アクセル・ワールド~蒼き閃光~   作:ダブルマジック

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「オレ、最終日まで辺野古に残るわ」

 

 あの《無制限中立フィールド》での戦闘から一夜明け、テルヨシ達の修学旅行も終盤へと差し掛かった木曜日。

 今日は辺野古から与論島へと移動するとあって、2台のバスに分乗する時間となってから、わざわざテルヨシと黒雪姫を見送りにルカとマナがホテル前までやって来てくれて、それに感極まったテルヨシが2人を抱き締めながら呆れる黒雪姫と恵にアホなことを言い出す。

 

「……訴訟でいいか、恵」

 

「嫌疑は未成年者拉致とかその辺ですわね」

 

「おかしい……その見解は明らかにおかしいよお2人さん……」

 

 そんなテルヨシにいつも通りの返しを繰り出して怯ませた2人は、そのままの流れで「バカ言ってないで行くぞ」とテルヨシの首根っこを掴んでルカとマナから引き剥がし引き摺ってバスへと放り込むと、その様にバス内の生徒はどっと笑い出し、笑われて恥ずかしくなったテルヨシは渋々席に着いて出発したバスの窓を開けると、大手を振って見送るルカとマナに涙を流しながら見えなくなるまで手を振り返すのだった。

 ルカとマナが見えなくなってから窓を閉めて席に落ち着いたテルヨシは、すぐ後ろの席に隣り合って座る黒雪姫と恵の楽しそうな話し声を聞きながら、少しだけ思考を巡らせる。

 考えたことは無制限中立フィールドから戻ってからのこと。

 ルカとマナを見送ってからすぐに黒雪姫と話をしたテルヨシは、敵として相まみえた《サルファ・ポット》がどうやって遠隔ダイブしていたのかを聞くと、最寄りのダイブカフェにバックドア・プログラムを仕込んだ違法改造されたニューロリンカーを隠して、それを遠隔操作してダイブしていたらしいとのことで、その後はクリキンがそのダイブカフェを調べて朝方に発見した旨を知らされたのだが、そのニューロリンカーはすでに内部データが消去されていたとかで得られるものはなかった。

 黒雪姫の予測ではバックドア・プログラムにパッチが入っていながら使う方法として、BBの有無を調べる識別法ならば、BBをインストールしたニューロリンカーを使っていれば可能かもしれないと考えていたが、それがBBをインストールした人間からニューロリンカーを奪うことと同義な行為であることから、とてもじゃないがサルファが所属しているらしい《組織》が真っ当な集まりではないとわかる。

 しかしこの方法が東京でも行われているかと言うと限りなく低いことは明らか――たとえ一時的にでも仕込まれたニューロリンカーのBBが同じネットに繋がって乱入され棒立ちのアバターが出てしまう可能性が高いから――で、件の《ローカルネット荒らし》と能美征二《ダスク・テイカー》には当てはまらないこともわかり、東京のパドには話しても仕方ないこととなってしまった。

 それからもう1つの謎として、あの場に現れた恵のことでテルヨシは黒雪姫にかつて加速世界にいたという《オーキッド・オラクル》についてを話し、何故か起きてからダイブブースに入る前後の記憶がないという恵だったが、黒雪姫がその日のうちに直結してBBの有無を確認したところ、やはり存在しなかったとか。

 それで結局、かつてバーストリンカーだった恵がどうやって無制限中立フィールドへとダイブしたかは謎のままとなったが、テルヨシも黒雪姫もこの沖縄の地が起こしてくれた奇跡ということで納得することにした。

 そんなこんなで沖縄での問題は解決したわけだが、テルヨシにはまだ解決すべき問題があり、そちらはまだ解決の機をうかがっているところにある。

 昨夜に報告をしてくれた後輩、チユリによると、無事にデビュー戦を終えてその後は連戦連勝の無敗。

 レベルもすでに3へと上がったとあり、順調にそのステップを踏んでいた。

 が、チユリは必要なこととはいえ能美とタッグを組んで対戦に臨んでいて、それで無敗ということは《飛行》アビリティと遠距離火力を有した能美が予想よりも手強いことを意味していた。

 しかしレベル3に至ってもチユリとテルヨシが欲するボーナスを獲得できなかったとあって、今日もおそらくは放課後にでも能美と対戦に臨んでレベルを上げなければならないが、いくら快進撃とあってもレベル4より上にするとなると1日2日ではさすがに無理。

 そうなるといよいよテルヨシ達が帰ってからが勝負になるのだが、事態が進展したのはこの日の夜からだった。

 レベル4へと上がったチユリが求めたボーナスを取得。

 ならば明日にでも能美とハルユキが対戦するように仕掛ける指示をするが、その翌日の金曜日にはハルユキが能美のマッチングリスト遮断の謎を解いて立場をイーブンにまで持っていくことに成功し、無制限中立フィールドで今夜、決闘することになったという。

 そうなればこちらも不可能ではないが動ける。

 そう思ったテルヨシは1つの提案として黒雪姫にこれまでの東京での出来事を説明してどうするかを問えば、返ってきた答えはさすがは黒の王。テルヨシの考えと同じでやれることはやる。

 それが決まってから、決闘の時間を知らせるようにチユリに指示したテルヨシは、黒雪姫と一緒にその時をホテルのダイブブースで待つのだった。

 午後8時から待ち伏せを防止するためにダイブ時間を何度か変更する旨のメールをチユリから貰い、本当にダイブする時間が決まった時にメールするように指示してから、約1時間。

 午後9時12分にようやく「1分後にダイブする」とメールがあって、それまで適度に神経を尖らせていたテルヨシと黒雪姫は、来たとほぼ同時に切断セーフティーを10分後に設定して即座に無制限中立フィールドへダイブ。

 再びかの戦場へと足を踏み入れた。

 

「さて、と。んじゃとりあえずクリキン情報を信じて足を確保しに行くか」

 

「ん? ダイブする前は私をおぶって走るとかなんとか聞いた気がするがな」

 

「それはあれよ。クリキン情報の方が失敗したらってことで。とにかく時間効率重視!」

 

「ん、時間が惜しいのは確かだな。では行くとするか」

 

 何故テルヨシと黒雪姫が無制限中立フィールドにダイブしたか。

 それはこの無制限中立フィールドの構造が『ソーシャルカメラの視界にある限り地続きである』からで、つまりは現在地である沖縄から東京まで移動することが可能だから。

 もちろんそのためには強い精神力と高い実力が必要になる――約1600キロを交通手段もなくエネミーの闊歩するフィールドを移動するため――し、今までそんなことを成し遂げたやつなどいなかろう無謀な挑戦とも言えたが、今のテルヨシ達にそんなことは関係なかった。

 2人の想いはただ1つ。

 大切な後輩を助ける。

 それだけが2人を突き動かす原動力となって、あらゆる障害をはね除けたのだった。

 しかしながら疲れ知らずのデュエルアバターと言えど、約1600キロとある距離を走ってとなると、休憩なしでも時速100キロ弱は出さなければ約15時間後に始まるハルユキ達の決闘に間に合わない。

 さすがの黒雪姫もテルヨシでもそんな速度は出せないので、2人はダイブするより前にクリキンが拾ったテイム用強化外装《ミスティカル・レインズ》を渡した時に言っていた『空飛ぶ馬エネミー』とやらがいるらしい沖縄の北エリアへと向かう。

 それを見つけられて上手くテイムできれば、移動手段としては空を行けるとあって最適。

 逆にこれに失敗すれば決闘に間に合う可能性が限りなく低くなるので、2人は結構真剣に捜索へと乗り出していった。

 それで3時間ほどかけてその天馬エネミー――翼はなく蹄に青い炎を纏った黒馬――の捜索とテイムを無事に成し遂げたテルヨシと黒雪姫は、テイムまでにかけた時間を取り戻すほど速く移動を始めた天馬エネミーの背で、到着までの間に話をする。

 

「テル、お前がどんな情報を得て倉嶋君と連携していたかは知らないが、倉嶋君の話から察するにどうやら相手は《心意(インカーネイト)システム》を使える可能性が高い」

 

 天馬の手綱を握りながら、すぐ後ろにまたがるテルヨシに身を案ずるような言葉をぶつける黒雪姫。

 

 心意システム。

 それこそがバーストリンカーに秘められた真の力にして深淵。

 普段のデュエルアバターはその制御を現実の体と同じように《運動命令系》でして動かしているが、心意はその裏に隠された《イメージ力による制御系》を使うことで《事象を上書きする》力を持っている。

 テルヨシは普段、その四肢を動かして対戦を行うが、それは現実でもできやっている動作をしているに過ぎない。

 しかしその頭から伸びる外装《テイル・ウィップ》は現実にはない要素ながら、テルヨシは加速世界でそれを特に意識もせずに自在に操ることができる。

 これがイメージ力による制御であり、ハルユキの翼もこれに当てはまる。

 だがこのイメージ力による制御はあくまで運動命令系の補助程度の力でしかない。

 それは確実なのだが、あまりにも速く、強く発せられたイメージはプログラムの制御を超えてその事象を上書きし具現化してしまう。

 つまりこのイメージ力を絞り出すことで『実際には不可能なことを可能にする』ことも加速世界ではできてしまうことになり、過去にテルヨシは《災禍の鎧》《クロム・ディザスター》との戦闘においてこの力を無意識に使って一時的に圧倒していた。

 『1秒でも速くあいつを倒したい』と願ったテルヨシの足は『限界の速さを超えて』ディザスターの元へと駆けさせ、強固な防御を打ち砕く『限界以上のパワー』でディザスターを吹き飛ばした。

 

「お前にはできる限りのことは教えたが、それはお前にちゃんとした心意の扱いを覚えた上で使ってほしくないからだ。教えた身から言えば、私はお前の心意がどうしても好きにはなれない。だからもしも使うつもりならば……」

 

「ありがとな、姫。大丈夫、オレは引っ張られたりしないよ。それに姫が言うようにオレもオレの心意が嫌いだし、だからこそ使わずに済むようにも努める」

 

 しかしテルヨシのその心意は黒雪姫が教えるべき心意ではなく、言わば心意の《負》の部分を孕んでいることから、今日までに心意とは何かを指導され、正しい心意を身につけたのだが、それでもテルヨシの心意は大した変化を遂げなかった。

 だからこそ心意の指導者としてテルヨシにできるだけ使わないように釘を刺した黒雪姫だったが、それが無駄であることは悟っていたようで、聞こえの良いテルヨシの返事に歯切れの悪い返事をして以降、すっかり黙ってしまうのだった。

 それから10時間以上のフライトでうとうとしたテルヨシが天馬から落っこちたり、見たことのない飛行型エネミーにつきまとわれてそれを追い払ったり、休憩中にいかにも怪しげな《ダンジョン》らしき入り口を発見したり、空から《変遷》をじっくり見たりとありながら、《月光》ステージへと変化したフィールドを駆けて、ようやくテルヨシと黒雪姫が見たことのある地形を捉え、東京都内の上空までやって来たことを確信。

 正確な経過時間はインストメニュー内の累計ダイブ時間から計算しておよそ16時間が経っているので、タイミングとしては決闘が始まっているかどうかの微妙なライン。

 なので決闘の指定場所となっている梅郷中学校のグラウンドを目指して舵を取った黒雪姫。

 テルヨシも杉並区に差し掛かったところで長旅の疲れなど忘れて天馬の上で立ち上がりテイル・ウィップを黒雪姫の胴に巻いてバランスを取り、少しだけ視界を良くした状態で先の光景に目を凝らした。

 そうしてようやく見えてきた梅郷中学校の中世の宮殿のように変化した校舎らしきオブジェクトを視界に捉えて、位置的にその向こうにあるグラウンドを一望するためにそのオブジェクトの真上付近で止まると、そこにはすでに力なく倒れる《シルバー・クロウ》と両腕を消失し膝をついて動かない《シアン・パイル》に、右腕を失いうずくまる《ライム・ベル》の姿があり、パイル。タクムの目の前には左腕に触手のような強化外装を身に付け、右手に心意で具現化した紫に光る剣を持つ黒寄りの紫のデュエルアバターが、今まさに無抵抗なタクムを倒さんとその剣を振り下ろすところだった。

 もしかしなくてもあれが能美征二。ダスク・テイカーであることは間違いない。

 ――ズバァァアアアアン!!

 テルヨシがそれを確認して動こうとしたのより圧倒的に早く、目の前の黒雪姫はその右手の剣を引き絞って即座に突き出し、心意の力で深紅に輝く槍となった超射程の斬撃は一直線に伸びて能美の振り下ろされる剣の根元を貫き破壊。

 見事にタクムへの攻撃を阻止してみせた。

 

「…………はっや」

 

「感心してないで警戒しろ。どうやら敵はあれだけではないようだ」

 

 あまりの攻撃速度にポカンとしてしまったテルヨシだったが、心意の力を収めた黒雪姫は冷静に視線を校舎の真下辺りに向けて、テルヨシも促されるままそちらを見れば、そこには異形と言えるデュエルアバターがまっすぐにテルヨシ達を見て立っていた。

 全身が垂直に並んだ薄い黒い板で構成されたそのデュエルアバターは、横から見れば四角い板から人型のパーツにくり抜いたような形をしているが、正面から見れば薄い板の厚さの部分のみが見えるため、ただの板がわずかな間隔を空けて何十枚も並列してるだけにしか見えない。

 その異形の敵を見やってから、黒雪姫はグラウンドの真下まで天馬を走らせてからミスティカル・レインズを解除し天馬から飛び降りるので、テルヨシもそれに続いてグラウンドへと降りて着地。

 ミスティカル・レインズの拘束から解放された天馬はそのまま自分の縄張りのある沖縄方向へと飛び立っていき、それを見届けてから全員が自分達を見ていることを確認。

 皆一様に驚きを隠せない雰囲気を醸し出している中で、一番予想していなかったのであろう能美が先に口を開いた。

 

「まさか。何故……どうやって、ここに。どうして、ここにいるんです。まさか……この決闘のために、2人で、沖縄から帰ってきたんですか。いや、だとしてもこの時間に間に合うわけがない。有り得ない……何故、どうして、ここにいるんだ! 黒の王……《ブラック・ロータス》!! 《レガッタ・テイル》!!」

 

 テルヨシ達の出現に動揺を隠せない能美に対して、淡々と回答を始める黒雪姫を他所に、テルヨシはその視線を1度うずくまるチユリへと向けてから、この中で異様なほどのプレッシャーを持つ黒い板のアバターを見て集中。

 その足に仄かな心意の力を込めるが、能美に説明しながらの黒雪姫がそれを制止。

 お前は仕掛けるなと右の剣を黒い板のアバターとの間に割り込ませた。

 それから話を終えた黒雪姫は先ほどよりさらに速く心意を発動させて、黒い板のアバターに攻撃を仕掛けてみせたが、相手はその高速攻撃に動じることもなく同じ心意の力で相殺。

 そこからさらに3度、同様の攻防を繰り返してから、それがマグレなどではないと確信した黒雪姫は、初めて見るその敵に名を尋ねると、同世代とは到底思えない教師のような口調の青年の声で相手は答えた。

 

「……ここで名乗ることに、意味は皆無なんだがなぁ。でも、せっかく王たる方がはるばる足を運んでくださったんだ。自己紹介くらいしないと、失礼というものかな」

 

 そう言ったかと思うと、黒い板のアバターの足元から、何枚かの板が浮き上がって右腕の形に並ぶと、その右腕を胸に当てて丁寧なお辞儀をするが、今の言動でオレは無視かよと内心でテルヨシは思ってしまう。

 

「わたし、サークル《加速研究会》副会長……《ブラック・バイス》と申します。以後、お見知りおきを」

 

 その名を聞いた時に、テルヨシは初めて存在した《色被り》のアバターに少し驚くが、先ほどから穏やかな雰囲気を出しながらも、王である黒雪姫の攻撃を難なく防いだバイスが、今の自分よりも格上であることを悟り、相手にするのは得策ではないと判断し黒雪姫と位置を入れ替わるようにして能美と相対。

 黒雪姫はそのままバイスと凄まじい攻防を繰り広げ始めるが、それを無視してテルヨシも今できることを遂行する。

 

「さて、あいつが誰かは知らないが、こっちはこっちでさっさと終わらせるか。なぁ、ダスク・テイカー」

 

「ふっ……ふふっ。あなた方の登場には驚かされましたが、王でもないあなた程度なら僕1人でも圧倒できますよ。この力でね!!」

 

 ゆっくりと近付くテルヨシに対して、能美は少しだけ冷静さを取り戻した口調で叫んでから、その右手に心意の力によって鉤爪を出現させる。

 

「……《地獄の衝撃(ヘル・インパクト)》」

 

 それを確認した瞬間、テルヨシはその足に心意の力を込めて爆発的な加速で能美へと接近。

 即座にその足で出現した鉤爪を蹴りつけると、能美の鉤爪はまるでガラス細工のように粉々に砕けて消滅。

 続けて胸と腹に2連の蹴りをお見舞いしてゴムボールのように能美を後ろへと吹き飛ばしてしまう。

 

「誰が誰を圧倒できるって?」

 

 振り上げた足を戻しつつ、そう話して近くにいたタクムの意識がなさそうなのを確認。

 そして吹き飛んでグラウンドに転がった能美は、うめきながらも上体だけ起こしてテルヨシを見るが、その雰囲気が途端に驚きを含んだものになる。

 それは何故かと言えば、おそらくはテルヨシがその足に纏う心意の光。それがどす黒く禍々しいものだったから。

 当然それを見たハルユキも同様の驚きを見せたが、そんな禍々しい心意を継続しながらテルヨシはいつもの調子で口を開いた。

 

「その反応、『こいつ負の心意を使うのか』みたいな感想が出てきそうだな。だが答えはNOだ。これがオレの《過剰光(オーバーレイ)》なのさ」

 

 心意による現象は必ず継続的な発光現象が起きる。

 これに例外はなく、現に黒雪姫や能美でさえその心意に発光現象を起こしていて、これは心意をプログラムが処理できない現象を具現化させようとして光るのだが、それを心意を扱う者が過剰光と呼んでいる。

 そして心意にも引き出される力の源によって正の感情と負の感情とがあり、過剰光もその影響を受けるとされている。

 そこから考えてもテルヨシの纏う黒の過剰光が明らかに負の心意であることは疑う余地もないが、テルヨシはこれが自分の過剰光だと言うから2人は驚く。

 

「あんま話しても仕方ねーし、質問は受け付けねーけど、今のでなんとなくわかったわ。ダスク・テイカー。お前、弱すぎ」

 

 色々と思うところはあるのだろうが、テルヨシもさっさとこんなことを終わらせたいし、嫌ってる心意を使ってることもあって能美を挑発してみると、

 

「僕が……この僕が弱い、だと!? なら、これでどうですか!!」

 

 テルヨシの言葉に納得がいかないとばかりに立ち上がった能美は、そこでハルユキから奪ったという飛行アビリティでコウモリのような黒い翼を出現させ勢いよく飛び立つが、それを見るよりも速く駆けたテルヨシは心意の力で移動力を引き上げたその足で理論的に不可能とされていた《インスタント・ステップ》による無限上昇を可能にし、天へと昇る黒い雷のような残光を残して飛び立つ能美の頭上を取ると、まだ下を見ていた能美の背中に蹴りをお見舞いして打ち落とし、自身は悠々とテイル・ウィップを使って着地。

 

「宝の持ち腐れだバカが。今のはクロウならちゃんと避けてたぞ」

 

「ぐっ……対戦しかできない脳筋風情が……僕に上からものを言うなよ!」

 

「絡め手でしかまともに戦えないやつより脳筋の方が万倍は良いけどな。レディオもお前に似てるが、あいつはちゃんと実力あるし」

 

 再び地面に転がされた能美は、憎々しげにテルヨシへ罵倒を浴びせてきたが、そんなのどこ吹く風とばかりに飄々と言い返してから、また心意による高速移動で姿を消してそれに能美が身構えたのをスルーして、倒れるハルユキの目の前で止まり足の過剰光を消して腕を組みムンッ!

 そんな態度でハルユキを見下ろす。

 

「つーわけで本当に危ない時はオレが手助けしてやれる。だからお前が引導を渡してこい。男が持ち出した決闘なら、ちゃんとお前の手で決着をつけてこい! シルバー・クロウ!」

 

 そこから言い放った言葉に反応して、地に伏せていたハルユキはまっすぐにテルヨシの顔を見上げてきたのだった。

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