アクセル・ワールド~蒼き閃光~   作:ダブルマジック

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Acceleration Memory3

 

 2042年春。

 この年に小学5年生となった馬場園由梨は、2年半前に天涯孤独となったその身の傷もずいぶん癒えて自然な笑顔で日々を過ごせるようになり、今日も全寮制の遺棄児童総合保護育成学校での授業を終えて1度部屋へと戻り、ランドセルを置いておでかけを開始。

 施設のある練馬区から出て南隣の中野区へと足を運んでいった。

 

「へぇ、ボンバーはもうそんなこと考えるほど成長してるわけだ……」

 

「うむ、いざそうなると周りには話しにくくての……」

 

 ユリが現在プレイしている対戦格闘型アプリケーション《ブレイン・バースト》はその思考を1000倍にまで加速し、その思考で仮想世界を舞台に対戦する常識を打ち破ったゲーム。

 そのアプリ内で現実世界の地形をそのまま再現して対戦フィールドを形成する技術。

 それによっていくつもの戦域と呼ばれる区分をされた中の中野第2戦域に来ていたユリは、そこで行われていた別のプレイヤーの対戦にギャラリーとして参加し、同じようにギャラリーに入っていた同じ集団《レギオン》に所属する《エピナール・ガスト》と他愛ない話をしながら対戦を観戦していた。

 その会話の中で最近、ユリは自分の現実の体の成長が実感できてきてしまって、それによって今まで着ける必要もなかった物の購入を気心知れるガストに相談していたが、そのガストは同じ女としてそれを羨ましいとでも思ったのかガックリと肩を落として自らの胸に手を当ててユリを見る。

 

「どのみち遅かれ早かれ着けることになるなら、慣れる必要もあるんだし買っちゃえばいいでしょ。てか、まだ必要すらない私に相談しないでよ!」

 

「す、すまんガスト……じゃがその……ブ、ブラジャーの有無というのは儂ではいまいち判断が難しかったというかでじゃな……」

 

「うっさい! そんな贅沢な悩みは学校の先生にでも相談しろバカ! 何のための保健室か!」

 

 相談したのは小さくではあるが膨らみを得てきた胸に、ブラジャーは必要かどうかといったことだったのだが、歳のほぼ変わらないガストはちょっと怒り気味でその話を強引に終わらせて対戦に集中してしまうが、その手は自分の胸に当てて揉むような仕草をしたままだ。

 なんだか悪いことしたなぁと感覚的には思うのだが、真剣な悩みだったので突っぱねられたのはちょっと不満で、しかし会話を続けようにもガストはもう話に乗ってきてくれないのは目に見えていたので小さなため息が漏れてしまう。

 そんな2人のところに同じくギャラリーに入っていた3人のプレイヤーが近寄ってきて、微妙な空気を払拭してくれた。

 3人ともがユリとガストとは違うレギオン所属で、一応はライバル関係にある大レギオン《ネガ・ネビュラス》のレギオンマスターとその幹部。

 《ブラック・ロータス》《スカイ・レイカー》《グラファイト・エッジ》は、今日は自分達の占有する渋谷戦域からプチ遠征して武者修行に出てきたようで、先ほどのガストの怒鳴り声に反応して近寄ってきたことを話すので、ユリも正直に話そうとしたが、唯一のM型であるグラフがいては口ごもるしかない。

 

「あらあら、どうやら女の子なお話みたいね。というわけでグラフさんはしっしっ、ですわ」

 

「おいおい、そりゃねーぜレッカ。ボンバもエッピンも何か言ってくれよ」

 

「黙れ鉛筆。女の話だって言ってんだから消えなさいよ」

 

「す、すまぬグラフ……さすがに男であるお主の前では話せぬでな。席を外してくれると助かる」

 

「ということだからグラフ、さっさと退場しろ。対戦も終わってしまいそうなのだから、時間もあまりない」

 

 それを察してレイカーがグラフを追い出そうとしたのだが、空気の読めないグラフは興味津々でユリの話を聞こうとしたが、立て続けにガスト、ユリ、ロータスと爪弾きにされればもう泣くしかなく、目に見えて悲しみの声を上げながらギャラリーを抜けて消えてしまった。

 それを可哀想と思う人がこの場にいなかったのが余計に哀愁を漂わせた。

 その後ユリの口からブラジャーの案件を聞いたロータスとレイカーは、それぞれ全く違う反応をして、ロータスはガスト同様に自分の胸辺りを見てからガックリと地面に崩れて四つん這いになると「バカな……小学生で必要になるというのか……」と衝撃を受けていて、対してレイカーは共感でもしたのか小さく笑うと「タイミングって難しいわよね」と感想を漏らした。

 まさかの共感者の登場でユリも思わずレイカーの手を取って助言を求めたが、それを見ていたロータスとガストがちょっと黒いオーラを放ちながらにユリとレイカーを見てきて「お前達は我々を敵に回したぞ!」「発育なんて個人差よ個人差!」となんか敵意みたいなものを放出したので、心底困ってしまう。

 

「あら、何か2人を刺激してしまったみたいね。ここは共感者同士でストレス発散でもしてもらって、わたし達もついでに対戦しましょうか」

 

 そんな敵意に涼しい感じで言葉を紡いだレイカーは、急にそんな提案をしてユリとガルガル唸ってるロータスとガストを見るので、なんだかその流れになって話が進んでいった。

 最初に何故か行われたロータスとガストの対戦は、共にレベル6ということでアバターの性能差はなかったが、それよりも互いに体の発育について愚痴りながら、時々励まし合いながらぶつかってて、観戦してる方は終始笑わされてしまっていた。

 あの気持ちを自分にぶつけられなくて良かった、とはレイカーと一緒に観戦しながらに思ったユリだが、まだブレイン・バーストのプレイヤーの最年長は小学5年生。

 胸の大きいだ小さいだを気にするには早いだろうとも思ってしまっていたのは胸の内に秘めつつ、敵意を向けていた相手がいない内にレイカーからブラジャーのあれこれを聞いておくのだった。

 ひょっとしたらこれを狙ってレイカーは2人を戦わせたのかとも考えたが、昔から笑いながら何を考えてるかいまいちわからないレイカーはそのまま怖いことをやったりするので、深くは尋ねずにブラジャー案件だけでやめておいた。

 そうこうしていたら2人の対戦も叫び疲れたのか、はたまた不思議な友情が芽生えたのか、残りHPゲージを共に1割程度残して合意の上でのドローで決着。

 そんな2人にとりあえず拍手を贈るしかなかったユリは、隣でクスクス笑うレイカーにちょっと恐怖していた。

 

「さて、胸を借りるつもりでやるとするかの」

 

 ロータスとガストの対戦のあとに始まったユリとレイカーの対戦。

 向こうから仕掛ける形で始まった対戦で構築されたフィールドに降り立ったユリは視界上の自分のレベルとレイカーのレベルを見てそう呟くと、神聖系の上位《霊域》ステージの白いタイルを敷き詰めた地面を蹴ってガイドカーソルの示す方向へと走り出す。

 霊域ステージは色彩に乏しく白の多い景色ながら、神話の世界を思わせる建物に変化したオブジェクトもギリシャの神殿造りに似ている。

 その景観の中に散りばめられた大小様々なクリスタルが至るところに浮遊して点在するが、それはプレイヤーが破壊することでHPゲージの下にある必殺技ゲージを大幅に溜めることが出来るこのステージ特有のボーナスオブジェクトだ。

 ユリが操るデュエルアバター《カーマイン・ボンバー》は現在、そのレベルを4とする《遠隔の赤》に分類されるアバター。

 その性能も今のところ分類に漏れずに中距離を主体とした遠隔攻撃がメイン。

 巷では最近、不名誉ながら《爆弾魔》などと呼ばれてちょっと恐れられてきていたが、自分の戦い方を振り返ればなんとなく納得もしてしまうのが悲しくはあった。

 対して相手のレイカーはユリと真逆とも言える《近接の青》の分類で、そのレベルもユリより2つも高い6。

 ブレイン・バーストでのレベルはアバターのポテンシャルに直接関わる重要な要素で、レベルが1つ違うだけで勝率に大きな影響を与えることになる。

 明らかな格上が相手。

 それがユリの認識であり、現にいま現在でレベル6は最高位に近く、その上のレベル7に至ったプレイヤーはユリの知る限りでは《純粋色》と呼ばれる7人のプレイヤーの中でも4人しかいない。

 そのうちの1人はユリが所属するレギオンのマスターなのだが、それは今はどうでもよく、レイカーはそんな数少ないレベル6の中でも上位に来る実力者。

 《ICBM》《超空の流星(ストラト・シューター)》《鉄腕》と数々の異名を取る相手にどう立ち回るか。

 それを考えながら両手の平を合わせて合掌し、自身の唯一の攻撃武器であるアビリティ《リトル・ボム》で球体の爆弾を生成。

 ピンポン玉程度の大きさのそれを目に見えたクリスタルへと投げつけて、それが命中した途端にリトル・ボムは爆発。

 クリスタルはその爆発によって甲高い音を響かせて粉々に砕け、ユリの必殺技ゲージは一気に4割近く溜まる。

 これだけお手頃に必殺技ゲージを溜められるのは霊域ステージ様様といったところか。

 一方のレイカーはガイドカーソルのブレがないことからまっすぐにこちらに向かってるか、あるいは立ち止まっているか、はたまた後退しているかの3択だったが、レイカーの性格なら向かってくるか待ち構えているかだ。

 そして必殺技ゲージのチャージがされないところは相変わらず。

 レイカーは不思議とほとんどの対戦で必殺技ゲージを使わない。

 それにはちゃんとした理由があるのだが、ユリには未だ謎の部分として頭の片隅で引っ掛かっていた。

 予想通りレイカーはユリへと向けて歩いて近寄ってきていたようで、姿を捉えるまでにもう1度クリスタルの破壊をして必殺技ゲージを8割にまで溜めていたユリは迂闊に相手の射程に入らないように20メートルほどの距離を開けて停止。

 レイカーもタイミングを図るためかピタリとその足を止めてユリと正面から相対する。

 レイカーは飾りっ毛のない空色の滑らかな装甲を持つアバターで、身長はF型にしては高く160センチはあり、女性らしいボディーラインはメリハリがあり小さく揺らめく長い髪パーツがより女性らしさを際立たせるが、対戦格闘ゲームであるブレイン・バーストのデュエルアバターとしては特徴がなさすぎて初見なら近接型であること以外は全くの未知数。

 

「あなたに先手をあげるとわたしもなかなかキツいものがあるわ。だからあまり出し惜しみはしないで攻めちゃうけど許してちょうだい」

 

「そう怖いことを言わんでくれ。ミドルランカーになってようやく地に足がついてきたところじゃぞ?」

 

「ふふっ、わたしもようやくハイハイができるようになってきたところだわ」

 

「主がハイハイなら儂は何なんじゃ……」

 

 対峙したところで余裕のあるゆったりとした口調でそう話したレイカーの独特な空気に、ついつい飲まれてしまったユリ。

 それで緊張感が少し緩んだところでレイカーが予備動作もほとんどなしにダッシュをスタート。

 正面から突撃してくるので、わずかに反応が遅れたとはいえユリもバックステップを踏んで同時にリトル・ボムを生成。

 まっすぐ攻めてくるレイカーに放り投げるが、その直前にサイドステップを交えてリトル・ボムは難なく回避されてしまう。

 リトル・ボムの爆発の範囲は直径5メートルとそれなりに広範囲なのだが、何度も対戦を見て看破しているのか、レイカーはその爆発範囲でギリギリ炎熱による削りダメージ程度の回避でユリへと迫り、多少のダメージは仕方なしの潔い突撃は最速最短で距離を詰める。

 

「《リトル・ビッグボム》!」

 

 しかしユリもそれに動じることなく自らに備わるもう1つのアビリティ《ディセント》を用いて、腰から広がるスカート状の装甲パーツをゆっくりと回転させながらバックステップで移動。

 ディセントはアバター本体の重量がわずか1キロ未満のユリのアバターを通常より長く空中に留める、落下を緩和するアビリティ。

 それを上手く使うことで地面スレスレを滑空するように移動でき、通常のバックステップより遥かに距離を稼ぐことができていた。

 そのスライドバックステップでレイカーとの距離の詰まりを遅らせつつ、手の平にある半球状の窪みをガッチリ合わせて必殺技発声と共にリトル・ボム同様、新たな爆弾を生成。

 ゲージの5割を消費して作られたリトル・ビッグボムはリトル・ボムの10倍の範囲、1、5倍の威力を誇り、それを確認したレイカーですら動きに一瞬迷いが生じた。

 しかしユリはそれをすぐに放らずに指の間で持ってストック。

 ユリの手にある限り爆弾は爆発しない仕組みになっているが、1度でも手放せば何かの衝撃によって起爆してしまう。

 それを逆手に取ってレイカーの接近戦を封じて一気に攻めにくくするのが目的。

 いくら打たれ強い青系とはいえリトル・ビッグボムの威力は半分近く削るほどに強力なのだ。

 防御に特化した緑系ならば3割程度で済むかもしれないが、必殺技はそれだけ戦況を覆す威力を誇ってる証明である。

 リトル・ビッグボムの効果あってか、レイカーはユリの懐に飛び込むタイミングを掴めずに一定の距離を保って投げ込まれるリトル・ボムを躱しながらスライドバックステップをするユリを追う。

 ジワリジワリと炎熱ダメージの削りがレイカーのHPゲージを減らす中で、それだけで3割を割ったタイミング。

 ついにレイカーは動く。

 

「《疾風召喚》」

 

 呼び出したのはレイカーが持つ唯一無二にして現在のブレイン・バーストでただ1つ存在する《飛行》を一時的に可能にする強化外装。

 コマンドのあとにレイカーの背中に集まった光が形を成して、噴射口のついた推進装置のようなものが装備されると、熱量を伴う噴射炎を後方へと噴射した強化外装《ゲイルスラスター》によって、レイカーはロケットのように前方へと一気に送り出され、丁度バックステップとリトル・ボムの投下をしたユリへと突撃。

 投げられたリトル・ボムは地面へと当たる前にレイカーに追い抜かれてしまい、低空での滑空で地に足がつかないユリは瞬間移動にも匹敵するレイカーのブーストジャンプに乗せた拳を咄嗟に上げた膝で受けたが、耐久値が紙に等しいユリのアバターは拳の威力に呆気なく敗北し砕け散ると、尚も突き進んでくるレイカーの逆の拳が腹へと叩き込まれて、衝撃で持っていたリトル・ビッグボムを落としてしまう。

 本来ならここで相手も巻き込んで自爆となるはずだったが、レイカーのブーストジャンプは他の追随を許さないほどの速度で、リトル・ビッグボムの爆発範囲からすら悠々と抜け出せてしまう。

 それがわかってるユリは腹へ拳をもらいつつも突き出された腕を掴んでレイカーと一緒に後方へと流れてリトル・ビッグボムの爆発から脱出。

 すぐに追撃を避けるために腕を放して滑り落ちるように下へと潜るが、それを読んだレイカーの足がゲイルスラスターの向きと威力を緻密に操作して蹴り出されてユリを襲う。

 先ほどのたった2撃でユリのHPゲージはすでに2割程度を残すまでに減らされていたため、この蹴りが当たれば確実にHPゲージは全損。敗北が決まってしまう。

 そこでユリはレイカーのゲイルスラスターの噴射が体を起こすために上方向に向いていたのを見て、自らのアバターの驚異的な軽さを利用しレイカーが繰り出した蹴りに両手を添えてその速度に合わせて腕をバネのように使って後ろへとあえて吹き飛ぶ。

 さすがにノーダメージとはいかなかったが、蹴りに乗った形でダメージを大幅に減退できて残り1割で切り抜けると、ディセントで体勢を整えて残った片足で地面を何度か蹴って速度を落としてから着地。

 

「リトル・ビッグボム! からのもいっこリトル・ビッグボム!」

 

 たった1度の接近でHPゲージを逆転された上にあと一撃で敗北が決定。

 まさに絶体絶命といった感じだったが、レイカーも1度ゲイルスラスターの噴射を止めて地面に降り立ってどうしようもない距離が開いたユリを見るが、向こうはもう無理に距離を詰める必要はなく、必殺技ゲージとは違ったゲージを使うらしいゲイルスラスターが再び十分に発動できるタイミングで仕掛ければ勝てるわけだ。

 ならばもう、ユリの選択肢は1つしかない。

 待っていても向こうが有利なら、こっちから仕掛けるしかない。

 その意思の表れとしてその手に2つのリトル・ビッグボムをストックしたユリは今度は前進する力にディセントを用いてレイカーへとスライド移動で接近。

 その間に新たにリトル・ボムを2つ作って指で挟んでストック&シャッフル。

 そうしてレイカーにどれがリトル・ビッグボムかわからなくさせた上でそのうちの1つをレイカーへと投げる。

 当然、爆発の範囲も威力も違うリトル・ボムとリトル・ビッグボムでは回避に要する距離も大きく違ってくるので、どちらでもいいようにレイカーは全速力で脇目も振らずに投げられたリトル・ボムの範囲から脱出しようとするが、その動きに合わせてまたリトル・ボムを投げ込みさらにレイカーを追い詰める。

 この投擲によってどちらともがリトル・ビッグボムなら確実に爆発範囲に巻き込める状況を作り出したユリに、レイカーはゲイルスラスターを使わざるを得なくなり、爆発範囲ギリギリで止まったユリに向けてブーストオン。

 同時にバックステップしたユリは両方残していたリトル・ビッグボムの1つを少し前に放り投げて加速直後で方向転換の効かないレイカーが爆発の中に突っ込むようにしてみせた。

 その作戦は見事成功し、先に投じていた2つのリトル・ボムの爆発を完全に打ち消してしまう爆発に突っ込んだレイカーのHPゲージは一気に6割は削れてユリとそう変わらない残量にまでなるが、倒し切るまでに至らなかった。

 それを一応見越した上でもう1つリトル・ビッグボムをストックしていたのだが、爆発の余波を受けて着地に微妙に失敗するという事態が発生し、爆発から抜け出たレイカーがそこに弾丸のごとく突っ込んできて焦ったユリはリトル・ビッグボムを指の間からポトリと落としてしまう。

 

「……あっ」

 

「あらあら」

 

 そこで2人の時は止まり、このあとどうなるかを考えるまでもなかったので、2人して笑うしかなかった。

 

「…………なんか、色々酷かったなぁ……」

 

 結果的に両者が同時にHPゲージを全損したため、対戦自体はドロー。

 レベル6相手に引き分けなら十分な結果なのだが、最後のミスさえなければ勝てたかもしれない状況だっただけに、現実世界に戻ってきたユリは誰に言うでもなく1人そうした感想を呟いてしまった。

 

「完全に自分が片足だってこと忘れてたからコケちゃったなぁ。アドレナリン的なのが出てたせいかテンション任せもいいかと思ったけど、私には向かないか。ガストなら上手くやってたのかな」

 

 デュエルアバターの姿の時はあえて年寄り臭い口調で話していたユリだが、現実でもそんな話し方をしていたらちょっとイタい子。

 ブレイン・バーストはリアル割れによるリアルアタックもあり得る危ない側面も持つので、こうした対策をするプレイヤーは少なくないが、ユリほどキャラ作りに凝ったプレイヤーもそうはいないはずだ。

 

「でも、負けなかったっていうのは良かったし、悩みも解決したし今日は満足、かな」

 

 そんなことを考え口にしながらニューロリンカーのグローバル接続を切ったユリは、どこかスッキリした顔で綺麗な青空を見ながら、今度保健室の先生と一緒にブラジャーの購入をしてみようと思うのだった。

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