DIGIMON・STRATOS   作:龍気

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今回は前回の補足と、太一のこれからを話し合う回です。

色々オリジナルの設定が入ってますのでご注意を。



第7話『始まりの一歩、その準備へ』

Side・三人称

 

「うわあああああああああああああああああああああああっ!!ああああああああぁぁぁぁあああああああぁぁぁあああああああああっ!!」

 

 

彼女は薄暗い部屋で1人叫んでいた。

 

 

ガシャンッ!!グシャッ!!

 

「ううううううぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 

ガキンッ!!

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

 

 

彼女は目から涙を流し、近くに有る物を手当たりしだいに壊していた。

 

彼女は泣いているのだ、はち切れんばかりの悲しみが彼女をそうさせている。

 

 

「死んだ!!あの娘が死んだ!!殺された!!殺されたんだあああああああああああああああああああああああああああっ!!」

 

ガチャーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!

 

「はぁ・・・はぁ・・・あの娘は私に刃向った・・・最初はその報いとして破棄してやろうと思ったけど・・・」

 

 

彼女は唯一壊さずに残してあった映像端末に映る映像を怨みと怒りを籠めた眼で睨む。

 

 

『やってっやるぜ!!』

 

バキバキバキッ!!

 

『ガガギガガッ!!』

 

『貫けええええええええええええええええええええええっ!!』

 

バキンッ!!

 

『ギッ!?』

 

ガシャガンンンンンンンンンンンンンンンンンッ!!

 

『ガッ・・・ギゴギガ・・・・』

 

『・・・・・・・俺達の勝ちだ』

 

 

IS学園のアリーナにて彼女の知らないISを纏い、彼女の娘(無人IS)を破壊する少年・・・零式(ゼロ)を纏う太一を憎悪の目で見ていた。

 

 

「あのIS・・・私は知らない、あんなにコンパクトでスマートなIS、私でも作れないし・・・あのISに使われているコアは、

私が作った物じゃない・・・私の言う事を聞かない娘なんていない!!」

 

 

実は彼女、此処から何度も無人ISだけでなく太一の零式を止めようとコアにアクセスしようとしていたのだ。

 

しかし、無人ISのコアは反応するも暴走を止めず、片や零式のコアにはアクセスが出来ない・・・いや、

アクセスする以前の問題だった。

 

なにせ零式のISコアは今全世界に存在する467機のどれにも該当しない物。

 

つまり、彼女・・・篠ノ之束博士以外の者が創り上げたISコアなのだ。

 

 

「気に入らないな・・・私以外でコアを作って、あれ程小さなISなんて・・・ちゃんと調べてないから分からないけど、

ある程度の基本動作は機能しているようね・・・そんなのこの天才の私にもできるかどうか・・・」

 

 

束は今、悔しさ、悲しみ、怒り、怨み、憎しみで一杯であった。

 

自分のよりも優れた性能を持つかもしれないISを作った者に、それを纏い自分の可愛い娘を壊した彼・・・太一に対して。

 

 

「何よりも・・・折角いっくんだけが特別だったのに・・・こいつの所為でそれが台無しだよ!!特別なのは私が選んだ人達だけでいい!!

それ以外なんて要らない!!必要ない!!不要だ!!排除だ!!消去だ!!除去だ!!」

 

ドーーーーーンッ!!ドーーーーーーーーーンッ!!

 

 

束は何度も壁や机、そこら辺に有る物を殴りながら叫んだ。

 

手が切れて血が噴き出そうと止めなかった・・・そしてある程度同じ事を繰り返した彼女は、光を失った眼で映像に映る太一を見て呟く。

 

 

「邪魔だな・・・ゴミはちゃんと片付けなきゃ・・・私の世界に・・・邪魔なモノは存在しちゃいけないんだよ・・・」

 

ぴちゃ・・・ぴちゃ・・・・

 

「ふふふっ・・・ふははっ・・・あはははははははははははははははははははははははははははははははっ!!」

 

 

彼女の狂気の笑い声が何処しれずに存在する部屋に響き渡った。

 

 

Side・太一

 

・・・俺は?

 

 

「バイタル安定・・・脈拍正常に戻りました!!」

 

「先生!!患者さんの意識が!!」

 

 

知らない天井だ・・・そして消毒液や薬の様な臭いが・・・此処は・・・病院?

 

一体如何して?それに体中が痛てえ・・・特に首回りと背骨と股関節が骨折しているのではないかと思うぐらい痛む・・・。

 

看護婦さんの言葉からすると、俺は意識を失っていた様だ・・・しかし何時?

 

意識が徐々に覚醒するにつれ、少しづつ思い出してきた・・・。

 

俺は確か・・・あの後・・・。

 

あのISを倒して、ゼロを解除して・・・。

 

恵姉と千冬姉さんが深刻そうな顔で駆け寄って来たから、心配をかけたと思い、無事だと知らせる為に俺も駆け寄って・・・。

 

 

『主任、織斑先生・・・心配をおかけしてすみま・・・』

 

ガシッ!ガシッ!

 

『えっ?』

 

 

いきなり2人に肩を掴まれて・・・。

 

 

『ISのコアごと破壊して如何する?』

 

『お前・・・機密データを使ったな?』

 

『あっ・・・そっ・・それには深い・・・海よりふか~~~い事情が・・・』

 

『『問答無用!!』』

 

ぶうううううううううんっ!!

 

『うええええええええええええええええええええええっ!?』

 

『『『えええええええええええええええええええええええええええええっ!?』』』

 

 

俺は2人によって空高く投げ飛ばされ、織斑達の驚きに満ちた声が聞こえて・・・。

 

 

ガッ!ガッ!

 

『えっ!?ちょっ!?』

 

 

俺を高く投げ飛ばし、少しした後飛んできた恵姉と千冬姉さんに、足を掴まれ、2人の肩口に首を固定され・・・そのまま落下・・・・。

 

あれ?これってひょっとして・・・・・・・。

 

あの某完璧首領に対して使われた、人気漫画のタッグ技バリエーションNo5の技では?

 

 

『『〇ッスル〇インバ〇ター!!』』

 

『ちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

どがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああんっ!!

 

『げっ・・・はあっ!!』

 

カーーーーンッ!!カーーンッ!!カーーーーーーーーーーーンッ!!

 

 

地に着いた時の衝撃で全身に激痛が走り・・・有る筈も無い、聞こえる筈も無いゴングの音が脳内に響いて、

俺はそのまま気を失って・・・って!!

 

 

「何命がけで戦った弟子を殺そうとしてんだ、あの師匠ズはあああああああああああああああああああああああああ!!」

 

ズガアアアアアアアアアアアアアンッ!!

 

「げごはっ!?」

 

 

意識が完全に覚醒し全てを思い出した俺は、あの極悪非道鬼畜な師匠2人に対して叫び起き上がった・・・と同時に頭に途轍もない衝撃が走った。

 

 

「病院では静かにしろ」

 

「ちっ・・・ちふ・・織斑先生・・・」

 

 

俺の横には極悪非道鬼畜な師匠の片方、千冬師匠が拳を擦って立っていた。

 

おそらく今のはこの人の拳骨だろう・・・相変わらず記憶が飛びそうな威力だ・・・。

 

 

「失礼極まりない事を考えている様だが・・・」

 

 

相変わらず心を読むなこの人は・・・恵姉も限らずだけど、俺ってそんなに顔に出やすいのかな?

 

 

すっ・・・・

 

「ん?」

 

「だが最後のあれは・・・私だけでなく、恵も肝を冷やしたぞ・・・・・・・太一君」

 

「・・・すみ・・ごめんなさい・・・千冬姉さん」

 

 

そうだった・・・千冬姉さんも恵姉も、結構・・・いや、かなり素直じゃないんだった。

 

昔から照れ隠しにそれらしい理由を口にして叱って(主に体にダメージを与える方法で)、その後はこうして頭を撫でながら、

若干反省気味な声で、慰めてくれたりしていたな・・・。

 

小学生の頃はよくこんな事を繰り返していたけど、俺が中学に上がるとお互いに忙しくなって、俺も無茶をする事が少なくなって、

こうやって叱られるのも・・・随分と久し振りで忘れかけていたよ・・・。

 

今は少し・・・いや、結構恥ずかしいけど、あの頃は・・・この時が本当に嬉しかったな。

 

両親を亡くした俺にとって、唯一本気で叱って、慰めて、心配してくれた人達の愛情を感じられたのだから。

 

 

「これだけ元気ならもう大丈夫でしょう・・・骨も・・・・・・・奇跡的に折れていませんし、明日には退院できるでしょう」

 

「・・・・・・・誠に申し訳ありません」

 

「お世話になります」

 

 

医者の先生の微妙な間に、その原因たる千冬姉さんはバツが悪そうに答えた。

 

しかし今日1日病院か・・・あれ?そう言えばゼロに恵姉は?

 

ゼロは・・・解除した後、待機状態になっている筈だが・・・問題はその待機状態が何なのかだが、大概が身に付ける物になる筈だけど。

 

さっきまで治療していたから外されたのかもな、何に変わったのか確認する前に“あれ”を喰らって気を失ったからな。

 

恵姉も・・・あの状態だったから、そんな状態であんな大技・・・。

 

 

「あの織斑先生・・・主任は?」

 

「・・・あの体で最後の“あれ”は無茶だった様だ、今は違う病室で治療を受けている・・・が、3日もしたら退院できるそうだ」

 

「あはは・・・やっぱり・・・でも良かった」

 

がらっ!

 

「八神!!」

 

「意識を取り戻したと聞いたが!」

 

「無事なの!?」

 

 

病室の扉が勢いよく開き、そこから織斑、篠ノ之、凰の3人が入って来た。

 

 

「あぁ・・・危うくお前の姉さんに三途の川を泳がされそうになったよ」

 

「八神・・・そんなに泳ぎたいならも一度行くか?」

 

「はいっ!すみません!」

 

「「「はは・・はははは・・・・・」」」

 

 

俺達のやり取りに織斑達も苦笑い・・・いや、これは同情か・・・そんな顔をしている。

 

 

Side・三人称

 

「そう言えばオルコットは如何した?織斑がいるなら一緒に居る筈だけど」

 

 

一夏がいる所に、箒、鈴、セシリア有りと思われるぐらい、周りから彼女達は一夏に付きまとっている。

 

そんな中でセシリアがいない事に疑問を抱き太一は一夏に聞いた。

 

 

「そう言えば知らなかったな、セシリアは頭を打ってしまって今治療中だ」

 

「そうか・・・なら俺の所より彼女の傍に行ってやれよ」

 

「あぁ、お前が目を覚ましたって聞いたから来たんだ、この後セシリアの所に行く、でも・・・その前に」

 

「ん?」

 

「お前・・・ISが使えたんだな」

 

「・・・それか」

 

 

当然と言えば当然の質問だ。

 

今世界で一夏を除く全ての男性はISを起動させる事が出来ない中、太一がISを纏って戦うのを見ればこの質問は妥当だ。

 

それは箒と鈴も気になるところの様だ。

 

だがここで彼等は1つ大きな勘違いをしている・・・それは零式を事知らぬゆえの認識の誤り。

 

 

「織斑・・・俺はお前みたいにISを起動させる事はできない」

 

「えっ!?でも・・・お前は確かに零式ってISを・・・」

 

「私も見たぞ、お前があのISを起動させるところを」

 

「それに主任の恵さんが言っていたけど、あんたISの扱いに長けた、あの人の弟子だって」

 

「あっ!それ千冬姉も言ってた!自分の弟子だって・・・如何言う事なんだよ千冬姉?」

 

「・・・これは教師としてではなく、家族としての話が含まれるな・・・」

 

「織斑・・・いや、千冬姉さんも恵姉もある程度伏せてくださいよ・・・」

 

 

普段こう言った場面では千冬からの出席簿が飛んでくるが、彼女のプライベートに関わる事の様なので出席簿は飛んでこず、

太一の千冬に対し“姉さん”発言に一同は驚愕する。

 

 

「盗聴とかは・・・」

 

「大丈夫だ、君が担ぎ込まれた時に既に調べた」

 

「さすが」

 

「なあ・・・何だよ2人共、俺達はもう何が何だか・・・」

 

「まあ待て、色々聞きたいと思うが、順番に・・・まずはゼロ・・・零式に関してだが話せる事は話してやる」

 

「あれは束が開発したISではなく、お前達が使っているISとは全く違うISなのだ」

 

「束さんが作ったISじゃない?」

 

「でも・・・確かISのコアは、姉さんにしか作れない筈」

 

「あぁ・・・“今は”な・・・」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 

千冬と太一の様子が明らかに変わって、それに疑問を感じる一夏達だが、それに構わず話を進める。

 

 

「織斑・・・お前は、俺がお前と同じでISを起動させる事が出来ると思っていた様だが、それは違う・・・むしろ逆だ」

 

「えっ?」

 

「俺が零式を起動させたんじゃない・・・零式が起動してくれたんだ」

 

「「「・・・・・・・ん?」」」

 

 

3人共太一の言葉が理解できていない様だ。

 

 

「もっと分かりやすく言えば、零式は男女問わず起動させる事が出来るISなんだ」

 

「「「なっ!?」」」

 

 

太一の言葉に一同驚愕する。

 

男女問わずに起動させる事が出来るISなんて発表されてもいないし、ISが女性にしか扱えない原因も開発者の束にも不明とされている。

 

そんなISが存在したと聞けば誰もが驚くのは仕方がない。

 

 

「そんな・・・でも私が触れようとした時は機動するどころか・・・弾かれて・・・」

 

「それは零式の・・・そう言えば千冬姉さん、零式は何所に?待機状態になっている筈ですけど・・・」

 

「・・・おそらくだが、そこに入っている物がそうだろう」

 

 

千冬さんは病室に備え付けられている台の引き出しを指差した。

 

 

ガラッ・・・

 

「これは・・・ゴーグル?」

 

 

その中にはかなり古い型、第二次世界大戦時中の空軍パイロットが所持しているのと同じ型のゴーグルだった。

 

太一はおもむろにそれを頭に身に付けた。

 

 

『太一、大丈夫だった?』

 

「エックス、心配かけたな」

 

 

ゴーグルを身に付けて聞こえた相棒の声に確信する、このゴーグルが零式の待機状態時の形態だと。

 

 

「八神・・・誰と話しているんだ?」

 

「あ~~そうか、お前等には聞こえないのか」

 

『う~~~ん、僕の声が聞こえた方が説明しやすいし・・・よし、ちょっと待ってね』

 

 

そう言って少し、エックスの声が聞こえなくなくなり・・・。

 

 

『あ~~~あ~~~、聞こえますか?こちらエックス、こちらエックス、応答どうぞ』

 

「遊ぶな・・・聞こえてるよ」

 

 

ゴーグルからエックスの声が聞こえ始めた。

 

 

「太一君・・・今の声は?」

 

『どうも、はじめまして・・・千冬さん、僕はエックス、零式の中にある意志のだよ』

 

「なっ!?」

 

「お前のIS・・・喋るのか!?」

 

 

一夏達と普段は滅多な事には驚かない千冬もエックスに驚いていた。

 

 

『君達のISにも意志が存在している筈だよ?意志が存在すると言う事はコミュニケーション能力があるって事、

言葉にして伝える会話は意志を持つ者なら可能な事なんだ、何時か君達の持つISも僕達の様に会話をする事が出来るかもしれないよ』

 

「そう・・・かな?」

 

「実感が湧かないわね」

 

「まあ色々気になる所はあると思うけど、話を戻すぜ・・・篠ノ之が零式を起動させられなかった話だったな」

 

「と言うより弾かれたのだがな」

 

『それについてはハッキリ言うと、僕は君に零式を使ってほしくなかった・・・拒んだと言った方が正しいね』

 

「なっ・・・何だと!?」

 

 

エックスの言葉に箒は怒りをあらわにする。

 

 

「貴様が私を拒まなければ、もっと早くあのISを倒せた筈だ!!それに・・・あそこまで危険な状況にも・・・」

 

『・・・これは自惚れでも何でも無い、僕は零式の力と可能性を理解している・・・だからこそ、

僕は零式を扱う者を選ばなければいけない・・・それにあの時だって、もし太一が条件を満たしてなかったら、

僕は太一に零式を託しもしなかっただろう・・・それで太一が・・・如何なってしまおうとも・・・』

 

「エックス・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

 

太一と千冬はエックスの言葉の真意を理解していた、そしてエックスの気持ちを・・・。

 

 

「私では力不足だとでも言うのか!!」

 

『・・・それ以前の問題だね、今の君では零式を持つ資格も覚悟も無い』

 

「きっ・・・きさ「そこまでだ篠ノ之」っ!?織斑先生!?」

 

「話が反れる・・・大人しくしろ」

 

「しかし!!」

 

「お・と・な・し・く・し・ろ・・・三度目は無いぞ」

 

「っ・・・分かりました・・・」

 

(確かに・・・篠ノ之には零式は荷が重すぎるな、そして彼・・・エックスの真意を理解していない)

 

 

箒はエックスに、自分に力が足りないから使わせないと思い込んでいる。

 

自身の力に誇りと自信を持つ箒だからこそ、そして専用機を持っていないが故に自分では一夏の力になれないと思い込み始めている為、

力に対する執着が強く、念願の専用機を手に入れるチャンスでもあった事態に、そのISにハッキリと拒まれて怒りが込み上げようとしていた。

 

千冬の言葉で大人しくなったが、その手は悔しさと怒りから強く握り締めていた。

 

 

「零式はお前達の扱うISとは違い、どの世代にも属さないISだ」

 

「どの世代にもって・・・まさか第4世代!?」

 

「いや・・・そもそもISとは未完成の段階で、世代が上がって行く事に完成に近づいていると言ってもいい・・・」

 

「もっとも、それは兵器としてで、本来の目的から大きくズレて行っているけどな」

 

「本来の目的?」

 

「太一君・・・」

 

「・・・分かってます」

 

 

一夏達はその時の太一の顔が、とても悲しい表情をしていた事に気が付いた。

 

 

「・・・零式は完成された・・・いや、本来の目的の為に作られたIS・・・そのプロトタイプだ」

 

「完成された?」

 

「プロトタイプ?」

 

「そう・・・もし世代付けするのであれば・・・第0世代」

 

 

零式はIS本来の宇宙開発を行う為のパワード・スーツを目的とされた、その完成系として開発されたISで、そのプロトタイプであった。

 

完成されたIS・・・今では誰もが扱える様にする事であると思われてはいるが、実際はそうではない。

 

たしかにそれを目指す企業や研究機関は存在する。

 

しかし・・・今の世は女尊男卑の世の中、もしどこかの企業が男性も動かせる切っ掛けをも見つけようものなら、

忽ち女尊男卑に依存、掲げている者達から目をつけられるのは必然。

 

それともう1つ、仮に男性にも扱えるISが普及したなら、女尊男卑によって虐げられ、怨みを持つ者達による報復、

それによって生まれる争いが起きると思われている。

 

そして・・・各国の政府等もそれを恐れている。

 

故に今ISは敵を倒す為の兵器としてのみに開発が進められていて、本来の宇宙開発の為どころか、

男性に扱えない原因を解明する事すら進んでいない。

 

 

「そんなISが・・・何故IS学園に?」

 

「あれは元々日本政府が極秘に管理しているISで、その管理責任は恵姉と千冬姉さん、そして一応俺にも有る」

 

「えっ?どうして八神にも?」

 

「織斑先生は・・・経路は分からないけど・・・何となくだけど分かる気がするけど・・・」

 

「確かに八神は政府の開発局で働いていて、織田整備主任と一緒に来たとは聞いてはいるが・・・」

 

「・・・良いのか?」

 

「構いませんよ・・・こいつ等も気になっているでしょうし・・・」

 

『太一・・・』

 

「分かった・・・零式の開発者は・・・太一君のご両親だ」

 

「「「えっ?」」」

 

 

千冬の言葉に一夏達は太一を見る。

 

そして納得感が出てきた・・・太一の両親が作ったから、太一に扱えるのだと。

 

 

「1つ勘違いしていると思おうが・・・今日以前に何度も起動させようと試みたけど、拒まれて弾かれたぞ」

 

『それにさっきも言ったけど、太一が零式を手にするのに相応しくなかったら起動しなかったよ』

 

「あっ・・・そうか」

 

「さて、零式について話せるのはここまでだな・・・零式はさっきも言った様に政府が管理しているISだ、

今はこれ以上の事は私でも言えない・・・が、政府からの正式な発表でも無いかぎり、決して零式に関しての事と、

束以外の者が作ったISだとは口外するなよ」

 

「えっ?何で?」

 

「おいおい・・・当然だろ?」

 

 

零式は世界各国のパワーバランスを崩しかねない可能性を秘めている。

 

男性にも扱える事だけでなく、一夏達には話していない零式の特性・・・それはまさに“インフィニット・ストラトス”の無限の可能性を意味する。

 

そんなISが世に知れたらそれを廻って争いが起きかねない。

 

それはある意味一夏自身にも言える事ではあるが、本人は気付いているのだろうか?

 

 

「だから零式と、それを持つ太一君、それ等に関係する全てを守る為の算段が可決するまで絶対に口外するな」

 

「なっ・・・成程、よく分かりました」

 

「まあ・・・如何なるか大体想像がつくけど・・・」

 

「・・・そうだな・・・」

 

「「「?」」」

 

 

太一と千冬の若干諦めに似た様子に、頭の上に?を浮かべる。

 

 

「なあ・・・八神は千冬姉と如何言う関係なんだ?」

 

「織斑先生は・・・弟子だと言っていたが・・・」

 

「恵さんもそんな事言ってたわ・・・後機密データが如何とか」

 

 

この3人・・・いや一夏が気になっていたのは零式とかではなく、太一と千冬の関係であろう。

 

普段自分には見せないような態度を太一に見せる千冬、それが当然の様に接する太一に嫉妬にも似た感情を抱き、

気になって仕方がないのであった。

 

 

「“あれ”については後でチャンと恵姉に謝るとして・・・俺と千冬姉さん、そして恵姉は師弟関係なのは間違いない」

 

「私と恵は太一君のご両親の生徒でな・・・その関係で知り合って、ご両親が忙しい時に世話をしていたんだ」

 

「えっ?八神のお父さんとお母さんって学校の先生なの?」

 

「てっきり束さんと同じ博士かと思ったけど」

 

「いや・・・確かに父さんは宇宙工学と機械工学専門の学者で、母さんは生物学と医学専門の学者だよ」

 

「私と恵があの人達を先生と呼び、そしてその生徒と言っているだけだ・・・もっとも、それだけあの人達には、

色々と学び・・・変わっていけた・・・」

 

「千冬姉・・・」

 

 

一夏は千冬が滅多に見せない穏やかな表情を見て、ますます過去に太一とその両親が、自分の知らなかったところで、

千冬とどの様に過ごしていたのか、ますます気になるのだった。

 

 

「私達が師弟関係になったのは、太一君が私達に鍛えてくれと言って来たからだ」

 

「それから俺は恵姉からは空手等の格闘術、千冬姉さんからは剣術を教えてもらっているんだ」

 

「そんな・・・千冬姉・・・俺には教えてくれなかったのに・・・」

 

「何を言う?私は言った筈だぞ、本気でやりたいなら、私で教えられる事は教えてやると」

 

 

それは一夏がまだ小学生の頃、剣道をやり始めてから少し、千冬に剣術を教えてもらった時に言われた言葉だ。

 

全ての武術にも言える事だが、剣術は己の心身共に鍛え、誰かを守る事も出来れば誰かを傷付ける術だ。

 

だからこそ千冬は、一夏が本気で剣術を極めたいと心から思った時に教えると言ったのだ。

 

 

「で・・・お前は中学に上がるまでは剣道を続けたが、その後は生活の足しにとアルバイトを始めたではないか」

 

(!?そうだったのか・・・だから・・・一夏に悪い事を言ってしまったな)

 

 

箒は一夏が中学時代剣道をしていなかった事、それによって弱くなった事に腹を立てていたし、それを聞いた時感情に任せて、

有無を言わさず無理やり剣道の特訓をさせた。

 

しかし一夏の家庭の事情を知っている箒にとって、それは気付けた事でもあったのに、嘗て自分を剣道で圧倒していた一夏、

その時の一夏に戻ってほしいと、自分が惚れた一夏の姿になってほしいと言う願望がそうさせなかった。

 

しかし、今の千冬の話を聞いて、そんな事にも気付けなかったと悔い、人知れず(千冬と太一は気付いている)暗い表情になっていく箒であった。

 

 

「だったら・・・その時何か言ってくれても・・・」

 

「お前がやろうと決めた事だ、私がとやかく言える事ではない」

 

「でも・・・俺が稼いだ金は受け取ってくれなかったじゃないか・・・」

 

「あの時は私の稼ぎだけでも十分生活が出来たからな、それにあれはお前が稼いだ金だ、お前が使うべきだろう」

 

「でも・・・」

 

「だが・・・その時のお前の言葉は・・・嬉しかったぞ」

 

「!!・・・千冬姉・・・」

 

(良い話だけど、千冬姉さんって素直じゃないからな・・・こうやって前置きを言ってからでないと本心言えないからな・・・、

だからこいつも拗ねるんだよ・・・でも後の言葉ですんげえ嬉しそうに・・・幼馴染とはえらい違いだ)

 

 

太一の目には嬉しそうな一夏と、暗い表情の箒と言った、正反対の心境に至る幼馴染同士が映っている。

 

何とも気まずい様な微笑ましい様な・・・そんな空気が立ち込めそうだったので、ここで話を終わらせようと口を開く。

 

 

「もうこれで良いだろ?早くおるこ・・・」

 

ガラッ!!

 

「とぅえ?」

 

「八神!!」

 

「けっ・・・けけ恵姉!?」

 

 

太一が話を終わらせようとしたら、突如病室の扉が壊れるくらいの勢いで開かれ、そこには病衣を着た恵がいた。

 

 

「お前は心配かけさせやがってこの大馬鹿者が!!」

 

 

病室に入って恵は真っ先に太一に飛び掛かり、ヘッドロックを太一の頭にかけ、万力の如く締め上げる。

 

 

ギリギリギリ・・・・・

 

「痛でっ!!痛でででででででででっ!!恵姉潰れる!!俺の頭がゼロ諸共潰れる!!」

 

『アガガ!!アガガガガガガガ!!』

 

 

太一の頭に待機状態で身に付けられている零式、巻き込まれて一緒に締め付けられている故、その意志であるエックスにもダメージが伝わっている様だ。

 

 

「恵・・・もうその辺にしておけ」

 

「ふんっ!あまり心配かけさせるなよ・・・」

 

「はい・・・ごめんなさい・・・」

 

 

ここで余計な事を言っては命の保証が無いと察し、素直に謝る太一。

 

そしてエックスの事を知らぬ恵に説明を始める。

 

 

「成程な・・・お前が零式の・・・」

 

『初めまして』

 

「エックスって言ったな・・・一応確認するが、一次移行の時に、こいつの端末に有ったデータをインストールしたな?」

 

『あぁ・・・あれ?太一が使えって言うから、太一の端末にハッキングして・・・』

 

「ほう・・・ハッキングさせてまで・・・」

 

「あの・・・恵お姉様・・・そっ・・・そんなに眉間に皺を寄せると折角のお美しいお顔が台無しに・・・」

 

「だ~れ~の~せ~い~だ~と~?」

 

「はい!私めに御座います!!」

 

「そう言えば・・・機密が如何とか言ってましたね」

 

「それって一次移行を早めるプログラムか何かですか?」

 

「・・・半分ハズレで半分正解だ」

 

「太一君が一次移行の時に使ったのは、一種の裏ワザみたいなものだな」

 

「千冬姉分かるのか?」

 

「まあな・・・ある意味やろうと思えば一夏に凰、そしてオルコットも可能だろう」

 

「俺達にも?」

 

「あの・・・織斑先生、私は・・・」

 

「・・・篠ノ之では無理だな・・・いや、太一君と同じ事をすれば可能だ」

 

「そう・・・ですか・・・」

 

 

千冬の回答に、仲間ハズレにされた気分になり、箒は俯く。

 

それを見て千冬は溜息をつき、話を戻す。

 

 

「太一君が使ったのは・・・試作段階のISのシミュレーションデータだろ?」

 

「・・・それ以外にないだろ」

 

「一応俺個人のデータですから・・・」

 

「「「シミュレートデータ?」」」

 

『兵器にしろ、車や飛行機と言った乗り物、機械を作る時は様々な工程を踏まえてシミュレーションをするのは分かるよね?』

 

「あぁ・・・」

 

「ISもシミュレーションをするにあたって、生身の人間を使い危険が無いか確認するんだ」

 

「えっ?でもそれって物凄くコストが掛かるんじゃ・・・」

 

「それにそれじゃあシミュレートしている人も危ないんじゃ?」

 

「確かに・・・だが、シミュレーション時は疑似体感スーツと仮想空間を使ってシミュレーションを行っている」

 

「「「疑似体感スーツ?」」」

 

 

疑似体感スーツはその名の通り、ISを身に纏った感じを疑似体感できるスーツである。

 

スーツに開発中のISのデータを送り、着ている者はそのISを纏った時の重み圧迫感そして衝撃等を体感する事ができ、

仮想空間内で様々な状況に環境を組み合わせて、歩行から飛行、はたまた疑似戦闘等をする事で、

纏った者に掛かる負荷や問題点を見つけだし、修正を行っていく。

 

ISの武器等も同じ要領でシュミレーションされ、それで問題が無くなれば組み立てられ、現実での最終チェックが行われるのだ。

 

 

「太一は日本政府の開発局でそのシミュレートをしていたんだ・・・勿論動かす方をな」

 

『疑似体感するのに男も女も関係無いもんね』

 

「そのシミュレーションの内容の良し悪しは関係無く、今後の開発の参考の為に記録は残しておくんだ」

 

「成程・・・でもそれが一次移行を早めるのに如何関係が?」

 

「鈍いわね一夏・・・一次移行にはまずその人の動きのパターン等をISに教えて、それを基に最適化のデータを組み上げ、

完成したら初期設定を初期化して最適化を実行するでしょ」

 

「そうか!シミュレーションとは言え、それ間違いなくISの稼働記録・・・それを初期設定のISに移せば・・・」

 

「そう、一次移行に掛かる時間は大きく短縮される」

 

「そうだ、織斑の弟と鈴、そしてあのイギリスのお嬢様にも出来ると言ったのはこれだ」

 

 

専用機持ちはISに、乗り手がどの様な動きをしているか常時記録されていて、それをコピーし、

新たに初期設定のISにインストールすれば一次移行の時間は大きく短縮される。

 

もし箒も自身が訓練用のISを稼働させている時のデータがあり、それを使えばいいだけの事だが、

彼女はそれをしていないので、千冬は箒には出来ないと言ったのだ。

 

恵達の説明に大きく納得する一夏達。

 

それと同時にある疑問も解消された。

 

恵と千冬が言った太一が「ISの扱いに長けた」と言った意味を。

 

シミュレーションで試作段階とは言え、様々なタイプのISを疑似体感で動かしていれば、初めての戦闘であれだけの動きが出来るのも当然だ。

 

それに加えて千冬+恵の弟子=身体能力高いの構図が組み上がっているし、戦い方も知っていよう。

 

 

「でも・・・確かにそれってヤバいんじゃない?」

 

「あぁ・・・緊急時とは言え、日本政府のIS開発の機密だからな・・・」

 

「お手数をおかけします・・・」

 

「よし・・・お前等ももう行け、此処に来る前にあのイギリスのお嬢様の治療が終ったって聞いたぞ」

 

「セシリアが?箒!鈴!行こう!!」

 

「あっ・・・一夏待て!!」

 

「ちょっ!待ちなさいよ一夏!!」

 

 

セシリアの治療が終わったと聞いて、一夏達は急ぎ足で太一の病室から出て行った。

 

 

Side・太一

 

「さて・・・エックス、君に聞きたい事がある」

 

「俺もだ・・・おそらく千冬と聞きたい事は同じだと思うけどな」

 

『何?』

 

「君は・・・零式に組み込まれていた・・・いや、コアの意志ではないな」

 

 

いきなり千冬姉さんが確信を突いた事を言い出した。

 

恵姉も首を頷けている様子からして、やはり千冬姉さんと同じ事を聞こうとしていたんだな。

 

それは俺も聞こうと思ったが、せめて俺達だけの時に聞いてから相談しようと思ったけど、やっぱり無理だったか・・・。

 

 

『・・・・・・何時から気付いていたの?』

 

「最初っからだ」

 

「太一が付けたとしたら、“ゼロ”って呼ぶだろうし、お前が名乗ったにしろエックスって名には本当の名を隠しているイメージがある」

 

『・・・ご名答』

 

「エックス・・・俺も君が零式・・・ゼロに本来存在する意志じゃないって事は、気付いていた」

 

『・・・あの言葉だね?』

 

「あぁ・・・零式のワンオフは君達の手で創る・・・“君”達って事は、俺と本来コアの中で存在する意志、

そいつが本当の零式・・・ゼロ、そいつと創るって事だ・・・」

 

『うん・・・僕はこの零式の中に存在はしている、しかし僕は本来ISの意志として誕生したモノじゃないまったく別の意志』

 

「君は一体・・・何者なんだ?」

 

『・・・と「“通りすがりの何たら”ってのは無しだ」ありゃりゃ・・・』

 

「「ぷっ・・・」」

 

「『ん?』」

 

 

俺とエックスのプチ漫才を見て恵姉と千冬姉さんが笑っていた。

 

 

「まったく・・・警戒して損したぜ」

 

「そうだな、こんな状況でそんな漫才が出来る様な者が・・・何よりも太一君が信頼している者を疑う事自体愚かに近い」

 

 

如何言う意味だ?

 

 

「でも、エックスってのは偽名だろ?」

 

『うん・・・今は話せないけど・・・』

 

「それは・・・あのISを狂わせたウイルスと関係があるのか?」

 

「「ウイルス?」」

 

 

そう言えばその説明をしてなかったな。

 

俺はあの無人ISを暴走させたのはウイルスの仕業で、そのウイルスに感染したISのコアを調べようとしたら、

そこから更に感染して、IS学園全体・・・もしくは全てのISを暴走させる事になりかねない故に破壊した事を話した。

 

 

「成程・・・理由は分かったが、だが確証はあるのか?暴走の原因がウイルスだと言う確証は?」

 

「ましてやあれが暴走とは限らないんだぞ」

 

 

確かに普通に考えたら有り得ない、あの天才もとい天災の束さんが作ったISを狂わせるウイルスなんて、

作れる奴がいるのだろうか?

 

だが・・・俺は・・・俺の勘はウイルスか、また別の外部からの仕業で暴走したと思っている。

 

 

「恵姉・・・千冬姉さん・・・俺・・・これは、俺の勘なんだけど、ウイルスの線は強いと思うし、暴走していたのは確実だと思う」

 

「何故だ?」

 

「まず・・・あのIS、あれはおそらく束さんが送り込んだ物だと思う」

 

「「!?」」

 

「正直・・・2人も思っていたんじゃないんですか?」

 

「・・・まあな」

 

「あいつが何を考えているかは分からんが、現時点であんな物を作れるとしたら・・・束以外に・・・」

 

「そう・・・それを踏まえると、あの人がISにあんな事をさせるのはまず無い」

 

 

あの人は興味の無い人間が如何なろうと知ったこっちゃないが、自分の興味・・・いや、愛する者と言った方が良いのかな?

当然と言えばそうだけど、その人が傷付くのをひどく恐れる。

 

故に、愛し方、見守り方、そして接し方が、はたから見れば常軌を逸している、又は歪んでいる様にも思える程にだ。

 

そしてIS学園には、束さんのお気に入り・・・愛する者が3人要る。

 

1人が妹の箒、そして幼馴染の千冬姉さん、最後の1人が最愛の妹の思い人である一夏の3名だ。

 

そんな場所を破壊する様な事を、あの人がする筈も無い・・・下手をすれば皆死んでしまうかもしれないんだからな。

 

 

「目的は分かりませんが・・・束さんは何かの目的であのISを送り込み、何かをしようとしたが、

ウイルスによって暴走・・・俺にはどうもそうだとしか思えないんですよ」

 

「確かに束は何を考えているのか分からないが、あいつが気に入っている人間を傷付ける事は無いからな」

 

「エックス、君は何故あのISがウイルスに感染していると分かった?」

 

『僕には分かるんだ・・・ウイルスの存在が』

 

「では・・・君が名を偽るのは、そのウイルス、若しくはそれを送り込んだ者が関係するのか?」

 

『・・・・・・・・・・・』

 

 

エックスは急に黙り込み、俺達は答えを待った。

 

そして少ししてからエックスは話しだす。

 

 

『ごめん・・・今は何も言えない・・・それが本当に関係する者の仕業なのか・・・その確証が無いと・・・』

 

「そうか・・・じゃあ今は何も聞かない」

 

『いいのかい?』

 

「“今は”って言っただろ?いつか話してくれるって事だろ?」

 

『その時が来ないかもしれないよ?』

 

「それならそれで良いじゃないのか?」

 

『・・・全く君は・・・普段は冷静なのに、何処か楽観的で・・・本当・・まいっちゃうよ』

 

「「「?」」」

 

『最後にこれだけは信じて・・・僕は決して君達の敵じゃない』

 

 

エックスは力強く俺達に言った・・・何を今更・・・。

 

 

「当然だ・・・今日1日だけだけど、お前みたいな奴を疑う気にはならないよ」

 

『太一・・・』

 

「私もだ・・・それに君は何故かほおってはおけない気がする」

 

「何だかどこか子供っぽいしな」

 

『恵さん、それはひどいな~~~』

 

 

こんな直ぐに誰とも仲良くなれる奴を如何疑えばいいんだってんだ。

 

 

「恵姉・・・千冬姉さん・・・今後の事だけど」

 

「分かっている・・・おそらく君はIS学園に通う事になるだろう」

 

「だな・・・それ以外に法の下守る術が無い」

 

 

アラスカ条約を基に設立されたIS学園の特記事項は、アラスカ条約にも組まれていて外部からの手出しが出来ない様になっている。

 

その期間は入学から卒業するまでの3年間ではあるが、それでも3年間の間にその後の手を考える時間はできる。

 

俺の身を守るには今の所最も安全な場所でもあるが・・・。

 

 

「でも同時に狙われやすくなりますね・・・ネギしょったカモが2匹になるわけですから」

 

「お前と千冬の弟なら、さらに鍋と冷や飯と卵が付いてくら」

 

「そうだが・・・迂闊には手出しはできまい」

 

「それにその時は・・・」

 

「あぁ・・・私達で守る」

 

 

うわ・・・この2人を相手にするとしたら、その相手に同情するよ・・・初代世界最強とそのライバル・・・しかもその腕はあまり衰えてはいない。

 

 

「積むな・・・相手」

 

『因みに太一がどちらかに戦いを挑んだらどうなる?』

 

「・・・ゼロを纏っては分からないけど・・・生身なら・・・」

 

 

俺は恵姉か千冬姉さん、どちらかに戦いを挑んだ場合を想像してみた・・・正直しなければよかったと思う。

 

冷や汗が止まらず体が震え始めた・・・。

 

 

「多分5分・・・いや、3分もてばいい方かと」

 

「「もたせると思うか?」」

 

「いえ・・・ございません」

 

 

この2人、戦いに関しちゃマジで鬼だからな。

 

でも・・・

 

 

「フフッ・・フフフ・・・」

 

「如何した太一君?」

 

「怖くておかしくなったか?」

 

「違うんだ・・・勿論それも有るかもしれないけど・・・やっと、やっと一歩踏み出せたと思うと・・・」

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

「楽しみなんだ!これから如何なっていくのか、まったく進めた気がしなかった一歩を踏みしめて、

あの頃から抱いた夢へと、本格的に近付けて行く事に!!」

 

「そうだな・・・これからなんだな」

 

「11年・・・長かったな」

 

「それに・・・俺にはもう1つ目標があった・・・」

 

「何だ?」

 

「・・・正直怒ると思いますけど・・・」

 

「言ってみろよ」

 

「正直言って君が夢以外の目標がある事を初めて知って気になるんでな」

 

「・・・俺は・・・IS使いとして、アナタ達の弟子として・・・」

 

「「うん?」」

 

「アナタ達を超えたい!!」

 

「「!?」」

 

 

あの頃からずっと俺を守ってくれて、俺を強くしてくれて、俺を心配してくれて・・・そんな2人に俺は憧れて、

だから俺はこの2人に見せないといけない、成長した俺を・・・飛べなかったヒナ鳥が親鳥への感謝をこめ飛び立つように俺も・・・。

 

 

「アナタ達を超えて、今までの恩を・・・俺の成長した姿として返したいんです」

 

「ふっ・・・太一・・・俺の弟子ならそれ位の気持ちが無くては困る」

 

「一夏も君みたいに向上心があればいいのだがな」

 

 

あれ?調子に乗るなって怒られるかと思ったのに・・・。

 

 

「弟子の成長を望まない師匠などいるか」

 

「そうでなければ君と師弟としての関係を結ばない」

 

「はは・・・そうですね」

 

『愛されてるね太一』

 

「ちゃかすなよ・・・」

 

 

本当に・・・素晴らしい師匠達を・・・姉さん達を持ったよ・・・俺は・・・。

 

 

Side・千冬

 

「千冬・・・暫くアイツの事頼むな」

 

「何だ突然?」

 

 

太一君の病室から出て恵と廊下を歩いていると、恵が突然頼んできた。

 

 

「これから太一はISの扱いも教えて行かないといけないが・・・今の俺じゃあ難しいし、今回見たいな事態になったら、

足手纏いだ・・・だから俺は当分治療に専念する・・・仕事はするけどな」

 

「そうか・・・」

 

 

あの事故から負った傷を今まで・・・当時では完治は無理と言われたが、今の医療技術なら出来る筈だ。

 

だが今までそれをしなかったのは、その分の時間を太一君の訓練等に使っていたからな。

 

 

「勿論IS学園での仕事はする・・・が、太一の特訓とかはできなくなるな・・・」

 

「分かった・・・その方が太一君も喜ぶだろう、彼はずっとその傷の事を気にかけていたからな」

 

「あぁ・・・」

 

「それに・・・」

 

「ん?」

 

「私も完治したお前と・・・しっかりと決着をつけたいしな」

 

「おぉ・・・11年ぶりになる内に治して、お前と思いっきり戦ってやる」

 

「正直・・・第1回モンド・グロッソ出場以前に、代表候補生時代、お前と戦えずに日本代表となった時から、

どうも世界一になった気がしなくてな・・・ずっとモヤモヤしていたんだ」

 

「それは悪かったな・・・といっても俺もお前と本気で戦えなくてウズウズしてたんだ」

 

 

私が唯一ライバルと認め、そして無二の友・・・恵。

 

一夏や太一君の存在もあるが、こいつが居たから、こいつと競い合えたから私はあの時あそこまで上り詰められた。

 

またあの頃の様に互いを高め合い・・・互いに成長したいものだ。

 

 

「話は変わるが・・・お前から束に連絡はできないのか?」

 

「・・・一応番号はあるが、こちらから掛けても繋がらない・・・何時も向こうからの一方的だ」

 

「そうか・・・まったく、何がしたいんだか」

 

「正直言うと理解しようとする方が無理だ・・・」

 

「そうだよな・・・じゃあ俺は医者の所言って来るわ、色々と聞かないといけないしな」

 

「分かった・・・こっちも太一君の事を報告してくる」

 

「互いに忙しくなるな」

 

「だが・・・嫌じゃない」

 

「違いない」

 

 

そして其々がやるべき事を始めた。

 

その日から3日経ち、太一君の転入が正式に決まり、その準備を始めていた。

 

 

「さて・・・日にちは1週間後・・・確かその日は他に転校生が来ると言っていたな・・・何故私のクラスにばかり・・・」

 

 

上との話し合いの結果、太一君は私の観察下に置く事を条件に私のクラスに転入する事になった。

 

そして太一君に関しても零式を動かした人間としてではなく、ISを動かした男として偽って公表する事となった。

 

零式に関してはその機能や特性は殆どの者が知らないから、その方が誤魔化せられて、一夏と同じ待遇で、

此方からしても守りやすいからだ・・・何よりも、零式の方を守ろうとした太一君自らの提案でもあった。

 

本当なら只の高校生として、普通の高校に通ってほしいのだがな・・・。

 

 

「織斑先生!」

 

「山田先生?」

 

「お疲れ様です・・・八神君の方の準備はもう済みましたか?」

 

「えぇ・・・後は寮の部屋割りですが・・・」

 

「はい・・・よりにもよってやっと織斑君の部屋割りの調整が完了しそうだったに・・・」

 

「新たに転校生が3人・・・部屋割りの調整お願いします」

 

「うぅ・・・はい」

 

 

女子寮に男を入れるなど・・・本来ならあってはならないが、野宿させる訳にはいかないし、部屋の数とか色々あるからな、

山田先生も苦労な事だ、日に日に目の下の隈が濃くなっていくし・・・。

 

 

「ところで後2人の転校生はどんな娘なのですか?八神の方で忙しくて確認できなかったからな」

 

「はい、凄いですよ2人共代表候補生ですし、何よりもう1人は・・・」

 

「代表候補生か・・・また騒がしくなる・・・・んっ!?」

 

 

山田先生が何か言おうとしていたが・・・転校生の資料を見て、私は驚愕した。

 

何故・・・何故この子が・・・!?

 

 

「織斑先生?」

 

 

山田先生が何かを言っているが、資料に映っている写真の人物と名前に驚愕している私の耳には、

一切入ってはこなかった。

 

これは・・・何の悪戯だ?

 

またあの子に・・・辛い思いをさせようと言うのか?

 

もし神が存在しているとしたら・・・神よ、アナタは何処までも残酷なのだ?

 

 

To be Continued

 

 

 




当分はデジストを中心に書いていくかと思われます。

この調子で書いて行かないと次は何時の更新になるか・・・。
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