを頭に入れシフトを組んでもらっていた。

 店長さんはこんなにシフトを入れてもらえるとは思っていなかったのか、テルヨシを割と歓迎ムード。正規の店員達にも吉報として報告してしまい、それにはテルヨシも苦笑するしかなかった。

 話はそれからすぐに終わり、バイトは来週からということで今日のところは帰してもらったテルヨシは、店の正面入り口へと向かい、そこでパドと合流。

 パドは会わせたい人がいると言っていたため、テルヨシもその言わんとしてることを察して、店から出ずにそのままイートインのスペースへと移動して、味見も兼ねて苺のショートケーキと紅茶を注文。彼女の言う会わせたい人の到着を待つのだった。

 十数分後。

 ちらほらと客足が入る中で、店に入った瞬間からイートインのスペースに来た1人の少女がいた。

 その子は赤い髪を両サイドでまとめた鼻の先のそばかすが特徴の小学校中学年くらいのランドセルの似合いそうな少女だった。

 少女はレジにいたパドと何やら簡単なやり取りをしてから、視線をテルヨシに向けてにっこり笑顔。

 そのままテルヨシのそばへと移動して向かいの椅子に座る。

 

「こんにちはお兄ちゃん。私、上月由仁子(コウヅキユニコ)って言います」

 

 そう自己紹介をした少女は、年齢相応の可愛らしい笑顔と声でテルヨシをまっすぐ見つめ、テルヨシもそれには好印象を持った。

 

「ご丁寧にどうも。オレは皇照良って言います。気軽にテルでいいよ」

 

「じゃあテルお兄ちゃん。私ちょっとお腹空いちゃってるの。ここのケーキってスゴく美味しいんだけど……」

 

「奢らないよ? オレは年下の子には異常に優しいけど、そういう媚びた子は甘やかさないようにしてるから」

 

 会っていきなり可愛い女の子にお兄ちゃんなどと言われれば、大抵の男はここでケーキの1つは奢ってしまうのだろうが、テルヨシは表情1つ変えずに笑顔のままユニコを見据えて言い切った。

 それを聞いた瞬間、ユニコは笑顔を浮かべたままの状態で石のように固まり、次に見せた表情はチッ、という舌打ちと共に鋭くなった。

 さっきの可愛さなど微塵もない。

 

「んだよ。ちっせぇ男だなオイ」

 

「そっちが地かな? だとしても初対面の人にその態度はないんじゃないかな?」

 

「うっせ。パドがどうしても会わせたいって言うから来てやってんだ。ケーキの1つや2つ奢んのが筋だろ」

 

「それはパドが言ったことであってオレが強要したことじゃないよ。第一、オレは君が誰なのかも知らない」

 

「そりゃ知られてたら大事だっつの。あたしは……」

 

「ああ、まだ君の呼び方決めてないや。ユニコだから……ニコたんとかどう?」

 

 言葉のキャッチボールがうまくいってない両者は、テルヨシのその言葉で完全にあさっての方へとボールが飛んでいき、ニコたんと呼ばれたユニコは、瞬間に顔を赤らめて首元のニューロリンカーに手を伸ばして、グローバルネットに接続する動作を見せると、怒り心頭といった顔でテルヨシを睨み、バーストリンカーが加速するためのコマンドを口にした。

 

「《バースト・リンク》……」

 

 ――バシィィイイ!

 それからテルヨシの世界は途端に色褪せて青くなり、視界には【HERE COMES A NEW CHALLENGER!!】の炎文字がごうごうと燃え上がり、色褪せた世界は再構築されて対戦フィールドを構築。

 テルヨシもその姿をデュエルアバターへと変えた。

 

「《魔都》ステージか。硬いんだよなぁ、オブジェクト」

 

 今回構築されたフィールドを確認したテルヨシは、さっきまでケーキ屋の店内だった場所を見て、その壁や床の金属質な造りと禍々しさからそう結論付けて愚痴る。

 とは言っても、テルヨシにとって好きなステージがあるかと聞かれれば特にないので、毎回なにかしらの愚痴は出るのがデフォルトである。

 次に確認したのがやはり対戦相手。

 乱入してきたのは言うまでもなくテルヨシの目の前にいたユニコ。

 プロミネンスの中でも幹部クラスにいそうなあのパドが会わせたいとまで言ったのだから、それなりに凄い人物なのだろうと思いつつ、視界右上を確認すると、そこにはテルヨシの戦意を根こそぎ奪うような名前と数字があった。

 

《Scarlet Rain[Level9]》

 

 スカーレット・レイン。レベル9。

 つまりはこの加速世界でただ7人しかいないレベル9バーストリンカーの1人。赤のレギオン《プロミネンス》のレギオンマスターその人である。

 

「……ん、ああ。赤の王って2代目なんだっけな」

 

 あまりに突然の遭遇で驚きを通り越して逆に落ち着いてしまったテルヨシは、レインの名前を見てそんな第一声が漏れる。

 レベル9のバーストリンカー達は通称を《純色の七王》と言う。

 だから赤の王は当然黒の王《ブラック・ロータス》のように《レッド》を冠しているという予測が立つのだが、赤の王は現在2代目。

 初代の王《レッド・ライダー》はすでに加速世界から姿を消してしまった。

 と、テルヨシは親である《レイズン・モビール》から聞いていた。

 それを思い出しつつ、対戦相手であるレインを探すと、その相手はテルヨシから20メートルほど離れた店外に当たる道路にちょこんと立っていた。

 小さなマスコットのようなダークグレーとルビーの滑らかなフォルムに、頭にピコピコ跳ねる2つの垂れ耳のような装甲が目立つそのデュエルアバターは、その右手に実弾かどうかはわからないがハンドガンを持っていて、視線はまっすぐテルヨシを捉えていた。

 

「あたしをそんな呼び方したこと、死んで後悔させてやんぜ! 着装《インビンシブル》!!」

 

 レインがそう言い放ったあと、何もなかった周囲からどでかい真紅の無骨なブロックが4つ出現して、レインの四肢にくっつき、そこにさらに分厚い装甲板やら何やらが張り付いてあっという間にレインの姿が見えなくなり、その上からさらに砲台やら何やらが接続されて、それが終わった頃には、3メートルほどの要塞のような巨大な戦車とでも言うべきものが佇んでいた。

 見てとれる限りでは、その肩辺りの両サイドに巨大な砲身があり、どう考えても遠距離攻撃の何かであるとわからされる。

 

「…………パードーさーん」

 

「何?」

 

「レインの別名って、何て言うんだっけ?」

 

「《不動要塞(イモービル・フォートレス)》又は《鮮血の暴風雨(ブラッディ・ストーム)》」

 

 テルヨシは目の前にそびえる要塞型アバターを見ながら、ギャラリーとして近くにいたパドに質問すると、パドはそう言ってから危険を察知したかのようにテルヨシから離れていった。

 

「あれ? 今度はマスターが相手かよ! お前バカだな」

 

「いやいや、これは偉大なる挑戦ではないかな?」

 

 そこにまたさっきのギャラリー達。

 おそらく全員がプロミネンスのメンバーで、ぞろぞろ集まってきてはテルヨシ達を見つめる。

 が、その距離は明らかに先程のパドとの対戦の時より離れている。

 

「あのぅ、皆さんなんでそんなに離れていらっしゃるんで?」

 

「そりゃお前、ギャラリーだからダメージとかないけど、『巻き込まれる』のは勘弁だからだよ」

 

「ほらほら新人くん。よそ見してると塵も残らないよ?」

 

 どこか恐れるような言動のギャラリーに恐怖が増すテルヨシだったが、次にレインを見ると、バカッ! バカッ! と表面装甲が開いて、そこから無数の弾頭がギラリと見えた。

 赤系統は《遠距離直接攻撃》を得意とする。つまりあの要塞には他にも後方からバカスカ撃ちまくるだけの弾やエネルギーが内包されているわけで、

 

「とりあえず死ねやぁ!」

 

 その第一波がレインのその言葉とともに放たれたのだった。

 ――ドガドガドガドガドガンッ!

 テルヨシのいたケーキ屋だった場所は、レインが放ったミサイルにより粉々に破壊され、それより早く店外に離脱していたテルヨシは、その余波で吹き飛びつつも、直撃を避けて開けた道路に転がり出る。

 視界上を見ると、自分のHPゲージが1割ほど削れ、必殺技ゲージも1割ほど溜まるが、レインの必殺技ゲージは光々と半分ほど輝いていた。

 

「どうすっかな……離れすぎるとガイドカーソル出ちまうし、視界に入れば撃たれる。バックアタックしかないかな」

 

 この状況でテルヨシは特に慌てる様子もなく対抗策を練ると、巨体で目立つレインを視界に捉えながら後ろへと回る。

 ――ヒュンヒュン。

 しかしそんなテルヨシに空中からナパームが撃ち下ろされていた。

 まさか居場所がバレた!?

 と思いつつもなるべく音を立てずに回避行動に移ったテルヨシは、次々と雨のように落ちてくるナパームやミサイルに唖然。

 見ればレインの必殺技ゲージはすでに満タンである。

 それにナパームやミサイルはテルヨシをピンポイントで狙っているわけではなかった。

 ただ、攻めてくるならここ。という予測でとりあえず撃っているといった感じだとわかった。

 そこでバックアタックを諦めて再び移動しようとしたテルヨシの方向にガッコォォン! とレインの巨大な砲身が1つ向きを変えてテルヨシに砲口を向ける。

 

「《ヒートブラスト・サチュレーション》!!」

 

 そこから放たれたのは、真っ赤な極太の直射光線。

 砲口が自分に向いた瞬間に嫌な予感がして回避に移っていたテルヨシだったが、それでも範囲内に入ってしまっていた右腕がジュッ! と蒸発するような音とともに消滅し肩からごっそり持っていかれた。HPゲージも3割削れて残り半分ほどに。

 そしてテルヨシを貫通していった光線は、その後ろのオブジェクトを根こそぎ破壊して恐ろしい跡を残すと、それでまた必殺技ゲージをリチャージしたようで、レインの必殺技ゲージはまた満タンである。洒落にならない。

 気付けばテルヨシの周囲のオブジェクトは跡形もなく破壊され、身を隠せるような場所もなくなっていて、それで居場所がバレたのだと悟ったテルヨシだったが、時すでに遅し。そうなってしまえばもう逃げ道はない。

 

「情けも何もねぇ……ホントにレベル9かよ、レイン」

 

「知るか! テメーがあたしを怒らせたのがわりーんだよ!」

 

 沸点低すぎだろ。

 なんて言いそうになったテルヨシだが、その巨体を180度回転させて正面を向いたレインに2つの砲口を向けられて最後の賭けに出ることにして、その足に力を込める。

 必殺技ゲージはちょうど半分くらいあるので、1度だけ《インパクト・ジャンプ》が使えるのだ。

 しかしその動作を見逃さなかったレインは、何かされる前に2つの砲身から光線を即発射。

 今度は技名発声がなかったので通常攻撃なのだろうが、予備動作も何もなかったために、逆にテルヨシの意表を突いて直撃。光線に焼かれながらテルヨシはレインと心を通わせた、ような気がした。

 ――パト〇ッシュ、僕、とっても眠いんだ――

 ――じゃあ、すぐに眠らせてあげる、お兄ちゃん――

 その後、テルヨシは塵も残さずに対戦フィールドから姿を消し、敗北を示すマーカーがテルヨシのいた場所に浮かび上がり、そのテルヨシの視界には【YOU LOSE】の文字が。

 これがテルヨシの親以外との対戦での初めての黒星となった。

 対戦を終えて現実時間へと戻ったテルヨシは、途端に白い目をしてテーブルに突っ伏して、目の前でグローバル接続を切るユニコを見る。

 

「……相性悪すぎる……」

 

「テメーなんかと相性良くてたまるかっての。んじゃケーキ奢りな」

 

「奢ったらニコたんって呼んでもK?」

 

「却下だ。あとそれで次呼んだら直結対戦でポイント全損させんぞ」

 

「わかってないなぁ。可愛い子には可愛い愛称が必要なんだよ。これオレの持論ね。だからたとえポイント全損しようとオレはやめないよ、ニコたん」

 

「……ならお望み通りに……」

 

 そこでユニコは持っていた小さなバッグからXSBケーブルを取り出そうとしたが、ここが人前だということを思い出し、少し唸ってからそれをしまう。テルヨシはそれがわかっていたから堂々としていた。

 人前での直結など、恋人同士と見られてしまうのが今の世。

 ユニコが小学生であろうと、女の子である以上それを気にしないことはないので、そんなユニコを見ながらテルヨシは微笑ましく思っていた。

 

「ニコ、そのくらいにしておく」

 

 そこにタイミングを計ってケーキを持ってきたパドが、怒り爆発寸前のユニコにケーキを出してなだめる。その時パドとテルヨシは目が合って「これは奢ってあげて」と訴えられた。

年上の女性に弱いテルヨシは、ユニコの怒りを治めてくれた手前もあり、仕方ないといった感じでそれに頷く。

 それを確認したパドも薄く笑みを浮かべたような表情をしてから自分の持ち場に戻っていった。

 

「んで、呼び方はこの際もう無視するとして、あたしに……つうか、王に何の用があんだよ?」

 

 ケーキを頬張りながら話を再開するユニコは、自分が赤の王であることをわからせた上でそんな質問をする。

 もちろん、ユニコ自身にもテルヨシのメッセージは届いていたはずなので、この話をするのは歓迎なのだが、まさか面と向かってになるとは思っていなかったテルヨシは、その事に苦笑しつつ話を始めた。

 

「話を始める前に聞いていいかな? ここ、このお店はプロミネンスの……というかニコたんの拠点と考えていいのかな?」

 

「ああ。だからパドもこれからバイトに入るテメーと会わせたんだろうよ。ったく、何でピンポイントでここにバイトでバーストリンカーが働くんだよ。確率的にスッゲー低いぞ」

 

「そりゃ同意だ。んじゃ話に戻るな。質問にはYESかNOか答えないでいいよ」

 

「いいから早く言えよ。ケーキ食べたら帰るからな」

 

「んじゃ質問1。ニコたんは今の加速世界の現状を良しとするか」

 

「……NOだ」

 

「質問2。ニコたんはレベル10になりたい」

 

「……それには答えねぇ」

 

「そう。じゃあラスト。ニコたんはブレイン・バーストを楽しんでるか」

 

「YESだ」

 

 それで全ての質問を終えたテルヨシは、少しの間沈黙して何かうんうん唸ってからパッとユニコを見た。

 

「ありがとな、ニコたん。これで他の王達とも話せれば万々歳だけど、ニコたんオレの交渉に応じそうな王って予想できる?」

 

「さぁな。あたしは他の王とはそんな関わりねぇし、王になったのも最近って言えば最近だ。ただ、この手の交渉は《ブルー・ナイト》辺りは問題ないんじゃねぇか? 」

 

「《青の王》か。オッケオッケ。まっ、これから何回も顔を合わせることになるけど、仲良くやろうな、ニコたん」

 

「早くやめねーかな、バイト」

 

「ニコたんったらツンツンしちゃって。お兄ちゃんに甘えたってバチは当たんないって」

 

 そこでユニコに本気の睨みを返されたテルヨシは、今日はこの辺でやめておくかと両手を挙げて降参ポーズ。

 そんなテルヨシに、ったく、と舌打ちしてからケーキを食べ終わったユニコは、そのままレジも通らずに店外へ出て帰ってしまった。

 それを笑って見送ったテルヨシは、そのあと片付けに来たパドと少しだけ会話をする。

 

「ニコはああだったけど、意外と楽しんでたと思う。これからも仲良くしてあげて」

 

「言われなくても。それにパドみたいな美人がいて、ニコたんみたいな可愛い常連がいて来ない理由がない」

 

「そう」

 

 それからパドは特に表情も変えずに店の奥に引っ込んでしまい、テルヨシも長居するのもと思いすぐに会計を済ませてその日はそのまま帰宅。

 おそらくバーストリンカーとしてはとても濃厚な2日間を過ごしたテルヨシは、明日に控えたメッセージの答えに期待しながら床に就いたのだった。

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