アクセル・ワールド~蒼き閃光~   作:ダブルマジック

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「あべらぶべばぼひぶぶぺれ!?」

 

 テルヨシが沖縄から帰ってきた翌日の日曜の朝。

 昨夜はテルヨシが延々と沖縄での出来事を話し続けている間にマリアが寝てしまい、満足にマリアの話が聞けないままとなっていた中での朝食時。

 一応、修学旅行中も1日1回は連絡を取り合っていたので、パドとの生活などは血の涙が出そうなくらい羨ましくなることを聞いて知っていた――一緒にお風呂とかバイクに乗せてもらっての登校などなど――のだが、加速世界でのことは全然話していなかったこともあって、ピザトーストを食べながら何気なくそっちの方を尋ねてみたら、マリアはふふん、と自慢気にピースをしながら、

 

「レベル4になった!」

 

 と、衝撃の事実を告げてきたので、驚きのあまり食べていたピザトーストを噴き出しそうになりながら聞き取れない言語でマリアに詰め寄っていた。

 それで事の詳細によると、どうやらテルヨシが沖縄に行くより前にパドとユニコとでテルヨシが驚くようなことをしてやろうと画策していたらしく、この1週間で結構な頻度の対戦を繰り返していたとか。

 さらにここ最近でもうすぐレベル4になるかもと噂されていたマリアとほぼ同期の《パンジー・スティング》より先にレベル4になりたかったこともあったようで、最後はそのスティングをコテンパンにして目の前でレベル4に上がってやったらしく、実は結構な負けず嫌いなマリアの意外な一面を知ることとなった。

 そしてどうやらもう《無制限中立フィールド》にもユニコ先導の下でダイブしたみたいで、説明がてら赤のレギオンのみんなとエネミー狩りまでやって帰ってきたと嬉々として話してくれる。

 

「それでね、ニコさんとバーちゃんさんが凄くて、こーんなにおっきなエネミーにどかどかどかんっ! って攻撃してて、あっという間に倒しちゃってね!」

 

 それからしばらくの間は朝食を食べるのも忘れて、昨日話せなかったたくさんのことを一気に話し続けてくれるマリアを見ながら、初めて会った時から本当に明るくなってくれたなと、ちょっとだけ感慨に浸ってしまう。

 願わくはこのままずっとマリアの成長を見ていたい。

 そんな思いが一層強くなるが、同時に『ある思い』も生まれていたのだった。

 それから話し疲れてしまったマリアと直結対戦でレベルアップによる変化を確認し、コンビプレーの新たなサインなどを決めたテルヨシとマリアは、早速それらを試すために人の多い新宿に出向いてタッグ戦。

 その後は定番となるバトロワ祭りへと参加して1日を終えるのだった。

 さらに翌日の月曜日。

 この日は全損した能美と初めて会うとあって、少し緊張していた黒雪姫達だったのだが、そんな緊張も無駄なことを知っていたテルヨシは、黒雪姫達がその事実を知るまでの間に沖縄で買ったプレゼントを黒雪姫と恵に渡して、その感想に期待。

 昼休みの始めに渡して早速開けられたそのプレゼント――黒雪姫には黒塗りの折り畳み式の(くし)で、恵にはシルバーアクセサリーのピンキーリング――を見て、2人は互いに顔を見合わせて、ふむと口を揃えて感想を述べる。

 

「無難だな」

 

「無難ですわね」

 

「ふっ、何をプレゼントしてもそんな感想だろうと思ったから、普段から使えるようなチョイスにしてやったのだ! というかそんな高い物買えん」

 

 そんな2人の感想にいい加減学習したテルヨシは、何故か胸を張って存分に使ってくれと言うので、その態度が気に食わなかった2人は手に持ったプレゼントを貼り付けた笑顔で教室の窓から投げ捨てようとするので、結局土下座して「お使いいただけると嬉しゅうございます」と言葉を訂正してしまう。

 さすがに行動自体は冗談だった2人は、テルヨシに頭を上げさせてからそれぞれ鞄から何かを包装した物を取り出して渡してきて、まさかと思いつつそれを受け取り中身を出そうとすると、2人揃って開けるなとマジのトーンで言うので何故かと問えば、それはマリアへのプレゼントだと言われてしまい、上げて落とされてはもう泣くしかないテルヨシだった。

 そして放課後。

 少しだけ時間をくれと言われて学生食堂へと足を運んだテルヨシは、そこにいたチユリを除く黒のレギオンメンバーの輪に加わって、おそらくは能美の件での話に耳を傾けた。

 内容はやはり能美の全損によるブレイン・バーストに関する記憶の消去。

 3人が深刻な顔をする中で、テルヨシだけがノーリアクションを通していると、それに気付いていた黒雪姫から質問が飛んでくる。

 

「テル、お前はどうやらこの件については以前から知っていたようだな。あの場であの《ブラック・バイス》とやらに尋ねたのも、それを向こう側が知っているのかを確認するためか」

 

「そもそもあのバイスが全損の可能性がある勝負をする能美からの情報漏洩を危惧できないようなバカには見えなかったんだよな。だからオレ達が来て形勢が不利になってもあの落ち着き様が気味悪くて、きっとこいつは知ってるなって思ってさ」

 

「なるほどな。その辺の頭の回転はさすがと言えるが、お前自身はどうしてそうも確信できる情報を持っていたんだ?」

 

「それは……まぁ……PKされて返り討ちに全損させたことがあるから……」

 

 テルヨシに対して対等以上の態度が取れる黒雪姫だからこそ聞き出せた過去のPKの件に、3人ともが驚きテルヨシを見るが、この件を知ってるのは今までパドだけだったので、余計な心配や気遣いはされたくなかったテルヨシは、苦手な視線を送ってくる3人から逃げるように席を立って話をまとめてしまう。

 

「要するにもう能美からの干渉は心配ない。それで今回は解決だろ? ハルユキ君の盗撮うんぬんも姫が揉み消したみたいだし、一件落着。オレはもうバイトだからこれで帰る。んじゃまた明日っ」

 

 有無を言わさぬテルヨシの言葉と走ってるに等しい歩いての逃走に、3人ともがちょっと間抜けな表情をしていたのを確認してから、学生食堂を出たテルヨシはまた始まったいつもの日常の中へと戻っていった。

 ちなみに能美と件の《ローカルネット荒らし》が使っていたマッチングリストの遮断方法は、今は違法となっているニューロリンカーと同様の能力を持つBIC(ブレイン・インプラント・チップ)を外科手術によって頭に埋め込んで、BBをインストールしたニューロリンカーを非接続状態にして、BICでネットに接続するという方法だったらしく、この事から黒雪姫もテルヨシもそれらが《加速研究会》に繋がってると踏んで今後の行動にも警戒する必要があると感じていた。

 波乱の新学期シーズンを乗り越えて、ようやく落ち着きを取り戻したテルヨシ達は、気付けば4月も終わりを迎えてゴールデン・ウィークの連休へと入る。

 テルヨシは売り上げ時だと豪語するパドによって最終日以外はバイト漬けにされていたが、豪語しただけあって客足もいつもの3割増しほどが続き、女性客に対してはある程度の人気を持つこともあり、仕事とはいえ結局楽しめてるテルヨシだった。

 少々驚いたことがあったのは、その来客の中に1度だけ最近再会を果たした千明ちあきが、学校の先輩に連れられて友人と共にやって来たことで、店に入って早々に互いに存在に気付いて顔を見合わせたりしたが、それもすぐに一緒に来ていた先輩に遮られる。

 

「やっほー、テルルンっ! 今日も儲かってるー?」

 

「いらっしゃい『ホオリン』。『クルクル』も相変わらず美人だねぇ」

 

「そのクルクルって呼び方、どうにかならないかな……」

 

 そうして来店早々にテンション高めでテルヨシと親しげな会話をしたちあきの先輩。ホオリン。

 明るい長い茶髪をハーフツインテールでまとめた、見るからに明るい性格の子が祝優子(ホオリユウコ)と言い、クルクル。

 ボーイッシュな黒のショートカットをした中性的な美人の子が来摩胡桃(クルマクルミ)と言うのだが、彼女らはもう去年辺りからちょくちょく来店してくれる常連1歩手前の子達で、テルヨシとは歳も同じとあってイートインコーナーで食べていってくれたりする時に話していたら、いつの間にかあだ名で呼び合うようになっていた背景がある。

 

「クルクル可愛いと思うけどなぁ。それで今日はテイクアウト? それとも食べていくのかな?」

 

「もちのろんで食べてくよー。んで、今日はあたし達の可愛い後輩を連れてきましたー!」

 

 そんな2人との挨拶はほどほどに、一応仕事なのでいつものように接客に入ったテルヨシに、衰えない元気でそう言ってから、後ろに隠れていた2人の後輩に注目するようにバーン! と手を広げて横にズレるユウコ。

 そこから現れた1人は当然テルヨシも知るちあき。

 そしてもう1人はちあきとそう変わらない身長の緩いウェーブのかかった薄く長い金髪にカチューシャを着けたフワフワした雰囲気の女の子で、いきなり紹介されてピョッと驚く素振りを見せてちあきに隠れてしまう。

 

「やっほー、ちあきん。ちょっとぶりー」

 

「ああ、そうだな……まさかテルがこんなところで働いてるとは思わなかったよ」

 

「あれ? テルルンとちあちあはお知り合い?」

 

「アメリカにいた頃に1度だけ会って、この前偶然に再会したのだが、洋菓子作りができるのだな」

 

「テルの作るケーキはこの辺では評判が良いんだ。ちあきもリーリャもきっと気に入ると思うよ」

 

 その後輩のちあきに挨拶をしたらそんな会話に発展するも、レジに立つパドからそろそろお叱りの声が飛んできそうだったので、ご一行をイートインコーナーに移動させてさっさと注文を取って落ち着く。

 しかし色々と察せてしまうテルヨシは、以前ちあきが言っていた親代わりの先輩バーストリンカーというのと、ここ最近のちあきの加速世界での情報を照らし合わせて、彼女達全員がバーストリンカーで、誰が誰かまで意図せずに特定できてしまう。

 その事を気にしてか、チラチラとテルヨシを見てくるちあきがどうしようみたいな空気を醸し出してくるのを見てクスクスと笑いつつも、注文したケーキを運んだ時に小声で「大丈夫」と言っておくと、それ以降は楽しそうに4人での会話を楽しんでいた。

 どっぷり1時間ほど居座ったちあき達一行は、お持ち帰りまで買って店を出ていったのだが、こうした意図せぬ《リアル割れ》をする可能性があるのもバイトをやってる上で稀にある――ユニコやパドを除くプロミのメンバーの数人がそれに当てはまる――が、それはテルヨシが胸の内に秘めておけばいい話で、今わかってしまったユウコやクルミ、リーリャと呼ばれた少女にバーストリンカーとしてリアルで接しなければ、それで今まで通りの関係でいられるわけだ。

 ちあきもテルヨシがどこかにリアルの情報を漏らしたりするような人物じゃないと信じてくれたからこそ、何も言わずに店を出ていったのだから。

 そうしたちあき達とのちょっとした出来事も過去の話で、いよいよゴールデン・ウィークも最終日となり、バイトから解放されたテルヨシはマリアと一緒に朝からお出かけ。

 一昨年に恵と行った東京グランキャッスルで楽しく遊んだ後に、中野第2戦域に訪れて対戦をしていたのだが、この日はあの3人家族も途中からやって来て、対戦を観戦中に発見されるや否やいきなり近付いてきて話をしてきた。

 

「テイルの兄貴ぃ! 俺にナイスなアイディアがあるんすけど、聞いてくれませんかぁ!」

 

「うるせぇぞスティング。もうちっとボリューム下げて話せ。アンがウザがってるからよ」

 

「スティング、うるさい」

 

「こいつのウザさはなかなか直んないわよ。それよりテイル、スティングの話はちょっと私も乗ってみたいから、暇なら付き合ってくれない?」

 

「ガ、ガスト姉、本当にやるの? だとしたら僕がテイルさんと……」

 

「今から逃げ腰でどうすんのよ。そんなんじゃすぐにスティングに追い抜かれるわよ」

 

 近付いてきて早々にやたらテンションの高かった《パンジー・スティング》の言葉から始まって、《エピナール・ガスト》と《スノー・イーター》も話の見えない会話で続くので、とりあえず話だけでもとガストに言ってみると、スノーを怒っていたガストはスティングに代わって話をする。

 

「話は単純なんだけどね、私達で同レベル同士の3番勝負でもしないかって。珍しくスティングがそんな提案するから、まぁやれたらって思ってたら丁度テイルとアンがいたってわけ。2人が了承してくれるならあとは私の相手を探すか呼ぶだけなんだけど、どう?」

 

 そんなガストの話に互いの顔を見合うテルヨシとマリア。

 テルヨシは別に構わないとは思ったのだが、マリアはこれを了承するとあとを追うようにレベル4へと上がったスティングとの対戦とあって物凄く唸っていたが、そこへまたも近付いてくる人物がいて、聞いていたのか話に加わってきた。

 

「その話、儂も混ぜてくれんかの」

 

「あらボンバー。あなたがいるなんて珍しいわね。レベル7になったんだから、もう少し慎重に行動した方がいいんじゃない?」

 

「主がそれを言うかの……」

 

 近寄ってきた《カーマイン・ボンバー》ことバーちゃんは、この話に自分が条件を満たしていると判断して参加を表明する。

 するとバーちゃんの参加によってマリアが突然この話に了承し、それでトントン拍子に話が決まり、ギャラリーもたくさん入れたいからといま行われてる対戦が終わってからギャラリーにその事を告げて対戦の時間を指定。

 第1戦がマリアとスティングのレベル4対戦。

 第2戦がテルヨシとスノーのレベル6対戦。

 そして第3戦がバーちゃんとガストのレベル7対戦とあって、稀に見ない好カードの連続にギャラリーも話を広げるため、急ぎ情報網を駆使していっていた。

 そんな盛り上がりの中でなぜ急にマリアが了承したのかを本人に聞いたテルヨシだが、そこにはテルヨシも納得の理由があった。

 

「バーちゃんさんとガストさん……《妖精の舞姫》と《月下の舞姫》の本気の対戦を見るの初めてだから、見てみたかったの」

 

 言われてみてテルヨシも長く付き合いのある2人ではあるが、あの2人がタイマンでやり合うところを見たことがなかった気がして、そう考えたらマリアと同様にその対戦カードが楽しみになってしまっていた。

 まぁ、この2人はもう1つの異名の方が知名度が高いから《爆弾魔》VS《猪突猛進》の方がピンと来るとか思ったのは胸の内に秘めておくのだった。

 その後、リアルで約20分ほどの待機時間を設けてギャラリーの数が十分に増えたであろう頃合いに、第1戦であるマリアとスティングの対戦がスタート。

 2人が対戦することになったフィールドは、マリアにとってはあまり好ましくない障害物の少ない拓けた《荒野》ステージ。

 一撃離脱によるアビリティを生かした隠れながらの戦闘スタイルのマリアではどうしても何度かの移動で相手に捕捉されてしまい、最悪初手で発見もあり得てしまう。

 まずは定石通りに岩陰に隠れてガイドカーソルとの間に障害物を挟む形で狙撃銃型強化外装《シャープネス》のスコープで200メートルは離れているスティングの姿を捉えたマリア。

 しかし今回のような拓けたフィールドにおいてはマリアも単調な攻めはしない。

 ただ狙って当てても、銃弾の飛んできた方向からおおよその方向がわかってしまうため、マリアはここ最近でそれを克服するのに身に付けた技があり、スティングを狙って早速それを実践。

 音もほとんどなく鋭く撃ち出された銃弾は、アビリティ故にガイドカーソルの表示もなく見当違いな方向を警戒するスティングの近くにあった岩の1つに命中。

 しかしそこで銃弾は岩をこするようにその軌道を45度近く変更してスティングへと命中。

 HPゲージがガリッと1割ほど削られて、攻撃を受けたスティングも銃弾の飛んできた方向をほぼ正確に見るが、当然その先にマリアの姿はない。

 《跳弾撃ち(リフレク・ショット)》と名付けたその技は練習時点でまだ成功率50%程度とギャンブル性は高いものの、マリアなりの弱点克服のために自分で編み出した技術。

 実践での成功率はさらに低く、それ故にスティングにもまだ知られていないが、たとえ知られていたとしても看破は難しい良い技である。

 子贔屓も大概だが、テルヨシはそんな分析をしていた。

 しかしマリアのアバターの根幹となるアビリティ《バレット・クリエイション》は、通常弾ですら必殺技ゲージを3%消費して造り出すため、常に必殺技ゲージを必要とするもう1つの弱点がある。

 もちろんその必殺技ゲージを溜めるために物理的にオブジェクト破壊することは可能だが、マリアのアバター本体もシャープネスも大半のオブジェクトより脆い部分があって逆にダメージを受けてしまう。

 そうなると与えるダメージよりも受けるダメージの方が大きくなって、結果として負けてしまう可能性がある。

だからマリアの狙撃の命中率は生命線で、今の跳弾撃ちの成功率で連発は自分の首を絞めることとなるのは目に見えて明らか。

 それを十分に理解しているからこそ、次弾からは普通に撃っていたのだが、やはり単調な撃って逃げるを拓けたフィールドでやりきるには運も必要になってくるため、3度目の狙撃の際にスティングに捕捉されたマリアは、その後は一気に距離を詰められて苦手な接近戦を強いられガリガリとHPゲージが減り、それでも一矢報いるためか、はたまたスティングにとどめを刺されるのを嫌ったのか、レベル4になってアビリティ強化をした際に増えた《炸裂弾(グレネード)》を至近距離からスティングに撃ち込んで自分もろともその爆発に巻き込んで自爆。

 それでもかろうじてHPゲージを2割弱残したスティングの勝利となった。

 対戦後のインターバルで現実に戻ってからマリアは涙を堪えて「次は負けない」とテルヨシに言ってみせて、ただ泣くばかりではないマリアを優しく撫でてあげてから「仇は取ってきてやる」と宣言してから、対戦相手であるスノーへと対戦を申し込んだ。

 この世の地獄を体現したような《煉獄》ステージに降り立ったテルヨシは、マリアに仇は取るとは言ったものの、今回構築されたフィールドが自分優位なことに素直に喜ぶことができず、というよりも対戦する前から自分の勝率を下げることをすると決めていた。

 まずはガイドカーソルに従って猛ダッシュでスノーの元へと駆けたテルヨシは、暗色系が多いこのフィールドでやたら目立つ真っ白なボディーのスノーを視界に捉えてからすぐに立ち止まって身構えるスノーに堂々宣言してみせた。

 

「お前の全力と戦いたい。少しだけ待ってやるから使っていいぞ」

 

「えっ……でもそれじゃフェアじゃ……」

 

「このフィールドでお前に勝ってもオレが納得しないんだよ。それにギャラリーだって見たいだろ? 全力のオレとスノーの対戦をよ」

 

 いきなり始まるかと思ったら、テルヨシからそんな言葉をかけられて困惑してしまうスノーだったが、次いでギャラリーを煽るテルヨシの言葉に乗って、周りからワッと賛同する声が上がり、スノーの親であるガストと子のスティングからも「やらせたことを後悔させてやりなさい!」、「やっちまえスノー!」と遠慮なしの声が飛んで、もうやらない理由すらなくなったため、覚悟を決めたスノーはムンッ! とやる気に満ちた目に変わってその体から《フリーザー・アイス》を作り出してそのまま食べ必殺技ゲージを満タンにし、約1分の硬直を経て強制変遷必殺技《オルタレイション・ブリザード》を使って、フィールド属性を《氷雪》ステージへと変更。

 

「さて、サービスはここまでだぜ、スノー」

 

「はい! ここまでさせてもらったら、僕も負けられませんよ!」

 

 自らのフルパフォーマンスを発揮できるフィールドに変わったことで、スノーも負けられない気持ちが強くなったのか、いつもは自信なさげな言葉にも強気な部分を含み、その実力が本物であることをこれまで何度も味方として見てきたテルヨシは、いつもはあまり感じないスノーからのプレッシャーを早くも肌で感じ始めていた。

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