2044年8月。
この月は加速世界において激震が走る事態が起きた。
ほぼ同時に加速世界初のレベル9プレイヤーが7人誕生し、それに伴うシステムメッセージの内容を話し合う会議が執り行われたが、その場で7人のうちの1人が倒されて加速世界から退場。
それを行った1人は会議の後、密かに《無制限中立フィールド》にある最難関《帝城》の攻略に踏み切り失敗。
残った5人は《6大レギオン相互不可侵条約》を締結して加速世界に停滞をもたらし、最大勢力を誇った2つのレギオンが消滅。
1つは半壊といったところだが、頭を失ったレギオンの崩壊は免れなく、もう1つもその領土を明け渡し、賞金首となった頭が姿をくらませた。
「それで、君はどうしてそう変わり身が早いのかな」
「いやぁ、こっちにも色々と事情があってな」
そうした出来事がようやく収束し始めたところで加速世界最大のレギオン《グレート・ウォール》に所属するプレイヤー、押留竜司はそのレギオンのマスターにして自らの親である《グリーン・グランデ》に直接呼び出されて、とある人物に乱入される形で対戦フィールドに訪れていた。
「昨日はデクリンと会ったみたいだけど、デクリンも肝心なことは話してくれなかったし、君がネガビュから鞍替えしたのと関係があるの?」
「あー、一応聞くけど、俺がグレウォに移籍したことは誰にも言ってないよな?」
「言うも何も聞いたのが現実で1分前くらいだったし。グラちんもグラちんで先週の領土戦でネガビュの領土を全部占領しちゃうし、消滅したネガビュのメンバーまで引き入れるしで拳ちゃん辺りがてんやわんやよ」
「それについてはまぁロッタとグッさんでやり取りあったっぽいんだが、モンビ、お前さんに今日は大事なようなそうでないような話をするために呼んでもらったわけよ」
対戦が始まってすでに200秒は経過したが、《レイズン・モビール》となったリュウジに対して《グラファイト・エッジ》はようやく本題に入ることを告げて、頭をポリポリかきながら話し出す。
「話っつっても難しいもんでもないんだが……実は昨日、デクリンとやり合って勝って、ここの序列1位になっちまったわけ」
「ふーん、デクリンの性格的に戦って勝ったらいいだろ的な感じはわかるけど、なに言ったわけ?」
「いやよ、これでも俺も元とはいえネガビュの幹部でレベル8だろ。だからそんな俺があっさり移籍してのうのうとしてると色々マズイかなぁって思ったから、俺の移籍はグッさんとデクリン、モンビだけの秘密にしてくれって頼んだら……」
「あー、はいはい。理解しました。ってことは僕ら《六層装甲》は《七層装甲》になるのかな……ん、いや待てよ」
グラファイト・エッジ。
グラフから要求されたのは、自分の移籍を黙っていてほしいというシンプルなもので、それすらも対戦で決めた自分より序列の高いプレイヤーにちょっと血の気が多いんじゃないかと思ったリュウジだが、性格なのだから仕方ない。
それよりもその対戦によってグラフが六層装甲の序列1位になったことが面倒臭いことで、それ以降の序列が下がり数が増えることになるというのはなんだか幹部集団のプライド的なのが傷つくことになる。
だからリュウジはそうなることを考えてから自分の境遇も視野に入れて妙案を思い付く。
「グラッファ。君の序列1位に異論はないけど、それを適応するのは少しだけ待ってくれないかな」
「ん? そりゃ俺は出来るもんなら肩書きもなくしてもらいたいくらいだが」
「まだグラちんにしか言ってないけど、実は僕、来年の春には東京を離れなくちゃならなくて、ちょっとだけ僕の抜けた穴が心配だったんだよね。序列的には拳ちゃん達が繰り上がって新幹部が入る形になっただろうけど……」
「……なるほど。そこに俺が序列1位で入りゃ、デクリンが下がるだけで済むってわけか」
「気心知れた君だから僕も安心だしね」
結果的に謎の序列1位が出現することに変わりはないが、グラちんとデクリンが納得してるなら全員が納得せざるを得ないだろうから、波風はそこまで立たずに事態は収束するはずだ。
その話にグラフの方も了承して、このあとグランデと《ビリジアン・デクリオン》にもそうした話を通すことを伝えたリュウジは、残りの時間が1500秒ほどあるのを確認して話題を変える。
「でもさ、そうなるとグラッファも前までみたいにガンガン対戦はできないよね。僕も来年には東京を離れちゃうし、君と戦える機会はもうないかもしれない」
「モンビ……へへっ、確かにそうなるかもな。だったらやることは1つしかないってわけか」
「そういうこと!」
加速世界の黎明期からのライバルで、たくさんの言葉と拳を交えてきた相手だからこそ、それ以上の言葉は必要なかった。
リュウジはそうと決まるや否やさっきまでの和やかな雰囲気を吹き飛ばしてピリッと肌を刺すような緊張感を醸し出し始め、グラフもその背に交差させて装備していた2本の長剣の内、右手で《ルークス》を抜き構える。
「モンビ、お前がレベル上げなくなってから思ってたけどよ。やっぱ六層装甲の序列は疑問があるな」
「どこに? 僕はこの位置でも過大評価だって思ってるくらいだし、拳ちゃんやリグリグもサンタさんもデクリンに追いつけ追い越せの成長だよ」
「お前はそう思ってるかもしれねーけど、本気の本気で相手を倒そうとしたら、デクリンよりお前の方がよっぽど怖いぜ」
全く以て買い被りだ。リュウジはそう思って信じて疑わなかったが、グラフがここで冗談を言うほどふざける人物では……あるのだが、長い付き合いだからその辺のことはなんとなくわかる。
今のは冗談ではなく、本気で自分を警戒している。
そんな相手に買い被りだなんだと言ってる場合ではない。下手をすれば一瞬で食われる。
王達と並びレベル9に最も近いとさえ言われたグラフ。《矛盾存在》は、構えたルークスの切っ先をリュウジへと向けて臨戦態勢へと移る。
ロングコート状の装甲板を四方に広げた黒いアバター、グラファイト・エッジは、消滅した黒のレギオン《ネガ・ネビュラス》において、マスターである《ブラック・ロータス》を鍛えた師であり、実質的にはネガビュで一番強いプレイヤーだった。
その実力を支えるのが、いま右手に持つルークスと未だ背中に収まる同種の強化外装《アンブラ》だ。
グラフはレベル初期からこの双剣に全てを注いできた生粋のバカ。もとい究極の特化型アバターで、同じレギオンの幹部から『剣が本体のヒト』とまで言われるほどの性能を誇る。
2本の長剣はエッジの部分がつや消しの黒に染まり、刀身の部分がガラスのように透明になっていて、暗がりなら不気味な黒い外枠だけの剣に見えてしまう。
その剣を構成するのは、彼の名前にあるグラファイト。黒鉛に由来するところにあり、エッジの部分は単分子シート《グラフェン》の積層材。
刃の先端部は分子1つ分の薄さしかないので、加速世界で切れぬものなしとまで言われる。
刀身には
圧倒的な硬度と靭性を誇り、この部分を使ったガードはあらゆるものを阻む。
この双剣の性能が『あらゆるものを切り裂く矛。あらゆるものを阻む盾』ゆえに矛盾存在。
それに加えて天性の戦闘センスまであるため、双剣を使って戦うこともあまりないし、ガードを使うまでもなくステップ回避だけでしのいでしまうことまである本物の実力者。
故にリュウジは彼の本気と戦ったことはあるが、それが彼の限界だったのかは未だに判断がつかなかった。
「んじゃいくぜ」
《水域》ステージの静寂を破ってリュウジにそう告げたグラフは、10センチ程度の深さで満ちる地面の水を跳ね上げて前進。
水の抵抗というのは馬鹿にはできないのだが、足の運び方が上手いのか抵抗を感じさせない接近でリュウジへと先制のひと振りを放ってくる。
わざわざ仕掛けるタイミングを言ってくれた手前、これは避けてくれよと暗に言われた気がしたリュウジは、グラフの接近とほぼ同時にローラーブレード型強化外装《ドンキー・ライダー》を装備して前後で2つ付いたローラーの後輪に体重をかけてバック走行。
グラフの剣を紙一重で回避すると、すぐさま火炎銃型強化外装《フォックス・ファイア》を呼び出してバック走行しながらグラフへと発射。
発射された火の玉はそれなりの弾速でグラフへと迫るが、やはり銃弾などよりも遥かに遅いため余裕で回避されてしまう。
「このフィールドでそいつはミスチョイスじゃねーか?」
「言っても君相手に使えないものを消去したらこれしかないんだよね」
バック走行をしながら火の玉を撃つのをやめないリュウジに対して、回避しながら接近を試みるグラフは、このフィールドが水属性であることから攻撃が有効ではないと走りながら語るが、6つの強化外装を持つリュウジでもグラフの剣を防御に使って防ぎきる術がないため、その結果、機動力と遠隔・間接攻撃しか選択肢はなく、ちまちま遠間から攻撃するしかないのだ。
もっとも、リュウジが一番に警戒しているのが自らの強化外装の破壊なのはグラフも知るところ。
だからこその挑発だったのだろうが、リュウジは簡単には乗ってやらない。
フォックス・ファイアでグラフを狙いつつ、外れる軌道でも鉄骨の骨組み状態で建つオブジェクトに当たるように撃って必殺技をチャージ。
フォックス・ファイアの炎は奇妙な粘着性があり、着弾点にしばらくまとわりつくようにして燃えるため、オブジェクト破壊もそれなりにできる。
そうして溜めた必殺技ゲージは30%ほどになって、このタイミングで新たに追跡ペイント銃型強化外装《ドッグ・マーカー》を取り出して右手に持ち必殺技発声。
「《ブレイク・グラトニー》」
途端、必殺技ゲージは20%消費され持っていたドッグ・マーカーが粉々に砕けて消える。
そしてリュウジの視界に現れたいくつかの選択肢の中から迷いなく1つを選択。
すると左手に持っていたフォックス・ファイアがひと回り巨大化し重量感も増す。
そのフォックス・ファイアをグラフに向けて撃てば、先ほどよりも大きな火の玉がグラフへと迫るものの、やはり弾速は微々たる程度のアップで当てられるものではない。
「さてグラッファ。そろそろ仕掛けるよ」
だが1発も当てられないままにそう宣言したリュウジは、実はある程度の範囲をぐるっと回って走りながらある機会を狙っていた。
――ギギギギギィ!
互いに1度たりとも止まることなく時間が過ぎていたが、どこからともなくそんな金属の軋むような音が響いてきて、敏感にその音の発信源を察知し立ち止まったグラフは、バッと自らの背後を見れば、リュウジのフォックス・ファイアによって支柱を溶かされた建物オブジェクトがバランスを崩して倒壊を始めていたのだ。
「えげつねぇ……」
「それほどでも。ブレイク・グラトニー」
ようやくリュウジの狙いに気付いたグラフは、徐々に勢いを増して崩れてきたオブジェクトに巻き込まれないように全力疾走を始めようとしたが、その前にまたもその右手に聴覚妨害型強化外装《ライオン・バインド》を装備し必殺技を発動。
一瞬にして壊れたライオン・バインドを糧に更なる強化を果たしたフォックス・ファイアからはホーミング機能が追加された火の玉が発射され、それを左右と正面に向けて3発撃てば、逃げ道を塞ぐ形でグラフを襲う。
同時に迫る脅威に対してグラフが選んだのは、最小ダメージで済むフォックス・ファイア。
走りながら倒壊するオブジェクトの被害範囲から脱出しつつ、ルークスで火の玉を切り裂き処理。
しかし粘着性のある火の玉は着弾でルークスにまとわりついて若干だがグラフの手を焼くが、大きく飛び前転して地面の水に飛び込みすぐに消火。
流れるように立ち上がって倒壊したオブジェクトから発生した巨大な水しぶきを浴びて立ち止まる。
「人ってピンチを切り抜けた時が一番油断してるんだよね」
その一瞬の気の緩みを見逃さずに、発生した水しぶきをブラインドに接近したリュウジは、グラフの背後から重槍型強化外装《ユニコーン・ランス》を取り出して全力でその背中に槍を突き入れた。
タイミングは完璧だった。
しかしリュウジの一撃はグラフの体に届きはしなかった。
寸でのところでルークスの腹。ハイパーダイヤモンドでの防御に成功したグラフは、それでは本当に危ないと思ったのか、左手がアンブラの柄に触れて抜く1歩手前で止まっていた。
「こうも言うぜ。チャンスの後にピンチありってな!」
今度はお返しとばかりに絶好の好機を逃したリュウジへと振り返り、勢いに乗せてアンブラを背中から抜き一閃。
だがリュウジもグラフに引けを取らない実力者。
攻撃が届く前にドンキー・ライダーをバック走行させてギリギリ体へのヒットは免れたが、ユニコーン・ランスの先端15センチほどが豆腐のように切り落とされてただの重い棒にされてしまった。
それでも強化外装の破壊とまではシステムが判断しなかったようで、右手に収まったままのユニコーン・ランスはとりあえず意識から退けて左手のフォックス・ファイアで再びグラフを攻撃。
しかしホーミング機能が付いたことで先程までのようにオブジェクトに当てる芸当はできず、この辺が自分の必殺技の欠点だなと1人思う。
リュウジの必殺技、ブレイク・グラトニーは、最大ゲージの20%を消費して右手で触れている強化外装を破壊し、そのポテンシャルを別のどこかに振り直すというもの。
制約として破壊できる強化外装はアバターが初期から所持、またはレベルアップボーナスによって獲得したものに限り、1度でも破壊すればその対戦中は2度と復活させられない。
これによりリュウジは初期から所持する強化外装とレベルアップボーナスで獲得した強化外装をその時々に応じて取捨選択し破壊、強化することができる。
故にリュウジは『複数の強化外装を合理的に扱うことができるアバター』という意味を込めて《複合兵器》という2つ名で呼ばれている。
だがこの必殺技の恐ろしいところは、自分のみならず相手の強化外装さえも破壊できてしまうということである。
つまりはそれを行うことで相手の戦術を根本から崩すことも可能ということ。
当たり前だが破壊したポテンシャルは持ち主がそれを振り直す権限を得る。
ならば今回の対戦でグラフの剣も破壊可能かと言えばおそらくは可能。
しかしグラフの剣は判断が難しく、もしも『二刀一対の剣』ならば、リュウジはルークスとアンブラの2本に同時に触れて必殺技を発動しなければ破壊はできない。
何故ならブレイク・グラトニーは強化外装の『本体』に触れなければ発動条件を満たせないから。
片方だけでも破壊は可能かもしれない。
だがリュウジは必殺技を右手でしか発動できないため、もしも触れることに失敗して切り落とされでもしたらそこで終了。
あまりにリスクが高すぎてギャンブル性もクソもない。
実際、それをかつて試みて右手どころか両腕を肩からバッサリ切り落とされてとどめに胴体真っ二つの大惨事になったことがあったので良いイメージがない。
「《スラント》」
とかなんとかマイナスイメージを膨らませかけたら、グラフから必殺技発声があり、縦一文字に振り下ろされたルークスから飛ぶ斬撃が飛来し、フォックス・ファイアの炎を切り裂いてなおリュウジへと迫り、それを横へ逃げる進路変更で躱す。
「あ、これなら大丈夫かな」
グラフの攻撃を避けてホッとしたところで、唐突にあることを思い付いたリュウジは、首を傾げたグラフを無視してフォックス・ファイアの銃口を真下の水面へと向けて発射。
当然、火の玉は出たそばから水によって鎮火され、一部が蒸発して水蒸気がリュウジを包み込む。
が、それによってリュウジの必殺技ゲージが微量ではあるがチャージされた。
「水の蒸発もオブジェクト破壊って判定みたいだね」
「それはズルいぜモンビ……」
「やったもん勝ちだよね!」
そこからは逃げるリュウジがひたすらに下へ向けてフォックス・ファイアの連射。
速度で追いつけないグラフはただただ溜まっていくリュウジの必殺技ゲージを見ていることしかできなく、溜まったそばからユニコーン・ランスを破壊。
フォックス・ファイアを強化し火力を上げると、続けて自動防御型強化外装《スコル・スカル》を装備し破壊。
フォックス・ファイアが4段階目の強化を経ていよいよヤバイレベルになると、もはや追うのを諦めて適当なオブジェクト破壊をやっていたグラフに狙いを定めて突撃。
やっとかみたいなノリで双剣を構えたグラフだったが、結構ゴツくなったフォックス・ファイアの段階を見て過去の情報と照合したのか、途端に「ちょいタンマ!」と制止を呼びかけてきたがもう止まらない。
「ファイアー!」
ためらいなくフォックス・ファイアを撃ったリュウジは、その銃口から継続的に出る炎。
つまりは火炎放射をグラフへと放ち、これはさすがのハイパーダイヤモンドでもカバーしきれないので全身から炎を浴びてメラメラと燃え出すが、すぐに地面を転がって消火。
だが深さ10センチ程度では到底体全部が浸かることはできず、水から出てる部分を継続的に焼きまくった。
あまりに酷い攻撃だったので、グラフの降参を聞き入れたリュウジはそこで火炎放射を終了。
元々黒い装甲を真っ黒にして仰向けになったグラフは、それだけの惨事にも焦げ1つない自慢の双剣を見ながら近くに座り込んだリュウジに話しかける。
「東京を出るって、どこ行くんだ?」
「遠いよ。グラッファじゃ一生行けないかもしれないくらい遠い」
「…………確かお前、まだ子を作ってなかったよな。もしかしてそのまま行っちまうのか?」
対戦の勝敗は着いたので、残った時間で会話に移行してみれば、さっきはなんてことないリアクションをしていたグラフが急に寂しそうに話すので、リュウジもちょっと残念な雰囲気でグラフと話す。
「それなんだけどね。なんか僕の従兄弟? が来年こっちに来るみたいな話を親がしててね。その住まいの準備をしてあげてるんだけど、その従兄弟が下半身麻痺とかで車椅子らしいんだよね」
「……まさかモンビ、お前……」
「うん。たとえ失敗に終わったとしても、僕はその従兄弟に託してみるよ。僕が見られなくなった、この世界の結末を」
「結末ねぇ……もしその従兄弟がロッタ達と同じレベル9になって、それで消えることになる可能性だってあるんじゃね?」
「その時はその時だよ。僕が選んだ子には、後悔しない道を進んでほしいね」
何やら自分で言ってることがわけわからないが、そんなことを1人決めていたリュウジは、そこでグラフと笑い合ってから会話を終了。
残り時間も30秒を切ったため、グラフが自らの体にルークスとアンブラを刺して全損しリュウジの勝利でフィールドは閉じた。
そしてここから約7ヶ月後。
リュウジはその想いと培ってきたものの全てを従兄弟のテルヨシへと託して、遠くフランスの地へと旅立っていった。