アクセル・ワールド~蒼き閃光~   作:ダブルマジック

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Acceleration Memory6

 

 2043年8月下旬。

 夏休みも終盤に差し掛かり、あまり計画というものを立てない世の学生達が宿題という名の拷問器具を引っ張り出して片付け始める時期。

 そういったものとは意外にも縁遠く、夏休みの開始から数日で全ての拷問を切り抜けていた計画的な少年は、まだ小学5年生でありながら自宅のある墨田区から1人で南西に位置する港区にまで足を運んで、そこで会う約束をしていた人達と会合。

 知り合ってもう3年と少しは経つが、とあるアプリによって実年齢と精神年齢が大きくかけ離れてしまった故に同年代とは思えない高次元の話をする人達に、決して頭が悪いわけではない少年は未だについていけず終始その話を呆然と聞くしかなかったが、そんな少年にも笑って「いてくれるだけでいい」と言う少年少女に同様の笑顔を作るしかなかった。

 結局今回も話の内容をほとんど理解できなかった少年は「あなたにはあなたの役割がちゃんとあるから、今はそれを頑張って」と集まりの中のリーダー的存在にそう言われてから帰路についていた。

 別に彼彼女らに仲間外れにされてるわけではない。

 むしろこうして集まりに呼ばれたこと自体が信頼の証になり得るわけで、そうした難しい話以外にも他愛ないことを話す時だってあるし、その時は少年だって自慢の持ちネタを披露して、たまにではあるが笑いを取っていたりした。

 だから少年は今の付き合いに不満など一切ない。

 ただ1つ、何か挙げろと言うならばそれは、もう少しだけ、今プレイするゲームを純粋に楽しんでほしい。

 と、年相応の子供ながらに思うくらいであった。

 ――バシィィイイ!!

 そうして自宅のある墨田区まで戻ってきたところで、急に少年の頭にそうした音が響き、見える世界が青く凍り付く。

 次いで世界は瞬く間に炎に包まれて周囲にいた人や車は姿を消し、新たな世界が構築される。

 《ブレイン・バースト》というアプリケーションは、持ち主の思考を1000倍にまで加速し、その思考でソーシャルカメラの捉えた現実世界の映像を元に再現される仮想世界を舞台にして戦う対戦格闘ゲームである。

 さっきまで色彩鮮やかだった世界は一気に色褪せて、建物という建物は全て無人で何百年という歳月を経たように錆びつき風化している。

 《風化》ステージと呼称されるそのフィールドに降り立った少年は、その姿をブレイン・バーストに与えられたデュエルアバターへと変えている。

 比較的に角の少ない滑らかな濃緑の胴体装甲に左右から伸びる角のような突起のある鏡面ゴーグル型の頭部装甲。

 そして両腕は少々ゴツいとさえ思えるほど大きな西洋の手甲(ガントレット)の形をしていた。

 システムが名付けた少年のデュエルアバターはその名を《シーバ・カタストロフ》と言い、分類上で《防御の緑》に分けられる打たれ強いのが特徴のアバター。周りからはカタフの愛称で呼ばれている。

 しかし、カタフは始めの頃、他の緑系アバターよりもふた回りほどは打たれ弱くてずいぶん苦労した。

 今やそのレベルは中堅以上の6となりそうした弱点もカバーできているが、まだ並み以上程度の強化にしか至っていない。

 とはいえ、カタフがこうして意図とせずに対戦が始まったということは、当然相手から仕掛けてきたということに他ならないため、視界上に表示される2本のHPゲージ。

 その内の右側にあるゲージの下にあった相手の名前を確認すると、意外なことにこの辺では全くと言っていいほど見ない名前がそこにはあった。

 《エピナール・ガスト》と読めるそのアバターは主な戦場を練馬・中野区としていて、そこを領土とする7大レギオンの1つ《プロミネンス》に所属する少年と同じレベルのプレイヤーだ。

 まだゲーム内のプレイヤーの最高年齢は小学6年生のため、都内とはいえその移動はずいぶんと勇気のいる冒険とも言える。

 もっとも、このゲーム内では実年齢=精神年齢という等式が成り立たないところがあるので、そうした子供の常識的なものが崩れてる場合もあるわけだが。

 そうこう考えていたら、視界下に表示されていた相手のいるおおまかな方向を示すガイドカーソルが消えて、そちらを向いていたカタフも十分に近づいていた相手を視認。

 

「お初にお目にかかるわね。アンタのことは噂で聞いてたから、1回ガチでやりたいと思ってたのよ」

 

「プロミの《月下の舞姫》がわざわざ僕と戦うために墨田までやって来たんすか?」

 

「うーん、いや、まぁ……本当の目的は違うんだけど、一応ここまで来たんだしと思ってマッチングリストを確認したら名前があったから勢いでね。そんなことはどうでもいいでしょ! バーストリンカーなら始まった対戦につべこべ言うな!」

 

 自分と同じく緑系の彩度の高いF型アバターであるガストは、その手に持った巨大な扇子型強化外装《ブレード・ファン》をズビシッ! と向けて会話を強制終了。

 別にあーだこーだ言った覚えもなく、ただ投げかけられた言葉に返しただけでそう言われるとなんだかカタフも理不尽さを感じないわけにはいかない。

 だがガストはそうした勢いで物事を押すことがあり《猪突猛進 》と影ながらに呼ばれていたりもするので、実際に目の当たりにするとその通り名も仕方ないのかなと失礼とは思いつつ納得するのだった。

 そんな性格を表すように準備万端と判断して突っ込んできたガストは、その手の扇子を思いっきり振りかぶってカタフへと勢いよく振り下ろしてくる。

 その扇子にカタフはグッと握り拳を作って扇子の軌道に左拳を乗せただけ。

 殴りにいったのではなく、ただ来る扇子に左拳を当てさせたのだ。

 ――ガギィィイイイイン!!

 だがそれで起きた現象は驚愕の一言。

 普通に考えればただ当てさせただけのカタフの拳は構えすらまともに取ってなかった体ごと後ろへと吹き飛んで当然。

 大ダメージは必至だったが、実際にはガストの扇子はカタフの拳の前にその勢いを失って完全に停止。

 不可思議な現象に次の行動が続かなかったガストに対してそうなることをわかっていたカタフは、空いた右拳で扇子の横を殴って弾き今度はちゃんと振りかぶった左拳でがら空きのガストの体にストレートパンチを繰り出した。

 さすがにそこまで動かれれば思考が働いたガストは、カタフの拳を大きなバックステップで避けて距離を取り、乱れた扇子の構えを整える。

 

「なーんか実際にやってみるとインチキ臭いわねそれ……」

 

「し、失礼っす! これはれっきとしたアビリティっすよ!」

 

「その喋り方も作りモノっぽくていつもコッテコテのおばあちゃん口調の相方を思い出すのよね……」

 

「こ、これも個性っす! それを作りモノ呼ばわりは酷いっす!」

 

 対戦中にも関わらずこうした呑気な会話が両者の間で行われることはまぁ、ないこともないが気の抜ける感じのは珍しい。

 しかしガストがインチキ臭いと表現したように、先ほどの攻防でカタフが扇子を難なく止められたのは、自らに備わったアビリティのおかげ。

 《会心防御(クリティカル・ガード)》と名称されたこのアビリティは、物理的なものが拳に当たった時にのみ、その間に不可視の障壁を展開し衝突の際のエネルギーさえ遮断する防御アビリティ。

 発動タイミングはあまりに高速のため拳にダメージ判定が入るよりも早く障壁が遮断するのでカタフ自身にダメージが入ることはなく、それを利用して拳での攻撃時はノーダメージで一方的に相手にダメージを与えられる。

 

「まぁ喋り方なんて気にしたところで仕方ないし、まずはその鬱陶しいガードを抜いてボッコボコにするか」

 

「ガストさんって話に聞くより過激っすね……」

 

 そのアビリティの存在を知っていたガストは、実際に目の当たりにして面倒臭いと思ったのか、今の会話の間に打開策でも模索していたようで再び扇子を構えて突貫。

 様子見だった初撃とは違って、今度はカタフも警戒し回避も視野に拳を構え迎撃。

 今度は横凪ぎに振るわれた扇子を、最初こそバックステップで避けたカタフだったが、返しの横凪ぎが続けて振るわれたことで回避がじり貧になることをいち早く悟り防御に切り替えて右から迫った扇子に左拳を当ててガード。

 それを待ってましたとばかりに当てた先から持ち手の部分を前に持っていって扇子を押し付けるような攻撃をしてきたガストに、窮屈ながら右拳を当ててガード。

 だが次の瞬間、カタフの視界は緑色の壁で塞がれて前が見えなくなる。

 それがガストの扇子が開いたことで起こった視覚的妨害であることを理解した時には、すでにガストの足払いを受けて仰向けに転倒していた。

 鮮やか。

 その一言に限るが、今は相手に称賛を送っている場合ではない。

 倒れるカタフに思いっきり閉じた扇子を振り下ろしたガストに拳でガードするしかなかったが、振り下ろし自体は防御に成功するも、障壁の上から尚も体重をかけてくるガストに拳を引っ込められなく、さらにクリティカル・ガードの障壁は3秒間しか展開できないため、それ以上は1度対象から距離を離して当てないとアビリティは発動しない。

 それを知ってか知らずか実際にアビリティの穴を突いてきたガストに少し表情をしかめたカタフは、ガードしている拳を傾けて扇子を滑り落としすぐ横の地面に叩きつけさせて難を逃れたが、勢い余って倒れてきたガストがやけくそ気味に頭突きを放ってきたのでそれをまともに額で受けて双方痛み分けとなる。

 

「っつ……ってチャーンス!」

 

 カタフは頭突きを受けてクラっとしながらもどうにか立ち上がろうとしたのだが、覆い被さるように倒れてきたガストが邪魔でそれが叶わず、偶然になったその体勢からガストは直ぐ様馬乗りに変わって膝をカタフの上腕に当て押さえ込み完全に拳を封じる。

 

「タコ殴りターイムっ」

 

「そうはさせない、っすよ!」

 

 この上なく楽しそうに拳を握ったガストに対して、腕を封じるためにマウントポジションが少し上の方に来ていたのを感じたカタフは、腹筋を使って両足を一気に持ち上げて殴りかかってきたガストの頭を挟んで後ろへと引っ張り、膝が浮いたところで腕を引き抜いて体を少し起こして傾けガストの下から脱出。

 互いに1度起き上がって距離を開き仕切り直しとなるが、今度はインターバルの会話はなく扇子を開いて頭上に掲げたガストは、

 

「ブレード・ファン、展開」

 

 必殺技とは違うコマンドを口にする。

 すると頭上に掲げた扇子は内と外で交互に折れた部分から縦に割れ、18本のやや末広がりする剣を作り出し、一番外枠の刃のないフレームはクロスしてガストの背中に収まり、18本の剣は孔雀の尾羽のように半円形で後ろに待機した。

 

「カ、カッコ良いっす……」

 

 元来、男の子というものは変形や変身というロボットやヒーローに憧れを持つ生き物。

 そうした意味でガストの扇子の変形はワクワクしてしまったが、対戦中ということをすぐに思い出し気を引き締め直す。

 あれだけの剣が同時に襲ってきたら、カタフでも全て捌くことは難しい。

 今回が初対戦ということもあって、互いに聞き及んだ程度の前情報で対応がぎこちないが、次に何をしてくるかわからないというのは怖くもありながら楽しみでもあった。

 だからカタフは笑う。ワクワクが止まらない強者との戦いに喜びを感じて、笑う。

 18本の剣のうちの2本を手に取ったガストは後ろに残りの剣を従えたまま再度突貫。

 今度は二刀流ということでカタフも両拳を使っての攻防に応じる。

 扇子を振るう時よりも鋭く速いガストの剣は重量を感じさせないほどで、そのラッシュたるや猛烈。

 攻撃に転じるタイミングを探ろうと受け身から入ったカタフだったが、あまりに速い連撃に拳で捉えて防御するので精一杯。

 徐々に押され始めたカタフがその拳を当てるのをわずかに遅らせて本体の装甲にチリッ、とガストの剣が触れて火花を上げると、それを皮切りに次々とガストの剣がカタフの装甲を削り始めた。

 ダメージとしては軽微で致命的ではないにしても、蓄積ダメージは確実にカタフを不利にしていく。

 だから遅れ始めた拳をどうにかするために思い切って前へと踏み込んだカタフに、攻撃一辺倒だったガストは懐ががら空きになってしまい、それを好機と見たカタフも目一杯の力を込めた拳を体の中心に撃ち込む。

 クリーンヒットをもらって後ろへと吹き飛んだガストはそのHPゲージを2割も減らしたが、吹き飛びながら大振りしたカタフに向けて右手の剣を引き絞って、それに連動して後ろに控えていた剣がズララララッ! と並びを変えて、突き出された右手の剣のリーチを伸ばすように次々と剣が前へと飛び出して長大な剣となってカタフを襲った。

 ――ドドドドドドドドッ!!

 間一髪のところで左拳が剣の切っ先を捉えて防御には成功したものの、次々と撃ち込まれる剣の突きに押されてカタフの体はどんどん後退。

 終いには後ろにあった建物オブジェクトに到達してそこまで突き破って吹き飛ばされてしまった。

 風化ステージの脆いオブジェクトじゃなければもう少しダメージを受けていただろうが、そこは運が良かったということで残りHPゲージも6割ほどになって立ち上がったカタフは、舞い上がった砂ぼこりをかき分けて元来た位置まで戻ろうとした。

 

「《ジェノサイド・カッター》!!」

 

 しかしそれよりも先にガストの必殺技発声が聞こえてきて身構えたカタフは、どんな必殺技かわからないので待ちに入ったが、舞い上がった砂ぼこりを切り裂いて飛来したのは、分離していた18本の剣。

 ご丁寧に縦回転して様々な角度から向かってくる剣は全てカタフに当たる軌道。

 これは全てを防御することも躱すことも不可能。

 そう即断したカタフも同じように唯一の必殺技を発動。

 

「《ジ・エンド》」

 

 技名発声のあと、カタフを中心に波紋状に広がる風が巻き起こり、それを受けたガストの剣は一瞬にして消滅。

 さらに前方にいたガストにまで届いたその風は、両手に持っていた扇子のフレームをも消滅させてしまう。

 ――何が起きた。

 そういった疑問を持った雰囲気を出すガストに一気に接近していったカタフは、ここまで戦いを支えてきた扇子の消滅で対応の遅れたガストに重い拳を撃ち込む。

 

「ぐっ……これが噂で聞く範囲系必殺技ね……」

 

 カタフの拳をもらって怯みつつもまだ闘志を失わないガストは、やはり知ってはいたのか現在発動中のカタフの必殺技に嫌そうな気配を出す。

 カタフの必殺技、ジ・エンドは自分中心の半径50メートルの範囲に干渉して、その範囲内であらゆるアビリティ・強化外装・必殺技・それらによって起こった現象を消滅させる規格外の必殺技。

 だからガストの扇子は今、カタフの必殺技によって強制的にアイテムストレージへと戻されてしまっているのだ。

 毎秒2%消費しながら展開するこのジ・エンドは、もちろんカタフ自身のクリティカル・ガードも無効化してしまうのだが、これら2つのアビリティと必殺技をレベル1の初期段階で持っていたカタフは、以降のレベルアップボーナスを全てアバター本体の強化で補い、今や必殺技の中で殴り合いをすればほとんどのアバターに勝てるほど打たれ強いアバターになっていた。

 ガストも緑系ゆえになかなかに硬い装甲なのだが、やはりカタフのように本体の強化にボーナスを振るタイプではなかったのか、頼るものが己の五体のみになってからはほとんど一方的にカタフが撃ち込んでそのHPゲージを削っていき、何度か撃ち込まれたりしても必殺技ゲージをリチャージできてしまうため、1度でも発動すれば必殺技が切れることはない。

 だからカタフは周囲のプレイヤーからは《遠隔殺し》だの《究極の脳筋》だのと言われてちょっと恐れられていたりするし、現在のプレイヤーの中で頂点に近い《純粋色》からは《真空の剛拳》という異名をもらっていた。

 しかし誰よりも純粋に対戦を楽しみ、自分の強さを磨いてきたカタフにとって、皮肉なのは必殺技発動後に相手とのガチンコになった時点でほとんど自分の勝利が決まってしまうことだった。

 相手との心踊る対戦をしたいがために強くなったカタフにとって、自分の土俵で互角以上に戦えるプレイヤーの少なさは悲しいとさえ思えるレベル。

 かの《絶対切断》や《矛盾存在》、《剣聖》や《BBK》さえもこの必殺技の前では牙をもがれてしまう。

 だから必殺技を使った後のカタフからは一切の笑顔が消えてしまう。

 

『あなたほど完成に近いデュエルアバターはいないわ』

 

 そんなカタフに対して柔らかな声色で言ったのは、他のレギオンを統べる王の1人。

 彼女の言葉には不思議な力があり、言われたカタフさえも謎であるがその言葉は嬉しかった。

 その彼女の言葉に従ってある程度の行動理由を持つようになったカタフだが、まだ具体的に何をしてほしいと言われたことはない。

 『今はあなたなりに戦っていなさい』と、レギオンに所属することもさせずに言った彼女の言葉を、カタフはただ受け入れていた。

 気付けばガストのHPゲージは残り2割程度にまで減少し、その間に2、3発の反撃は受けたものの、やはり必殺技の範囲内ではカタフ優位は揺るがず、ガチンコの殴り合いはほとんど経験がないのかついにやけくそ気味に突っ込んできたガストにカウンターを叩き込んでとどめ。

 カタフの勝利で勝敗は決したが、そこにカタフの笑顔はなかった。

 対戦を終えて現実世界へと戻ってきた少年は、自分が究めてきた戦い方とはいえ、こうも虚無感を覚える対戦をして本当に良いのかと自問自答する。

 別にガストが弱かったわけではないし、途中までは五分五分の接戦だったのだ。

 それが楽しくないわけはないのだが、必殺技を使うまでに追い込まれるとどうしても相手の長所を殺し尽くす戦い方になってしまうから、全力をぶつけ合うという少年の願いはその瞬間から儚く散ってしまう。

 

「僕はただ、対戦を楽しみたいだけなのに……どうしてこうなっちゃったんだろう」

 

 もう何度も自分に問いかけた問答。

 レベル7になるだけのポイントも十分にありながら、これ以上の強化が必要だろうかと悩み続けて何ヵ月か経つが、未だにその答えは出ない。

 少年はそんな願いを叶えてくれる存在の出現を待ちわびる。

 自分のアビリティを破り、必殺技すらも苦にせずに挑んでくる強者の出現を。

 そんな願いが叶うことはないのかもしれないと思いつつも、少年は願うのだ。

 そして、この日から約2年後に『彼』は現れた。

 王達が停滞させた世界に突如として現れ、皆が考えもしなかったことをやってのけた、後に《蒼き閃光》と呼ばれるようになる1人のプレイヤー。

 彼の出現におそらく一番喜んだのは、王達や彼と親しいプレイヤーでもなく、誰よりも強者を求め願い続けた少年だ。

 

 ――その両者の対戦は、しかし1度たりとも叶うことはなかった――

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