アクセル・ワールド~蒼き閃光~   作:ダブルマジック

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Acceleration Memory9

 

 2044年4月。

 新学期の入学・進学シーズンも落ち着いた中旬にさしかかった頃。

 無事に中学への進学をした馬場園由梨も、昨年からの親友である掛居美早と一緒のクラスで、周りも見知った顔ばかりなので割とリラックスしていたりした。

 というのも、ユリと美早が通う学校は小中と一貫した少々特殊な学校なので、通う生徒も小学校からほぼ代わり映えはしなかったりする。

 だから変わったことと言えば着ていた指定制服のデザインとランドセルから鞄に変わったくらいのものだ。

 

「あー、やっぱり進学先をもう少し検討すれば良かったかも……」

 

「今さらなこと言っても仕方ない」

 

 しかしリラックスしていたユリは休み時間の教室で隣の席の美早に顔を向けて机に寝ながらそんなことを愚痴る。

 それに対して美早は表情も変えずに言っても仕方ないと完結させ、正論ゆえにユリも唸るしかない。

 そうしてユリが愚痴る背景には学校の方針が関係していて、今の校則で半身となるニューロリンカーは校内でフルダイブ禁止。グローバルネットも遮断と勉強に必要ない機能を封じられている。

 この辺は学校によって様々な規制があるので、ユリ達の学校は割と厳しめの規制に当たるのは間違いない。

 それを回避する手段が去年の夏頃にユリは与えられていた。

 毎年、学校の成績優秀者数人を別の中学校へ進学させ、それを補助してもらえる奨学制度なのだが、これもユリがやっている対戦格闘ゲーム《ブレイン・バースト》のやんごとなき事情で下手な《リアル割れ》を避けたい気持ちが勝ってしまった結果、断っていたのだ。

 まぁ、そのおかげでその後に転校してきた美早と同じクラスになれているのだから悪いことばかりでもない。

 

「そういえば美早。一昨日にレベルを上げたんだったよね?」

 

「Y。ユリと同じになった」

 

 自分の臆病な心が生んだ結果だし、もう現実を受け止めるしかないか。

 と諦めたユリだが、そこで唐突に思い出したことを美早に尋ねると、美早も代名詞である略語。通称レパード語を交えてすぐに肯定。

 ユリと同じブレイン・バーストのプレイヤー、バーストリンカーとなってまだ半年程度の美早なのだが、3年ちょっとのプレイ歴の自分ともう同じレベルに到達した事実は少なからずショッキングな出来事だ。

 しかしユリもユリで今は考えあってレベルアップを見送っている段階。

 だから悔しいという気持ちもそこまでないが、親友の成長スピードには少しだけ焦るものを感じるのも事実。

 

「そっかぁ……これは美早に抜かれるのも時間の問題かもね」

 

「ユリはレベル以上の実力を持ってる。私は同じレベルになってもまだ差を感じてる」

 

「そうだといいけど……」

 

 謙遜とも取れる美早の言葉だが、こういったことで美早は遠慮しない正確なのを知ってるユリは本心でそう思ってくれてるのはわかるのだが、それはあくまで美早の体感だけであって、本当にそうなのかは不透明。

 だからかユリは純粋にそこに引っ掛かりを感じて、思い付くのと同時に机にくっつけていた顔を上げると、とある提案を美早に持ちかけた。

 

「じゃあ、放課後にでもそれが本当か確かめてみましょう? レベルアップ記念も兼ねて、ね?」

 

「…………K」

 

 そして放課後。

 部活も特にやっていない2人はすぐに校則という名の拘束を抜けるように学校の敷地を出てまっすぐに全寮制の寮へと戻ると、ユリの部屋へと集まってそこでXSBケーブルを用いて直結。

 こうすることでグローバル接続を必要とせずにギャラリーも介入しない対戦が可能となる。

 そうしたギャラリーのいない直結対戦で構築された対戦フィールドに降り立ったユリは、自らの姿がデュエルアバター《カーマイン・ボンバー》となったことを確認することもなく、視界に表示された【FIGHT!!】の炎文字が消えてからフィールドを見渡す。

 

「うむ、《暴風雨》ステージとは運がない……のぉぉおおおお!!」

 

 開始早々に構築されたフィールドが自分の苦手な属性だったことに落ち込むユリだったのだが、そんなことをゆっくりさせてくれる間もなくフィールド特有の強風がユリを襲い、アバター本体の重量がおそらくは全アバター中最軽量の1キロに満たないユリは簡単にその強風に煽られて空へと打ち上げられてしまうが、降り続く豪雨によってすぐに下降。

 風と雨に翻弄されながら再び地面へと着地すると、近くにあった外灯のオブジェクトに掴まってとりあえず落ち着いた。

 

「相変わらず大変そう」

 

 そんな感じで忙しないユリを見て《ブラッド・レパード》となった美早は、ユリとは違って雨風を物ともせずに立って近くに寄り言葉をかけてきたが、この苦労をわかってもらうことは難しいと思うので愚痴ることもせずに美早を見る。

 

「苦手なフィールドではあるがの、主に勝てんわけでもなし。遠慮はいらんぞ?」

 

「じゃあ遠慮なく」

 

 現実とは全く違う話し方のユリに、もう聞き慣れた感じでスルーしながら、グッと踏ん張りながらにそう言ったユリにビュワッ!

 ほとんど言いながらに美早は蹴りを放ってきて、せっかちな親友のあまりの遠慮のなさに言葉を撤回したくなりながら外灯から手を放して後退。

 すぐに強風に吹き飛ばされて宙を舞うが、不意打ちに近かった開始直後とは違って備えがあったので今度は体勢も崩すことなく上手く風に乗ると、腰から傘のように広がるロングスカート装甲をクルクルと回しながら降下アビリティ《ディセント》で落下スピードを落としながら両手の平の真ん中に空いた半球の窪みを合わせて合掌しアビリティ《リトル・ボム》で小型爆弾を生成。

 ピンポン球ほどの大きさのそれを地上から追う美早めがけて投げ落とす。

 点火式の爆弾ではなく、衝撃の感知によって爆発するタイプのリトル・ボムなので雨が降ってようと水の中だろうと割とどうにでもなる利便性があり、爆発の範囲も直径5メートルとバカにできないものの、合掌というワンアクションを入れる都合上、連投にはあまり向かないために攻撃が単発化してしまう。

 だから空中からただ放り投げても、爆発範囲にさえ気を付けていれば誰にでも回避はできるし、スピードタイプの中でもおそらく最高峰のアバターを駆る美早ならなおのこと回避は容易だ。

 現に落とすリトル・ボムは美早のスピードを捉えることができずに地面に命中し爆発するばかり。

 

「さすがに当たりはせんの。じゃがまぁ、それも計算の内じゃて」

 

 すでにブレイン・バーストの中堅レベルには達しているユリ。

 数多くの対戦の中で暴風雨ステージだから負けても仕方ないと諦めたことは1度としてない。

 そしてそれを証明するようにユリの暴風雨ステージでの勝率は決して極端に悪いわけではないのだ。

 吹き荒れる強風の流れに乗りながら、落とすリトル・ボムは美早を狙いはするが何も当てるのが目的ではない。

 いや、当たるのが最良ではあるが、そこまで高望みはしないユリは美早に避けられる確率の高さを考慮して、その周りのオブジェクトに爆発が当たるようにしていた。

 こうすることで美早に当たらずとも必殺技ゲージを溜めることができ、一発逆転の大技を使うチャンスも作り出せるわけだ。

 もちろん必殺技ゲージは視界上のHPゲージの下に双方共に丸見えなので、ユリの狙いにはモリモリ溜まっていく必殺技ゲージを見れば美早だってすぐに気付く。

 だがそれを阻止しようとしないのは、美早に空中にいるユリを撃ち落とすタイプの遠距離攻撃が備わっていないからで、たとえ地上から追いかけるのをやめたところでその辺に適当にリトル・ボムを放るだけで必殺技ゲージを溜められるユリのその行為自体を止められるわけではないから、云わば一種の諦めのような感じか。

 だからこそ美早も地上を移動しながら壊せそうなオブジェクトを適度に破壊して必殺技ゲージを溜めていたし、せっかちな性格からしてこのままおいかけっこをするつもりも毛頭なかったはず。

 

「《シェイプ・チェンジ》」

 

 その予想を早くも現実にした美早は、初期レベルから備わった自らのアバター最大の能力を発動。

 滑らかな流線形をした人型だった美早は、その四肢をたくましく膨れさせて二足歩行から四足歩行へシフト。

 強靭な四肢を持った紅色の豹《ブラッド・レパード》へと変身。人型だった時とは比べ物にならない速度で地を蹴ってユリへと迫る。

 ユリもちょうど地上に降りて再びジャンプで風に乗り空中に逃げようとしていたため、このタイミングで美早が仕掛けたのはもちろん狙い通り。

 さっきまでの速度ではユリの方が先に空中へと逃げられたが、今度はアビリティ《ファースト・ブラッド》によって時速200キロに近い速度を実現する美早に一気に接近されて、足が地面に触れる時にはもう十分な加速を得た美早が目の前に迫っていた。

 

「《リトル・ビッグボム》!!」

 

 美早の武器はビーストモード時の圧倒的スピードと、ビーストモードによって実現する強靭な牙と顎の力による圧殺。

 その牙に首を噛まれようものなら、同レベルとはいえ極端なほど打たれ弱いユリのアバターではひと噛みでその首を噛み砕かれて敗北が決定する。

 だが美早も今ユリが発動した必殺技を十分に理解しているはずで、ユリの作り出したリトル・ビッグボムは、必殺技ゲージを最大の50%消費することでリトル・ボムの10倍の爆発範囲に1.5倍の威力を誇るリトル・ボム。

 見た目にはリトル・ボムと全く違いがないので、作り置きして複数所持するとユリでもたまにどれがどれかわからなくなることがなきにしもあらずなそれを、両手を離して手の窪みから取り出すと、首元に噛みつこうとした美早の口に飛び込む位置に。

 そのまま美早が噛みつけば口の中へリトル・ビッグボムがイン。大ダメージは免れないだろう。

 もちろんユリ自身も爆発のダメージはあるだろうが、美早の受けるダメージは甚大だ。

 ――グルルッ!

 ユリのそんな凶悪な策に唸った美早は、咄嗟に前足でユリの胸元を押して後ろ足でブレーキ。

 急激な停止行動でリトル・ビッグボムを寸でのところで回避しUターン。

 美早に押されたユリもその軽さゆえに簡単に後方へと押し出されて、追い打ちのように吹いた強風に煽られて再び空中へと飛び立つ。

 直後、ユリと美早がいた地点にポトリと落ちたリトル・ビッグボムが壮絶な爆発で周囲を爆炎で包み込むものの、ユリも美早もギリギリでその爆発範囲から脱出しHPゲージに変化はなかった。

 

「ふぅ……相も変わらずえげつないスピードじゃて……」

 

 爆心地から離れた位置まで後退して地上に降りながら、ユリはレベルアップするごとに上がる美早のビーストモードのスピードに少し恐怖する。

 現在でレベルは5だが、美早がこれからもそのスピードに磨きをかければ、加速世界でも指折りの速度を誇るレベルになることは確実。

 いや、これと同様かそれ以上のスピードとなると、ユリの中で思い付くのは1人しかいないことから、もうすでに指折りにはなっているかもしれない。

 そんな親友の成長を嬉しく思いながら、自分も負けてられないと気を引き締めた直後、前方で雨の中でも上がる黒煙を突き抜けて弾丸のように一直線で接近する影が現れる。

 当然それは対戦相手である美早なのだが、あの爆発範囲の外に待避して、即座に切り返して接近してきたとしか思えないその速度にユリの対応は遅れてしまう。

 長年の経験値からすぐにリトル・ボムを作って美早へと投げ入れてはみせたユリだが、行き当たりばったりなリトル・ボムはしなやかな身体による身軽なフットワークで即座に回避され、阻むように爆発の壁で複数のリトル・ボムを同時投入するも、横の建物オブジェクトを踏み台に飛び越えて接近を止めることすら叶わなく、あっという間にリトル・ボムを使う危険域を突破され懐まで侵入を許す。

 こういう時に強風が吹けばいいものを、このタイミングでピタッと無風になるのはもはや運でしかないが、万事自分の都合の良い方に状況が傾くことなどないし、そういうことはよくある。

 愚直なまでに自分のスタイルを貫く美早は、ユリの懐に入るとそのまま勢いで押し倒すように前足をユリの胸元に押し付けて全体重をかけてきて、圧倒的な重量差で踏ん張ることすら叶わないユリは仰向けに地面へと押し倒されてしまい、ご丁寧に両腕に前足を乗っけて拘束しのし掛かる美早の狙いは明確に首筋。

 グルッ! とひと鳴きしてユリの首へと容赦なく噛み付いた美早。

 その牙が痛覚を刺激しユリも思わず呻いてしまうが、完全に顎に力を入れられるよりも早く口を開き忠告をした。

 

「……儂はそう、甘くはないぞ?」

 

 かすれ声のユリの言葉に一瞬ではあるが噛む力を緩めた美早は、それがハッタリではないことを敏感に察して何か行動に移そうとしたのだが、それよりも早くユリの策略が炸裂。

 突如として美早の背中に巨大な爆発が巻き起こり、その爆炎と爆風をユリも受けるものの、意表を突く攻撃だけに美早も噛みつく力が完全に抜けて牙がユリの首から放れると、すぐさま意識が混濁気味の美早を押し退けて下から脱出。

 離れ際にリトル・ボムも放っておくが、さすがにそれは回避に動かれて向こうも一旦距離を開くためにバックステップ。

 かなりギリギリではあったが、ユリは美早の接近の際に爆発の壁を作り出した次に避けられて接近を許すことまでを予測しリトル・ボムを自分の真上へ高めに放り投げておいたのだ。

 それが時間差で落下して美早に見事命中したと言うわけだが、美早が勢いでユリを後方にでも吹き飛ばしながら噛みついていたら万策尽きていた。

 運とまでは言わないまでも、暴風雨ステージの視界の悪さが味方した結果だ。

 とはいえたったのひと噛みでユリのHPゲージは半分を切ってしまい、美早もリトル・ボムの直撃はあったものの削れたのは2割弱。

 アバターの耐久値の差が如実に出ているが個性なのだから嘆いても仕方ない。

 

「リトル・ビッグボム。もひとつリトル・ビッグボム」

 

 嘆いても状況は変わらないんだから、ユリもネガティブな思考はさっさとどこかへと追いやって今は勝つために必要なことを考えてリトル・ビッグボムを2つ生成し右手の指の間でストック。

 必殺技ゲージは見事に空っぽになるが、遠くにいる美早はこの行動に対して慎重にならざるを得ない。

 さっきのリトル・ビッグボムは強襲によって引き出させた言わば選択させた攻撃だったのに対して、今度はユリから仕掛ける形のリトル・ビッグボム。

 これはさすがの美早もいつリトル・ビッグボムを放るかわからないし、食らえばほぼ即死のダメージは確実。仕掛けるにも工夫が必要になってくる。

 だがユリはこの一手で美早をある心理に誘い込む仕掛けを施している。

 それはいま持つリトル・ビッグボムを放らざるを得ない状況を作り出そうとする美早の行動へ誘導する罠。

 これを美早らしさから逆算するならやはり、長所であるスピードを生かした撹乱からの接近。

 そこにフェイントを加えてリトル・ビッグボムを巧みに躱して、2発使わせたところで強襲。

 と、今の美早の頭では考えられているはず。

 それを踏まえた上でユリはその上をいく作戦で美早を攻撃する。

 考えがまとまったのか美早はググッとその前足に体重を乗せて勢いよく飛び出すが、その軌道はユリへ一直線と言うわけではなくフットワークも交えた左右への揺さぶりも加えている。

 これは予想の範囲内のユリはとりあえず細かなフットワークは封じるためにリトル・ボムを作って美早へと投げ入れ動作を大きくし直線での接近だけはさせないように注意しつつ再び吹いた強風に乗って空中へと舞い上がる。

 そのユリを追って美早も落下点へと一気に駆け抜けようとするが、その落下点へとリトル・ボムを先に投下するユリも的確な判断をして待ち伏せを回避。

 攻防戦はどちらも一進一退といったところだが、ここで問題が発生。

 美早に強襲されることなく着地したのはいいのだが、どうにも地形的に厄介な場所に降りてしまい、前方以外を建物オブジェクトに囲まれたいわゆる袋小路に突入してしまったのだ。

 当然前方には美早が立ちはだかり退路はない。しかも強風が吹いたとしても前方以外からではほとんど影響がないときた。

 

「これは……NGといったところかの……」

 

「………………」

 

 風の行方は運任せなところがあるので、この結果に思わず本音を語ったユリに対して、チャンスとばかりに攻めてくるものと思った美早は沈黙してユリを見据えるのみ。

 何かを考えているようなのだが、ユリには長考する美早のデータがあまりないのでその意味について予測がつかない。

 が、それがなんだか酷く嫌な予感しかしないので仕掛けてこないならとこの状況から脱出するために先制でリトル・ボムを美早へと投げ込む。

 しかし起こった事態はユリの思考を遅らせる。

 リトル・ボムを放られて美早はどういうわけかリトル・ボムを無視して一直線にユリへと接近。

 当然リトル・ボムは美早を巻き込んで爆発したのだが、その爆発を振り切って突っ込んできた美早は一瞬でユリの懐へと侵入しその牙を立てて首へと噛みつこうとする。

 だがユリも反射的に美早の口に左腕をねじ込んで首を庇うような動作をして防御し、美早の牙はユリの左腕の肘から下を容易く噛み砕く。

 一瞬の攻防だが、美早の勢いに押されて後ろへと流れたユリは追撃を避けるために美早の肩に足を乗っけて蹴り出して後ろへと飛ぶと、すぐに迫った建物オブジェクトの壁を反転して蹴り見事に美早を飛び越えて包囲網を突破。

 しかし左腕を砕かれた今、もうリトル・ボムを作ることはできないので、多少の運は絡むがここで勝負に出るためストックしていたリトル・ビッグボムを飛び越えた美早へと投下。

 この位置ではユリ自身も爆発の範囲に入ってしまうが、爆発に合わせてスカートの内側の装甲が爆発が来る方向を向くように体勢を調整。

 結果、足がモロに爆発を受けるものの上半身はギリギリで守られてさらにスカートの下が爆風を受けてユリの体を一気に範囲外へと吹き飛ばす。

 あまりの威力に両足が吹き飛んでしまったが、HPゲージは辛うじて1割を残して止まり、美早のHPゲージは一気に残り2割の危険域にまで到達。つまり直撃したのだ。

 その事がわかったユリは爆風を受けてからディセントでバランスを取りながら表示されたガイドカーソルを確認しそれが黒煙の立ち込める爆心地を指していることからすぐに残りのリトル・ビッグボムをそこへ投げ入れると、さっきと同じ爆発が巻き起こって美早のHPゲージは全損。

 足がないのでスカートがフリスビーのように地面に落ちて着地したユリの勝利で対戦は終了するが、

 

「まさかあそこでダメージ覚悟の特攻とは……対戦で腕を失ったのはいつ以来だったかの……」

 

 美早の思い切った策にしてやられたユリは、自分が対戦中で最も警戒しどんな状況でもやらせない『両腕の破壊』をさせられたことに唸る。

 今回は防御させられたわけだが、それでもユリはリトル・ボムの生成に両腕が必要なことから、腕だけは失わない立ち回り方をしていた。

 

「本当に、美早にはもうすぐ追い越されちゃうかな……」

 

 これで同じレベルになったばかりでは、今回は勝てたものの、もう少ししたら実力差もなくなって追い抜かれてしまうかもしれない。

 そう思うと素に戻って口を開いてしまったが、何故だかユリには焦りと同じだけの嬉しさが胸中に沸いていたのだった。

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