アクセル・ワールド~蒼き閃光~   作:ダブルマジック

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Acceleration Memory4

 

 2047年4月下旬。

 新学期での慌ただしさもすっかり落ち着いて、それは何事もなく進級を果たした中野区にある小学校に通う大喜多亮も例外ではない。

 先日まではすぐ近所に暮らす従姉のお姉さん、都田沙絢が中学校の修学旅行でいなくて、いつも暇さえあれば勝手気ままに振り回すちょっとした横暴さから解放されてのんびりと日々を過ごしていたのだが、それももう過去の話。

 今はいつも通り学校から帰るなり家にまで押しかけてきたサアヤに引っ張られて、中野駅の南口を出て少し歩いた先にまで連れていかれた。

 

「よしアキラ。今日はアンタにとっておきのマッチングを取り付けてきたから、とりあえず勝て。負けたらもっと負けるのが恥ずかしい奴とやらせるからね」

 

「はいサアヤ姉。今日くらいは僕にも拒否権が欲しいですっ」

 

「却下ですっ。聞けばアンタ、私がいないのいいことに全然対戦してなかったって? 私の顔が広いことはわかってるはずなのに、どうしてこう積極性に欠けるかなぁ……我が子ながら情けない……」

 

 その先にあるもはや顔パス発行もできそうなほどの喫茶店に入って、空いてさえいれば占拠する端っこのテーブル席に座って、店内に同世代の人間がいないことを確認してからそんな会話を展開。

 アキラとしてはここに強制連行されるのはあまり好きではないのだが、毎回会計はお姉さん気質が働くのかサアヤが全て持つので文句も言いにくかったりでジレンマである。

 

「そんなんじゃ自分の子にあっという間に追い付かれるわよ。育てるって意味ならあっちの方が断然合ってるし」

 

「だったらリョウ君の方を構えばいいのに……」

 

「アンタはまた……まだ帰ってきて会ってないけど、アイツの子もレベル4になったって言うし、私はそのくらい上を目指すのに貪欲になってもいいんじゃないって言いたいわけで……」

 

 そうしてちょっと怒ってるような感じもうかがえるサアヤの話に不貞腐れ気味に応対するアキラは、度々されるこの話があまり好きではない。

 アキラとサアヤがやっている対戦格闘アプリ《ブレイン・バースト》は、大雑把に言ってレベル10になることを目指して他のプレイヤーと戦うアプリ。

 約2年前にサアヤに誘われて始めて、そのレベルはミドルランカーである『6』にはなっていたが、アキラ自身、ここまでサアヤに腕を引っ張ってもらってきた感が強い。

 別にブレイン・バーストが楽しくないわけではない。

 対戦は痛みを少し伴うものの充実感はあるし、勝つための戦略を1人考えながら寝る日もあるくらいだ。

 ただ、そうしてサアヤが強くなるようにと願う気持ちとアキラのやりたいようにやる気持ちが上手く噛み合わないことがあって、強くなることを強要されてるみたいに感じてしまう瞬間があるのだ。

 それを感じた時にのみ、アキラはこうして露骨なネガティブオーラを放出してサアヤを困らせる。

 

「……まぁいいわ。時間も迫ってきたし、どのみち今回の相手はアキラにも良い刺激になると思うわ。あとはアキラなりにやってみなさい。勝ち負けはこの際どうこう言わないから」

 

「……うん」

 

 それには未だに弱いサアヤは調子を狂わされながらも約束の時間が迫ってることを知らせて首回りに取り付けてあるニューロリンカーのグローバル接続をオンにするので、ちょっとだけ悪いとは思いつつもアキラもニューロリンカーのグローバル接続をオンにして取り付けてきたという相手の乱入を待つのだった。

 

「さ、さ……ばく……」

 

 グローバル接続からわずか1分後。

 相手からの乱入を受けて対戦フィールドに招かれたアキラは、その身がブレイン・バーストの作り出したデュエルアバター《スノー・イーター》になったことを認識して地面に降り立つと、視界に表示された【FIGHT!!】の炎文字を見てから膝から崩れ落ちる。

 辺り一面見える限りが砂地。

 そこに点在する石材もそのほとんどがその砂に埋もれて全体像すら把握できないが、照りつける肌を焼くような日射しもリアルだ。

 《砂漠》ステージは、アキラにとって最も嫌いなステージランキングでもトップ5に入るほど苦手なステージ。

 その理由はアキラのデュエルアバター、スノー・イーターがとあるフィールド属性に特化したアバターであり、それ以外のフィールド。

 特に暑さが厳しい場所では本来のポテンシャルの30%程度しか引き出せないからである。

 しかし苦手なステージを引き当てるなどいつものこと。

 むしろ得意なステージになることの方が珍しいとさえ言えるので、落ち込むのも少しにして立ち上がり視界上のHPゲージや残り時間と共に相手の名前も確認。

 《アルミナム・バルキリー》と読めるそのデュエルアバターはアキラにも覚えがあった。

 今月の始めの方に突如として現れてその日のうちに30勝1敗の成績を残した――1敗は明らかな格上だったせい――メタルカラーで近接戦闘の鬼。

 たったの数日でレベル4へと上がり、その後にデビューした《アイリス・アリス》とのタッグ戦のあとからは対戦の回数もガクンと落ちたものの、その勝率は新人ながらにかなり高い。

 同じ時期に《ライム・ベル》というプレイヤーも数日でレベル4になる快進撃をしていたが、そちらはタッグ戦オンリーだっただけにアキラにとってはバルキリーの方が印象は強く残っていた。

 見晴らしの良すぎる砂漠ステージはガイドカーソルさえ見て近づけばほぼ確実に相手を発見できる。

 隠れるにしても砂に埋もれた石、岩の影に身を潜める程度しかできないし、それも必殺技ゲージを溜めるために壊すプレイヤーがほとんど。

 オブジェクトの少ないステージでは基本となるので、今回はコソコソしても無駄とわかってるアキラはまっすぐにガイドカーソルの示す方向へと走り出した。

 それをすぐ近くにギャラリーとして入っていたサアヤも黙ってついていったが、対戦開始から声をかけることもなく沈黙するサアヤは直前のやり取りを気にしてるようで、いつものうるさいくらいの声援がない対戦は少しだけ寂しいと思いつつ、ギャラリーを引き連れてやって来た向こうの姿を確認してその足を止める。

 バルキリーは西洋の騎士の兜鎧を軽装で着込んだ見た目で、ヒラリと風に舞う短めのマントを羽織るF型のアバター。

 アルミニウムの装甲は決して硬いということもないが、それ以前に近接戦闘でクリーンヒットをもらうことも少ないので弱点にはなりづらい。

 

「たまに見かけていたが、改めて見ても不思議な姿だな」

 

「よく言われます……」

 

 そのバルキリーはガイドカーソルの消える10メートルの距離まで来て止まると、少し男勝りな口調でアキラに話しかけ、それにアキラも何度か同じことを言われたのを思い出しつつ返す。

 アキラのアバター、スノー・イーターは何を隠そう、その姿を『手足の生やした雪だるま』としていて、さすがに暑さで溶け出したりといったことはないが、触るとひんやりしてるし比較的に装甲自体が脆い。

 

「だがその姿形でもレベル6となった先達。こちらもそれを念頭に挑ませてもらう」

 

「やるからには、僕も勝つために頑張るよ。それが自分よりも低いレベル相手ならなおさらね」

 

 そんな見た目で強さを全く計れないアキラに対して拳を構えたバルキリーは、それに油断することなく力強く言い放つと、ちょっとだけ引っ張られたアキラも強気に返して同じく拳を構えた。

 ファーストアタックを成功させたのはバルキリー。

 砂の足場ということさえ疑うようなしっかりとしたダッシュでアキラへと接近したバルキリーは、溜めていた右拳を鋭く突き出してアキラの体の中心へと撃ち込む。

 ズボンッ! とバルキリーの拳はアキラの装甲を貫通して突き刺さり、HPゲージも少し削れるが、ほとんど手応えがなかっただろうバルキリーは感覚的に何か嫌な感じを受けたのかすぐにアキラの体から腕を抜こうとしたが、肘辺りまで埋まった腕は抜くことができず四苦八苦。

 その隙に頭に当たる部分を本体に収納したアキラは腕を拘束したままのバルキリーごとふらっとその体を後ろへと倒してしまう。

 アキラは最初から相手が拳なり蹴りなりを撃ち込んでくるのを前提にあえて攻撃を受けて、その上で拘束し行動した。

 アキラのいた場所は実はバルキリーの方からはわからなかったが、その後ろは結構な勾配の坂になっていて、転がり始めてしまえばアキラでも容易には止まれない事態になる。

 当然、拘束されたバルキリーはアキラの回転に巻き込まれてバッフンバッフン砂の地面に連続で突っ込む形になって「うっぷ……うぇっ」などと声にならない声を出しながら坂を下っていき、HPゲージもガリガリと削れていく。

 しかしそれも永遠には続かず、坂を下りきって勢いがなくなりかける直前でバルキリーの拘束を解除し進行方向に吹き飛ぶようにすると、勢いよく飛んでいったバルキリーは背中から地面を滑るように落ちて仰向けで倒れるが、すぐに体のバネを使って足から跳ね上がって起きて装甲の隙間に入った砂を叩いて落とす。

 対してアキラはバルキリーを吹き飛ばしてから両手両足を使って体にブレーキを掛けて止まり、引っ込めていた頭を出してから、バルキリーに開けられた体の穴をスゥッと埋めるように再生させる。

 アキラのアバターのアビリティ《リコンストラクション》は脆い装甲が欠損した場合に、総体積を減らして欠損部位を修復する。

 そのためアキラは擬似的に稀少性の高い回復アビリティを所持してることになるが、その代償に総体積の減少に比例してアバターのステータスも減少してしまう。

 だからできるならば部位欠損は避けたいのだが、それを気にしてもじり貧になることの方が多かったので、今のように攻撃への変換もアキラなりに考えて実用化に至っていた。

 

「どうやらその体、徹底的に叩くのが良いらしい」

 

「接近戦は苦手なんだけどなぁ……」

 

 その光景を見ていたバルキリーも、部位欠損ダメージは無駄ではないと思ったのかさらなる闘志を込めてその拳を握り、ここからは割と策なしのアキラはどうしたものかと思考を巡らせる。

 今度も仕掛けたのはバルキリー。

 しかし先ほどは貫くような攻撃だったのに対して、拳はアキラの装甲の外側を削るような掌底。蹴りは体重の乗った面で捉える上中下段のもの。

 砂地ゆえにラッシュの速度自体は上がらないものの、その鋭さはアキラのガードを抜けて装甲を確実に削っていく。

 

「くっ……そっ……」

 

 さすがは近接戦闘の鬼。

 長く対戦をしてきた中でも上位に来るだろうその攻撃に思わず声が漏れたアキラだが、やられっぱなしで終われない。

 そうは思うがこれを打開する策も思いつかないのが現実で、防御を捨てて攻撃しても反応が早くて手痛いカウンターまでもらう始末。

 

「アンタは強い!!」

 

 装甲をガリガリ削られてHPゲージも半分を切ったところで、結局得意なステージじゃなければこれが限界かと思った瞬間。

 ギャラリーからそんな声が聞こえてハッとする。

 サアヤだ。今まで一言も声援を送っていなかったサアヤが、そこに何の疑いも持たない声でアキラにそう叫んだのだ。

 

「アンタがライバルって思ってるヤツは、そんなところで諦めたりしないわよ!! だったらアンタも気合い見せなさい!!」

 

 言われた瞬間、アキラの脳裏に浮かんだのは、自分が勝手に目標にしてライバルと定めた少しだけ先輩のプレイヤー。

 いつも楽しそうにフィールドを駆けてギャラリーをも巻き込んで盛り上げるあの姿に、アキラはいつも憧れていた。

 ――あの人の蹴りに比べたら、バルキリーの蹴りなんて――

 そのプレイヤーを思い出したら急に目の前のバルキリーが脅威には見えなくなり、繰り出された右足のミドルキックをあえて体で受けてから左腕で掴んで動きを止めると、右手を自分の体にズブッ、と突っ込んで中から手の平サイズの丸い大福みたいなものを取り出して足を抜こうとしていたバルキリーの口に当たる部分にぶつけるようにして突き出すと、バルキリーはそれに驚きつつも強引に食べさせられてしまい、その後バルキリーの必殺技ゲージは一気にフルチャージされ、体はガクンと崩れて地面に倒れてしまった。

 それを確認するよりも早くバックステップで離れたアキラは、滅多打ちにされたことで満タンになっていた必殺技ゲージを全消費して必殺技を発動。

 

「《オルタレイション・ブリザード》ぉお!!」

 

 それによって起こった変化は劇的だった。

 天に両手をかざした状態のアキラから立ち上るような光が空へと伸び、空へと達した光は今度、周囲へと波紋のようなものを生じさせてリング状に広がっていき、その内側から世界が変わる。

 焼けるような砂漠から極寒の氷雪へ。

 照りつける日射しと雲ひとつない空は日差しなど入り込む余地すらない曇天に視界を悪くするほどの降雪と降り積もった雪の地面に。

 オルタレイション・ブリザードは規格外の《強制変遷》を引き起こすアキラの代名詞となっている必殺技。

 必殺技ゲージを全消費して強制的に《氷雪》ステージへと変えたアキラは、その変化に感動やら何やらをするよりも、再び体から大福みたいなものを取り出して今度は自らそれを口に含んで必殺技ゲージをフルチャージ。

 そこからアキラの意識はしばし停止した。

 アキラの必殺技ゲージのフルチャージと思考停止の原因であるアビリティ《フリーザー・アイス》は、自らの体から取り出した大福型のオブジェクトをひと口で食べることで必殺技ゲージをフルチャージできるが、その反動で約1分間は完全に意識が凍りついて身動きが取れなくなる。

 サアヤによればカラーサークルのど真ん中に位置し、どの属性にも片寄らない特色の白だからこその能力とのことだが、これがなければアキラはおそらく他のプレイヤーとの力の差を埋められなかったと思うので感謝している。

 意識が飛ぶということは自分の感覚では一瞬の出来事で、覚醒した瞬間に飛び起きたアキラは、もう何度もやってきたこの行為を反射的に行うことができた。

 視界にまず映ったのは降り積もる雪の上に膝をつき周囲を見回していたバルキリーの姿。

 この時点でバルキリーも覚醒をしていることはわかったので、その隙にさらに距離を取ってバルキリーが立ち上がるよりも早く自らがこの氷雪ステージでしか使えない究極の必殺技を発動する。

 

「《ジャイアント・スノーマン》」

 

 技名発声の後、満タンにした必殺技ゲージが全消費されてアキラは力一杯に大気を体へと取り込み、降り続く雪や地面の雪が丸ごとアキラの体へと吸い込まれて体はみるみると巨大化。

 それが収まる頃には体長およそ10メートルの雪だるまの巨人がフィールドに降臨した。

 

「これは……実際に相対すると山のようだな……」

 

 その様子を見たバルキリーが、巨人と化したアキラの足元付近で思わずそう口にしたのを捉えたアキラは、こうなったらもう負けはしないとその目に闘志をみなぎらせた。

 

「行きなさいスノー!」

 

「おー!」

 

 アキラのジャイアント・スノーマンは、氷雪ステージ限定で使用できる最強の必殺技で、巨大雪だるまと化したアキラにはHPゲージとは別の装甲耐久ゲージが上塗りで与えられ、これがなくなるまでHPゲージも減らない。

 さらに巨大化したことで全ステータスが5倍近くになり、装甲強度も並みの近接ではほとんど削れないほど硬くなる。

 故に氷雪ステージへと強制変更する必殺技と、そのステージでしか使えない必殺技の2種類を持つアキラは『氷雪ステージ特化型デュエルアバター』なのだ。

 ジャイアント・スノーマンを発動したアキラの戦闘力は、単純計算でも同レベルのデュエルアバターが5、6人で束になってようやく五分といったレベル。

 さらに相手は降雪による視界の悪化と足場の悪条件で機動力まで削がれてしまうため、実際に相対すると5、6人では手に負えないくらいには感じられるという。

 

「ぐっ! くぅっ!!」

 

 そのアキラの巨大パンチを真正面から受けるしかなくなったバルキリーは、圧倒的な体重差からのパンチに押されてガードの上から吹き飛ばされて、後方にそびえた氷山に勢いよくぶつかって停止。HPゲージも今のだけで3割削れて半分近くに。

 氷山に激突した衝撃で怯むバルキリーにさらなる攻撃をするため右足を振りかぶったアキラ。

 片足だけでバルキリーの体以上の大きさがあるため、破壊不可のオブジェクトとで挟んでしまえばもう必殺の一撃となり得る。

 それを本能的に察したのか決死の思いで体を動かしたバルキリーは、ギリギリのところでアキラの蹴りを躱したが氷山との激突で発生した余波に飲まれて雪の中に体が埋まってしまう。

 

「これで僕の、勝ちです!」

 

 今度こそ回避不可能な状況となって、振りかぶった拳を全力でもがくバルキリーへと叩き込んだアキラによって、それを受けたバルキリーのHPゲージは一気に全損し対戦は終了。

 視界に表示された【YOU WIN!!】の炎文字を見ながらに元の姿へと戻ったアキラは、雪が止んで開けた視界に見えたたくさんのギャラリーの中で真っ先にサアヤの姿を見つけて、こちらに向けて親指を立ててきたサアヤに同じように親指を立ててみせたのだった。

 

「あー、途中までは押せ押せだったんだけどねぇ」

 

「やはりステージ変更後のスノーは強すぎるな」

 

 と、そんなサアヤとのやり取りをしてから、サアヤの横にいたギャラリー3人のうちの2人が口を開いて感想を漏らす。

 どちらもバルキリーの親代わりをしているプレイヤー《オレンジ・ラプター》と《バイオレット・ダンサー》で、おそらくは今回の対戦をサアヤが組むために交渉した当人達。

 実際にそこからサアヤと何やら話してから再びアキラに聞こえる声で話しかけてくる。

 

「今度はあたしと対戦しよーよスノー! 対炎熱属性の相手になったげるよ!」

 

「ええっ! ラプターさんとですか!? む、無理ですよぉ!」

 

「こらスノー、やる前から逃げ腰はやめろっていつも言ってんでしょーが! 何事も経験! 戦ってなんぼなのよ!」

 

「そんなこと言われたってラプターさんはガスト姉と同じレベルだし……」

 

 そうしていきなり挑まれたラプターからの挑戦だったが、ラプターのレベルは現状で1つ上の7。

 ブレイン・バーストのレベルは1つ違うだけで能力に大きく差がつくので、完全に腰が引けたアキラが即座に断るといつもの調子が復活してしまったサアヤは再びのスパルタ指導を始めてしまってもう散々。

 その様子をクスクスと笑いながらに見ていたダンサーと《アイリス・アリス》も完全に状況を楽しんでいた。

 

「あっ! じゃあさ、あたしとダンサーのタッグとスノーとガストのタッグでやろーよ! そしたらレベルも同じになるし、どっちが勝ってもおかしくないわけじゃん?」

 

「私は構わないよ」

 

「おお、頭良いわねラプター。私もそれで問題ないわよ。スノー、それならいいわよね?」

 

「えー、ガスト姉とタッグも嫌……」

 

「い、い、わ、よ、ね?」

 

「…………はい」

 

 それならと少し頭を悩ませたラプターによってタッグ戦が提案され、それにサアヤもダンサーも了承したが、それでも全員のプレイヤー歴が自分よりも長いしサアヤは少しだけ自己中の対戦をするしでまだ渋っていたものの、サアヤの有無を言わせぬ威圧によって強引にうんと言わされてしまった。

 これ以上ごねると現実世界に戻ってから色々と面倒臭いと判断したのだ。

 

「僕に選択の自由はないんだな……ははっ、はははっ……はぁ」

 

 和気あいあいとはしゃぐサアヤ達を遠目に見ながら、自分の意思の弱さを棚に上げてそう呟いたアキラは、あまりの虚しさに変な笑いとため息が出てしまうのだった。

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