Side・太一
「さてと・・・問題児君とその彼女達を向かい入れるとするか」
俺はそうボヤキながら格納庫のシャッターを開けた。
シャッターが上がるとそこにはISと体がボロボロと言っていい少年と、いがみ合っている2人の美少女が立っていた。
少年の名は「織斑一夏」世界で初めてISを起動させる事の出来た男として、今世界が最も注目する俺と同い年の男子だ。
その後ろの少女は、ポーニーテールの黒髪の方が「篠ノ之箒」、そして金髪ロールの方が「セシリア・オルコット」。
「さて・・・今日は何をしたのかな?」
「その・・・接近戦と遠距離戦の訓練を同時に・・・」
こいつは・・・まあ大方後ろでいがみ合っている2人が無理やりやらせたんだろうが・・・こいつもこいつだな。
何だかんだで押しに弱そうだしな。
「昨日も言ったよな?今の自分に見合った特訓をしろって?」
「いや・・・俺も最初はそう言ったんですけど・・・」
「一夏はあれ位しないと上達しない!」
「そうですわ!それにどっちを優先にするか決めない一夏さんも一夏さんです!」
「だから一夏は接近戦向きだから私との特訓を優先した方が良いと言ったのに」
「あら接近主体だからこそ、遠距離戦の経験を積んでおいた方が大事ですわ!」
「いや!私は一夏とは幼馴染だし、同じ道場で一緒に剣道を学んでいたから一夏の癖も知っているから組手の相手は私が最適だ!」
「直接戦った事のある私だからこそ一夏さんの必要な事を理解しているのは私ですから、私の方が最適ですわ!」
「何だと!!」
「何ですって!!」
はあ・・・こいつらは。
見ても分かる通り、この2人は一夏に惚れている。
そして一夏はドの付く朴念仁で鈍感であり、2人の気持ちに気付いてはいない。
それで少しでも一夏との時間を増やしアピールをしたりする為に、一夏の特訓に付き合っているのであるが、
この様に「私が!」「私が!」と自分と一緒にと一夏に迫るが、その押しと迫力に負け、「どっちも」と言い、
それにキレて特訓と言う名の腹癒せをして、何時もボロボロとなって帰ってくるのだ。
「まあ・・・事情は知らんわけではないが、お前等もこいつの特訓に付き合ってやるなら、今のこいつのレベルに合わせてやれ、
オルコットはイギリスの代表候補生なんだからそれ位わかるだろう?篠ノ之も中学の全国大会に優勝した腕前ならISを使わなくても、
剣道で教えるなりあるだろ?こいつのISはブレードによる接近主体なんだから」
「他人は口を挟まないでくださるかしら!?」
「そうだこれは私達の問題だ!!」
「箒・・・セシリアも・・・」
「ほお・・・なら言わせてもらおう」
俺はそう言って手に持った端末を使ってあるデータを表示し、それを2人に見せた。
「篠ノ之・・・お前が借りていった打鉄は必ず、織斑程ではないが全体が傷だらけになって返ってくるし、
腕の関節部分の負担も激しい、これは回避行動が苦手か剣だけに頼ろうとしているかだな」
「うっ・・・」
「オルコットはBT兵器の使用率が高い、別にそれは悪くはないが、BTとのリンク機関の消耗が激しい、
これはまだまだお前がBTを扱いきれていないって事だ」
「くっ・・・」
「要するにお前達もまだまだ未熟者って事だ、整備員なめんなよ、機体の様子を見ればお前等がどんな風に扱っているかなんて一目同然なんだからな」
「「うっ・・・」」
「お前等・・・このやり取り一体何回するんだよ?八神と会ってからずっとこんな感じだぞ」
俺がここに来たのは数週間前。
ここに来る前俺は、日本政府のIS技術局で整備士として研修及びISに関して学んでいた。
俺の亡くなった両親は揃って技術者で、俺は幼かったからよく知らないが、それなりに有名だったらしく、
あのISの生みの親で篠ノ之の姉、「篠ノ之束」と共に初期ISの制作に携わっていたらしい。
その両親がISの実験中に起きた事故に巻き込まれて亡くなった後、俺は施設に預けられた。
俺は両親とある約束をしていた。
今でこそISは女性しか扱えない兵器だが、元々は宇宙開発の為のパワード・スーツとして開発されていた。
何れは男性も扱える様になった時、両親が設計開発したISを俺が纏い宇宙を飛ぶ・・・それが俺と両親の約束であり夢だった。
俺は両親の携わったISの世界に踏み込みたかった、だから俺は両親が亡くなったあの日から努力し、
その結果IS技術局で研修を受ける事が出来た。
まあ・・・多少は親のコネもあるかもしれないけどな、じゃないと俺みたいな小僧が政府の施設で研修なんてできる訳がないしな。
そして数週間前、今年のIS学園の入学者が例年よりも多い事も有り、整備員補充の意味で俺の居た技術局に白羽の矢が立った。
実際ISを扱う者達が居る場所で整備士として働くのも良い経験になると言う事で、俺はIS学園にやって来た。
それから入学式が終って、織斑とオルコットの決闘騒ぎの後、織斑のIS「白式」を整備する時にこいつ等に出会った。
それから・・・今も一騒動の真っ最中。
「それで?中国の幼馴染との対決前に仲直り位できたのか?」
「いや・・・それが・・・」
「あ~~~分かった分かった・・・最後まで言わなくてもいい」
数日前中国の代表候補生であり織斑の幼馴染の「凰鈴音」が転校して来たらしい。
そして小学生の頃の約束が如何とか口論となり、その時織斑が彼女のタブーを口にしてしまい、それから彼女とは険悪な感じらしい。
「お前明日その幼馴染とクラス対抗戦で当たるんだろ?そんなんで大丈夫なのか?」
「それは・・・その・・・」
「まったく・・・ISも壊したわけじゃないけどボロボロだし、お前自身悩みやら何かでモヤモヤしっぱなしだし」
まあ気持ちは分からなくもないけどな、俺も友達とそんな風になったら色々と悩んでしまうだろうしな。
「ふう・・・白式のメンテは任しとけ、ちゃんと明日の対抗戦で真面に動くようにしといてやるから」
「・・・すみません・・・」
「そんなに畏まるなよ同い年だろ?」
「だけど・・・正直言って頭が上がらない・・・」
確かに白式は専用機である事を抜いても、若干他のISと比べたらおかしい箇所が多々あるし色々とデリケートだからな、
こいつのメンテだけで徹夜は確定で、翌日は何時も寝不足だ。
こいつもそれを知っているからか、迷惑をかけていると思ってか、如何も俺に対して腰が低い。
「ISに異常がないか確認し、ちゃんとメンテして何時でも正常に動く様にするのが俺の仕事だ、気にするな」
「でも・・・聞いたけど、八神あまり寝てないんだろ?俺の白式はメンテに時間が掛かるし、それだけじゃなくて他の生徒が使ったISのメンテも有るから・・・」
「なら・・・お前はもっと白式を扱える様になれ、そうすれば損傷は減るだろう」
「あっ・・・あぁ・・・」
「・・・自分らしくやれ」
「えっ?」
「如何すればいいか・・・考えて悩んで時間が掛かるぐらいなら、自分らしく謝るなりなんかしてみろ」
「しかし・・・」
「泣いてたんだろ?」
「うっ・・・」
「その約束ってのは、その子にとって大切だった筈だ・・・それをお前が間違えて覚えているか覚えていないかなら、
先ずは謝れ理由がどうであれ、お前はその子を泣かしたんだからな」
「それで・・・大丈夫かな?」
「知らん」
「って!そんな無責任な!!」
「じゃあ仲直りしたくないのか?」
「それは・・・」
「だからそこはお前自身で決めろ、どうこうするにも行動しなきゃ何も変わりはしないからな」
「八神・・・分かった、俺明日謝ってみる・・・その理由は分からないけど、確かにあいつを泣かせてしまったのは事実だ、
先ず・・・その事で」
ふん・・・ようやく何時ものこいつらしくなったな。
「よし、こいつ(白式)は俺に任せておけ、明日問題無く動く様に治しておいてやるから、お前は明日に備えて休んでおけ」
「あぁ・・・じゃあ俺行くけど2人は如何する?」
「私は打鉄を指定の場所に戻してから部屋に帰るから先に行っててくれ」
「私もブルー・ティアーズについて色々聞きたい事が有りますので」
「そうか・・・じゃあ俺先に着替えてるな」
そう言って織斑は格納庫から出て行った。
そして完全に姿が見えなくなったのを確認すると。
「まあ・・・色々あるけど最初っからあのバカ(織斑)が悪いんだけどね」
鏡を見なくても分かる、俺は今呆れ顔で溜息を吐きながら呟いている事に。
凰が怒っている理由は簡単に言えば乙女心を傷付けられた事。
なんでも小学生の時に、「料理が上手くなったら枚に次酢豚を奢ってくれる」と約束したと織斑は言ったが、
これは記憶違いだと思う。
何故なら凰は女の子であって、それで約束を覚えていないと怒った・・・それから考えるに、おそらく凰は日本で言う、
「毎朝俺の為に味噌汁を作ってくれ」的な事を、女性視点で言ったのだと思う。
それなら理由を聞こうとしても、恥ずかしくて答えられない筈だ。
「お前達も大変だね?」
「べっ!別に私は一夏の事など・・・」
「そっ!そうですわ!!」
何だかんだ言ってきているが、顔を赤くしながら口元を緩めながら言っても意味ないぞ、モロバレだからな。
「しかし凰って子もやるな・・・まさか小学生でそんなプロポーズ的な約束するなんて・・・これはある意味で一歩リードか?」
「「はっ!!」」
俺はワザとらしく2人に聞こえる様に呟くと、2人は真っ赤にした顔をみるみる青くし何やらブツブツと呟きだした。
「そう言えばあいつ腕に打撲の跡があった様な・・・早く冷やすなり何かしないと明日に響くかも・・・」
「「失礼する(しますわ)!!」」
そう言うやいなや2人は物凄いスピードで格納庫から出て行った。
「頑張れよ~~~・・・多分気付いてくれないと思うけど」
アイツ等焚きつけるのは飽きないな・・・でもせめて篠ノ之は打鉄を戻してほしかったな。
しかし・・・何だろうな?
明日のクラス対抗戦・・・何か嫌な予感がする。
この時の俺は知るよしも無かった、明日のクラス対抗戦が俺の運命を・・・いや、この運命は始めから決められていたのかもしれない。
俺と・・・零式(ゼロ)が生まれ、出会った時から・・・。
Side・三人称
IS学園から遠く離れた某所。
端末や機材に埋もれた暗い部屋で、花畑で遊ぶ少女の様に部屋の中を楽しげに踊る様にし駆け回る女性が居た。
「あはは!明日はいっくんにサプライズ!明日はいっくんにサプライズ!」
楽しげに駆け回る女性は、何処か黒く歪んだ何かを纏っている様にも見えた。
「そう言えば・・・「八神先生の御子息がIS学園の整備士として来た」ってメールがあったけど・・・」
女性は暫し考える素振りを見せた後、興味が無いと言った顔でありながら声は楽しそうに・・・。
「覚えてないし興味無いや♪」
と言い放った。
「それより明日はいっくんと箒ちゃんの為!そしてこの私、束さんとち-ちゃんの為の準備が有るのだ!」
そう言い彼女・・・ISの生みの親「篠ノ之束」は後ろにある“何か”に愛おしそうに触れた。
「お母さん達の幸せの為に明日は頑張ってね・・・私の愛しい・・・娘・・・」
ギュルルルルン・・・・・・
「ふふふっ・・・あはははははははははははっ!!あはははははははははははははははははははははははははっ!!」
“何か”が起動する音を耳にし、束の顔は妖美にそして邪悪にも見えて笑っていた。
To be Continued
この作品の太一は、あの冒険を経験しないで、
大人と子供の中間である高校生になったらと想像して描いていた筈なのに・・・。
如何してこうなった!?