アクセル・ワールド~蒼き閃光~   作:ダブルマジック

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Acceleration Memory5

 2047年5月末。

 世間一般では完全なる休日である日曜日。

 世の学生なら確実に、さらに小学生であるならよほどのことがない限りは自分の時間を朝から晩まで持つが、中野区の一角に居を構える日比野亮もその例外ではない。

 今年で小学4年生になったリョウは、前年度末に親の仕事の都合で引っ越してきたばかりでまだ友達も少なく、生来好き嫌いが結構ハッキリ分かれる馴れ馴れしい性格のため、休日を一緒に遊んでくれる友達というのも今のところ1人しかいない。

 今日はその唯一と言ってもいい友達である大喜多亮の家に朝から遊びに行き、他愛ないことをしながら昼を過ぎて、それからアキラの従姉にあたる、密かに憧れているお姉さん、都田沙絢が来訪。

 アキラの部屋へと入るなり2人に話しかけてくる。

 

「ああ、リョウもいたの。どうせ行くんだろうし、準備しなさい。本番前に何戦かやっとくわよ」

 

「はいサアヤ姉さん! 今日は俺にもティーチプリーズカムです!」

 

「そのバカ丸出しの《ガイコツ語》やめたら考えてあげるわ……」

 

「それは兄貴を否定することになるんでノーセンキューです!」

 

 だったら指導はなしね。

 と、2人を誘いに来たサアヤはウキウキしてるリョウに対してバッサリ言い放って先に行ってしまい、ガックリ肩を落としたリョウの肩をアキラが軽くポンポンと叩いて慰めてから揃ってサアヤを追いかけて家を出て中野駅の南口の向こうへと移動をしていった。

 リョウ達のやっているアプリ《ブレイン・バースト》は、自らの分身デュエルアバターを操り現実世界の地形を再現した様々な属性の対戦フィールドを駆けて戦うフルダイブ型の格闘ゲーム。

 その仕組みはなかなかに高度なレベルでリョウ自身は全く理解していないが、転校初日に同じ漢字の名前というだけのきっかけで仲良くなったアキラから誘われてプレイし始めたリョウにとって、かつてない興奮と感動を覚えたのは間違いない。

 その対戦をするフィールドは現実世界でいくつかの戦域と呼ばれる区分で区切られていて、その中の中野第2戦域と呼ばれる区域に入ったリョウ達は、早速対戦をするためにニューロリンカーをグローバル接続。

 とりあえず景気付けに一戦と思って仕掛けようとしたところでちょうど観戦登録していた誰かの対戦が始まってギャラリーとして対戦フィールドへと招かれていった。

 

「うおお! 《アシュクロ戦》だぜヒャッハー!」

 

 対戦が始まってすぐに視界上の対戦カードを見た《パンジー・スティング》となったリョウは、表示される名前を見るやテンションMAXでそう叫び、近くにいたアキラとサアヤは《スノー・イーター》《エピナール・ガスト》の姿で耳元に手を当ててリョウの声をシャットアウトしていた。

 

「うっさいわねスティング。でもこっちに顔出してるってことは、今日はあの2人も参加するのかしらね。だったらギッタンギッタンにしてやろうっと」

 

「怖いよガスト姉……」

 

「容赦ねーっすよ姉御……」

 

 そうして開始早々に叫んだリョウを叱ってからサアヤは怪しい笑いを含めて今の対戦の両者であるアシュクロ。

 《シルバー・クロウ》と《アッシュ・ローラー》の2人を処刑する言葉を放つので、それを実際にやってしまえるサアヤに戦慄したリョウとアキラ。

 こうなるとサアヤは止められないので2人はとりあえず対戦する2人に合掌するのだった。

 そんなやり取りの後に見やすい場所へと移動をしてみると、クロウが所属するレギオン《ネガ・ネビュラス》の残りのメンバーである《シアン・パイル》と《ライム・ベル》が揃って観戦していたので、サアヤが挨拶がてらに近付くのに付いてリョウとアキラも歩み寄る。

 

「今日はネガビュ新参組で参加かしら?」

 

「あ、ガストさん。こんにちは」

 

「ガスト姉さんチーッス」

 

 顔の広いサアヤは基本的に誰に話しかけても相手が友好的に接してくるので、ある種の才能だよなと思ってるリョウもアキラと一緒に2人と挨拶を交わして話を冒頭へと戻す。

 

「今日はテ……マスターに武者修行してこいって言われまして」

 

「私、初めて参加するんですっごく楽しみなんですよ! レイカー姉さんにも笑って送り出してもらったし」

 

「ってことはレイカーは来てないのか。残念なような、ホッとしたような……」

 

 何やらパイルから別の名前が出かけたようだが、特に気にせずに話が進むと、先月にネガビュに再加入した《スカイ・レイカー》の話題にサアヤがボソリと感想を漏らすが、その真意について理解する者はこの場にはいなくてリョウ共々首をかしげる。

 

「んなことよりメガ・クゥールに兄貴がバトってんだから、話にアウトラインしてんじゃナッシング!」

 

「だ、脱線って言いたいんだろうけど、さすがアッシュ語の継承者……」

 

「あ、丁度あっちもヒャッハー言いながらミサイル飛ばしてる。こらクロウ! 負けたらあとでロータス先輩に報告しちゃうんだからねー!」

 

 そんなことよりと、リョウが対戦を見るように言えば、もうずいぶん浸透したアッシュの弟分なところをツッコまれつつ全員が対戦に目を向けるが、急にサアヤが思い付いたように視線だけ固定したまま、また話をする。

 

「せっかくだし、あんたらで対戦したらいいんじゃない? どうせいきなりバトロワ祭りに参加しようなんて思ってなかったんだろうし、こっちも乱入待ちで済まそうと思ってたところだもん」

 

「それは願ってもない提案ですね。じゃあ僕はレベルの近いスノー君とで、ベルは……」

 

「俺様とかヒャッハー!!」

 

「そーいえばヒャッハー2号と対戦するの初めてだったよね。こっちが勝って逆にヒャッハーしてやるから覚悟しなさい!」

 

「上等だぜ! ウーメンだからってハンドハンデしてやんねーぜ!」

 

「日に日にスティング君の馬鹿っぽさが増してツラい……」

 

「耐えなさいスノー。あのバカさは生まれつきだったってことで自分を納得させてね……」

 

 そうしてサアヤから出た提案は速攻で採用されて、このあとパイルとアキラ。ベルとリョウの対戦カードが組まれたが、リョウのバカさに頭を抱えるサアヤとアキラだった。

 

「ヒャッハー! 最高にヘルってるステージだぜぇ!!」

 

 アシュクロ戦が終わってすぐ、畳み掛けるように始まったリョウの対戦は、大地を焦がす溶岩溜まりや至るところから高温の蒸気を噴出する《焦土》ステージとなり、フィールドに降り立って早々にテンション上げ上げなリョウはよく周りも見ずにヒャッハー言いながら騒いで突然噴出してきた蒸気に当てられ、それに驚いて溶岩溜まりに足を突っ込みいきなりダメージ判定を食らうと、近くに出現していたサアヤや他のギャラリーから笑いを貰う。

 出鼻からつまずきつつも、仕切り直すように視界下のガイドカーソルを確認したリョウは、対戦相手となるベルに一直線で接近を開始。

 ベルもガイドカーソルがブレないことから直線上からは外れない動きをしているようで、事実ものの数十秒ほどでお互いの姿が確認できて、アスリートばりのダッシュで互いに接近。

 

「メガ・貫きっしゅ!!」

 

「こんのぉおおお!!」

 

 そこから減速することなく突き出したリョウの針状の右手とブンブン振り回して振るわれたベルの左手のハンドベルが激突。

 何の考えもなく突き出されたリョウの右手を撃ち落とすように襲来したベルのハンドベル《クアイアー・チャイム》はリゴリーン! 豪快な音を響かせて見事に炸裂。

 本来の威力を相手に伝えることなく降ろされた右手は元来た位置に戻って、交錯の瞬間にはベルが本能なのかカンなのか、絶妙なタイミングで右腕を持ち上げてリョウの胸元めがけてラリアットをブチ込んで撃沈させる。

 お互いに全速からの衝突なだけにベルも勢いで右腕が後ろに弾き返されたが、ダメージは圧倒的にリョウの方が上で、今の攻撃で3割もそのHPゲージを減らされていた。

 倒れた時に頭まで打ったリョウは少しの間地面をゴロゴロしてのたうち回って、その拍子にまたも溶岩溜まりに突っ込んでギャラリーを沸かせるが、別に好き好んでこんな盛り上げ方がしたいわけじゃないリョウはメチャクチャ恥ずかしく思いながら立ち上がって右腕の調子を確かめるベルに照準。

 視界上の表示を見てもベルのHPゲージは1割も削れていない。流石は彩度の高い《防御の緑》といったところだ。

 

「い、今のはメガ・アンラッキーだっただけ! こっから俺様のイッツ・ショータイムだぜヒャッハー!!」

 

「ふふーん! 運だなんだ言ってる内はお子様よーだ!」

 

「テラ・カッチーン!! お子様言うやつの方がお子様なんだよ!!」

 

「だって私まだ子供だもんねー!」

 

 実にくだらない口喧嘩だ。

 とギャラリーの全員が思っているだろう本当にくだらない口喧嘩は、単にベルが遊んでるだけな気がするが、それに気付かないリョウは怒りのボルテージを一気に上げてベルに突撃。

 無駄にダメージを貰ったおかげですでに必殺技ゲージは半分もあったので、派手好きなのと出し惜しみしない性格からいきなり必殺技を発動。

 

「《ラッシュ・ニードル》!!」

 

 針状の両腕を引き絞り溜めの動作から繰り出されたのは、秒間30発にもなる突きの連打。

 真正面から受ければ『貫かれる』というよりも『抉り取られる』といった感じのリョウのレベル1必殺技は、大きめの動作から回避行動を取られたベルの右手の手首から先だけを抉り取ってギリギリ部位欠損ダメージを与えたが、必殺技としては物足りないダメージ量となった。

 

「《シトロン・コール》!」

 

 ならば追撃で畳み掛ける。

 そう思い行動しようとした矢先に距離を開きながらクワイアー・チャイムをグルグル回して必殺技発声をしたベル。

 クワイアー・チャイムから発生した緑色の光に包まれたベルは、今の攻撃で減ったHPゲージを即座に回復させて、部位欠損した右手までも再生。

 その光景にギャラリーからも歓声が上がる。

 

「テラ・チートだぜ……」

 

 実際に相手にすればそう言わざるを得ないが、ベルの必殺技、シトロン・コールは消費ゲージの量に応じて、その対象の時間を巻き戻す能力を持っている。

 つまり今ベルは必殺技によって自分がリョウの攻撃を受ける前まで時間を巻き戻したということ。

 これによってベルは擬似的な《回復アビリティ》を実現していて、その稀少性とオンリーワンな戦い方から《時の魔女(ウォッチ・ウィッチ)》などと呼ぶプレイヤーもチラホラ出てきていた。

 とはいえそんなことは百も承知。

 ならばどうすれば勝てるかを考えた時にリョウが真っ先に思い付いたのは、ベルの必殺技を発動する条件に含まれるクワイアー・チャイムを破壊するか、左腕を部位欠損してしまうことだ。

 

「バット! 次はその左腕をデストロイしてやんぜ!」

 

「へへーん! やれるもんならやってみなさい!」

 

 ベルに対する攻略法がある程度わかってるため、リョウはバカなので迷いなく狙いを口にしてみせると、胸を張ったベルは教えてくれてありがとう的な意味も込めて自信に満ちた態度で返す。

 その態度にムッとしたリョウはこれもバカらしく突撃をかまして両腕の突きの連打を放つが、突きというのは点で突くことでしか大きなダメージは入らないため、ベルもひょいひょいっと横へと逃れて掠りはするもののダメージなど皆無。

 大振りしようものなら避け際に手痛いカウンターまで狙ってる雰囲気だ。

 それをバカなりに野性の勘的なもので察したリョウも流石に焦って大振りはしないが、ひょいひょい避けられるイライラは段々と増していき、攻撃がどんどん単調に。

 こうなると大振りするのは時間の問題か。

 ギャラリーもそんな雰囲気を敏感に感じ取ってやいややいやと騒ぎ始めたが、リョウの耳には雑音としてしか入ってこない。

 

「ヨウヨウヨーウ! ブラザーヨウ! なーにヘッドプッチンしてんだ!」

 

 しかし、その雑音の中でもハッキリと誰かわかるその声に耳が反応したリョウは、一旦ベルから距離を開いてその声のした方を見れば、崩れた建物オブジェクトの上で仁王立ちし腕を組んだアッシュがご立腹の様子だった。

 

「あ、兄貴……」

 

「オメーはスマートでクールにバトりゃ、俺様の背中をレンタれるくれーにゃツエーんだぞ! メガ・クゥールにウィンってこいや!」

 

 と、意味不明な供述をするアッシュにギャラリーがクスクス笑ったりする中で、リョウはその言葉に感激し嬉し涙を流してしまう。

 こんな俺でも兄貴の背中をレンタれるのか。

 そう思えばもう頭に上りかけていた血も引き、余計なことも余り考えないクリーンな状態にまでなると、仕掛けてくる様子も見せていないベルを改めて見据えて、その腕に力を込めて突撃。

 今度はもう、頭はメガ・クールだ。

 バカなことさえ考えていなければ割と洞察力と反応が良いリョウは、それを活かすように突撃からの右手の突きで先制。

 スピードの程は変わりないため、ベルには易々と外側へと回避に動かれてしまったが、避けられたところですかさず突き出した右腕を横へと振ってベルの顔を殴打。

 これまで突きにのみ拘って攻撃してきたことでベルも突然の殴打に対応できず「きゃっ!」と一声上げて倒れかけたが、それをなんとか堪えてバックステップで立て直す。

 

「いったーい! 女の子の顔を殴るとかサイテー!」

 

「勝負に男も女もナッシング!」

 

 そこでなんだか同じようなやり取りが繰り返されるが、もう気にしないと言うように話を終わらせたリョウの大人な対応が気に障ったのか、今まで防御的だったベルが自ら突撃してリョウへと迫る。

 そうなれば実は攻めよりも守りの方がアバター性能としては優秀なリョウのアバターは本領を発揮。

 溜まっていた必殺技ゲージもそれなりなので出し惜しみなく突撃してきたベルに対して必殺技を発動。

 

「《スプラッシュ・ニードル》!」

 

 ベルに両手の先端を向けた状態で発せられた技名の後、ボボボボボボッ!!

 と、その針状の先端が15センチ程度の大きさで射出され、後から後から新たに生成される先端が次々と射出されて針の弾幕がベルを襲う。

 技名発声に敏感に反応したベルは直前で足を止めてクワイアー・チャイムで顔の付近を庇う防御姿勢を取ったが、割と至近距離からの弾幕を正面から受けた形となり、クワイアー・チャイム以外の装甲部分にはビシビシと突起が当たり、装甲の隙間にいくつか突き刺さったりもしてダメージとしては今日一番のものとなる。

 これは堪らずに後退して有効射程から逃げたベルだったが、リョウもここぞばかりにベルに猶予を与えない接近をして必殺技の発動をしっかりと阻止。

 突き刺さった針を抜きながら両手を振るったリョウの猛攻を防ごうと機動力を活かした回避をしようとしたが、関節に刺さった針のダメージがそれを鈍らせてガツンッ! ガツンッ! とリョウの両手本来の攻撃力が肩や胸元へと鋭く突き刺さる。

 

「こっ……のぉおおおお!!」

 

 見違えるほどに動きの良くなったリョウに圧され気味だったベルは傾いていた流れを強引に断ち切るようにリョウの攻撃を無視してその場でぐるんっ! と回ってその勢いでクワイアー・チャイムを力任せに凪いで振るうと、ちょうど突き出していたリョウの右手をガヅンッ! と強打。

 恐ろしく硬いクワイアー・チャイムによってリョウの右手は肘辺りから先が弾け飛ぶように部位欠損してしまう。

 部位欠損と痛みとベルの勢いで1度後退する選択が頭をよぎったリョウだったが、ここで退けばほぼ間違いなくベルはシトロン・コールによってそのダメージを回復してしまうと思ったため、その思考を振り切って攻撃を再開。

 それにはベルも驚くような挙動と共に受けて立つかのように闘志を前へと押し出して再びクワイアー・チャイムを振り上げると、躊躇なくリョウの脳天へと振り下ろす。

 

「ギガ・チャアァァンスッ!!」

 

 その攻撃を待ってましたとばかりに叫んだリョウは、振り下ろされたクワイアー・チャイムを脳天からは避けて右肩で豪快に受けると、直ぐ様上腕と頭でクワイアー・チャイムを挟み込んで固定し空いていた左手を正確にベルの左肩の関節に突き刺してみせ、その攻撃によって左手の先端が砕けてしまうものの、ベルの左腕も肩から部位欠損し挟み込んでいたクワイアー・チャイムを放せば重力に逆らうことなく地面へと落ちてしまった。

 ――わぁっ!!

 と、今日一番の盛り上がりを見せたギャラリーの歓声を聞きながらに1度ベルから距離を開いたリョウに、ポリゴン片となって消えていく左腕を見ながら、残ったクワイアー・チャイムを右手に持ってみせたベル。

 しかし本来左手と一体化したようなクワイアー・チャイムを右手で扱うのに違和感があるのか、なんともやりづらそうな雰囲気を醸し出す。

 

「あー! これってもう必殺技使えないパターンじゃん!」

 

「あのチート必殺技がなきゃ、お前なんてただの硬いアバターだぜヒャッハー!」

 

「なっ!? ヒャッハーの分際で……って、ふふーんだっ」

 

 左腕を失ったことで自らの必殺技が封じられたことを嘆いたベルに、狙い通りに出来たリョウが得意気にしたのだが、何かに気付いたベルは途端にやる気を取り戻して右手のクワイアー・チャイムの調子を確かめる。

 

「とかなんとか言ってるけど、アンタもアンタで両手がボロボロだし、まだ私有利な気がするんだけどー!」

 

「ヒャ……ヒャッハー!?」

 

 そうして準備を整えたベルは何かをされる前に突撃を開始し、突撃しながらにリョウの両手がどちらも攻撃力を失っていることを指摘。

 思惑に成功したことですっかりその事を忘れていたリョウは、言われてから自分も現在3つある必殺技の2つを封じられてる現状に気付き悲鳴を上げるが、そんなことお構いなしなベルの特攻に思わず後退。

 しかしここでまたも地形のことが頭から抜けていたリョウは急に足にブレーキをかけて立ち止まったベルに首を傾げたが、次には足から猛烈な熱が襲いかかってきて足下を見れば、そこは溶岩溜まりのど真ん中。

 しかもバカなのか割と深い位置まで侵入していて、溶岩溜まりの縁で止まったベルも呆れてしまっていた。

 

「うわっち! ノー! メガ・ヒート! 足がドロリンチョッ!!」

 

 当然そんな場所に留まれるわけがないので、ギャグのような熱がる走りで溶岩溜まりから脱出を試みるリョウなのだが、やはりバカ。

 わざわざベルが立つ方へと走っていき、ベルもえっ? という感じではありながら絶好のチャンスとばかりに迫ったリョウをクワイアー・チャイムでフルスイング。

 その直撃を受けたリョウは再び後方の溶岩溜まりにダイブ。

 背中から落ちて熱さで飛び起きてはみせたが、ここまでの戦いで削れたHPゲージはもう1割も残っていなくて、溶岩溜まりから抜け出る半歩前にそのHPゲージは無くなって敗北。

 その決着にはベルが途方に暮れて、ギャラリーからは笑いの嵐が巻き起こる。

 我が子の無惨な敗北にどんよりした雰囲気を出すアキラに対して、その肩をポンと叩いたサアヤは、

 

「バカはどうやってもバカなのよね」

 

 そんなどうしようもないみたいな言葉をかけたのだった。




今回の話で《ライム・ベル》が自身に対して《シトロン・コール》を使っていますが、原作設定では出来ないことです
ただしその事実が判明する前に書いた話としてご理解いただいた上でご了承ください
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