Side・太一
今日は織斑とその幼馴染である中国の代表候補生が対決する日だが、俺は各ISに不備が無いか確認する定期チェック中であった。
「おい八神、千冬の弟と中国の代表候補生の対戦始まったぞ」
「ん?あぁ・・・そうすっね」
格納庫に有るアリーナの様子を映し出すモニターで試合を見ていた女性の声で俺は作業の手を少し止めた。
「見なくていいのか?俺は中国娘が勝つ方に賭けるが?」
「賭けません!それにまだやらないといけない仕事が残っていますからね」
「別に構わないだろう?その仕事と言っても打鉄にラファールの定期チェックだろ?それなら昨日最後に見た時は何もなかったし、
別に大丈夫じゃないのか?」
「いや・・・人を乗せるいじょう、こう言うのはチャンとしておかないと」
「真面目だねぇお前」
「主任が面倒くさがりなだけでしょ?」
この作業着姿にキセルをプカプカと吸っている女性は整備班責任者で俺の主任にして、俺の色んな意味で師である「織田(おだ)恵(けい)」。
男勝りな性格でぶっきら棒な感じだけどメカニックとしての腕は一流で、父さんの生徒だったらしく、
俺が幼い頃からも、両親が亡くなった後も、何かと一番お世話になった人でもある。
恵さんも俺と同じ開発局に居て、此処で教師をしている、第1回モンド・グロッソ優勝者でブリュンヒルデの、
「織斑千冬」の推薦で一緒にIS学園にやって来たのだ。
織斑先生も父さんと母さんと顔見知りだったらしく、恵さんとも当時からの付き合いらしいけど・・・。
まさか再会して直ぐ殴り合いをするとは思わなかった。
挨拶をするまでもなく、恵さんが織斑先生を視界に入れた瞬間・・・。
『千冬勝負じゃ!!今日こそ決着つけちゃる!!』
『時と場所を選べ!!この時代錯誤の猪女!!』
ガキッ!!
あれ程見事なクロスカウンターを生で見たのは初めてだった・・・。
その後は2人とも気絶してしまい、俺を含めその場にいた全員を呆然とさせ、目が覚めた後、俺にその後の手続きや荷物運び等を押し付け、
織斑先生と共に飲みに行きやがった・・・仲が悪いのか良いのやら。
「しかしまあ・・・千冬の弟にしては覇気と言うか迫力が無いなぁ・・・」
「姉は姉、弟は弟、姉がどうだからって弟がそれと同じ必要はないでしょ?」
「確かになあ・・・でも、そう言うお前は親と同じであろうとしとるじゃないか?」
「俺のは・・・夢の為です」
「分かっとる・・・だが時々思う、その夢の為に“無理”をし続けて本当に良いのかと?」
「・・・・・・・」
無理・・・か・・・。
確かに俺はお世辞にも頭は良いとも、手先が器用でも無かった。
勉強も1回で覚えられなかったら2回でも3回でも何十回でも同じ事をして覚え、裁縫やプラモの作成に立体パズル、
手先を器用にする為や空間認識能力を高める為に色々やって来た。
「“あの日”からチョクチョクお前の様子を見に行ったが、その時のお前程見てられなかった気がするな」
「・・・そうかもしれないですね」
「研究所を見学しに来た時や、先生達が忙しくお前の相手をしてやれない時、俺がお前に空手を教えてやった時の事を覚えているか?」
「えぇ・・・」
「あの時のお前程・・・先生達と一緒に過ごしている時を除いて、楽しそうで活き活きとしていたぞ」
「かも知れないですね」
「じゃあ八神・・・今は楽しいか?」
今か・・・確かに今も体を鍛える意味で空手をやってはいるが、あの時ほど楽しくは感じられないな。
「楽しさは・・・あまり感じないですね」
「ならお前は如何する?」
「それでも続けますよ・・・俺が選んだ道ですから」
「・・・そうか」
恵さんはそれだけ言って、織斑と凰の対決に目を向けた。
「そう言えば・・・お前何で一度もこっちを向かない?」
ギクッ!
チッ・・・何とかそっち方面に行かなかったと安心していたのに・・・。
恵さんは作業着を着ているとは言え、暑いのか上の方は完全にチャックを下し開けていて、加えて汗ばんでいる所為か、
中のシャツが体にぴったりとくっ付いていて、上半身のラインが開けた作業着の間から見えている。
恵さんは男勝りな性格を抜きにして、男ならだれもが振り向く様な女性からしたら完璧なスタイルの持ち主であり、
顔も美人と言う部類に入る。
俺だって今年で16の小僧、気にならないと言ったら嘘となるが・・・なるべく見ない様にしていたのに・・・。
「はっは~~~ん・・・お前はまだまだ小僧だがいっちょ前に男だよな」
「なっ・・・何の事っすか?」
「これが気なって仕方ないのだろう?ほれ」
ばっ!
「!?」
恵さんは俺の前に立ち、半開きだった作業着を完全に開け、俺の眼球にその双山とも言える胸を焼き付けた。
「あえうえあえ・・・」
「うははは!!お前のその反応は何時見ても面白いな」
「主任!!年下だからってからかわないでくださいよ!!」
「一緒に風呂に入った仲だろうに、今更何を照れる必要がある?」
「それ俺がまだ幼稚園児の頃の話っすよ!恵姉!!」
「だっはっはっ!俺からすれば今も昔も大して変わらん!それと仕事場では主任と呼べこの馬鹿者!!」
ゴチンッ!!
「うげっ!!」
「仕事とプライベートは弁えろよ」
「今も仕事中の筈ですけど?」
「俺は良いんだ」
理不尽だ・・・この人は何時も何時も・・・。
昔っからこの手の悪戯でからかって・・・俺はあんたの玩具じゃないっつうの!
「さて・・・そんなお前に罰として1つ仕事をやる」
「はっ!?まだ定期チェック終ってないっすよ!!」
「ツベコベ言うな、上司命令だ」
「くぅ~~~で?何の仕事んですか?」
「うむ、実は今試合をしている中国代表候補生のIS「甲龍」のデータが足りなくてな」
「えっ?いやそう言うのって、国の機密も有りますけど整備の為にある程度は届いた時に渡される物では?」
「俺にとって不十分だ!だから今から管制室に行って、試合を見て甲龍に関してのレポートとデータをとれ」
「・・・えっ?それって・・・」
「いいからさっさと行け!試合が終っちまうぞ、千冬にはこっちから連絡入れておくから」
「はっ・・はい!・・・・主任、ありがとうございます」
俺は恵さ・・・恵姉に礼を言って格納庫から出て行き、管制室へと急いで向かった。
Side・恵
「まったく・・・小僧はもう少し小僧らしくしていればいいんだよ」
本当は見たくてしょうがなかったくせに、アイツは何かと夢が夢だと・・・その夢は、お前だけの夢じゃないんだぞ太一。
「先生・・・俺もアイツと同じです・・・アナタ達が俺に見せてくれた光景を・・・広めたい・・・」
只腕っぷしだけが強かっただけの荒くれだったこんな俺に、可能性をくれた・・・そんなアナタ達に、俺は恩返しをしたい。
そんな今の俺の当面の目標は・・・。
「お前を動かす事だな」
格納庫の隅っこで飾られる様に置かれているIS・・・先生達が作った名も無かったIS「零式(ゼロ)」を動かす事。
今まで誰も動かすどころか、起動すらした事の無いIS。
全身がまるでブラックボックスの様で、ロックも厳重で解析が不可能で、どんな優秀な科学者もその中身を見た者はいない。
だがこのISは欠陥品ではない・・・先生は確かに言った・・・「完成した」と。
こいつの起動には何か条件がある・・・それは“こいつ”にではなく、別の・・・俺達人間の方にこそ、
こいつを起動させる何かが欠けている気がする。
俺は科学者じゃないから詳しく分からない・・・だが先生はよく口にしていた。
『恵・・・ISには確かに力がある、だからこそ、その力に負けない強さが人には必要なんだ』
『人は弱いから・・・だからこそ人は力を求めてしまうの』
『本当の強さと弱さは己自身の内にある・・・その弱さに負けるか、強さを見つけ出せるか・・・』
『ISを扱う者は、その後者でなくてはならないの・・・でも一番いいのは自分の弱さを知り、それと向き合って行く事なの』
自分の弱さ・・・か。
千冬は自分に弱さなんて無いと言っていたが・・・俺は・・・有るな。
俺はこの性格で腕っぷしが強かったから、それらしい事をしなくても世間からは不良のレッテルを貼られ、
俺の事が気に食わない奴等からは喧嘩を売られてはそれを買って、そんな毎日を過ごしていた。
例え良い事をしても世間はそれを認めなかった。
その内に俺の心は荒んでいき、本当の不良に成り下がっちまった。
それは俺の心が弱かったからだ・・・世間って言うデカくもちっさい力に負け、俺は世間様の勝手につけたイメージ通りになっちまった。
そんな俺を救ってくれたのは先生だ・・・だから俺は先生に恩返しをしたい・・・だから俺は・・・。
「絶対お前を動かして見せるぜ・・・それかお前を動かせる人間を見つけ出してやる」
それにしても束の奴も何を考えてんだかな?
あんな欠陥段階のISを発表するなんて・・・その所為で世の中下らねえ思想の人間が増えちまって、
その世の中を変えちまった張本人は、世を騒がすだけ騒がして今や行方知らず。
千冬はあいつの連絡先を知っているみたいだが・・・教えようとしねえ。
「まったく・・・どいつもこいつも何考えているんだか分りゃあしねえ」
『敵が・・・来る・・・』
「ん?今何か聞こえた気が・・・気のせいか?さてと千冬に連絡入れておくか」
この時の俺は知らなかった。
まさかこの後に“あいつ”の歪みがあんな悲劇を起こすとは・・・。
Side・???
敵が・・・来る。
奴の手先か?それとも別の・・・だがこれだけは分かる、何か邪な心を宿した何かが近づいて来る。
僕の・・・僕は目覚めるしかないのか?
奴の手先なら僕は戦う・・・だけど、今の僕では・・・“彼”を失った僕に、戦えるのだろうか?
幾つもの人間達が僕の力を使おうとしたけど、僕はそれを拒んだ。
僕の力を持つにはあまりにも未熟だったから・・・。
でも・・・もし近づいて来る何かがこの世界に害をなす存在なら・・・僕は・・・。
To be Continued
オマケ・『NG』
どうせならここまでやってみたかった。
恵「はっは~~~ん・・・お前はまだまだ小僧だがいっちょ前に男だよな」
太一「なっ・・・何の事っすか?」
恵「これが気なって仕方ないのだろう?ほれ」
ばっ!
プルン!
太一「いっ!?ぶふうううううううううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
太一はド派手に鼻血を吹きだして気絶した。
恵「あっ!!今日熱かったから下着着けてなかったの忘れてた!!」
下着位着けてくださ
恵は「戦国乙女」の織田ノブナガをイメージしてます。
お館様の髪を黒くして下し、顔の模様を取った感じです。