「た、食べる……だと……?」
「他のエネミーを、ですぅ。でも、今までは、遠くの狩場にしか現れなかったのに……」
ルカとマナに導かれて、2人の師匠である《クリムゾン・キングボルト》ことクリキンとコンタクトに成功して少し。突如として襲った地響きによって事態は急変。
店の外に出たテルヨシと黒雪姫がそこで見た巨大なエネミーの影に驚愕していると、遅れて出てきたルカが例の化け物だと叫び、マナが補足して説明をする。
「や、やべェ……! なんでこの街まで……いや、ンなこと言ってる場合じゃねぇ。頼むロータス、テイル。ルー坊とマー坊を連れて、今すぐホテルの《離脱ポイント》から脱出してくれ!」
最後に走り出てきたクリキンは、この事態に即決に近い判断を2人にしてきたが、まだ事態をほとんど把握できていないテルヨシは足踏みする。
当然黒雪姫も「即時離脱する必要があるのか」と言葉を返す。
「ああ! あいつにここで捕捉されたら、俺達はともかくルー坊マー坊は無限EKの危険があるんだ!」
「ん? でもエネミーって大抵は特定の縄張りを持ってんだよな? あれだと《巨獣級》くらいだし確実に縄張りくらいあるだろ。それに街で縄張り持つエネミーとか聞いたことないけど……それで無限EK?」
「違うんだよ。アイツは単なるエネミーじゃないんだ……」
黒雪姫の問いかけに焦った様子で答えたクリキンだったが、そこに引っ掛かる部分を感じて即座に言葉を返したテルヨシ。
黒雪姫もやはり同じ疑問があったのかクリキンを見るが、そうやって前置きして一拍置いたクリキンは、衝撃的な言葉を続けるのであった。
「あれは……あの《神獣級》エネミーは、テイムされているんだ」
テイム。とは、飼い馴らす。
つまりはどこの誰かは知らないが、バーストリンカーがエネミーを従わせて操っているということになる。
それも神獣級。テルヨシの知る限りでは《無制限中立フィールド》において最高レベルに位置するエネミーをテイムなどできるのかと大いに疑問があるのだが、実際にそれをやってるのならば認めるしかない。
その事実に古参である黒雪姫ですら驚愕し言葉を失っていたが、クリキンの言葉に嘘がないことは緊迫感からわかるために、とにかく今はそれで話を進める。
「……誰、なんだ? そんな真似をしでかした奴の、名前は……」
「判らねーんだ」
「何!? マッチングリストを見れば1発で……」
「それが……何度リストを見ても、名前がないんですぅ……」
「だから……あれに乗ってる奴も化け物なんさー。
そして続いた話で驚きっぱなしの黒雪姫だが、テルヨシは逆にここ最近で似たようなことを耳にしていて、むしろ冷静に、自然とそちらとも何らかの繋がりがありそうに感じた。
今、梅郷中学校に在籍する新入生。
能美征二がマッチングリストに名前が出ない未知のバーストリンカーで、アキハバラBGに出没したというローカルネット荒らしも同様にマッチングリストに名前が出ないバーストリンカー。
そしてここ沖縄にも同じようなことをしているバーストリンカーがいる。
これら全員が同じ方法でマッチングリストを回避しているかはわからないが、これだけ似通った現象が同時期に3つも挙がってきたのは、加速世界の水面下で何かが動き始めているのかもしれない。
あるいはとうの昔に動いていたのか。
どうであれ、情報自体が足りなすぎて分析もくそもないのは確か。
そして100メートルほど先の2つの廃墟が倒壊し、それをしてのけた神獣級エネミーの姿が見えてきそうなところで、捕捉されてしまう前にどうするか黒雪姫に問おうとするが、すでに黒雪姫は決断をしていたようでクリキンに話しかけていた。
「クリキン、我々は回線切断タイマーを設定してダイブしている」
「何時間だ?」
「内部で83時間」
「……それなら、2人は全損までは行かねー計算だが……ってことはロータス、あんた……戦う気、なんだな」
「敵の顔も見ないうちから撤退するのは性に合わん。なんなら、お前達3人は先に離脱してくれて構わんぞ。もちろんテイル、お前もな」
「えー、ロータス1人で面白そうなことしようなんてずりーじゃんよ。それにオレも気になることがあるし。ってことでワンも残るー!」
「……変わってねーな、《絶対切断》。それに《複合兵器》の子もこの事態でその余裕。不思議と奴といるみたいで懐かしいぜ。しゃーねー、付き合うか。幾ら奴らが化けモンでも、こっちにも《王》がいりゃ、
若干早口にそんなやり取りを繰り広げた3人は、近付いてくる砂埃を見ながらに各々が戦闘の準備を始めて、神獣級との戦闘が初めてのテルヨシはかつて1度だけ遭遇した巨獣級エネミー。
それの何倍か強力なエネミーを想像しながら屈伸やらの柔軟をする。
「か……かっこいい!」
「お姉様もお兄様も師匠もステキですぅ!」
そうした3人を互いに抱き合う形で見ていたルカとマナが感極まったように声を発したため、テルヨシとクリキンが途端にニヤけた感じで脱力したが、黒雪姫が2人の尻を腕の剣の腹でバシッ! と叩いて襟を正す。
「来るぞ!!」
と、黒雪姫が叫んだ直後。
舞い上がる砂埃がテルヨシ達とを隔てる最後の建物を破壊して、そこから砂埃を掻き分けて姿を現したのは、尖った鼻面に巨大なアギト。その左右に赤く光る眼球。砲弾型の胴体を支える太く短い脚と、長い尻尾。
《原始林》ステージに存在する最強オブジェクトよりもずっと強力そうなその恐竜型エネミーは、唸るような声を出しながらテルヨシ達を眼下に捉え、その出で立ちを見た黒雪姫が「恐竜か」と漏らした。
「正式な名前は、神獣級エネミー《ニーズホッグ》だよ。僕は《ニック》って呼んでるけどね」
そんな神獣級エネミーを見ていたら、不意にそんな声が神獣級エネミーの上から降ってきて、黒雪姫の感想に補足を加えてくるので、みんなして一斉に視線を上へと向けて声を主を視界に捉える。
神獣級エネミー、ニーズホッグの背中の最上部。
そこに小さな影があり、あれこそが正体不明のバーストリンカーで間違いないと確信。
「貴様……何者だ!」
正体不明のバーストリンカーへと声を張り上げた黒雪姫に対して、ニーズホッグにまたがるバーストリンカーはヒラリと右手を動かしてみせ、その時に手に握られた細い鎖が揺れ、その鎖はニーズホッグの鼻面を取り巻く革の帯に繋がっていて、手綱型の強化外装がニーズホッグをテイムしているのだろうと予測がつく。
「必要なく名乗るべからず、っていうのがうちの会則なんだけど……まさか、こんな地の果てであなた達のような大物に出くわすなんて思いもしなかったからね。ニックがでっかい獲物の匂いを嗅ぎつけたから、念のためにチェックしに来て大正解だよ。せめて、自己紹介くらいはしておかないとだよね」
ニーズホッグの乗り手はそんな意味深なことを言ってテルヨシと黒雪姫を見下ろしてくるが、今の言葉を並みじゃない分析力で処理したテルヨシは、彼がまず単独で、個人の思想などでこの地に赴いて何かしているわけではないと理解する。
さらにはテルヨシや黒雪姫を大物と表現し知ることから、沖縄のバーストリンカーではなく、東京のバーストリンカーであることは明白。
そしてニーズホッグには特殊な能力があり、話によれば自分達が彼らを引き寄せてしまったのだと考えが及ぶ。
「あんたらのせいじゃねぇよ。ていうか……むしろこれはチャンスだとも言える。俺様ちゃんの能力的な意味で」
「…………期待しているぞ」
そんな思考を察したようにクリキンが声をかけてくるが、次に言ったチャンスという言葉に首を傾げた。
黒雪姫が期待していると言うことは相当な能力なのだろうが、それと同時にニーズホッグの乗り手はペコリと一礼してきた。
「初めまして、黒の王。《蒼き閃光》。それと、地元の人達。僕の名前は《サルファ・ポット》……よろしくお見知りおきを」
「……へん、ようやく名乗りやがったか。てめーが現れてからの3ヶ月、この日をずっと待ってたぜ! いいか、俺様ちゃんの名前は――」
「あ、いいよ言わなくて。興味もないし、どうせ近いうちに全損しちゃうんだから」
ようやく名乗った正体不明のバーストリンカー、サルファ・ポットは、噛みついてきたクリキンに対してどうでもいいような対応で聞く耳を持たずに無視し、怒りに震えるクリキンを黒雪姫は抑えつつテルヨシに視線を送ってきて、その視線の意味を理解したテルヨシはすぐに首を横へと振る。
今の意味は奴の名前を知っているかという確認。
黒雪姫が半引退状態になっていた時期にバーストリンカーになっているなら、テルヨシが知っているかもという予測によるもので、つまりは黒雪姫も知らない名前だということ。
そうなると今までどこで何をしていたかが不明になるわけだが、つい最近にも彼のように名前も聞いたことがないバーストリンカーがテルヨシの近くに現れたことから、やはり繋がりがあるのかもと勘ぐる。
「――《バックドア・プログラム》」
そうこう考えていたテルヨシだったが、いち早く思考を巡らせた黒雪姫が唐突に去年、自らを苦しめたプログラムの名前を口にし、余裕の態度だったサルファ・ポットがピクリと反応。
すぐに知らぬ素振りと言葉を返すが、2人はその反応を見逃さなかった。
バックドア・プログラム自体はすでに使用不可能になっているため、それを使っているということはなさそうだが、その類いのツールを使っているなら或いは。
そう思ったテルヨシは、サルファ・ポットの反応で思考していた黒雪姫に続いて、自分の方でも仕入れていた情報を口にしてみる。
「《ダスク・テイカー》……って知ってるかい?」
その名前はつい昨日、チユリから教えられた新入生バーストリンカー、能美征二のデュエルアバターの名前なのだが、今度はさすがに無反応で知らないと返してきたが、嘘をつく人間の変化には敏感なテルヨシからすれば意識した嘘の顕著な例でリアクションしたサルファ・ポットにニヤリとする。
つまりサルファ・ポットは能美を知っていて、やつを捕まえればマッチングリストを遮断できる方法を聞き出すことも不可能ではないと確信。
もしかすればローカルネット荒らしの方とも繋がりがある可能性も低くはない。
それで立て続けに自分の核心に触れる言葉を出されて、無意識ではあろうが上体が前のめりになりシルエットしか見えなかったサルファ・ポットの色と形状が露になる。
サルファ。
硫黄というだけあってかなり鮮やかな黄色の装甲色で、細身の体は結構ありふれた感じではあったが、肩や胸、腰に開いた大きな穴が目立っていて、マスクとゴーグルを装着したような顔を見ながらに黒雪姫が再び口を開いた。
「テイルの口にした名は知らないが、あのプログラムは確かサーバーアップデートで使用不可能になったはずだな。しかし、貴様が類似のチート技術を利用していることは疑いようもない。私やテイルを知ることからも……サルファ・ポット。貴様、沖縄にいるのではなく、東京から遠隔でダイブしているな!?」
その言葉にまず反応したのは、サルファ・ポットではなくクリキン達沖縄組で、驚きとズルいという言葉が飛び出てくるが、当のサルファ・ポットはノーリアクションで通していた。が、
「……なるほど、なるほど。何年も巣穴に引きこもっていても、牙までは抜けちゃいなかったってわけか。蒼き閃光もなかなか侮れない面倒臭さで。こうなっちゃ仕方ない、予定にはなかったことだけど、あなた達にはここで消えて貰うよ。蒼き閃光は消すと《彼》が怒りそうではあるけど、必要あってだし。こんなとこで、僕らの《
あまりに自分達の事情に関わってそうと判断したのか、ここまでの会話を素直に肯定し予定を変更して全損させると言うサルファ・ポット。
その話の中にテルヨシを気にかけている存在がチラついたが、それよりも今は現状の整理を優先。
ファーミングとは農業や牧場という意味に当たるが、サルファ・ポットの言うところのファーミングはおそらく、ニーズホッグによるエネミーの高効率な狩りを指しているのだろう。
なんと言っても神獣級。
そんなエネミーでそれ以下のエネミーを圧倒できるのは必然で、それを東京で行わず、バレることが皆無な沖縄で行うのは、彼らの行動が秘匿性を重視しているからと考えられる。
何せ今まで名前すら聞かない連中。会則に名乗ることすら制限をつけているのだから。
「――千載一遇はこちらの台詞だ、サルファ・ポット。チートツールの類には大いに私怨もあることだしな、ここで貴様の小ズルい秘密を全て暴き立て、2度と使えなくしておこう」
「オレもちっとばかし非人道的なことしてでも聞き出したいことがあるし、困ってるドルフィン達のためにもコテンパンにしてここから追い出してやりますかね」
ともあれ、あちらがやる気なら元から戦う気だったテルヨシ達は願ってもないとばかりに相手を挑発。
神獣級エネミーを従えて優位なはずのサルファ・ポットもこれには対抗心を燃やして醸し出す雰囲気を変えた。
「……言ってくれるね。親にもそんな口を利かれたことないのに。これは、普通の殺し方じゃ収まりそうにないな……ニックに手足を1本ずつ食いちぎられても、まだ虚勢を張れるか試してあげるよ」
テルヨシ達の上からの物言いが心底気に食わなかったらしいサルファ・ポットは、言葉の後にその手の手綱を強く握ってテルヨシ達へと明確な敵意をぶつけてきて、臨戦態勢だったテルヨシ達もここから先、小さなミスが死へと直結することを意識して集中を高める。
「クリキン、『あれ』をやるぞ」
「ガッテン承知」
その中で先ほどの理解できなかった話の『あれ』とやらが黒雪姫の口から出てきて、未だそれが何なのかわからないテルヨシ、ルカ、マナは首を傾げるが、もう詳しく聞いてる余裕もない。
「弟子ども、序盤は俺様とロータス、テイルであのデカブツを相手する。あんなデケーのと戦えば、周りの建物は次々ぶっ壊されて瓦礫になるはずだ。そしたらお前達は、瓦礫から金属オブジェクトだけを拾ってこの交差点に集めるんだ」
「えーっ、ワン達も戦う……」
「解りましたぁ、師匠! くず鉄集めですね、任せてくださぁい!」
そしてルカとマナに早口でそう指示を出してすぐ、サルファ・ポットが手綱を鋭く打ち鳴らしてニーズホッグを待機状態から戦闘体勢へと移行。
途端に巨大なアギトを開いたニーズホッグが地響きにも似た咆哮を轟かせて、全長20メートルはある巨体で突進してきた。
かつて遭遇した巨獣級エネミー、《ブル・ホース》のそれと同じくらいの迫力で迫るニーズホッグに対し、テルヨシと黒雪姫はギリギリまで引き付けて左右に回避し同時にカウンターを見舞う。
それをアイコンタクトで瞬時に決断したのだが、約1名。それができなかった者が我先にと動いてしまう。
「コンニャロ、これでもくらえぇーい! 《タッピング・スクリュー》!!」
ドドドドウッ!
そんな威勢と共に放たれたクリキンの必殺技は、前に突き出した左手から放たれた5本の指の弾丸。
ネジを指の先端から飛ばしたようなそれは後ろから炎を噴き出して推進力を得ると、迫り来るニーズホッグの頭部に見事命中。
高速で回転しながら激しい火花を散らし続けるが、数秒で呆気なく止まって地面へと落ちる。ダメージとしてはほぼほぼゼロに近かった。
その事実に間抜けな声を出したクリキンだが、ニーズホッグの進撃は止まっていないので、カウンターのタイミングを外されたテルヨシはクリキンの腰に《テイル・ウィップ》を巻き付けて大きく横へと跳んで躱し、黒雪姫も同様に回避すると、そのまま後ろへ流れていったニーズホッグは交差点の先の廃墟を丸ごと粉砕して停止した。
オブジェクトを破壊してくず鉄を集めるのは直前で決まっていたのでこれはこれでいいのだが、作戦の要であろうクリキンが間抜けでは役立たずもいいところ。
そんな意味も込めて少々乱暴にテイル・ウィップで地面に放って、黒雪姫も中途半端な飛び道具で攻撃したクリキンにガミガミ言ったが、まともな戦闘が3年ぶりとか言い出す始末でどうしようもないので出番まで引っ込んでてもらうことに。
こんなのが史上最強とは悲しい。非常に悲しい。
その間に指示通り先に壊されていた建物の方向へと走っていき、そこからくず鉄を集め始めたルカとマナを視界に捉えて、そちらにニーズホッグを行かせないように位置を整えて方向転換を完了したニーズホッグと対峙。
「遠慮しないで、あなた達もどんどん必殺技を使ってくれていいよ。まぁ、ウチにあるデータだと、あなた達の技はどれもショートレンジか直接的な威力増加にならない移動系だった気がするけど、ニックの突撃を跳ね返せるか、試してみるのも面白いよきっと」
余裕綽々といった感じでサルファがそう話すのに、テルヨシと黒雪姫はまたも気になるところが出てきて思考しかけるが、すぐに考えるのをやめて目の前のニーズホッグに集中し直す。
「必殺技は、貴様をそこから叩き落とすまで取っておこう。身を以て味わわせてやるから期待してくれていいぞ」
「オレはそこまで余裕ないだろうから、チャンスがあったら容赦なく使うんでよろしく!」
「ははは、さすが、王の言うことはかっこいいなぁ! 蒼き閃光は素直で好感持っちゃったよ! まぁどちらにせよ、ニックに踏み潰されて終わってもらうけどね!」
そんな2人の返答を聞いたサルファは、手綱を鳴らしてニーズホッグに突撃の命令を出し、ニーズホッグも前足で地面を掻きグルルと唸る。
「――だがまぁ、このくらいは良かろう! 《オーバードライブ》!! 《モード・グリーン》!!」
しかしいくら黒雪姫とはいえ、必殺技なしで戦い続けるというのも辛いと判断したのか、必殺技とも、かの《バーストリンカーの真の力》とも違うコマンドで全身に走る装甲のパーティング・ラインを鮮やかな緑色へと変化させた。
これはテルヨシとの対戦時にも何度か使ってくれたことがある、黒雪姫曰く《プラスの自己暗示》らしい。
ブレイン・バーストにおける色に特性があり、自身が特色であることを利用した3つの属性――赤、青、緑――のどれかに寄せる効果があるとかで、気持ち的にちょっとは変わるらしい。
そんな黒雪姫の変化にサルファはもう1度無駄だと笑ってからニーズホッグを突進させてきた。
今度はしゃしゃり出ずに回避に専念したクリキンに安心しつつ、猛然と迫るニーズホッグをギリギリまで引き付けたテルヨシと黒雪姫は、スレ違う寸前で左右に分かれて跳び、その勢いを利用して回し蹴りをニーズホッグへと放ち、その牙と激突。
物凄い衝撃に襲われながらも、アバターの脚部に自信があるテルヨシと自己暗示によって防御力が上がった黒雪姫は足を持っていかれることもなく振り切ることに成功。
通り過ぎていったニーズホッグは再び後ろの建物へと突っ込んで粉砕するが、テルヨシと黒雪姫の間に2本の折れたニーズホッグの牙が落ちてきて、視界上を見れば3段ある体力ゲージの1本がほんの少し減少していた。
「あー、今からバーちゃん呼んできたい……」
「それは同感ではあるが、現実逃避している場合ではない。行くぞ!!」
あまりにダメージが通らないのでボソッと弱音を吐いたテルヨシだったが、黒雪姫に活を入れられて気を引き締め直すと、方向転換してきたニーズホッグとまた対峙していったのだった。