Acceleration Memory1
2046年7月上旬。
夏休みを月末に控えたこの月は世の学生達が思わず浮き足立ってしまう。
そんなフワフワした気持ちで日々を送るのは、渋谷の私立中学に通う都田沙絢も同じで、土曜日となる今日も午前で終了となった学校からまっすぐに帰宅し、中野駅北にある自宅から同じく小学校から帰ってきた大喜多亮を強引に連れ出して、今回の戦場となる荒川区へと乗り込んでいった。
サアヤとアキラの2人は、リアルではどこの誰とも変わらない普通の学生だが、ブレイン・バーストという1つの超常のアプリケーションをインストールしたバーストリンカーであり、そのアプリ内で2人は普通とは呼べないことをしていた。
対戦格闘ゲームであるブレインバーストはその思考を1000倍にまで加速させた上で仮想空間で戦う。
そのブレインバーストのシステムの中には、毎週土曜日の夕方4時から数十分間、多対多による《領土戦》なる対戦方式が実装されていて、対戦フィールドとしていくつか区分されている戦域を支配し奪い合うのが目的となるが、この領土戦に参加予定のサアヤもアキラも別に自分の支配戦域が欲しいわけではない。
そもそも戦域の所有権を有するには《レギオン》というシステム上で認められた集団が必要であり、一応のレギオン《メテオライト》を結成しているものの、この構成人数は最小限レベルの3人でとてもではないが支配戦域の維持など不可能。
それでもほぼ毎週、どこかしらのレギオンが支配する戦域に殴り込みに行ってるのは、もはやどこのレギオンにもゲリラ的な襲撃をするため軽い災害くらいに思われてちょっとしたサプライズアタックになっているから。
もちろんサアヤとアキラがそれを自発的にやり始めたわけではない。
元々はそれをやろうと言い始めたバカに乗って週末のプチ行事になっただけの話。
「今日も完全勝利っ!!」
そのバカ。ブレインバーストにおいて《レガッタ・テイル》というデュエルアバターを操るバーストリンカーは、相手のチームが全滅したところで声高々に勝利宣言してサアヤに向けてピースして見せ、それに対してサアヤはとどめをテイルが刺したわけではないのでちょっと冷たい感じで流しつつ「いえーい」と無感情の声で返した。
「んもう、ガッちゃんノリ悪いー」
「悪かったわね。それよりテイル、視界上のあんたのレベル表記はバグってるのかしらね。私にはこれ、どう見ても『6』にしか見えないんだけど」
「はははっ、ガッちゃん自分の見るものくらい信じないと。ちゃんと昨日レベルアップしましたよんっ」
と、自分の問いに対して笑いながら答えたテイルにちょっとイラッとするが、実力に関して言えば不思議はないレベルになったくらいなので驚きはそこまで大きくなかった。
しかしデビューから1年ちょっとで自分と同じレベル6に並ばれたのは少なからず思うところはあって、先ほど相手にとどめを刺して戻ってきた自らの子《スノー・イーター》。
アキラと和やかな会話をしていたテイルをジッと見ると、視線に気付いたテイルもサアヤを見る。
「どったの、ガッちゃん?」
「まぁアンタがレベル6になったのは喜んであげるけど、だからって私と実力まで並んだみたいに思われても困るのよね」
「えっ……オレそんなこと思ってな……」
「勝負よテイル! レベル6の壁ってやつを教えてあげるわ!!」
間で何か言いかけたテイルを無視して挑戦状を叩きつけたサアヤは、返事など不要みたいな勢いで対戦フィールドから離脱すると、再び加速して向こうがグローバル接続を切るより早くマッチングリストからテイルを選んで乱入。
こうしてテイルとの同レベル対戦の初戦は幕を開けた。
領土戦を閉じて改めて構築された対戦フィールドに降り立ったサアヤは、着地と同時に表示された【FIGHT!!】の炎文字を無視するようにダッシュを開始。
したのだが、踏み出した足はいきなり自分の目測を裏切る沈み方をして、それでバランスを崩して前のめりに倒れてしまうと、視界には毒々しく濁った水溜まりが迫ってバシャーン!
面でその水溜まりに倒れ込んでしまった。
「ハッ!? 毒沼かこれ!」
豪快に濁った水溜まりに突っ込んだサアヤは、ちょっとだけバタついてから余裕で足のつく深さのその水溜まりからすぐに脱出。
自分が言ったように毒沼だったのでHPゲージがいきなり3ドットほど削れてしまって、めっちゃ恥ずかしいミスに1度周囲に誰かいないかを確認して、幸いなことにまだ子であるアキラだけとわかるとホッと胸を撫で下ろして改めて構築された対戦フィールドに目を向ける。
緑々しい草木が生い茂る《原始林》ステージとは一変して暗色の枯れ木やら剥き出しの地面が見え、その地面に点在するサアヤが落ちた毒沼のある《腐蝕林》ステージは、色彩鮮やかなエピナールのサアヤが輝いて見えるほど暗い。
正直テンションを上げづらいが、それも相手によっては関係ない。
今回がまさにそうだが、スタートこそコケてしまったものの、気を取り直してガイドカーソルが示す方向を見たサアヤは、その先にいるテイルを倒すべく走り出していった。
「いやだからさ、なんかいきなりガッちゃんが勝負だーって……」
そうしてテイルの元へと辿り着いたサアヤだったが、対戦相手であるテイルは必殺技ゲージを溜めることもなく入っていたギャラリーとこの対戦の経緯についてを呑気に話していて、その中には暇をもて余していたのか黄のレギオン《クリプト・コズミック・サーカス》のレギオンマスターである《イエロー・レディオ》もいて、テイルのそんな話にやれやれといった雰囲気を醸し出していた。
ちなみに今回攻め込んだのが黄のレギオンの領土だったから、レディオがギャラリーにいても不思議はないのだが、領土戦はまだやってるはずなのでメンバー任せの采配をしていたレディオにはちょっとどうかと思ってしまう。
「はいはいっ、お喋りやめなさいアンタ達。レディオも領土戦サボんじゃないわよ」
「おや、私のレギオンの方針にあなたがとやかく言う資格はないでしょうに。若手の育成も指導者の育成もやっているのですから、たまにはレギマスが見守る日があっても不思議はないですし」
「あっそ。アンタがそこまで考えてやってるかは別に興味ないけど、この対戦に余計な野次入れたら容赦なく弾くからね」
サアヤの鬱陶しそうな雰囲気と言葉に対して、テイルの近くにいたレディオは「怖い怖い」とか言いながら離れていき、ギリギリ小言が聞こえないだろう絶妙な距離から観戦しようと腰を下ろしたのを確認。
ここら辺が昔から気に食わないサアヤではあるが、いちいち文句を言っていたらキリがないのでもう無視の流れにし、今の対戦相手に意識を集中。
テイルも他のギャラリーとの会話を終わらせて軽くストレッチをしながら戦闘体勢を整えていく。
「一応確認しとくけどさ、ガッちゃん今日はマジモード?」
「大マジモードよバカ。手を抜いたりしたら2度とチーム組んであげないから。てゆーかレギオン解散よ」
「それは勘弁。気心知れたガッちゃんの代わりなんてこの世に存在しないんで……」
互いに準備万端の上で始めるため、それが完了する前にそうした他愛ない会話をして時間を使ってはみたものの、この会話からしてすでにテイルの戦術なのはもう散々わかっていたサアヤ。
こうやって会話をしながらサアヤが予想だにしない言葉をかけて意表を突き、動揺したところを攻める常套手段はもう懲りてるので、会話にも適当さが滲み出つつ準備はすでに終わってる前提で先手を取るために突撃を開始。
主導権を握るファーストアタックは強化外装《ブレード・ファン》による殴打。
上から叩きつけるように振るった一撃に対して、テイルはやはり万端の体勢からバックステップで難なく回避すると、すかさず切り返して前進から蹴りを放つ。
その蹴りを地面に叩きつけたブレード・ファンを持ち手の方を持ち上げることで立ててガードに回し蹴りを受けると、カウンターの蹴りをテイルへと放つ。
しかしこれも最小の動作で回避したテイルは、反撃の蹴りを放とうと足を持ち上げかけたが、それよりも先に蹴りを空振ったサアヤは勢いそのままにブレード・ファンを持ち上げて真横に振るう。
それによりまたも回避に動かされたテイルはサアヤの勢いに押されるように後退。
それをブレード・ファンの乱舞によって追うサアヤは、テイルに反撃させないように決して大振りはしていなかった。
サアヤの扱う扇子型強化外装ブレード・ファンは、その総重量を5キロとしており、そんなものの攻撃を受けるとなるとガードの上からでもダメージは免れない。
そのブレード・ファンを時には片手で扱うサアヤは一見すると怪力のように見えるが、実はそうではない。
設定されている筋力値も決して周りと大きな差はないし、システムのバグでもない。
《リダクション》と呼ばれる常時発動型アビリティを有するサアヤは、その手に持った物の体感重量を8割減少させることができ、これによって振り回すのもキツいブレード・ファンを軽々と扱えている。
そのブレード・ファンの起こす風切り音は、ぶおんっ!
その重量を物語るほど低く、テイルもこれを防御しようなどとは欠片も思っていない回避をしていたが、その視線はブレード・ファンだけでなくサアヤの動作の全てを見ていて、回避に手一杯という様子は微塵も感じさせなかった。
これこそがテイルの怖いところである、驚異的な観察眼。
対戦の中でいつも思考を途切れさせないテイルは、周りより視覚的に捉える情報が多いという武器を最大に生かした戦術を組み立てる。
つまりはサアヤが気づかないところでテイルの思惑が動いていることも間々あるということ。
しかしそれを恐れて前へ出ないなんて愚行はするべきではない。
何よりも前へ出ないサアヤなど、これまで培ってきた全てを否定するようなもの。
だから攻撃は最大の防御を体現してきたサアヤは止まらない。
「せいやっ!」
その何度目かの攻撃で押せ押せな雰囲気だったところで、変化を加えるためにブレード・ファンを振ってすかさず開いたサアヤは、自分を覆い隠せてしまうほどのブレード・ファンを振るって前方のテイルへと殴打ではなく風圧による吹き飛ばしに切り替えると、結構な至近距離でその風圧を受けたテイルは体を浮かせて後方へと吹き飛び、その先にあった毒沼へと真っ逆さま。
「うげげのげっ!」
と、サアヤも思ったのだが、余裕があるようなないような台詞を言いながら毒沼に向かうテイルは、フォロースルーに入っていたサアヤの両手とブレード・ファンの間にするりと足を引っかけて強引にサアヤを持ち上げたかと思えば、毒沼の中に自らの頭の後ろに取り付けて伸びる強化外装《テイル・ウィップ》を先端から突っ込んでそれを支えに毒沼の上で器用に浮かんでみせると、持ち上げていたサアヤをアーチを描くように代わりに毒沼へと放り込んでバシャーン!
本日2度目となる毒沼ダイブを決めさせられてしまった。
毒沼はどこも浅いので邪魔さえなければすぐに脱出できるものの、自分がそうなるようにテイルを誘導していたはずが、結果として逆になってるのだから全く以て笑えない。
「いやんガッちゃん。毒沼も滴る良い女ってね」
「テーイールー……」
軽く地響きでも鳴りそうな足取りで毒沼から出たサアヤは、反対側で毒沼に入ることなく難を逃れてふざける憎き相手に恨めしい視線をぶつけてやる。
あまりにムカついたのでそこからブレード・ファンを振り下ろして、風圧で毒沼を巻き上げてやったら、これは意外だったのか避ける間もなく毒沼のシャワーを浴びたテイルは、そのHPゲージを1ドット程度減らして、それにはギャラリーも爆笑していた。
「あはははははっ! バカテイルー!」
「ダメージとしては小さいはずなのに、何でだろうこの計り知れないダメージを受けてる感じは……これが、まさか恋!?」
『それは違う』
無様に毒沼を被ったテイルを心底笑ってやったサアヤに対して、内面的なダメージを割増受けたらしいテイルは見るからに落ち込んだのだが、次には何の脈絡もなくいきなりいきなりなことを言うものの、なんか慣れてるギャラリーがみんなして冷静にツッコむと、見事にハモってツッコまれたテイルは「やっぱり?」とか言ってギャラリーからサアヤへと視線を戻していった。
こうしたギャラリーを巻き込んでのやり取りもまたテイルの魅力の1つではあるが、対戦相手としてそのやり取りを見るとなんとなく割り込めない雰囲気を作られるからやめて欲しいと思うのはサアヤの本心であった。
コントのようなやり取りとギャラリーとの絡みもあってから仕切り直しとばかりに構えたサアヤとテイル。
毒沼を挟んだ両者の間合いは非常に難しく、どう仕掛けるかを迷いながらゆっくりと毒沼を迂回するサアヤに合わせて、テイルも同じ回りで歩調を合わせて毒沼をぐるりと回り出す。
やろうと思えば毒沼を無視して一直線で迫ることもできるが、想像するよりも水の中を進むというのは抵抗が大きい。
その速度低下は対戦において致命傷になりかねない。
まぁだからといってサアヤがこうして間合いを図るなんてことを長々やるはずもなく、ピタッとその足を止めてテイルもそれに合わせて足を止めたところで毒沼の上をジャンプ。
ひとっ飛びではちょっと無理があるその距離ではあるが、サアヤはそこでブレード・ファンを先ほどのテイルのように毒沼に突き立てて、そこを中継して2段ジャンプのごとく毒沼を飛び越えてテイルへと飛び蹴りをぶち込む。
これをバックステップで避けたテイルに、毒沼をギリギリで渡り切って着地したサアヤはすかさず距離を詰めて接近しブレード・ファンを振るっていくが、何を思ったか今度はそのブレード・ファンに真っ向から蹴りを当てに来たテイル。
勢いでは互いに勝るとも劣らないが、その威力は重量差でブレード・ファンが勝る。
はずだったのだが、実際に衝突して起こったのはまさかのブレード・ファンの威力負けによる弾き返し。
予想だにしなかった結果とブレード・ファンの弾き返しで体が思うように動かなくなったサアヤは、その隙を正確に突いて前進し懐に入ってきたテイルに反応が遅れ、その腹に左右一撃ずつの蹴りを貰って吹き飛ぶが、そこをテイル・ウィップで巻き取られて引き戻されてもう一撃、手痛い蹴りを貰ってしまう。
「ふんがっ!!」
しかしそれだけで終わったら一方的すぎる。
それだけは意地でも避けたかったサアヤは、追撃の蹴りを貰いつつもクロスカウンター気味にブレード・ファンをテイルの側頭部に叩き込んで一矢報いると、後方に吹き飛んだサアヤに対してバランスを崩してその場で勢いよく顔面から地面に沈んだテイル。
両者のHPゲージが今のでグンと減って半分を切り、必殺技ゲージはほぼ満タンに近くなる。
自慢の足での連撃とあって、その威力も相当だったテイルの攻撃には歴戦の猛者であるサアヤとはいえ即回復とはいかず、少しの間地面に仰向けで倒れていたが、向こうも向こうで最大限警戒していたはずのブレード・ファンの一撃を頭部に受けたとあってピクリともしない。
これはチャンスと思って痛む腹を押さえながら立ち上がったサアヤは、未だうつ伏せで倒れるテイルに近寄って滅多打ちにでもしてやろうとブレード・ファンを振りかぶってから、さすがにやりすぎかと考え直して一撃で毒沼に叩き込んであとは毒ダメージで倒れてもらおうと思って毒沼に狙いを定めてブレード・ファンをスイング。
ゴルフのようにテイルをナイスショットしてゲームセットとなるはずだったが、ブレード・ファンが当たる瞬間にゴロンと体を反転させてブレード・ファンをカスるところで回避したテイルは、装甲との接触でわずかな火花を散らして通り過ぎたブレード・ファンをやり過ごして体のバネを使い一気に立ち上がり、フォロースルーに入っていたサアヤの開いた右脇腹に回し蹴りを叩き込んできた。
やっぱりコイツは可哀想とか思っちゃダメだ。
叩き込まれた回し蹴りに苦悶の表情――とはいえフェイスマスクの上からはわからない――を浮かべながら、サアヤは倒れたフリをしていたテイルを睨みつつ気合いで踏ん張ってその場に留まりテイルの繰り出してきた足をガッシリと脇に挟んでホールド。
左手1本で持ったブレード・ファンをテイルへと叩きつけるが、今度は折り込み済みとばかりにテイル・ウィップが間に割って入って威力を減退するいなし方で完璧に受け止められてしまう。
「ムカつくわねもうっ!!」
確実にダメージはあるはずなのに怖いくらい冷静に対処してくるテイルに自分ではできない故のイラつきを見せたサアヤは、結構なやけくそ具合で持っていたテイルの足を強引に振り回して変則のジャイアント・スイングを開始。
突然の力技に慌てた様子を見せたテイルだったが、変則ゆえに空いた片足でサアヤを蹴って脱出を図ろうとしていたので、スイングの加速前にブレード・ファンを手放して蹴ってきた足も脇に挟んで正真正銘のジャイアント・スイングへと移行しぐるんぐるん。
十分な加速を得た段階で競技選手並みの叫びと共にやや上方向へテイルを投げ飛ばす。
重ねて言うならば、サアヤにはリダクションがあるので、ジャイアント・スイングを始めた段階でアビリティ適応が成され、体感10キロ未満となったテイルを振り回して投げている。
決してサアヤは怪力ではない。
ゴリラなどと言った日にはそれはもう後日大変なことになる。
今ギャラリーから笑い声と共に聞こえたその単語はレディオから発せられていたのをちょっと捉えつつ、テイルが空中に投げ出されたところですぐにブレード・ファンを拾って広げたサアヤは、満タンになっていたその必殺技ゲージをフル消費して技名発声。
「《リベレイション・ストリーム》!!」
発声の後に360度横に振るわれたブレード・ファン。
そこから一瞬の静寂が訪れて、次にはサアヤを中心に全方位へと破壊の暴風が吹き荒れる。
圧倒的なほどの風圧を発生させて、近くのものを吹き飛ばし、或いは破壊してしまうこの必殺技によって、周りの木々はその幹の根本から折れて後方へと吹き飛び、地面にあった毒沼は1滴残らず吹き飛び水のつぶてとなって折れずに残った木々や壁にぶつかり破壊をもたらす。
それほどの暴風を空中で受けたテイルは、当然のごとくゴミのように吹き飛んだかに思えたが、このテイルには憎たらしいことに《インスタント・ステップ》という限定条件付きの空中で足場を発生させるアビリティがあり、それを使えば吹き飛ぶのを止めることができてしまい、事実テイルは暴風の発生と同時にアビリティを上手く使って吹き飛ぶのを最小に留めていた。
――ドゴンッ!
が、それこそがサアヤの狙いだった。
サアヤは必殺技の後に素早くブレード・ファンを閉じて、暴風が発生した瞬間にブレード・ファンをテイルめがけて全力投擲。
ほぼ同時にアビリティによってその場に留まろうとしたテイルの顔面にブレード・ファンは見事突き刺さり、完全にテイルの思考を奪う一撃で吹き荒れる暴風に巻き込み、遥か後方にそびえた壁にぶつかってとどめ。
もう1度重ねて説明するならば、サアヤのアビリティ、リダクションは体感重量を8割減させるもので、決して物それ自体の重量を変えるアビリティではない。
なので5キロの物体が高速で顔面にぶつかるというのは現実世界ならばまず即死レベルのダメージである。
「あー、スッキリした」
それを躊躇なくやってのけて、さらに満面の笑みを浮かべて晴れやかな声を出したサアヤに、ちょっとだけギャラリーが恐怖を抱くのであった。