アクセル・ワールド~蒼き閃光~   作:ダブルマジック

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 沖縄での予期せぬ遭遇戦を終えて、東京のチユリからの報告を受け《無制限中立フィールド》から15時間かけて東京の梅郷中学校グラウンドへと辿り着いたテルヨシと黒雪姫。

 そこで行われていた能美とハルユキ、タクムの決闘のピンチを救い、能美の協力者《ブラック・バイス》を名乗るデュエルアバターを抑えて、能美もテルヨシが倒せるのではないかと思わせるところを見せるが、そのテルヨシは尻拭いを買って出て能美を倒す役目をハルユキへと託す。

 

「……僕が……能美を、倒す……」

 

「そうだ。オレは奴に対して許せないものがある。だがそれ以上にお前は大事なものを奪われたんだろ。だったら自分の手で取り戻せ」

 

「そうだぞ《シルバー・クロウ》。君ならば必ず勝てる。だから立て! 立って君の翼を取り戻せ!」

 

 能美と戦ってそうなったのか、バイスの手によってそうなったのかはわからないが、体の装甲を砕かれてダメージを受けていたハルユキは、満足に戦えるような状態ではないと言うように弱々しい声を出したが、テルヨシといま現在バイスと心意のせめぎ合いをする黒雪姫の激励によってその四肢に力を込めてふらつきながらも立派に1人で立ち上がってみせて、同様にテルヨシから受けたダメージから立ち上がった能美をまっすぐ視界に捉えた。

 

「「行け、シルバー・クロウ!!」」

 

「はいっ! 着装、《ゲイルスラスター》!!」

 

 背中を押す2人の声に応えたハルユキは、そこでテルヨシの予想だにしない《強化外装》を呼び出して、空から降ってきたそれはハルユキの背に吸い込まれるように装着され、その強化外装の下部分には2つの噴射口が備わっていて、つまりは推進装置の類いである可能性が高い。

 その強化外装を見ても能美は驚くような素振りを見せずにその翼を広げてハルユキより早く空へと飛び立ち、ゲイルスラスターにエネルギーを充填させたハルユキもその噴射口から物凄い炎を噴き出させてロケットのようにその体を発射させ能美に向かってまっすぐに突っ込んでいった。

 

「うへぇ、なんだあれ。《ショップ》であんなのまで売って……たら、飛行能力の価値はもうちょっと低いな。心意も使えてるみたいだし、その指導者の強化外装とかかね」

 

 加速世界において初めてであろう飛行能力者同士の空中戦を見ながら、テルヨシはハルユキが装着した強化外装にそんな考察をしつつ、遥か上空で輝く紫色と白色の心意の《過剰光》のせめぎ合いを見てから、気を失っていたタクムの顔に2、3発軽くビンタを入れてやって起こし、次に遠くでようやくフラフラと立ち上がったチユリに視線だけ向けてアイコンタクトを取ると、チユリもそれを察して決意のこもった目で頷き空へと目を向けた。

 ハルユキと能美は空で3度の激突をしてみせて、その3度目で能美の紫色の心意を打ち破ってハルユキが致命傷となる一撃を入れたように見え、あと一撃か。

 そんなタイミングで立ち上がっていたチユリがその左手のベルを振り回して必殺技の発声。

 

「《シトロン・コール》!!」

 

 鳴り響くサウンドエフェクトと共にベルから溢れた緑色の光は能美のアバターを包み込み、ボロボロだった体をどんどん癒していき、戦闘前の状態へと戻してしまう。

 それには起こしたばかりのタクムが声を張り上げて「どうして!」と叫んだが、そのタクムを静かに制したテルヨシは、空を見ながら口を開いた。

 

「これでいい。『チャンスはここだけ』だ」

 

「えっ? それはどういう……」

 

 というタクムの問いの答えはすぐに返ってくる。

 チユリのシトロン・コールの光に包まれていた能美の翼が、突然砕けるようにして消失。

 何事かと思ったすぐ後には、入れ替わるようにしてハルユキの背から希望の象徴たる銀翼が現出しその体を空に留める。

 当然、翼を失った能美は高高度からの落下へと移行し、自由を失った能美を銀翼とゲイルスラスターの加速+重力による超スピードで自らを槍と化した一撃で撃ち抜いて、見事な制動で静かに地面へと着地。

 ハルユキの一撃を受けた能美は頭と胸郭、左肩から再生しかけた触手のみを残して地面へと転がっていたが、その破損具合から残りHPは1割を切っているだろう。

 

「…………な、ぜ……。なぜ……ボクの翼が、消える、んだ……」

 

 その能美が、いま起きた現象に動揺を隠せずに口を開く。

 その呻きに答えたのは近くまでやって来たチユリ。

 

「それは……あたしの力が《回復》じゃないからよ」

 

 チユリのそんな衝撃的な言葉に、能美だけでなくハルユキとタクムも同じように驚きの雰囲気を出し、こちらの決着が近いからか、黒雪姫とバイスも互いに警戒しながらもその動きを止めている。

 

「な……、なんだと。回復アビリティ……でなければ、何だと、言うんだ」

 

「……あたし、バーストリンカーになった時からずっと、不思議に感じてた。何であたしに回復なんて力が与えられたんだろう、って。そんな時にテイルさんがヒントをくれて、あたし達がピンチだって知ったら、自分で気付くのを待ちたかったって思いを押して教えてくれたの。あたしの力は、《時間を巻き戻す力》。技をかけたアバターの時を遡らせる」

 

 そうやってテルヨシを見ながらに自らの回復アビリティの正体を教えたチユリ。

 チユリのシトロン・コールの正体にテルヨシが気付いたきっかけは、チユリのアバターを確認した対戦でダメージを受けたハルユキのHPが全快した時。

 その時に同時に『ハルユキの必殺技ゲージがなくなった』のを疑問に思い、そこでもう1度確認するため、今度はダメージを受けてから1度ハルユキに必殺技ゲージを消費してもらった上でシトロン・コールを受けてもらい、必殺技ゲージの増減が確認できたことで確信したのだ。

 

「だからテイルさんは言ったの。この力を使えば、きっとシルバー・クロウの翼を取り戻せる、って。ダスク・テイカーが、シルバー・クロウのアビリティを奪う前まで時間を巻き戻して、全部なかったことにできる、って」

 

「そんで、そのためには必殺技を強化する必要があったから、飛行アビリティでポイントを荒稼ぎするだろうお前に付いて効率よくレベルを上げると同時にお前の信用を買い、今日のこのチャンスを狙ったってわけだ。もっとも、こんな辛い事させたくなかったけど、ベルはやってみせるって言って、その結果がこれだ。お前はベルを役に立つ道具みたいに考えていたようだが、利用されてたのはお前だったってことさ」

 

 テルヨシとチユリのこの展開を作り出すための作戦に言葉を失うハルユキとタクム。

 当然この作戦が疑われてはならないため、チユリは2人にさえこの事を黙っていたわけで、だからこそリアルな反応をしたハルユキとタクムも能美を欺くことに一役買っていたが、敵を騙すにはまず味方からという諺を見事体現してみせたチユリの心の強さを称賛すべきであろう。

 その見事に出し抜かれた作戦を聞いた能美はしばらく沈黙したかと思うと、唐突に笑い出して壊れたかと思ってしまう。

 

「…………ふ、ふふふ。まったく……どいつも、こいつも、馬鹿ばかりか。お前らの顔を見るのはもううんざりだ、ボクは帰るよ。お前らは、全員のリアル情報をばら撒いて、始末は誰かに任せるさ。ボクは転校して、またボクの王国を創る。さぁ、何をしてるんだバイス。早くボクを連れて離脱しろ」

 

 あと一撃で倒せてしまう能美は、そうやってテルヨシ達を脅しながら黒雪姫と対峙していたバイスを見るが、そのバイスはゆっくりと首を傾げてこの状況では難しいと断言。

 この場で唯一の仲間にさえ死刑宣告を受けてしまう。

 

「クロウ。確認だが、お前らは今テイカーと《サドンデス・デュエル・カード》を使って決闘してるんだよな?」

 

「は、はい。テイカーが倒されたら、僕とパイルにテイカーのポイントが分配されるようになってます」

 

「つまりここでテイカーを倒せば全損。BBはアンインストールされるわけだ。ならテイカー。ここから離脱できないお前はもう『2度と加速世界に干渉できない』。そうだよな、ブラック・バイス?」

 

 悲しいほどに孤独な能美に対して、テルヨシはここで能美が死ねば全損することを確認してから、おそらくはこの場にいる人物の中で話の通じそうなバイスへと振ってみると、バイスは少しだけ驚くような雰囲気を出した後に律儀に応じる。

 

「ふむ、それを断言するということは、君はもう気付いているようだ。いやはや、対戦ばかりしている単細胞などと評価したうちの会でもデータを改める必要がありそうだ。そういうわけでテイカー君、これ以上はわたしにもどうすることはできないよ」

 

 肯定と取れるバイスの返答は、やはり知っている風であるのと同時に、またもテルヨシのデータなどと口にされてそこに意識がいきかけるが、それよりも先にバイスに見放された能美が咆哮。

 次いで加速世界にすがるような言葉を撒き散らして悪あがきをしてみせるが、その声に同情する者はここにはいなく、これ以上長引かせても見るに耐えないとハルユキが這って逃げようとする能美に近付きながら、その右手に心意の剣を出現させる。

 

「やめろ、嫌だ、失くしたくない! ボクの力だ! ボクの《加速》なんだ!! 嫌だ、イヤだ……イヤだあああああぁぁぁぁっ!!」

 

 そのどこまでも加速世界にすがる能美の姿に、自分もいつかこんな風になってしまうのか。

 そんな考えが微かに浮かびながらも、テルヨシはそれが救いだというように光の剣を振り下ろし、能美の体を真っ二つに斬り裂いたハルユキを見て、いつかのPKを受けた時の自分とを重ねていた。

 十人十色というように、人が多ければそれだけ色々な考え方がある。

 だからこそ今、HPゲージを吹き飛ばされてアバターを構成していた赤紫色の粒子が空へと伸び消えていき、加速世界から1人のバーストリンカーを消滅させたという事実を見届けたハルユキの心情を、テルヨシは完全には理解できなかったが、たとえ憎むべき相手だったとしても、それを成し遂げて喜んだり、達成感を覚えたりしてしまうような人間ではないと、そう思いたかった。

 

「「――――さて」」

 

 能美の問題が解決したことで皆が少し安堵しかける中、テルヨシと黒雪姫はむしろ緊張感を高めてもう1人の相手。

 能美以上に手強いバイスへとその視線を向けて仄かに心意の光を纏う。

 

「貴様に訊きたいことは山ほどあるが、喋るつもりもなさそうだな。ならばとっととケリをつけよう」

 

「黒の王を相手しながら、オレまで相手できるか見物だな」

 

「いやぁ、この数分で王と蒼き閃光の実力は嫌というほど理解したよ。2人相手ではとても勝てないな、ここは大人しく退散しておきます」

 

 状況的には今、仲間である能美が倒されて1人になったというのに、バイスは一切の動揺も焦りもない口調で言ってのけるが、そんなことを許すほどテルヨシも黒雪姫も甘くはない。

 だから問答無用で倒してしまうと言った黒雪姫だったが、やはりまったく動じないバイスは事務的な口調で話をする。

 

「――でも、わたしの最大の能力は蒼き閃光。君と同じ《逃げ足》なんだよ。ああ、その前に2つほど。わたしには黒のレギオン及び蒼き閃光に対して含むところは一切ないんだ。ここに来たのも、テイカー君から前払いで依頼されたからでね。当然、諸君のリアル情報などはまったく受け取っていないし、できれば今後永久に関わりたくないと思っているんだよ。それから蒼き閃光。君は少々興味深いね。《彼》も気に入っていたし、君とはまたどこかで会うことになるかもしれない」

 

 ……またか。

 そう思わざるを得なかったテルヨシだが、その言葉の意味を問うより早くバイスはその体を構成する黒い板をぱたたたっと隙間を埋めて重ねていき、1枚の黒い板へと変化。

 横から見ればまだ広い面で見えるが、正面からではもう1本の黒い棒線でしかない。

 

「それでは、御機嫌よう」

 

 そしてバイスはその言葉の後に足元の校舎の影に溶け込むようにその体を沈め込んで消え、ひゅっという移動音だけが不気味に聞こえてきたが、その音だけを頼りにテルヨシは移動力を引き上げた心意でバイスを追って校舎の一角を真上から蹴り砕き、黒雪姫もテルヨシのすぐ横を心意の槍で貫き校舎の一角を丸ごと斬り倒した。

 ガラガラと崩れ落ちる校舎と一緒に地面へと降りたテルヨシは、その破片の中にバイスの腕らしき黒い板を2枚発見するも、それしか見当たらなかったため本体は逃がしてしまったことを確認。

 

「…………ダメっぽいな」

 

「最大の能力が逃げ足と言うだけはあったか」

 

 何か重要なことを知ってそうなバイスを逃がしたことで崩れた校舎の破片を蹴って憂さ晴らしするテルヨシに、逃がしてしまったなら仕方ないと言っていさめた黒雪姫。

 逃がした魚は大きいが、今回の目的は達成されたことでテルヨシもそれで納得しておくことにして皆の元へと戻っていった。

 とりあえず敵という敵がいなくなったことでようやく場が落ち着いたので、すっかり緊張を解いた面々。

 その中で黒雪姫は自らのレギオンメンバー2人に労いの言葉を述べてから、今回のMVPとでも言うべきチユリに頭を下げて感謝を述べた。

 

「――本当に、ありがとう。君が知らせてくれなければ、私はここに駆けつけることができなかった」

 

「えっと、黒雪先輩。感謝ならテル先輩にお願いします。あたしは今回、テル先輩の指示であれこれしただけですし……」

 

「謙遜謙遜。オレじゃできないことをチユチユがやってくれたんだから、感謝されるのはチユチユでオッケーでしょ」

 

「そうだぞチユリ君。君がいなければこの結果は得られなかった。それにテルに礼を言うなどヘドが出るしな」

 

 ひっでー。

 そう思いつつもテルヨシはずっと暗かったチユリの声が、いつもの調子に戻りかけていることにひと安心。

 それから蚊帳の外だったハルユキとタクムに事の次第を話し始めたチユリは、2人だけじゃ心配だったからとかそんなことを言いつつ、決闘の時間を伸ばしまくったことにイライラしてたことまで漏らしていた。

 そんなチユリに改めて感謝を述べたハルユキとタクムに対して「……まったく」と漏らしたと思えば、すっかりいつもの調子になった声で、

 

「あんた達だけじゃ、これからも心配でしょーがないから……あたしも入ったげるわ、《ネガ・ネビュラス》に」

 

 正式なレギオン加入を宣言。

 すぐに黒雪姫からレギオン加入の申請を受け取ってサインしあっという間に申請完了。

 その潔さにテルヨシは拍手を送ってしまい、チユリと黒雪姫はよろしくの意味を込めて剣の腕とベルをぶつけ合うのだった。

 それから割とすぐに《離脱ポイント》を通って現実世界へと戻ったテルヨシと黒雪姫は、現実時間でわずか1分ちょっとの長い旅を終えてから、互いに言葉を交わす。

 

「明日は東京に帰るが、なんだか不思議な感覚だ」

 

「日帰りツアーの翌日にまた同じツアー行くみたいな?」

 

 言葉はそれだけ。

 それだけ言って互いにクスリと笑い合ったテルヨシと黒雪姫は、それからすぐにそれぞれの自室へと戻って、明日に控えた帰宅の時を待って眠りに就くのだった。

 翌日。

 夕方頃に東京の羽田へ着いたテルヨシと黒雪姫は、同級生と別れの挨拶を済ませて脱兎のごとく空港を出てそれぞれタクシーを拾い目的の場所へと直行。

 テルヨシは帰りを待ってくれているマリアがいるパドの店へ。黒雪姫は大切な子であるハルユキの家へ。

 黒雪姫の方はどんなことが起きているかは想像するしかないが、時間にして夕方の5時頃にパドの店に到着したテルヨシは、堂々正面口から入って早速パドに怒られ店員みんなに笑われてから歓迎され、イートインコーナーでユニコと一緒にケーキを食べていたマリアに泣きながら近寄ってそのおでこにキスをして喜びを伝えたら、これも「バカ!」という言葉と共に全力の蹴りで返されてまた笑いを巻き起こすのだった。

 その後は店の人達に買った沖縄土産を渡して、パドの方で追っていた《ローカルネット荒らし》の件もとりあえずは解決できそうとのことを聞いてからマリアと一緒に久しぶりの我が家に帰宅。

 高円寺駅でバスを降りて自宅マンションまで歩いていくと、そのマンションの前に私服姿で立っているチユリがいて、これは自分に用かなと悟ったテルヨシはマリアに先に戻ってるように言ってから、マンションの前に備えられたベンチに並んで座って話をする。

 

「ありがとうございました。色々と助けてもらって」

 

「オレは何もしてないよ。昨日も言ったけど、全部チユチユが頑張ったからこその結果だ」

 

 チユリにしては珍しくちょっとモジモジした感じで改めてお礼を言ってきたことに対して、テルヨシも昨夜と同じような返事で礼はいらないと返すが、まだ何か納得いかないような感じを漂わせるチユリ。

 そんなチユリを見て「あっ!」と何か思い出したように声を出したテルヨシは、ビクッとして自分を見たチユリに向き直って、その頭に手を乗せて優しく撫で始めた。

 

「帰ったらなでなでしてあげるって約束してたよね。いっぱい頑張ったチユチユにはこれじゃ足りないくらいだけど……っと」

 

 微妙な雰囲気を払拭するために明るい方向に持っていこうとしたテルヨシがそんなことをやったら、話の最中にチユリがテルヨシの胸に体を預けてきて、突然どうしたのかと思ってしまうが、その体がわずかに震えているのと、胸に埋めた見えない顔の奥で少しだけ泣いてるような声を出していることで理解。

 必要だったとはいえ、ハルユキとタクムにも真実を告げずに、単身で能美の元にいた数日はそれほどまでに辛く苦しい日々だったことが伝わってきて、そんなチユリを軽く抱き締めながらあやすようにして気持ちが落ち着くまで頭を撫で続けてあげるのだった。

 

「んー、泣いたらスッキリしました。テル先輩ってこんなに優しいのに彼女いないんですよね」

 

 数分後に泣き止んですっかり元気になったチユリは、ベンチから立ち上がりつつ自分を慰めてくれた人に対してそんなことを言うので、心にグサリとくるものを感じながらも「まぁね」と答えておく。

 

「でもそっか。誰にでも優しくて一緒にいて楽しいから、テル先輩のことを知っちゃうと友達でいいやってなる人多そうですもんね。あたし的にはちょっと勿体ない性格かなぁと思ったりします」

 

「オレは今のままでいいって思ってるよ。野郎はどうでもいいけど、女の子に嫌われたりしたくないし」

 

「テル先輩は女の子の心理をもうちょっと勉強すべきですね。女の子は自分に特別に優しくしてくれる人に惹かれたりするんですよ?」

 

 そうして急に心理学を学んでるテルヨシに対して女性心理を持ち出したチユリにクスリとしてしまい、さすがになぜ笑われたのかわからなかったチユリはプンプン怒るが、その顔にはもう曇りのない明るさが溢れていた。

 

「くははっ。オレがそういう心理をわかってない体で説教される日がくるとは思ってなかったからね。こういう性格をひっくるめて好きになってくれる人ってそうそういないから、テル先輩はたぶん当分の間は彼女できないだろうね」

 

「テル先輩がいつまでも彼女なしだったら可哀想なんで、デートくらいはたまにしてあげてもいいですよ。もちろん経費はテル先輩持ちですけどね。っと、そろそろ夕飯の時間なのでこれで。マリアちゃんにもよろしく言っておいてください」

 

 話題がすっかりテルヨシの恋愛事情になってしまって、こんな恥ずかしい話題を1秒でも早く終わらせようと話を畳むと、チユリもチユリでそろそろ夕飯だと言ってから、テルヨシに軽く頭を下げてから元気良く走って自分の自宅のあるマンションへと帰っていき、テルヨシもその後ろ姿をしばらく見送ってから、久しぶりの我が家でのマリアとの団らんを楽しんだのだった。

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