アクセル・ワールド~蒼き閃光~   作:ダブルマジック

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 沖縄のバーストリンカーを困らせていた化け物《サルファ・ポット》と神獣級エネミー《ニーズホッグ》と遭遇したテルヨシと黒雪姫。

 流れで戦うことになった強敵に対し、2人は長年の対戦経験から成せる連携でおよそ3分ほどの時間、ニーズホッグによる猛攻を最小ダメージでやり過ごしていた。

 とはいえ、ニーズホッグの攻撃は最初からずっと愚直なまでの突進だけで、その交錯の度に削りダメージを与えて建物に突っ込ませていく展開がかれこれ十数回。

 命令しているのは乗り手であるサルファであるため、変化が訪れるとすればサルファがアクションを起こした時だが、現状でHPゲージの絶対量の差でいずれテルヨシ達が先に死亡するのは目に見えているので、下手に変化を加えて――自らが攻撃するなど――隙を見せるようなことをしないようだった。

 それだけ慎重に相対するサルファにはやはり中堅リンカー以上のものを感じるが、今まで名前すら聞かなかったのが不思議ではある。

 だからこそサルファを倒して情報を引き出すことが重要。

 そうこうギリギリの中で考えていたら、ニーズホッグの突進によって街の周辺の建物がほぼ倒壊し開けた空間が作り出されていた。

 戦闘開始前にここまでが下準備だと話していただけに、遠くの方でせっせと動いているルカとマナの方向にダッシュを始めたクリキン。

 これから何をしてくれるのかを少し期待しつつ、旋回を終えたニーズホッグを少しでも食い止めるためにゆっくりと注意を引いたまま後退するテルヨシとの黒雪姫。

 

「やれやれ、だいぶキレイになったね。僕もニックも広い場所の方が好きだから、これでやっと気持ち良く戦えるってもんだよ」

 

「それは良かったな。……しかし、戦いやすくなったのは私も同じだぞ? 周りに邪魔物がなくなって、回避の自由度が増すからな。もう貴様の削りダメージ戦術は喰わんよ」

 

「えー、オレ的には何かあった方が動きやすいんだけど……まぁ《風化》ステージだから元からあってないようなもんって思えば開き直れるけど」

 

「あはは、あなた達は面白いね。でも削り戦術は酷いな! 僕だってそんなせせこましい手は嫌いだよ。でもね、こっちにも事情があったんだ。何せ……ニックの必殺技ゲージ、貯まるのがえらく遅いもんでね!」

 

 そんなサルファの言葉に思わず足を止めて息を呑んだテルヨシと黒雪姫。

 エネミーに必殺技ゲージが存在するなど聞いたことがないため驚くのも当然なのだが、そもそも神獣級エネミーをテイムしている時点で前例がないのだから、予測できなくても仕方がない。

 

「ふふふ、まぁ、普通は知らないよね。テイムされた高位エネミーは、独自の必殺技ゲージを持つこともあるんだよ。残念ながら、ゲージが見えるのはマスター、つまり僕だけだけどね。建物をこれだけ壊しまくって、今ようやくそれが満タンになったとこさ。ってことは、次に何が起きるか……それくらいは解るよね!!」

 

 驚愕する2人にサルファが親切にそんなことを教えてくれはするが、そこで1度言葉を切ってから握る手綱をバチンッ! と振り下ろして大音量で叫んだ。

 

「やれ、ニックッ!! ――《スコーチング・インフェルノ》ッ!!」

 

 途端、ニーズホッグはそのアギトを大きく開いて、その奥でチラチラっとオレンジ色の光が瞬かせるのが見え、周囲に満ちる硫黄臭さでこれから何が起こるかを察知。

 黒雪姫はなりふり構わずに後ろを向いてダッシュを開始。

 しかしテルヨシはその状況で心臓が飛び出そうなほどの緊張を圧し殺して、その場で右足を前で左右にザッザッ。

 地面を擦るように動かして、続けて左足でも同様の行動をした後、ニーズホッグの口から業火の炎《ドラゴンブレス》が放たれてテルヨシを一瞬にして飲み込んだ。

 

「バ、バカかお前は!!」

 

 その愚策に隣にいなかったために半分振り向いて叫んだ黒雪姫。

 あまりに無意味なその行動に怒りすら覚えていただろう黒雪姫だが、ニーズホッグが放ったドラゴンブレスは黒雪姫のところまで届くよりも早く何かに吸い寄せられるように渦を巻いてテルヨシがいた地点へと集まって、その燃え盛る業火の中からは無傷のテルヨシが姿を現し、ドラゴンブレスの炎は物凄い勢いでテルヨシの膝から下の足へと収束し完全に勢いを消してしまった。

 そしてドラゴンブレスを吸収したテルヨシの足は仄かな炎を纏ってユラユラとその炎を揺らめかせる。

 

「……ぶはっ!! 絶対死んだと思ったし!!」

 

 信じられない現象を起こしたテルヨシだったが、当の本人もここまで出来るとは全く思っていなかったので、自分のHPゲージが炎熱攻撃によって1割程度削れたのを確認してから、《継続的に減り続ける必殺技ゲージ》にも目を向けた。

 

「な、なんだよそれは!? そんな技はウチのデータになかったぞ!!」

 

「ん? お前のとこのデータとやらがどれだけ優秀かは知らないが、そりゃないだろうよ。なんせ人前で使うのは今回が初だし」

 

 あまりに衝撃的な光景だったのか、余裕綽々だったサルファが初めて声を荒立ててテルヨシへと叫ぶが、テルヨシは若干ドヤッ、といった雰囲気で言葉を返した。

 実践投入が初となったテルヨシのこの必殺技は、自身がレベル6になった時に取得したもので、以前にユニコとパドに見せろ見せろと言われて結局見せることをしなかった例の使いどころが限定されるもの。

 ドラゴンブレスを放たれる前に行った予備動作が発動モーションになるレベル6必殺技《インフェルノ・ステップ》は、必殺技ゲージの貯まり具合に関係なく発動可能で、発動した後は毎秒4%を消費しながら継続して効力を発揮する。

 その効力は発動中に脚部(膝から下)に炎熱属性を付与し、さらに周囲の炎熱属性を吸収――光線系の熱属性は無理――してしまうというもの。

 一応、体全体にも炎熱耐性が付くので、それでも1割程度削ってきたニーズホッグのドラゴンブレスがどれほどの威力があったかはわかるが、それすら吸収してのけたテルヨシの必殺技を称賛すべきである。

 発動中のゲージのリチャージも可能なので理論的には半永久的に発動状態を維持でき、その間他の必殺技も使用可能ではあるが、デメリットとして任意での解除ができなく、必殺技ゲージがなくなるまで発動し続けてしまうこと。

 それらの効力や発動機会を考えて、黒雪姫にも初見であって予測できずに怒られたのは仕方ないことだが、現状で絶大な威力を発揮したのは言うまでもなく、呆気に取られていたサルファの隙を突いて残り3割を切りそうだったゲージで《インパクト・ジャンプ》を使いニーズホッグの鼻面に強烈な飛び蹴りをお見舞いして、その反動で黒雪姫のところまで後退したテルヨシは、そこで必殺技ゲージがなくなって今度こそ黒雪姫と一緒に後退を始めたが、その途中で頭をガスンガスン叩かれたのはお約束。

 テルヨシの攻撃はエネミーに対してなら決して強力というわけではなく、鼻面に蹴りをもらったニーズホッグもブルブル顔を振る程度で怯んだ様子もなかった。

 しかし今はサルファによってテイムされその行動はサルファに委ねられているために、テルヨシの新必殺技はサルファを思考停止させられただけで大成功と言えた。

 その作り出した時間で先に後退していたクリキンの元へと辿り着いたテルヨシと黒雪姫は、腕組みして仁王立ちするクリキンとその背後に呆れるほど積み重なったくず鉄の山を見る。

 くず鉄の山の麓には疲労困憊したルカとマナの姿もあって、2人の頭を撫で撫でして労ったテルヨシは、そのまま2人をくず鉄の山からちょっと離すようクリキンに指示されたので、テイル・ウィップをまとめて腹に巻きつけて黒雪姫の元まで戻り疲れてるようなのでそのまま吊り上げたまま意気揚々とするクリキンに目を向けた。

 するとクリキンは突然、びよーん! と鉄くずの山を越える高さの垂直ジャンプをしてみせて、その頂点で両手足を広げて技名発声。

 

「金属ども、俺様色に染まれッ!! いっくぜえぇ…………《メガマシーン・アウェイクニング》ウウゥゥゥゥーーーーッ!!」

 

 その瞬間、クリキンの体が赤いライトエフェクトに包まれると、せり出していた胸部装甲が頭部と同一面になるまで引っ込み、両腕も体に収納される。

 足も外側に90度回転してピタリと重なり合い、その姿はまさに真っ赤な1本のネジだった。

 ネジとなったクリキンはそこから時計回りに高速回転を始め、アイレンズが視認できなくなる速度にまで達すると垂直に落下。

 鉄くずの山へと甲高い音と火花を散らしながら内部へと潜って消えてしまう。

 

「今度は何をするつもりなんだい!?」

 

 その時、ようやく思考が回復したサルファがニーズホッグを駆って猛然と走ってきてそんな言葉を漏らし、その突進にちょっと慌てた様子を見せたテルヨシ、ルカ、マナだったが、黒雪姫が「心配ない」と言ってその場を動こうともしなかったために3人同時に首を傾げてしまう。

 ――ビカッ!!

 それとほぼ同時。

 鉄くずの山が紅色の輝きを放ったかと思えば、突然そこだけが重力を失ったように積み重なった鉄骨やら鉄板が浮き上がり、寄り集まって組み合わさり、最初からそう設計されていたかのようなパーツ郡を形作って1つの巨大なオブジェクトを生み出していった。

 最初に2本の足。

 続けてそれを繋ぐ腰パーツ。

 円筒形の腹パーツに箱形の胸パーツ。

 左右の肩にたくましい腕が接続され、最後にクリキン本来の頭とよく似た頭部パーツが生み出されて完成。

 完成した真っ赤な《巨大ロボット》は全長8メートルほどの巨体で、両手を振り上げてがっきゅいぃーん! という謎サウンドを響かせてポーズを取り大迫力。

 しかし出るゲームを間違えてないかとテルヨシが内心でちょっとツッコミつつ見上げていると、

 

「いっ……いっ……超でっけぇ(イッペーマギー)!」

 

「師匠は巨人(アマンチュー)だったんだぁー!」

 

 テイル・ウィップに巻き取られていたルカとマナが超新鮮でありがたいリアクションをしたので、とりあえずテルヨシも拍手だけ送っておくと、それを受けたクリキンロボは特に意味はなさそうなジャンプをしてテルヨシ達を飛び越えて迫るニーズホッグとの間に着地してみせる。

 

「そんなガラクタ! 燃えかすも残さずに焼き尽くしてあげるよ! ニック! スコーチング・インフェルノ!!」

 

 立ちはだかったクリキンロボに対して、サルファは叫びニーズホッグの足を止めると、先ほど打ち止めた必殺技を発動してクリキンロボへと放ち、両腕を前でクロスさせたクリキンロボはたちまち灼熱の炎に焼かれ始めた。

 クリキンロボへと当たった炎は大きな火柱となりながら数十秒間放たれ続けて、心なしかニーズホッグがその炎に苦しんでいるような素振りが見え始めていたが、サルファはそれでも必殺技ゲージが空になるまで止めようとはせず、炎に晒され続けたニーズホッグの牙の数本が耐えきれずに砕けて少ししてから炎は勢いを失って完全に消失。

 しかしその威力は本物で、炎の中からは真っ黒焦げでところどころが溶解したクリキンロボが姿を現す。

 

「出落ち乙」

 

「お兄様酷いですぅ! でもお姉様、アマンチューが死んじゃった!」

 

 それを見たテルヨシが合掌しながらに弔っていると、マナがすかさずツッコんでから、しかし大体同じことを思ったのか心配の声を上げるが、それを聞いても黒雪姫の返事は心配ないというもの。

 そしてその声が聞こえたかのようにクリキンロボの両眼がびかぁっ!!

 黄色く光ると、その巨体を軋ませながらも動かし始め、クロスしていた両腕を開いて5本の指を伸ばしニーズホッグへと向けると、全ての指の先から嵐のような弾丸が飛び出してニーズホッグめがけて襲いかかった。

 いきなりの集中砲火を浴びてニーズホッグの背中に隠れるようにうずくまったサルファは、その状態ではニーズホッグを操れないのか、ニーズホッグも避けることをせずにジリジリと後退することしかしない。

 それをチャンスと見たのか、クリキンロボは続けて肩の装甲をがぱっと開きそこから三連装ミサイルを発射。

 畳み掛けるように胸の装甲も開くと大口径カノンが姿を現してすぐに火を噴いた。

 サルファの保身によって壁にされ続けたニーズホッグは、およそ20秒近く放たれたクリキンロボの大火力をその身に受けて、3段あったHPゲージは半分にまで減る。

 それを目の当たりにしたテルヨシは、相手がされるがままだったことはありながらも、神獣級エネミーに対してそれほどの大火力をぶつけたクリキンロボに素直に驚き、黒雪姫があそこまで信頼していた理由も頷けた。

 体感でおそらくは赤の王《スカーレット・レイン》の《インビンシブル》による大火力ともあまり差はない。

 もちろんレベル差を考慮しての評価ではあるが、あれに並ぶであろう遠距離火力を見たことがなかったテルヨシは尊敬すら覚えてしまった。

 

「あれはモビールでも対処できない系か。凄まじいな」

 

「あれは強化外装ではないからな。モビールのやつは何故か毎回あれが出てくるまで戦わないバカではあったが、2代目赤の王が現れるまでは加速世界で最大の遠距離火力と評されていたほどだよ」

 

 予想以上のクリキンの活躍は目を見張るものがあったが、全力攻撃をしたクリキンも再び先ほどの攻撃を仕掛けるには時間がかかることは明白なため、それを可能にするまでの時間を稼がねばならない。

 それがわかってるテルヨシも黒雪姫も何も言わずにアイコンタクトで行動を決定し、とりあえずはルカとマナを地面に降ろして必殺技ゲージを少しだけチャージし直すテルヨシ。

 

「…………よくも、よくもよくも……ニックをこんなに痛めつけてくれたな……ニック、もう1度だっ!!」

 

 そんなタイミングでニーズホッグの影から出てきたサルファが初めてであろう屈辱に震えながら叫び手綱を打ち鳴らすと、ニーズホッグもその命令に従ってボロボロになったそのアギトを開いてみせる。

 しかしあの必殺技ならばクリキンロボが耐えてみせたことから、次もおそらく大丈夫だろうと踏んだテルヨシはその行動をとりあえず無視して隅っこで必殺技ゲージを溜め直し、クリキンも先ほどと同じようにクロスガードでしのごうと身構える。

 

「《チャコール・スモーク》!!」

 

 だがテルヨシが目を離した瞬間に聞こえた必殺技発声は、スコーチング・インフェルノではなくて、テルヨシがサルファへと目を向け直すと、突き出していた両手の平。

 そこに開いた大きな穴から真っ黒な煙をもうもうと噴き出してクリキンロボとその周囲を包み込む。

 煙幕?

 とは考えたテルヨシだが、この状況でただの煙幕を張ることの意味をすぐには考え付かなかったために、ならば別の目的があると考え直したところで自分の近くにまで来た黒煙があることに気付かせる。

 それは黒煙から放たれる刺激臭。硫黄の臭い。

 

「くそっ! インフェルノ・ステップ!!」

 

「スコーチング・インフェルノ!!」

 

 そこから先は何が起きるかを先読みしたテルヨシが、ほんの少し早く近くでクリキンに「火薬だ!!」と注意していた黒雪姫をテイル・ウィップで乱暴に投げ飛ばして黒煙の範囲のギリギリ外まで後退させ、間髪入れずに加減なしでルカとマナを黒雪姫へと投げ飛ばして受け止めてもらってからニーズホッグのドラゴンブレスが放たれ、そのブレスが黒煙に触れた瞬間。

 天地を揺るがすような衝撃と爆炎が巻き起こりテルヨシ達を襲う。

 テルヨシは必殺技、インフェルノ・ステップによって背後の3人を守るように立って決死の防御をし、爆炎こそ無効化するものの勢いまでは殺せず簡単に後方へと吹き飛ばされ、黒雪姫達も同様に吹き飛ぶが、その中であの爆発をほぼ中心で受けたクリキンロボは見るも無惨に爆散したのが見えたところで爆炎によって視界を遮られてしまった。

 あまりに突然の衝撃だったために、受け身も取れずに後方の崩れた建物に突っ込んで止まったテルヨシは、辛うじて頭は衝撃から守ったため思考だけは働いていてすぐに体を起こし周りを見回す。

 同じように建物に背中から突っ込んでいた黒雪姫は、ルカとマナを庇うようにして前で抱いて守ることに成功し自身もそこまでの深手は負わなかったようでテルヨシに右手を上げて大丈夫と伝えてきた。

 それにホッとしかけたところで黒雪姫とは反対側の横にボロボロのクリキンが降ってきて沈黙。

 死亡マーカーにならないということはHPゲージはあるようだが、その様子から復活は期待できそうになく、最後に自分達が今までいた場所辺りに目を向けると、まだ少し漂う黒煙の向こうに、爆心地としか言い様のない隕石でも落ちた後のような現場があり、その中心地にはやはりあの規模の破壊で無傷とはいかなかったらしくHPゲージの2段目のほとんどを消尽させたニーズホッグと真新しい傷を付けたサルファが立ってこちらへと歩を進め始めていた。

 

「まさか、こんなところで《これ》を使うことになるなんて思わなかったよ。こっちも無傷じゃ済まないからさ、あんまり使いたくなかったんだけどね……でも、これで解ってもらえたよね。僕がニックのマスターに選ばれたのは、必然なんだってことが。僕らは2つで1つ……一心同体の、最高のパートナー同士なんだってことがさ」

 

 近付いてきたサルファは、あたかも自分とニーズホッグが巡り会うべくして出会ったかのようなことを言ってくるのだが、本当のパートナーならば……少なくともテルヨシがニーズホッグを駆れば、サルファのように道具のような扱いはせず、今のようなボロボロの姿にはしていなかったであろうことは確信できた。

 それには黒雪姫も同じような感想を抱いたのか、鼻で笑ってサルファに疑問を投げかけてから、ルカとマナを解放しダメージなど感じさせない足取りで毅然と立ち上がる。

 

「その竜は、貴様に言いたいことがありそうだぞ。マスターを名乗るなら……もっと上手く乗りこなしてくれ、とな」

 

「プッ、同感。つーかさ、神獣級エネミーがこんな短時間にHPゲージ半分切るとかどんだけ下手くそな乗り方してんだって話なんだけど」

 

「…………ふ、ふふ。さすが、王や異名を取るだけあって、負け惜しみも一流だね。楽しみだよ……あなた達が泣いて命乞いをするのが、さ。言っておくけど、ニックの必殺技ゲージはまだ少しだけど残ってるからね……」

 

「おお、それならオレも2秒くらいなら必殺技維持できるわ。その隙にロータスには下手くそな乗りこなしをするマスターを叩き落としてもらうとするかね」

 

「……たかが2秒なら、君の方が先に焼き尽くされておしまいさ。黒の王にもそんな猶予は与えないよ」

 

 売り言葉に買い言葉。

 サルファはただ反応しただけかもしれないが、なんの意味もなくサルファを侮辱していたわけではなかったテルヨシは、言葉によってサルファの冷静な判断力を奪ってまた不利になった自分達の状況を少しでも覆す隙を作ろうとしたのだが、まだ状況判断をする余裕があったようで、正論を述べられ苦笑。

 それでも黒雪姫に動く隙を作れるならとアイコンタクトで自分が死んででも隙を作ると伝えてから、大きなアギトを開いたニーズホッグの正面に立って必殺技発動の準備を整え、黒雪姫もそれに合わせて配置を変えようとする。

 

「大丈夫だよ、お姉様、お兄様」

 

 と、この状況で最善であろう策を実行しようとしたところで、突如として後ろに控えていたマナがちぎれ雲の流れる空を見ながらに呟き、右手をふわりと空にかざした。

 

「…………来るよ」

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