DIGIMON・STRATOS   作:龍気

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二ヵ月も空けて申し訳ありませんでした。

正直第3次スパロボZやりまくってました・・・。

しかも予定通りに終れていない・・・こんな駄作者の作品をこれからもよろしくお願いします。


第17話『生徒会長は波乱を呼ぶか?・後編』

Side・シャルル

 

太一がこの人の運命の人?

 

太一はそんな人がいるとか言ってなかったし・・・でもだからと言って、いないと言う確証もない・・・。

 

だけど・・・。

 

 

「あっ・・・あの、運命の人って・・・それってまさか・・・」

 

 

気になってしょうがないよ・・・。

 

 

「ん?もう次の試合が始まるみたいよ、あら?彼次の対戦相手の女の子と楽しそうに話しているわね」

 

「えっ!?」

 

 

ピット内では一定以上の音量でないと、アリーナ内での会話は聞き取れないけど、一見すると太一は凰さんと楽しげに会話しているみたいだ。

 

管制室ならアリーナ内の会話を聞き取れると思うけど・・・何の話をしているんだろう?あんなに楽しそうに・・・。

 

その光景は・・・僕としても嬉しい・・・太一が誰かと仲良くするのは、僕も望んでいたから。

 

でも・・・でも・・・。

 

 

「妬けちゃうわね・・・私もあんまり彼が楽しそうに会話しているとこ見た事ないのに、彼女の様な女の子の方が好みなのかしら?」

 

「!?」

 

 

太一の好みの女の子?

 

凰さんは確かに小柄で明るく活発的で可愛いらしい女の子だ・・・。

 

太一は・・・凰さんみたいな女の子が好きなのかな?

 

僕は・・・僕は男の子として・・・シャルル・デュノアとして太一と接していて、太一も僕を男の子の友達として接してくれている。

 

もし・・・もし僕が女の子として太一と出会っていたら・・・太一は僕を受け入れてくれたかな?

友達として・・・それとも・・・・・・って何を考えているんだ僕は!?

 

これじゃあ僕が太一の事を・・・すっ・・すすすすす・・・・。

 

 

『ISファイト!!』

 

『レディ・・・・・・』

 

「えっ!?」

 

『『ゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォッ!!』』

 

 

モニターから太一と凰さん掛け声が響いて、見た瞬間2人は激突し合っていた。

 

 

「2人とも子供みたいで可愛いわね・・・あの掛け声、彼のでしょ?一緒に叫ぶなんてねぇ・・・」

 

「はっ・・はぁ・・・」

 

 

2人共・・・気が合うのかな?そう言えば布仏さんも太一に懐いている様だったし・・・。

 

 

「・・・・・・」

 

「如何したのシャルル君?」

 

「いえ・・・何でも・・・」

 

「そう?ならしっかり見ないとね2人の戦い」

 

「・・・はい・・・」

 

 

まだ会って2日しか経ってないのに、如何して太一の事がこんなに気になるの?

 

如何して太一を思うと胸が苦しくなるの?

 

 

(・・・これは色々とまずいんじゃないかな?君も厄介事を抱えるわね・・・太一君)

 

 

Side・鈴

 

「待たせたわね」

 

「それ程、じゃあ早速始めようぜ、ここは後一時間とちょっとしか使えないからな」

 

「それもそうね・・・でも、一時間以内で私を倒せると思う?逆にアンタが負ける方が確率高いけど」

 

「さてね」

 

 

私の甲龍はセシリアのブルー・ティアーズよりは機動力が無い分、防御力が高い。

 

八神の零式の攻撃力を考えるなら、長期戦に持ち込めるはず。

 

 

「セシリアとの試合は楽しめたが、凰お前は如何かな?」

 

「鈴でいいわよ、そっちの方が言われ慣れているから、どうも違和感があったのよね、私も太一って呼ぶからいいでしょ?」

 

「あぁ・・・構わないけど、それじゃあ・・・らうn「あっ!ちょっと待って」どぅ!って何だよ!?」

 

「あのさ・・・アンタの試合開始の掛け声・・・私も言っても良い?」

 

「何?」

 

 

いや~~~あれ聞いた時、何と言うかカッコいい・・・こう、テンションが一気に高潮する様な、そんな感じがしたのよね。

 

流石に私1人で言うとアレだけど・・・ねえ・・・。

 

それにこれはスポーツ試合なんだから、プロレスやボクシングみたいに盛り上げる為の演出と言うかそう言うのは大切よね?うん。

 

 

「鈴・・・お前・・・」

 

「何?駄目?」

 

「・・・・・・・」

 

 

グッ!(サムズアップ)

 

(同士!)

 

グッ!(サムズアップ)

 

(ありがとう!)

 

 

案外太一とは気が合いそうね。

 

でも・・・だとすると何か違和感があるな・・・まっ、気のせいか。

 

 

「じゃあ最初の方はお前に譲るぜ」

 

「良いの?それじゃあ・・・すぅ~~~・・・」

 

 

大きく息を吸い込み、お腹に力を籠めて・・・

 

 

「ISファイト!!」

 

「レディ・・・・・・」

 

「「ゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォッ!!」」

 

『僕も言いたかったよ!』

 

「そりゃすまん、おりゃあ!!」

 

「はあっ!!」

 

ガキイイイイイィィィィィンッ!!

 

 

ちょっと恥ずかしかったけど、結構気持ち良いものねこれ。

 

試合開始と同時に、太一の剣と私の双天牙月が正面からぶつかり合い、鍔迫り合いが暫らく続き、

如何切り返そうかと考えていた時・・・。

 

 

「・・・くっ!?」

 

ばっ!

 

「おっと!」

 

 

太一の方が先に身を引かせて、私自身の力を利用して流そうとした。

 

けど私は警戒して、そこまで力を籠めてはいなかったから踏み止まる事が出来た。

 

でもそれは太一らしくないな・・・コイツなら私が力を籠めるタイミングを見計らって逸らせられる筈。

 

 

「今のはアンタらしくないんじゃない?」

 

「事情があんだよ、事情が」

 

 

考えられるに、おそらく太一の剣が、私の双天牙月の攻撃に耐えられなかった・・・武器破壊を恐れて鍔迫り合いから逃れたってところかしら。

 

少し距離を取ったところで太一は新武装の銃で数発のレーザーの弾を私に撃ってきた。

 

避けようとしたけど、全部命中してしまった・・・射撃の腕前はセシリアの言うとおりね、それに私の避ける方向を予想して撃って来た。

 

でもダメージは思ったより小さい。

 

 

「そんなの豆鉄砲を喰らった程度よ!」

 

「う~~~ん・・・バランスを崩そうとしたが、思ったより重いんだな“お前”」

 

「お前って何よ!?お前って!?甲龍じゃなくて私が重いって言うの!!」

 

「スマン、“と”を忘れてた」

 

「“の”にしなさいよ!“の”に!“と”じゃあ私自身が含まれているじゃない!!少なくともセシリアよりは軽いわよ!!」

 

『ちょっと鈴さん!それは如何言う意味ですか!!』

 

「うるさい!私より有るもの有るんだからその分重くなってもしょうがないじゃない!!」

 

『でしたら箒さんの方が!!って箒さん止めてくださいな!いいじゃありませんか!学年一あるんですからそれ位仕方がないじゃないですか!!』

 

「黙れ!!有る乳共!!」

 

「お~~~い、一応ルールで通信は無しになっているぞ」

 

「『(黙れ(お黙り)!!)』」

 

「はい!すみません・・・」

 

 

乙女を傷付けた罪、償ってもらうわよたいち~~~~!!

 

 

Side・太一

 

専用機を持っているセシリアは兎も角、打鉄を脱いでいる筈の篠ノ之の声まで聞こえた様な気が・・・。

 

それにしても後半分逆恨み的な思念が向けられているような・・・切っ掛けは俺だが火種を大きくしたのはお前等自身だぞ。

 

それにしても甲龍の防御力は厄介だな、あれでバランスを崩さなかったのは重量だけでなくあの防御力の高さが衝撃をも和らげたか・・・。

 

でも正直こっちの手札じゃあ不利だな・・・さっきのセシリア戦でも不利だったけど、それは攻撃が当てにくい、

攻撃を回避しにくい事からで、防御力が低かったから何とか当てて対処できたが、今回はその逆だ、

攻撃を当てやすくなっているが、こちらは威力が小さくて相手は固い、決め技のキックも一度じゃあ・・・ならば・・・。

 

 

「死ねえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

「って!何物騒な事言って、物騒なもん振り回して突っ込んでくるんだ!?」

 

 

鈴は双天牙月を連結させ、回転させながら鬼の形相で迫って来た・・・あまりにも怖かったから思わず逃げるように避けちまったよ。

 

 

「乙女に重いなんて世界共通の禁句よ!!その罪アンタの命で償いなさい!!」

 

「そんな大げさな・・・」

 

「凰さん!!その失礼極まりない男を八つ裂きにしなさい!!」

 

「鈴ちゃん!!がんばれ!!乙女心を理解しない最低男を殺っちゃえ!!」

 

「IS学園生徒全員がアナタを応援しています!!ですからその不届き者の首をはねなさい!!」

 

「「「「「「「「「「フレーーーッ!!フレーーーッ!!り・ん・い・ん!!フレッ!!フレッ!!鈴音!!フレッ!!フレッ!!鈴音!!」」」」」」」」」」

 

「・・・ごめんなさい」

 

 

アリーナの観客席で俺達の試合を見てる殆どの生徒達が鈴を応援し、俺を非難し始めた。

 

禁句なのは知ってました・・・でもここまで大げさに、そして皆が共感してこんな事になるなんて・・・口は災いの元、

これからは控えます・・・でも・・・。

 

 

「だからって黙って遣られるか!!」

 

「喰らええええええええええええっ!!」

 

ガキイイイイイイイイイィィィィィィィィィィッ!!

 

 

そこから俺と鈴の激突が幾度と続いた。

 

鈴の双天牙月は清龍刀方の武器で一撃一撃が重く、二対あって連結させる事もでき、4通りの使い方が可能な武器だ、

その度に対処方法を変えないといけないから結構厄介な武器だ・・・俺的には好みな面白い武器でもあるけどな。

 

だが・・・そんな武器相手じゃ、俺のロングソードの耐久力じゃそう何度も真面にぶつかりあえない・・・鈴もそれに気付いているな。

 

なら・・・そうならない様に戦うだけだ。

 

 

ガキンッ!!カキンッ!!キインッ!!カンッ!!

 

「あら?如何したのかしら?最初の勢いがないじゃない」

 

「猪娘が、勢いは大事だけど、勢いのままに突貫し続けたら痛い目見るぞ」

 

「なら見せて貰おうじゃないの!!」

 

 

不敵に笑いながら叫ぶ鈴。

 

傍から見ても俺が不利で鈴が優位に思える状態だ、先ず武器の耐久力を考えれば普通にぶつかりあっていれば、

先程言った様に俺の武器が先に破壊される・・・だけど・・・。

 

 

ピキッ・・・!

 

「えっ!?」

 

 

先に悲鳴を上げたのは鈴の双天牙月だった。

 

 

「如何して!?何で太一の剣より硬い筈の私の双天牙月が・・・」

 

 

距離をとって、刃の側面の中央から罅が入った片方の双天牙月を信じられないと言った目で見る鈴。

 

 

「言っただろ?勢いそのままに突貫し続けると痛い目を見るって」

 

「くっ・・・一体何をしたのよ?」

 

「時間が無いから、それはまた今度教えてやるよ」

 

 

まあ・・・単純に刃の側面を狙って捌いていただけなんだけどね。

 

正面から受け続けたら俺の剣の方が先に破壊される・・・なら正面からではなく側面から叩き捌き防ぐ。

 

それなら剣に掛かる負荷も少なくなるし、同じ個所を狙って叩けば先に破壊できるって訳さ。

 

 

「でも・・・まだもう一つあるわよ!!」

 

「あれ?それ捨てちゃうの?」

 

 

鈴は連結を解いて、罅の入った方を捨て一対となった双天牙月で切り掛かってくる・・・勿体ない、今思うと5通り目の使い道があったのにな。

 

でも正直言うと状況はあまり変わってはいない、鈴の武器を1つ・・・と言ってもその半分を使えなくしただけで、

未だ互いに一度も真面なダメージを与えていない。

 

今までISでは、織斑と篠ノ之と接近戦をしたが、武器の特性と鈴の腕前が相俟って一番手強い。

 

・・・今の所接近戦しかできないしそれが取り柄なのに、鈴と比べたら総合して劣ってしまうなんて不憫だなアイツ等・・・。

 

それに鈴にはまだ不可視攻撃の衝撃砲がある・・・対策方法はあるが、こんな至近距離じゃあ今ではどうしようもできない。

 

それともう1つ、衝撃砲には厄介な特徴がある・・・それは・・・。

 

 

「太一!」

 

「!?」

 

「私が龍砲・・・衝撃砲の特徴を理解してないと思った?」

 

「いっ!?」

 

ドシュウウウウンッ!!

 

「がはっ!!」

 

 

衝撃砲のもう1つの特徴、それは至近距離から発射しても、自身への被害が少ない事。

 

ミサイル等至近距離で放てば、爆風で自身にもダメージを負うが、衝撃砲の弾は圧縮された空気みたいな物だ、

相手が爆発でもしない限り、ある程度の至近距離から放っても自分には被害はない。

 

良く出来た武器だよ本当に・・・咄嗟にエックスが前面上部にシールドを三重に張ってくれたから損傷は防げたが、

SEは大きく削られた・・・しかも当たった時の衝撃で呼吸が乱れて、一瞬思考が停止した・・・。

 

 

「止めよ!!」

 

 

でも・・・そんなのは師匠との組手で何度も・・・何度も・・・。

 

 

「体感済みだああああああぁぁぁぁぁ!!」

 

ガキンッ!!

 

「何っ!!くっ・・・!」

 

 

乱れた呼吸を無理やり戻し、咄嗟に振り落とされた双天牙月を払い除けて距離をとった。

 

鈴もあの状態と体勢から急に対応して来た事に驚き、一瞬追撃が遅れた。

 

 

ドシュン!!

 

「おっと!」

 

「アンタ本当に人間!?普通あの状態から直ぐに持ち直せないわよ!!」

 

「俺を肉体と忍耐、そして精神的に誰が鍛えたと思ってんだ?」

 

「・・・・・・黙っててくれるかしら?特にあの人には!!」

 

「案外もう聞かれてるかもな」

 

「・・・おぉ~~~のぉ~~~・・・」

 

 

俺が人間じゃなかったら俺を鍛えた人達も人間じゃねえってこった。

 

恵姉は兎も角、実は千冬姉さん結構こういうのは気にするんだよな、“ブリュンヒルデ”と呼ばれるのを嫌う理由も、

優勝した第1回モンド・グロッソでやり過ぎて、一部“ブリュンヒルデ=人外”って呼ばれていたからなんだよな・・・。

 

 

「まあ安心しな、今日は放課後用事で出掛けるって言ってたから、多分本人には聞かれてはいない」

 

「本当?」

 

「まあ・・・管制室で管理している先生や職員が報告するか見せるかもな・・・なんせ俺達の模擬戦な訳だし・・・」

 

「それもうどの道詰んでるじゃないの・・・」

 

「御愁傷様・・・まあ、そんな時は俺も立ち会ってやるから」

 

「ありがとう・・・」

 

よっぽど怖いんだな・・・まあ俺も何度か本気で怒られた事は何度もあるけど・・・ある程度は耐性が付いた、

それにそう怒られるって程の事じゃないし、多分大丈夫だろ。

 

 

「さあ!気を取り直して続きをやろうぜ!」

 

「そうね・・・じゃあ、喰らえ!!」

 

ドシュンッ!!

 

「ちっ!」

 

 

まずは衝撃砲を如何にかするか・・・。

 

鈴の視線と目を見ればある程度は予想できるが、今の状態じゃあ長くはもたない・・・。

 

 

ドシュ!ドシュ!ドシュ!

 

「そんな単調攻撃!!」

 

ドシュン!!

 

「ちっ・・・」

 

 

鈴は俺の放ったレーザーを全てかわし、衝撃砲を俺に向け放った。

 

シールドで防ぎ、そのまま連続で全弾丸を撃つが、過半数が外れて地面に当たった。

 

 

「如何したのかしら?疲れて当たらなくなったのかしら?」

 

「さあね・・・」

 

 

次に撃てるようになるのに後20秒・・・今日は風が無いから“散る”事は無いが、念の為に速攻で次の手を打つか。

 

 

「なら早く負けて楽になりなさい!」

 

ブオンッ!!

 

「はいそうですねって言えるか!プロミレンドレーザー!!」

 

バシュウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!

 

「おっと危ない!」

 

 

迫って来た鈴の攻撃を後ろに飛んで避け、そのままプロミレンドレーザーを放つが避けられる。

 

だが打ち止めはせずにプロミレンドレーザーを放出し続けて鈴を追う。

 

そして辺りはそれによって舞った砂煙によって視界が悪くなっていった。

 

 

(ふっふ~~ん・・・太一、アンタの狙いは分かっているのよ・・・この砂煙を利用して自分の位置を分からなくする気ね。

でもお生憎様・・・ISのセンサーの前にはそれは無意味よ・・・降りてきたところを最大出力の龍砲で狙い撃つ!!)

 

「くっ・・・中々やるな鈴・・・」

 

(下手な小芝居は結構よ・・・今だ!!)

 

「鈴さっきのお返しに、俺がISのセンサーの前に、こんな砂煙の煙幕が通用しない事を知らないとでも思ったか?」

 

「えっ!?」

 

ドシュウウウウウウウゥゥゥゥゥゥンッ!!

 

 

鈴は俺が地面に着地したと同時に衝撃砲を放った。

 

 

ドシュンッ!!

 

「なっ!?龍砲を放ったにもかかわらず突っ込んで・・・はっ!?」

 

 

気付いたか・・・俺が砂煙を巻き上げたのは俺の姿を隠す為じゃない。

 

衝撃砲の発射のタイミングを完全に見切る為だ。

 

空間を圧縮して放つ衝撃砲は、その時どうしても周りの空間・・・空気の流れが変わるし、放たれた衝撃波は目に見えないとは言え、

そこに実在する空気の弾丸、放てば砂埃は不規則に舞ってその弾道を読める。

 

弾道さえ見切れれば・・・。

 

 

「避けるのは容易い!!」

 

(避けた!?でも弾道が見えたとしても反応は多少遅れる筈なのに・・・やっぱアンタ凄いわ・・・でも、

威力を無視すればチャージ時間が少なくてもは・・・)

 

パシュ!パシュ!

 

「えっ!?」

 

「それを教えたのは俺だ・・・しかし残念だな、それでも圧縮して放つのに掛かる時間は最低でも4秒は必要だ」

 

「なっ!?」

 

 

スパイダーネットを使い龍砲の銃口を塞ぎ、そのまま鈴ごと引き寄せた。

 

 

「うおりゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「!?まずい!!」

 

ドッ!!ドグンッ!!

 

「ぐっ!ぐう・・・」

 

ズザザザザザッ!!

 

 

向かう勢いと引き寄せる勢いを合わせての必殺の蹴り・・・だが咄嗟に鈴は防御を固め、ギリギリの所で踏み止まった。

 

 

「こっ・・・この程度で私の甲龍は・・・」

 

「ならもう一発喰らわせるまでだ!!」

 

「はっ!?」

 

 

蹴りを当てた後、俺は反動を利用して上空へと跳び上がり、そのま鈴に向かって垂直に落下する。

 

 

「でりゃああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

ドドッシュンッ!!

 

「きゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

轟音と共に激しく舞う砂煙。

 

砂煙が晴れると地面に若干めり込むように倒れる鈴の姿があった。

 

 

「大丈夫か鈴?」

 

「・・・もっと感情を込めて心配しなさいよ・・・」

 

「そんだけ喋れれば大丈夫だな・・・自分で立てっか?」

 

「うっ・・・ん・・・・引っ張って・・・」

 

「はいはい」

 

 

体の半分近くが地面にめり込んでいるんだ、自力で抜け出すのは難しいよな。

 

 

「あんた女の子相手になんて蹴りを2回も入れてんのよ!」

 

「何言ってんだ、今まで一撃必殺の蹴りを1回耐えたのはお前が初めてだぞ」

 

「そうだけど・・・もうちょい気を使いなさいよ」

 

 

女の子に気をねえ・・・ここ2日程殆ど気を使いっぱなしですけどね・・・。

 

 

「何よ?」

 

「いや・・・何でも無いよ・・・」

 

「ふ~~~ん・・・まっ、負けちゃったけど楽しかったわ、これからよろしくね太一」

 

「あぁ・・・織斑を共に扱くか」

 

「・・・程々にしなさいよ・・・この後の模擬戦でもね」

 

「さぁ・・・如何だろう?」

 

「じゃあ私は戻るわね・・・連戦するとはいえ、私に勝ったんだから無様な試合するんじゃないわよ」

 

「努力するよ」

 

 

さて・・・次の織斑で最後か、クライマックスに行くか・・・。

 

 

Side・楯無

 

さすがね太一君・・・スペックの差を考慮しての戦法と、それを実行できる彼自身の身体能力と度胸、

どれをとっても何処の国の代表になってもおかしくはないわ。

 

実際彼は私に・・・。

 

 

「あの・・・更識さん・・・」

 

「ん?何シャルル君?あっ・・・私の事は楯無で良いわよ、もしくはたっちゃんでも良いわよ」

 

「あっ・・・じゃあ楯無先輩、先程聞きそびれましたけど、太一が運命の人と言うのは・・・如何言う事ですか?」

 

「ん?あ~~~それね・・・思わず言っちゃたけど、これは彼が居ないのに教えたら彼に怒られそうね・・・」

 

 

彼女は何を思って聞いているのかしら?密かに秘めた無自覚な、有るかどうかも分からない好意から?

それとも・・・“件の彼女”の記憶がそうさせているのかしら?

 

それを詮索する資格も立場も、私には無いけど・・・これは彼と彼女の問題だから。

 

本当に私って酷い女ね・・・生徒会長としてと対暗部の者として、彼女自身が知らない事を勝手に調べて、

それを知って教える訳でも無く、こっちの一方的な事情で接近したんだから。

 

 

「太一君って自身の人間関係にはシビアなとこがあるから・・・」

 

「そう・・・なんですか・・・」

 

「あっ!でも彼が私の運命の人って言っちゃった時点で怒られちゃうか?」

 

 

まあ彼はこんな程度で怒らないけどね・・・彼の生い立ちからある程度シビアなのは違わないけど。

 

 

「あっ・・・いいですよ・・・本人も居ないのにプライベートの事を聞くのは失礼ですから・・・」

 

 

本当は気になってしょうがないって感じね・・・でもそこを聞こうとしないのは彼女の人間性によるものね。

 

彼女は見た感じと雰囲気で本来こう言った人を騙す事や、嫌がる事とは無縁な優しい女の子なのよね。

 

だとしたら彼女を送り込んだ人間は何を考えているの?

 

正直言って彼女にはこんなスパイの様な事は不向きだ・・・それに彼女は恐らく・・・。

 

太一君は何か知っているのかしら?

 

 

「あっ・・・一夏が出てきました」

 

「あぁ・・・織斑先生の弟さんか・・・最後の相手なんて彼気の毒よね」

 

「えっ?」

 

「だって彼が太一君に勝てる見込みが・・・殆ど無いのよね」

 

 

Side・鈴

 

あぁ・・・頭がまだ少しクラクラするわ・・・私女の子よ・・・アイツのあの容赦の無さは絶対師匠譲りよね。

 

でも・・・また太一と戦いたいとは思う、純粋に太一との戦いは楽しいと思えた。

 

確かに負けた悔しさはあるけど、それ以上に太一と戦っている時、雰囲気やノリなのか分からないけど、

取り敢えず楽しいのよ・・・それにまた挑みたいと言った再戦意欲も湧いてくる。

 

 

「おかえり鈴、大丈夫か?」

 

「全然・・・あの蹴りを喰らった皆なら分かるでしょ?」

 

「「「まあ・・・それは・・・」」」

 

 

あれは喰らった人間にしか分からない・・・最初の蹴りでまず全身に衝撃が伝わり、その次に魂と肉体が分かれるんじゃないかと思う衝撃に襲われ、

その後軽い脳震盪で頭はクラクラになるし、手足は痺れたような感覚になってしまう・・・できればもう二度と喰らいたくないわね。

 

 

「立って歩くのもしんどいわよ・・・後吐気もね・・・」

 

「無理はなさらない方が良いですわよ・・・はい、冷たいおしぼりですわ」

 

「ありがとう・・・はぁ~~~冷たくて気持ちいい・・・少し楽になったわ」

 

「でも八神の奴・・・まさか鈴にまで勝つなんてな・・・」

 

「鈴さんの対抗策があるとは言え、それを実際に行えるかは本人の力量しだいですしね」

 

 

本当に大した男よ・・・最初は有利に立っていたと思ったのに・・・。

 

 

「負けた以上認めるしかないわ・・・太一は強い・・・心技体のどれもが私より、ひょっとしたら代表候補生レベルじゃ収まらないわね」

 

「そうですわね・・・」

 

 

セシリアも太一の実力には納得してるようね・・・相手の実力を見抜けない様じゃ代表になんて成れないもの・・・それも素直に認めないとね。

 

 

「一夏、次はお前だが何か対策はあるのか?」

 

「う~~~ん、思ったんだけどさ・・・八神相手に作戦とかって意味あるのかな?」

 

「えっ?」

 

「それは・・・意味が無いかもしれないですわね」

 

 

太一の弱点・・・それを一言で表すなら「ISが弱い」と言う事。

 

弱いと言っても攻撃を受ければSEは削られるし、空も飛べる・・・私達が負けたのはさっきも言った様には単に乗り手の実力差だ、

私達の事を知りうる範囲内で対策を考え、不利に陥ってもそれを打開する方法を考える閃き、それを実行する身体能力。

 

厄介なのはそれを直ぐに閃く事・・・頭の回転が私達より良いのか、師匠である千冬さんと恵さんと熟してきた組手の経験からか、

状況に応じてその打開策を直ぐにうってくるから、こちらの対応が追い付かないのよね。

 

こっちが作戦を建てて挑んでも、直ぐに打開策を建てられて状況を一変されるから、意味が無いように思うのは仕方ないわね。

 

 

「作戦と言うのはおかしいと思うけど、自分の全ての力を使って、自分にできる事をして戦う・・・これしかないんじゃないかしら?」

 

「本当に作戦じゃないなそれ」

 

「だってアンタの頭じゃ太一に勝てないでしょ?私達にも言える事だけど」

 

「確かに・・・太一さんはあの歳でISの整備や武装の開発を国から許可されているのですから・・・天才は言い過ぎかもしれませんが、

私達よりは・・・「違うな」えっ!?」

 

「恵さん!?」

 

 

セシリアの言葉を否定したのは、太一のもう1人の師匠の織田恵さんだった。

 

 

「何故ここに?」

 

「何故って・・・今日はこのアリーナのメンテがあるからな、俺がここに来るのは当たり前だろ?

まあ病院帰りではあるがな」

 

「はあ・・・あっ、さっきの違うって・・・如何言う意味ですか?」

 

「あぁ・・・八神は正直頭の出来は良くなかった・・・今のアイツがあるのは、積み重ねてきた努力のたまものだ」

 

「頭の出来って・・・具体的には?」

 

「スポーツ万能だが勉強は全くダメな、昔の熱血漫画の主人公と同じ位だ」

 

「それはまた・・・」

 

「だが・・・自分の夢の為に必死で努力して、その実力が認められて今のアイツがあるんだ・・・夢があるじゃないか」

 

「夢・・・ですか?」

 

「今や男はどんなに優秀でも、認めず認められずに下だと決めつけられずに切り捨てられる時代だ、

なのにアイツはあの歳で政府に認められる実力を身に付けた・・・今の時代の男共にとって夢みたいなものじゃないか?」

 

 

そうか・・・今の時代どんなに優秀でも、男の立場は最低ラインの扱いしかされない中、アイツは認められて政府で働いているんだ・・・。

 

だとすれば・・・太一は一体どれほどの努力を積んできたんだろう?それ程の努力を必要とする太一の夢って一体?

 

そして・・・そんな太一の師匠である恵さんは・・・。

 

 

「あの・・・恵さんは今の時代を如何思います?」

 

「勘違いしたくそったれの無能な女共が威張り散らしながら街を闊歩している衰退時代」

 

 

まさかの即答で言い放った恵さんの言葉に、私達は一瞬凍りついた・・・。

 

 

「今時女の人でそんな事言う人いないと思いますよ」

 

「しかも政府で働いていて、織斑先生のライバルである貴女が言いますと、ある意味暴動が起きそうな気もします」

 

「ふん・・・確かに今より女が優遇される時代は無かったさ・・・でも、だからと言って全ての女が幸せとは限らないぜ」

 

「「「えっ?」」」

 

 

全ての女が幸せとは限らない?今の時代程女性が幸せになる事はないと思うけど・・・恵さんの言葉は何処か重く、

切なさと悲しさが込められている気がして・・・誰一人としてその真意を聞こうとはしなかった・・・。

 

 

「そんな事よりも・・・ほれ!千冬の弟、次はお前だろ?頑張って行って来い!」

 

バシンッ!!

 

「いって!!はっ・・・はい!!」

 

 

一夏は恵さんに背中を押され、そのままアリーナ内へと出て行った。

 

 

「しかし・・・一夏もあまり浮かばれないだろうな、幾らなんでも3連戦もした後の八神に勝っても・・・」

 

「いや・・・残念だけどそれは難しいかもしれないわよ」

 

「何だと!?」

 

 

箒の言葉を否定する事を言った私に、箒は詰め寄って来た。

 

 

「凰!お前はあんな連戦した後の相手に、一夏が負けると言うのか?」

 

「負けるなんて言ってないわ・・・勝つのは難しいと言ったのよ」

 

「何故だ!お前とオルコットとの試合でダメージを負い、3戦もした後で体力など残ってない相手に・・・「お待ちになってください!」オルコット!?」

 

「鈴さん・・・太一さんはひょっとして・・・」

 

 

セシリアは気付いたようね・・・私が何をもって一夏が太一に勝つのが難しいと言ったのか。

 

 

『Final Round!!』

 

『レディ・・・・・・』

 

『『ゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォッ!!』』

 

 

っと・・・どうこうしている内に始まっちゃたわね。

 

一夏一緒に言わなかったんだ・・・結構カッコいいし楽しいのに・・・。

 

 

Side・三人称

 

「きゃ~~~~~~!!織斑く~~~ん!!」

 

「頑張れ~~~~~~!!」

 

「八神なんかに負けるな~~~~~~!!」

 

「私と付き合って~~~~~~!!」

 

「織斑受けの八神攻め・・・イケるかもしれない!!」

 

 

一夏が出た瞬間、客席は火山が噴火したかのごとく大きく揺れ、マグマの如く応援(中には全く違う内容もある)の言葉が吹き荒れる。

 

 

「お~~お~~~相変わらず人気だねお前、どさくさに紛れて交際も求められているし・・・返事聞かせたらどうだ?

え~~~っとあそこはWF-47か・・・俺に勝ったらこう言えよ、「君の応援のおかげで勝てたよ、君は俺の勝利の女神だ付き合ってくれ」って」

 

「お前は何言ってんだよ・・・保々初対面の女の子と買い物行ってもつまらないだろ?」

 

「・・・何言ってんのお前?」

 

「えっ?何って・・・だからあの子、買い物に付き合ってくれって事だろ?今のお前の言葉じゃまるで俺と恋人になってくれって意味じゃないか、

相手の気持ちを理解しないでおかしな事言うなよ・・・だからお前女子からの評価が低いのかもしれないぞ」

 

 

太一とエックスは一夏のその言葉に開いた口(エックスに口があるかは不明)が塞がらなかった。

 

この場の空気と流れでそんな事言う奴はいねぇ・・・と心で呟き、何時か本当に背後から刺されるんじゃないかと本気で心配しだす。

 

 

『太一・・・僕はあの女の子と鈴達が可哀想で仕方がないよ』

 

「俺はそれより彼女達の思いが成就するのが先か刺されるのが先か・・・若しくは成就すると同時に他の女から刺されるかのどっちか心配だよ」

 

『どちらにしても彼がバットエンドになるんだ・・・』

 

「と言うか報われない人数が半波ない気がするんだよ・・・本当に刺されても仕方がないとか同情できないレベルなんだよ」

 

『少なくとも口と態度は悪いけどまだ相手の気持ちをくみ取って対応する太一はマシだよ』

 

「うん・・・口と態度が悪いは余計だな、本当の事だけど・・・」

 

「如何した八神?」

 

「何も・・・まあこれが最後だし、最初っからクライマックスに行くぜ!」

 

「何だよそれ?でも残念だな・・・どうせなら万全のお前と戦って勝ちたかったな」

 

 

太一は一夏の言葉に対し、少し冷めた様な目で一夏を見る。

 

 

(万全な状態ねぇ・・・確かに残りのSEを考えたらそうかもしれないが、俺自身は如何かも分からないのか?)

 

『太一、残りのSEだと一撃か二撃で尽きるよ』

 

「あぁ・・・分かってる」

 

(不利なのはセシリアの時から変わらないのに、それでもこの落ち着き様・・・同じ時の彼には無かった物だ・・・でも・・・)

 

「織斑、昨日お前が俺が本気を出さない事に怒った様に、俺にも事闘いにおいて2つだけどうも我慢ならない事がある」

 

「えっ?」

 

 

太一は鋭い眼光で一夏を睨み強い口調で言い放つ。

 

 

「それは闘う前から勝つ、それと負けると確定付けている事!勝つ気で挑むのは良い、自信無く恐怖や不安はあるが勇気を振り絞り挑むのも良い、

しかし勝つと確定付けて戦うのは相手に対し、負けると確定し戦うのは自分に対して失礼だ!」

 

(この熱いところは同じだね)

 

「なっ!?じゃあ昨日のお前のあれは何だって言うんだ!あれだって俺に対してかなり失礼だろ!!」

 

「かもな・・・だが手加減をするのも実力の内だ」

 

「何!?」

 

「相手の力量を見極め、必要最低限の力で倒す・・・加減を間違えれば返り討ち、もしくは・・・」

 

「?もしくは・・・何だよ?」

 

「その答えは闘いの中で機会があれば教えてやる・・・」

 

「減らず口を・・・しかも意味が分からない・・・」

 

「まあ何を言っても言訳とかに聞こえるならそれでもいいさ、だがそれが俺の闘い方だからな、さっきも言ったが相手の力量を見極めるのも実力の1つだ」

 

「くっ・・・」

 

 

一夏は内心苛立っていた。

 

セシリアと鈴の2人の代表候補生を連戦で勝利した太一の実力は明らかに自分より数段上だろうと理解はしている。

 

しかし計三戦もした後でSEは残り僅かで体力も残っていない筈で自分の勝利は保々確定している、

なのに太一は自分に勝つ気でいる・・・それが自分をそんな状態でも勝てる程弱いと思われていると思った。

 

 

(何だよ八神の奴・・・俺がそこまで弱いっていうのかよ!確かに昨日は負けたけど、お前はもうヘトヘトじゃないか・・・)

 

 

しかしここで一夏は1つ大きな勘違いをしていた。

 

SEが残り少ないのは目に見える事実ではある・・・だが・・・見える様で見えない事を見落としていた。

 

 

「さあ・・・此処を使える時間も限られているし俺も疲れているからさっさと始めるか?」

 

「なら速攻で終わらせてやる!!」

 

「ふっ・・・Final Round!!」

 

『レディ・・・・・・』

 

「『ゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォッ!!』」

 

「毎回毎回うるせえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

一夏は試合開始と共に瞬時加速を使用し、太一の視界から外れる様に高速で移動した。

 

 

(瞬時加速と、昨日は使わなかった零落白夜を合わせて一気に勝負をつける!!)

 

 

一夏は昨日使用しなかった零落白夜を使用し、一撃で確実に仕留めようとした。

 

しかし威力を考えると、残りSEが少なく、装甲も消耗している現状の零式にそれは完全なオーバーキルであり、

一歩間違えれば操縦者諸共重傷どころか命すら奪いかねない事を一夏は気付いていない。

 

更に言えば、瞬時加速を使用しながらの攻撃はその勢いもプラスされて威力を増すが、高速で移動しながら、

しかも軌道修正しながらの攻撃は難しい。

 

それを操縦者にダメージを与えずに寸止め、若しくは加減をする事などISを乗り始めて2か月足らず、

更に命のやり取りをする様な戦闘経験も保々無しの一夏にそれが出来るか?答えは考えるまでもなくNOだ。

 

零落白夜の威力の高さ、その危険性も姉である千冬から聞かされて知っている筈の一夏。

 

それができなてないのは、怒りでそれを忘れたか、又は勝負を焦ったか・・・

 

どちらにせよ当たってしまったら、重傷は避けられない・・・。

 

 

(背後を取った、もらった!!)

 

 

そう・・・当たってしまったら・・・。

 

 

ドゲシッ!!

 

「なっぐああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

零落白夜を発動した雪片が当たる瞬間、突如左方向から凄まじい衝撃が一夏を襲い、そのまま一夏は地面を転がった。

 

 

「なっ・・・今のは・・・?」

 

「昨日それを防がれたのをもう忘れたのか?」

 

「!?」

 

 

回し蹴りをした後の格好で自分を見る太一に、今のが太一のカウンターキックによる衝撃だった事に、

混乱気味の頭を無理やり落ち着かせ理解した。

 

 

「勝負を焦ったな・・・しかし残念だったな、行動が単純だったからすぐに予測がついたよ」

 

「くっ!」

 

「悔しがっているところ悪いが・・・早くそれ切った方が良いんじゃないのか?」

 

「えっ?」

 

 

ファーストアタックが失敗した事に悔しがり、太一を睨んでいた一夏は、今だ零落白夜を発動したままだった。

 

 

「えっ!?あっ!」

 

「零落白夜は簡単に例えると蝋燭の火と同じだ、火を灯しっぱなしだとその分早く消耗するからな」

 

「そっ・・・そんな事分かってる!・・・くっ・・くそっ!」

 

(解除するのに少し手間取っているみたいだな・・・それにしても、無人機との戦いの時、零落白夜を攻撃するタイミングで発動と解除する様に言ったのに、

あん時は出来たのにもう忘れたのか?それとも・・・ん?あれは・・・)

 

 

太一はふとアリーナの客席に見知った顔を見つけた。

 

 

(ちょうど良い機会かもな・・・)

 

「くそっ・・・今度こそ当てて・・・」

 

「織斑!」

 

「んっ!?」

 

 

太一は天を指差し・・・見方によってはまるで沈もうとする太陽を掴んでいる様にも見える・・・そして静かに、それでいて客席に聞こえる様に語り出す。

 

 

「お婆ちゃんが言っていた・・・」

 

「・・・はっ?」

 

「誰かを目標にするのは構わない・・・しかし、自身を理解しない者は何者にも近づけない・・・所詮人は他人にはなれないのだから」

 

 

その言葉は一夏だけでなく、客席に居るある人物に向けての言葉であった。

 

 

「それって・・・如何言う・・・」

 

「今のお前がそれだ・・・真似をするのは構わないが、もっと自分の力量を理解しな」

 

 

太一の真似の単語と、更に力量を理解しろと言われた一夏は、自分の心と目標を見透かされ、お前には無理だと言われた気がした。

 

 

「俺には・・・無理だって言うのか?俺に・・・俺が千冬姉と同じには成れないと言うのかよ!!」

 

「・・・ハッキリ言うとそうだ」

 

「そんな事!お前に言われる筋合いはない!!」

 

「・・・勘違いしている様だから言うけど・・・い「黙れえええええええええええええええええええっ!!」って聞けよ」

 

 

太一の言葉を聞こうともせず、再度零落白夜と瞬時加速を合わせて使用して突撃してくる。

 

 

(コイツ昨日も思ったけど姉関係にだと沸点が低いな、そんな状態のコイツに教えようとしても無駄か・・・ならさっさと終わらせるか)

 

 

今の状態の一夏に何を言っても無駄と判断した太一は早めに終わらせようとした。

 

 

ガシッ!

 

「えっ!?」

 

「うらあああああああああああああっ!!」

 

ドシャアアアアアアンッ!!

 

 

瞬時加速で高速移動して接近していた一夏の動きを見切って掴み、その勢いを利用して一本背負いで地面に叩き付けた。

 

 

「がっは・・・」

 

「まだまだ!!」

 

ドガンッ!!

 

「ぐふっ!!」

 

 

叩き付けた反動で浮き上がった一夏の体を、容赦無く下から蹴り上げ、一夏は上空へと飛んだ。

 

それを追う様に太一は脚部パーツの力で高速で飛び上がり、一夏に追い付くとすぐさまハンマーパンチで叩き落す。

 

 

「一夏!!」

 

 

一方箒達の居るピット内では一夏の劣勢に悲痛な箒の声が響いていた。

 

 

「やっぱり・・・太一は疲れていなかったみたいね」

 

「如何言う事だ凰!!」

 

「ピットに戻る時、太一は疲れている様子が無かったの、ポーカーフェイスで誤魔化したのかもしれなかったから確証はなかったけど・・・」

 

 

そう、一夏は太一が疲れ切っていると思っていた、しかし現実には太一に大した疲れは見られなかった。

 

 

「なら何故一夏にそれを言わなかった!!」

 

「確証を得ていない情報を教えても、太一さんが疲れ切っていると思い込んでいた一夏さんには無駄でしょう・・・」

 

「確かに・・・アイツって思いこむとそれ一本だもんね・・・」

 

「くっ・・・それにしても八神の体力は如何なっているんだ!?3戦した後にも関わらず全く疲れた様子が無いではないか!?」

 

「・・・そう言えば昨日太一さんが言っていましたわね・・・素手で3時間掛ければ熊を倒せるって・・・」

 

「そう言えば言ってたわね・・・如何なんですか?そんな熊を倒せる男のお師匠さん?」

 

「本当だ」

 

 

鈴の質問に率直に答える恵。

 

となると太一の体力は人並み以上となる、体力は体を動かすだけでなく集中し続けるだけでも精神的負担で減っていく、

それを熊相手に命がけの死闘を3時間もするなど、とんでもない体力を必要とする。

 

そんな太一が3戦した後とは言え、多少疲れはあるだろうが、ヘトヘトとなる筈がなかった。

 

 

「因みにですけど・・・恵さんと織斑先生は、太一さんをどの位までに強くなる様に鍛えたのですか?」

 

「ん?そうだな・・・」

 

 

セシリアの質問に暫し考える恵。

 

少しして恵が出した答えに、鈴とセシリアは絶句した。

 

 

「まあ私達が思える、最低でも身体能力で国の代表になれる位かそれ以上には鍛えたな」

 

「「・・・!?」」

 

「だからよく見ておけよ・・・お前達の目指す場所に近い場所に立つ八神の戦いを・・・俺はそろそろ仕事の準備に戻る、

今日はメンテがあるから終ったらさっさと帰れよ」

 

 

恵はそれだけ言ってピットから出て行き、残された3人は暫し呆然となった。

 

その頃アリーナ内では決着が着こうとしていた。

 

 

「さあ・・・これで終いだ」

 

「くっ・・・」

 

 

一夏は今太一から少し離れた場所で地に伏せている状態で倒れていた、

 

一夏は太一の攻撃を受けている時も零落白夜を切らずにいた為、白式の残りSEは僅かとなっていた。

 

止めを撃とうとゆっくり一夏に近付く太一。

 

しかし一夏も諦めてはいなかった。

 

 

(もう少し・・・油断して近付いたところに一撃を決めてやる!)

 

 

ゆっくり近づく太一。

 

それを待ち構える一夏。

 

そして太一が雪片が届く範囲に近付くと・・・。

 

 

「今だ!!」

 

 

零落白夜を発動させた雪片で斬りかかる・・・がっ。

 

 

「織斑、何かしようとするなら顔に出さない様にするんだな」

 

「なっ!?」

 

ゲシンッ!!

 

 

太一は雪片の零落白夜を纏っていない部分を蹴り上げ、雪片は一夏の手を離れて宙を舞う。

 

 

「あっ・・・」

 

 

切望の様な眼差しで宙を舞う雪片を掴もうと手を伸ばす一夏。

 

 

ガシッ!

 

「はっ!?」

 

 

しかしそれを先に手にしたのは自分ではなく・・・。

 

 

「ふっ・・・」

 

「やっ・・が・・・み・・・・」

 

「おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 

太一は手にした雪片を、本来の持ち主である一夏目掛け振り下した。

 

雪片は一夏の手から離れ少ししか経っていないので、刀身にはまだ零落白夜のエネルギーが纏わっていた。

 

 

(零落白夜を発動している雪片が俺に向かって来る・・・零落白夜を・・・!!)

 

 

この時一夏の脳裏に、零落白夜の説明をする千冬の言葉が何度も浮かんだ。

 

 

『零落白夜は威力が高すぎると言う弱点もある・・・万が一の場合は最悪の事態もあり得る』

 

(万が一?万が一の事態って・・・『死』!?)

 

 

理解はしていた・・・理解しているつもりだった。

 

しかしそれがいざ自分に向けられたとなると、その最悪の事態・・・即ち死の単語が頭の中を支配し恐怖を生んだ。

 

 

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

 

 

恐怖から一夏は喉が裂けんばかりの悲鳴を上げ、自分目掛け迫ってくる恐怖を拒む様に両腕を上げ目を瞑った。

 

 

「・・・・・・・・・」

 

ピーーーッ・・・

 

『シールドエネルギー残量0!戦闘続行不能!』

 

「えっ!?」

 

 

しかしいくら待っても衝撃は来ず、代わりに白式の現状を表す・・・自身が敗北したと知らすアナウンスが流れた。

 

 

「何呆けてんだお前?」

 

「えっ?」

 

 

目を開けると太一は雪片を肩で担いで立っていた。

 

 

「あっ・・・そっそうか・・・当たる前にエネルギーが切れて・・・「違うよ」えっ!?」

 

「腕を見てみな」

 

「へっ?・・・あぁ!!」

 

 

腕の装甲を見ると、一直線に斬られた跡があった。

 

それは紛れもなく、雪片で斬られたものだった。

 

 

「織斑、零落白夜を纏ったままの雪片が迫ってくる感じは如何だった?」

 

「そっ・・・それは・・・」

 

 

怖かった・・・そんな事言える筈も無く、一夏は目を逸らして黙り込んだ。

 

 

「言いたくないならそれでいい、しかしその感じは決して忘れるな、そしてそれを感じさせたものが自分の力である事もな」

 

「っ・・・」

 

「織斑・・・千冬姉さんに憧れ、それを目指すのは良い・・・それは誰もがそうだからな」

 

「・・・・・・」

 

「でもその千冬姉さんだって、積み重ねてきたものがあるから今がありそこに居るんだ、その真似を付け焼刃程度の腕しかないお前程度じゃ、

そうそう出来る程軽いものじゃない」

 

「おっ!俺は!!」

 

「また弟だからと言いたいのか?弟だから同じ事が出来ると?」

 

「くっ・・・」

 

「そんなに簡単にできると思うなら、お前自身が千冬姉さんの努力を・・・積み重ねてきたものを貶している様なものだぞ」

 

「!?」

 

 

太一の言葉に一夏は奈落に落とされた気分になった。

 

織斑千冬の名前に傷や泥をつけない・・・そんな弟になりたい・・・そうでいたいと願っている一夏にとって、

太一その言葉はそれを打ち砕くものであった。

 

そしてそのまま一夏は項垂れ、動かなくなった。

 

 

「・・・約束通り、明日からお前達の訓練に参加してやる・・・」

 

「・・・・・・あぁ・・・」

 

「・・・同じになれなくても、誰も何も言わねえよ・・・」

 

「?」

 

「お前はこの世に只一人の、織斑一夏って1人の人間なんだからな」

 

「八神・・・っ!明日から頼む!!」

 

「ふっ・・・おう、それと今日の反省点や俺の言葉の意味を考えとけよ」

 

 

太一はそれだけ言い残し、自分のピットに向かって歩いていった。

 

 

(八神・・・それでも俺はやっぱり何時か千冬姉の様になりたいんだ・・・だから・・・諦めないぞ)

 

 

Side・太一

 

『太一、最後の攻撃の時は、「必殺!俺の必殺技・・・零落白夜ヴァージョン!!」って言った方が良かったんじゃない?

折角最初っからクライマックスって言ったんだから』

 

「天の道を往き、総てを司る男ネタもやったんだ、これ以上ネタをぶっ込めるかよ」

 

 

にしても、明日から色々と大変だな・・・まあ取り敢えずは、アイツ等が普段どんな訓練をしていたかを見て今後を考えるか。

 

 

「太一!」

 

「おうシャルル、待たせたな」

 

「そんな事ないよ、太一の戦い方を見るだけでも僕にとって参考になったし」

 

「それは俺と戦う時の参考か?」

 

「ふふっ・・・如何だろうね?あっ・・・そうだ、あのさ太一・・・」

 

「んあ?」

 

「あの・・・その・・・彼女さんが来てるよ・・・」

 

 

はあ?彼女?誰の?俺の!?

 

シャルルは一体何を言って・・・俺に彼女なんて・・・あぁ・・・成程そう言う事か。

 

 

「はあ~~~い♪太一君お疲れ様♪」

 

 

今俺は心底疲れたって顔してるな・・・さっきまでそこまで疲れてはいなかったのに、あの人を見た瞬間どっと疲れた気がする。

 

実際この人が関わると疲れるんだわ、これがな・・・。

 

 

「こんな所で何してるんですか?更識先輩」

 

「もう太一君ったら、私と君の仲じゃない・・・た・て・な・しって呼んで♪」

 

「アンタと俺は今では先輩と後輩、それと生徒会長と一般生徒程度の仲だと思いますけど?」

 

「君が生徒になる前からの付き合いじゃない」

 

「そん時も生徒と整備員の関係しかない気がしますけど?」

 

「もう素直じゃないんだから」

 

 

いや素直に言ってんだが・・・しかし何をシャルルに言ったのか分からないが、取り敢えず誤解を解かないとな。

 

 

「シャルル・・・因みにこの人に何を言われた?」

 

「えっと・・・その・・・太一が楯無先輩の運命の人って・・・」

 

 

何をもって運命の人?

 

俺とこの人はそんなロマンチックな関係と言うか、出会ったその時から若干血生臭い事をした程度だが・・・。

 

 

「更識先輩、何をもって俺が運命の人なんて言ったんですか?」

 

「ん?だって君と私は何れ生徒会長の座を賭けて戦うんだから間違ってないでしょ?だから運命の人、

違う?次期生徒会長有力候補さん」

 

「・・・そこは色んな意味で“宿命のライバル”の方がしっくりくる気がしますよ」

 

「えっ?あの・・・話が見えてこないんだけど・・・それに太一が次期生徒会長有力候補って・・・まだ太一は1年生ですよ?」

 

 

まあ転校生のシャルルは・・・と言うよりも、まず1年生の殆どは知らないだろうな、IS学園の生徒会長になる条件を。

 

 

「シャルル、IS学園の生徒会長は、1つの条件を満たせば学年は関係無くなれるんだ」

 

「1つの条件?」

 

「そう、それはIS学園最強である事よ」

 

 

このIS学園は何を思ってかこの条件を満たした者をIS学園の生徒会長にする事にしている。

 

確かにIS操縦者を育成する学園ではあるし、卒業した後の有効な要素になると思うけど・・・。

 

 

「性格が最悪な奴がなったら如何するんだと思う様な決まりだよな」

 

「えっと・・・それは・・・」

 

「実際今の生徒会長も性格に難ありだ」

 

「太一君・・・それは思っても本人の前で言う事じゃないわよ・・・」

 

「それは失礼・・・シャルル、この生徒会長の脳みそと操縦の腕は信用していいけど、口だけは信用しない方がいいぞ、

無駄な時間と体力を浪費するだけだ」

 

「・・・アナタも人の事言えないわよ」

 

「遣られる前に遣れって事ですよ」

 

 

ISの操縦だけでなく、頭も良いから仕事は熟して優秀なのは認めるが、その頭を人をからかうのにも使ってくるので非常に残念とも思える。

 

まあ聞く限り嫌われているって話は聞かないし、俺も別に嫌いって訳でもない。

 

何だかんだ言ってはいるが、人の上に立つ才とカリスマ性は持っていると思う。

 

実際さっきの会話でも棘を感じなかったし、ボケとそれに対処する友人同士のやりとりと言った感じだ、

シャルルも最初は俺達のやり取りにオロオロしていたけど、それを感じ取ったか今はそんな様子はない。

 

 

「それで・・・何しに来たんですか?まさか俺の応援って事はないでしょ?」

 

「まあね・・・」

 

 

更識先輩の目が変わった・・・さっきも言ったが、この人は仕事は熟す人だ・・・それこそ教師が踏み込まない、

踏み込めない域の仕事まで・・・。

 

 

「シャルル・・・すまないが2人だけにしてもらえないか?」

 

「えっ?それはいいけど如何して・・・」

 

「どうやら生徒としてでなく、整備員として話を聞いてほしい様だ・・・機密に関わるかもしれないから、

先に帰っててくれないか?」

 

「うぅ・・・うん・・・」

 

 

あれ?何でそんな寂しそうな顔するかな?

 

シャルルは空気が読めるし、代表候補生だからこう言った事は理解できる筈なのに・・・。

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

何だか俺が悪いみたいな空気が・・・帰っててくれってのが悪かったか?じゃあ如何言えば・・・あっ!そう言えば・・・。

 

 

「・・・俺としてはシャルルには早く帰ってもらいたいな」

 

「えっ!?」

 

 

うっ・・・そんな泣きそうな顔するなよ・・・色んな意味で嘘とは言え罪悪感が・・・。

 

 

「だって今日お前が晩飯を作るんだろ?」

 

「へっ・・・?あっ!そうだった・・・」

 

「結構楽しみにしてるんだぜ、お前の作るフランス料理」

 

「えっ!?」

 

 

これは本当の事、シャルルが本当は女だって事を知っているのもあるけど、本場フランス人が作るフランス料理が食えるんだ、

楽しみにしない方がおかしい。

 

 

「ちょっと長くなるかもしれないし、それにつき合わせたら遅くなっちまう・・・丁度腹も減ってきた頃だし」

 

「わっ・・・分かった!今直ぐ帰って作るね!楯無先輩失礼します!」

 

 

うん・・・如何してそんなに焦るのかは分からないけど、焦っていてもちゃんと先輩に挨拶をする辺りは流石シャルル、人間が出来ているな。

 

 

「早く帰って来てね!美味しいご飯作るから楽しみにしててね!」

 

「おっ・・おぉ・・・なるべく早く帰るし、楽しみにしてるよ・・・」

 

「絶対だよ!僕頑張って作るから!早く帰って来てね!」

 

「分かったって・・・遅くても8時前には帰るから」

 

「えっと・・・その・・・あのね・・・」

 

「はよいけい!」

 

「ふぇ!?はわわ・・・ごっごごごめん!」

 

 

只・・・うっかりな所があるよな・・・この会話、聞かれて大丈夫か?更識先輩には聞かれてるけど・・・この人の事だ、恐らく・・・。

 

 

「可愛いわね“彼女”、あんな可愛い女の子と同室なんて男の子として嬉しいかぎりじゃない?」

 

「やっぱり気付いて・・・いや、知っていましたか」

 

「フフッ・・・IS学園の生徒会長は伊達じゃないって事よ」

 

 

それだけじゃない・・・先輩の・・・「更識家」の情報網と収集力によるものだな、さすが対暗部用暗部家の現当主。

 

更識家の事は向こうに居た時に噂は聞いたけど、まさか実在してIS学園で生徒会長をしていたとは、ここに来て知った時は驚いたな。

 

 

「ここに来た本当の目的は、俺の模擬戦を見る為じゃなく、シャルロットを見極める為と言ったところですか?」

 

「その両方よ。アナタはこの私に唯一黒星付けた生徒なんだから」

 

「それ、俺がここの生徒になる前の話じゃないですか」

 

 

俺はここの生徒になる前・・・IS学園に整備員として来て少しした時に先輩と勝負をした。

 

結果は3本勝負で1勝1敗1引き分け・・・先輩に黒星を付けたのは事実だ。

 

 

「最初の知識勝負でしたIS関連のテストでは同点で引き分け、その次の料理勝負は私の勝ち、

そして一番自信のあったIS無しでの挌闘戦で・・・君に負けた」

 

「一つ目と三つ目は分かるとして、二つ目の料理勝負が如何してやったのか今でも意味不明ですよ」

 

「そりゃあ織斑先生のお弟子さんと聞いたら色々と挑戦してみたくなるじゃない」

 

「あの人の弟子と聞いて料理勝負を挑むのは土台違いだ、あの人は家事に関しては駄目人間だからな」

 

 

確かに俺は生活費のやりくりの中で、自炊が安くつく事に辿り着き、そこから料理の腕を上げたが、

元々料理をしだしたのは千冬姉さんの殺人料理から逃れる為だ!!

 

 

「当時ガキだった俺には・・・あの料理を口にするのが一番の苦行だった・・・あれは少量の毒を少しずつ呑んで慣らして抗体を作るなんてものじゃない、

致死量以上の毒を腹一杯に詰め込んで生き残れと言っているもんだ」

 

「・・・織斑先生をそんな風に言えるのは学園どころか世界広しとは言え、君と織田整備主任位よ・・・」

 

「この場に居たら拳骨が来ますけどね・・・それで?アナタから見てシャルロットは如何なんですか?」

 

「ふむ・・・自分の事よりまずは彼女の事が気になるか・・・ひょっとして惚れたの?」

 

「アイツが来てまだ2日目でそんな訳ないでしょ・・・それに、もう分かっている筈だろ?俺とアイツの関係を・・・」

 

「えぇ・・・でも驚いたわ・・・彼女の事を調べていたら5年前に君と関わっていたんだもの・・・おかげでこんなに早く調べられたんだけどね」

 

 

5年前・・・アイツ・・・シャルロットはある理由で一度日本に来ている。

 

そこから調べて足を掴んだか。

 

 

「彼女の・・・と言うよりも送り込んだ理由は、君も予測済みなんでしょ?」

 

「如何だろうな・・・」

 

 

正直言うと、シャルロットをここに送り込んだ目的は全て知っている・・・そう・・・全てを・・・。

 

この人は信用は出来る・・・しかし、今ここで言う事はできない・・・例え恵姉と千冬姉さんにも・・・。

 

 

「それは知っているけど・・・言いたくないって感じね」

 

「なら・・・分かりますよね?」

 

「えぇ・・・聞かないでおく・・・だけど・・・」

 

「・・・何ですか?」

 

「君自身・・・彼女を如何したいの?」

 

 

言いたい事は分かった・・・いや、分かる筈なのに、一瞬思考が止まって、更識先輩が何を言っているのか分からなかった。

 

 

「・・・如何言う意味ですか?」

 

「彼女と君の立場に関係を考えれば、安易に想像つくと思うけど?」

 

「俺があの子を脅して強姦するとか?」

 

「・・・それもあるわね」

 

「それは無い・・・俺自身、女性の水着写真を見るだけで赤面して硬直寸前に陥る、ドの付く初心な草食系が・・・。

下着姿を見ただけで絶対ショック死するね・・・そんな事はしない」

 

 

自分で言ってて情けなくなったよ・・・自分のこの弱点に・・・更識先輩の言葉に動揺している自分にも・・・。

 

 

「なら言わなければいいのに」

 

「いえ・・・どうも俺って強姦魔に見られるようでして・・・ねえ?」

 

「うっ・・・人の古傷をえぐるわね・・・」

 

 

少しでも弱みを見せたらそこを付け込まれるからな、まあ・・・あれは俺の中でもかなりの衝撃だったからな。

 

 

「ひどい後輩ねえ・・・まあ確かに、君ならそんな強姦まがいな事はしないわね・・・」

 

「分かってるn「でも彼女は君にとって仇の様なものよね?」っ!?」

 

「言ったわよね?彼女と君の立場と関係を考えればって・・・」

 

「・・・・・・」

 

 

俺は何も言わない・・・いや、言えないんだ・・・。

 

今口を開いたら・・・何もかもが・・・俺が今まで直隠ししてきたものが飛び出して、暴れ出して、崩れそうだから・・・。

 

 

「黙ってるって事は肯定と受け取って構わないかしら?」

 

 

俺はひたすらに黙る・・・振り返りもせず、只背中で更識先輩の言葉を浴びながら黙る。

 

 

「だってそうでしょ?彼女がワザワザフランスから日本の病院に来たのは」

 

 

黙れ・・・。

 

 

「彼女に必要なものが、この日本の病院にあったから」

 

 

もうそれ以上・・・。

 

 

「彼女が助かる為に」

 

 

何も・・・それ以上・・・。

 

 

「君は彼女が憎まない筈がない」

 

 

言わないでくれ・・・黙ってくれ・・・もう・・・もう・・・。

 

 

「彼女が来なければ・・・君の大切な人はしn「何も言うな!!」っ!」

 

「それ以上口を開くな!!その場に居なかった他人に!アイツの・・・アイツの恐怖と・・・覚悟を・・・くっ・・・」

 

 

ついに耐える事が出来なくなり、内に秘めた感情を先輩にぶつけてしまった・・・。

 

だが・・・最後まで・・・全てを曝け出す寸前で踏み止まり、自分の不甲斐無さに拳を強く握ってしまう。

 

 

「確かに・・・アンタの言う通り、俺は心のどこかでアイツを・・・シャルロットを憎んでいるのかもしれない」

 

「・・・それが当然かもしれないわ・・・私だって、君と同じ境遇なら、彼女を心の底から憎むかもしれないわ・・・。

私は・・・お姉ちゃんだから・・・」

 

「更識先輩・・・」

 

 

そう言えばこの人も・・・。

 

でも・・・まだこの人はどうにもできる・・・だが俺は・・・。

 

 

「でも・・・憎んだところでどうなるって言うんですか?」

 

「・・・・・・」

 

「俺がシャルロットを憎んで、例え復讐をしたとしても、アイツの・・・アイツの覚悟は?願いは?優しさは?交わした約束は如何なる!!

俺はそれを・・・俺の手で無駄にすると言うのか?アイツが助けたあの子を!!」

 

「・・・もういいわ」

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

「試す様な事してごめんなさいね」

 

「・・・見極められていたのは・・・俺の方だったと言う事ですか・・・」

 

「どんな経緯でも、この学園の生徒となった以上、私は生徒会長として彼女を守る義務があるのよ。

彼女の場合は、君がある意味で危険な存在でもあったから・・・」

 

「なら織斑先生なり誰なり、報告して俺とアイツを引き放せばいい・・・」

 

「でもね・・・同時に君は彼女に必要だって思えるの」

 

「何だと?」

 

 

この人は何を思ってそんな事を言っている?

 

さっきの事で分かる様に、俺も色々と限界が近いのかもしれない・・・それなのに、アイツには俺が必要だと?

 

 

「確かに君はシャルロットちゃんを憎んでいるかもしれない・・・しかし」

 

「・・・しかし?」

 

「それ以上に彼女を・・・そして“彼女”を守ろうとしてる」

 

「!?」

 

「だから安心して任せられるわ」

 

 

俺が・・・守ろうとしてる?

 

シャルロットを?それと・・・“アイツ”を?

 

いや・・・俺はアイツを守れなかった、今俺が守ろうとしているのは、最後にアイツと交わした約束だけ・・・それを果たす為に・・・・・・・。

 

本当にそれだけなのか?俺が本当に・・・今したい事は・・・今やらなければならない事は・・・今俺がしている事は・・・。

 

 

「太一君、もっと自分に素直になりなさい・・・私が言えた事じゃないけどね」

 

「更識先輩・・・今の俺には分からない・・・アナタの言った事の意味を、俺自身が本当は如何したいのかも・・・」

 

「そう・・・」

 

「いや・・・本当は分かっているのかもしれない、でも理解する為の何かが・・・今の俺に足りないのか・・・それとも・・・」

 

「悩めばいいんじゃない?それが人間に与えられた特権なんだもの・・・いざとなった私も力になるし」

 

「えっ?」

 

「忘れた?君はもうこのIS学園の生徒なのよ」

 

「俺もアナタが守る対象って事ですか?」

 

「それが長の役目よ・・・何よりも私自身の意志」

 

 

守りたい意志か・・・まったく・・・俺の周りはどうしてこうも強い女が多いのかね?

 

 

「ありがたいですけど・・・そんな時は当分来ないでしょうね」

 

「あら?如何して?」

 

「自分の妹との仲を解消しきれてないヘタレに相談してもねぇ・・・」

 

「うっ!そっ・・・それを言われると・・・」

 

 

実はこの人、周りからは完璧超人とか言われているが、実は妹とのある意味で不仲な問題を解消できないヘタレであり、

妹の事が気になって気になって仕方がない超の付くシスコンである。

 

 

「何を気恥しがる必要があるんですか?あの一件以来多少はマシになったんでしょ?」

 

「そっ・・・それはそうなんだけどね・・・」

 

 

あの一件とは、俺との三本勝負の事。

 

何でも出来る姉に対しての苦手意識から、距離をおいていた先輩の妹・・・しかしあの三本勝負で俺が1勝と1引き分けした事により、

何でも出来た姉も完全ではないと認識しだし、自ら先輩に歩み寄った・・・なのに・・・。

 

 

「折角向こうから来てくれたのに、何やってんですか?」

 

「うぅ・・・そうは言うけど・・・それまでの月日というものがあって・・・」

 

「別に大丈夫でしょ?そもそも俺に勝負を挑んだのだって、俺がアンタの妹と整備道具の貸し出しについて説明しているのを、

勝手にかんt「わーーー!!わーーー!!わーーーーーー!!」ってうるさいですよ」

 

「もう言わないで!!私が悪うございました!!あの時は本当にごめんなさい!!」

 

 

その時の事を思い出したくないのか必死だな・・・。

 

よっぽど恥ずかしかったんだな・・・俺にじゃなく、妹に本当は只のシスコンだと知られた事が・・・。

 

 

「まあまあ・・・更シスコン会長・・・」

 

「ちょっと止めてくれる!?その取ってつけた様なセンスの無いアダ名!!しかも何だか超を超えた更なるシスコンみたいじゃない!?」

 

「じゃあ・・・楯無酢昆会長」

 

「せめて最後に“布”を付けなさい“布”を!!いや・・・付けなくていいけど・・・」

 

「はは・・・歌舞伎町の女王が白い巨犬に跨って頭から食らい付きに来そうですしね」

 

「?歌舞伎町の女王?誰それ?夜の女王的な?№1キャバ嬢みたいな?それに白い巨犬?」

 

 

あぁ・・・この人この手の事は全く分からないんだ・・・妹は多分詳しいぞ。

 

 

「いえ・・・何でも無いです・・・詳しく知りたかったら妹にでも聞いてください」

 

「えっ!? かんちゃんに!?何であの真面目で可愛い私のかんちゃんが歌舞伎町なんて夜の街の事を知ってるのよ!?」

 

 

アカン・・・この人妹の名を出したらある種残念な人になる。

 

 

「はいはい・・・ある意味で切っ掛けを提示させたけど、シスコンをこじらせただけか」

 

「何よ?それじゃあ私がおバカさんみたいじゃない!?」

 

「バカですよ・・・事妹が関わると色んな意味でバカになります」

 

「ひどいわ!お姉さんをいじめてそんなに楽しい!?」

 

「さっきも言ったでしょ?遣られる前に遣れって」

 

「ぶぅ・・・でも、少しスッキリしたみたいね?」

 

「おかげさまで・・・溜めこんだものを少し出したら思いのほか多少スッキリしました」

 

 

千冬姉さんの言った通り、俺って色々と溜め込みやすいみたいだ・・・少しは吐き出さないと、今日みたいな事になりかねないな。

 

 

「多少力になれたようで何よりだわ・・・でも、1つ注意しとくわね」

 

「何ですか?」

 

「君は惚れてないって言ったけど、シャルロットちゃんはひょっとしたら君に惚れてるかもしれないわよ」

 

「・・・はっ?」

 

 

シャルロットが俺に惚れてる?何で?

 

この日何度目になるか分からない意味の分からないワードに、しばし沈黙。

 

 

「ひょっとしたらだから、完全に鵜呑みにしないでね」

 

「じゃあなんでそんな事を言うんですか?それにそう言うのって言わないのがエチケットでは?」

 

「確かに普通なら、同じ乙女としてこんな事言わないわ・・・本当に彼女が君に惚れているとしたら、

第三者の私が言うのは間違ってる・・・でもね」

 

「でも?」

 

「彼女の場合・・・記憶や人格が反映されるケースがあるらしいの・・・」

 

「!?・・・それって」

 

「えぇ・・・彼女の記憶か人格の影響か・・・兎に角シャルロットちゃんが君を見る目は普通じゃないわ」

 

 

そんなミステリー小説みたいな事って・・・でも、もしそうだとしても・・・。

 

 

「私が言いたいのはそれだけ・・・彼女をどの様に見るか・・・それは君が決めなさい」

 

 

アイツをどんな風に見て、如何接するか・・・そんなの決まってる。

 

 

「今のアイツは・・・シャルル・デュノアだ、それ以上でもそれ以下でも無い」

 

 

アイツはアイツなんだ、それ以外に如何見ろってんだ。

 

 

「そう・・・じゃあそろそろ帰ってあげたら?彼が待っているし、私と君に何があったか聞かれたら話しても良いわよ」

 

「何か微妙に奇妙な会話ですね・・・じゃあ失礼します・・・楯無先輩」

 

「うん、じゃあね太一君・・・任せたわよ・・・」

 

 

任せた・・・っか、言われるまでもない・・・確かに俺は憎んでいるかもしれない。

 

しかし・・・俺が積み重ねてきたものは、復讐心に駆られ傷付ける為に積み重ねて来たんじゃない。

 

それに・・・。

 

 

「何であろうと守ってやるさ・・・最初っからそのつもりだ」

 

 

Side・楯無

 

ふふ・・・2人共良い子でお姉さん安心したわ。

 

シャルロットちゃんの事は太一君に任せても大丈夫よね・・・もし何かあっても私の方でフォローするし、

太一君自身も当分は大丈夫よね。

 

さてと・・・次の問題は織斑一夏君か・・・予想はしてたけど、あそこまで弱いと正直不安ね。

 

明日から太一君とシャルロットちゃんが彼の訓練に付き合ってくれるみたいだけど、彼がマシになるまで何事も起きなければ良いけど・・・。

 

それまでは私達で何とかしないと・・・先日のアンノウン襲撃みたいな事になりかねないわね。

 

まあその為の生徒会であり、更識家なんだけどね。

 

 

「織斑君・・・世界は君が思っている以上に優しくもなく、かつ残酷なものなのよ・・・」

 

 

明日からまた忙しくなりそうね・・・息抜きでたまにあの2人をからかいに行こうかしら。

 

あっ!そう言えば太一君・・・最後に私を「楯無先輩」って・・・。

 

 

「フフッ・・・彼の中で私の株が少しだけ上がったかしら?」

 

 

To be Continued

 

 




今回一番書くのに手間取ったのがシャルの心境です、恋なのかそれとも別の感情なのか、そんな狭間で真意を見つけ出そうとするシャルを表現するのに苦労しました・・・駄文ですが・・・。

鈴は太一と弾につづき、気が合う友人ポジですね。

龍砲に関しては、私独自の解釈です。

一夏は弱いです・・・今後の訓練の為に弱いです・・・彼の成長に期待してください。

楯無をここで出したのは、シャルがスパイとして送り込まれた事を知らない筈がない、なのに原作では出なかった、
その矛盾を自分なりに解消させる為にあえて今出しました。

次回は何時できるか・・・第3次Zの天獄篇が出るまでには10周したいので・・・本当にごめんなさい・・・。
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