東方リリー伝説   作:yua

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03霧の湖に紅い霧

「はーるよー、今こそ春よー。目を開ければ春なのよー」

 

調子外れに大声で歌いながらリリーは行く。

場所は霧の湖と呼ばれる一年中霧に覆われ、向こう岸が見えない湖。周りは緑に囲まれ、妖精も多く飛んでいる妖精のメッカである。

 

「あ、リリーだ。凍れっ!」

氷の塊にピチューンと撃墜され、リリーは霧の湖に落ちるのだった。

 

「チルノは相変わらず後先考えないな!」

「ご、ごめんねリリー。チルノちゃんが……」

「その頭が年中春な所、俺的にはイエスだねっ!」

「えへへ、あたい褒められたよ大ちゃん!」

「……うん、よかったねチルノちゃん」

 

熱い笑顔で親指を立てるリリーと照れくさげに頭をかく青い髪を男の子の様にショートカットにした全身青い装いのチルノと呼ばれた少女。

そんなチルノの横で肩を落とすのは緑の髪をポニーテールに結ったこれまた青い装いの大ちゃんと呼ばれた少女。

二人もリリーと同じ妖精であり、旧知の仲である。

 

「所でリリーは何処に行こうとしてたの?」

「春がある所に俺は在る。俺が行く所が春になる。つまり、幻想郷全てを春にして俺は全てを支配する」

「えっ、何か凄い勢いで理屈が明後日の方向にジャンプしてない?」

「す、凄いなリリー。お前がナンバーワンだ」

「ふふっ、有難うチルノ。お前もナンバーワンだよ」

「あれっ、二人とも理解し合ってる……何だろうこの疎外感」

 

ゴクリ、と喉を鳴らし戦慄するチルノに誇らしげなリリー、大ちゃんはちょっと落ち込んでいた。

 

「勿論、大ちゃんもナンバーワンさ。俺は春告ナンバーワンだしっ!」

「すげぇ、ナンバーワンが沢山だな。幻想郷はやっぱり妖精ナンバーワンだな。あたいは最強ナンバーワンだしっ!」

「ああ、ナンバーワンって言いたいだけなんだ」

 

脱力する大ちゃんを他所に無闇にハイテンションになるリリーとチルノがナンバーワン、ナンバーワンとはしゃぎ続けるのだった。

 

「騒がしいなー」

そんな三人の所に金髪をショートカットにした黒服の少女がフヨフヨと浮きながら近付いて来た。

 

「おー、ルーミアではないか。春だよっ!」

「春かー、美味しそうだなガブリ」

リリーの頭にギザギザに尖った歯でかじりつくルーミアと呼ばれた少女。

「おう、痛い」

何故か平静としながら呟くリリー。モゴモゴとルーミアが口を動かす度に、シュワシュワシュワと再生する音が響く。

 

「り、リリー大丈夫なのっ!」

「大ちゃん、心配してくれて有難う。滅茶苦茶痛いよ……」

「何でそんな冷静なのっ!?見てるこっちが痛々しいよっ!ルーミアも噛むの止めなよっ!」

慌ててルーミアをリリーから引き離す大妖精。リリーの赤い三角帽にはくっきりと歯形が付き、帽子の中からはシュワシュワシュワと再生音が響く。

 

「初噛みは春の味なのだ」

「うむ、ルーミアにも春が来た。余は満足じゃ」

 

何故かやりきった感のあるいい笑顔を浮かべるルーミアとリリーに大妖精が疲れた顔になる。

 

「大ちゃん、リリーの春を邪魔しちゃ駄目だよ」

「チルノちゃん……うん、何かもういいや」

「大ちゃんは大変だなっ!何かよく判らないけどっ!」

「大変だなー」

 

何故かチルノにたしなめられて落ち込む大妖精と、他人事にも程があるリリーとルーミア。

 

そして、

 

「あれ、何か暗くなって来た?」

「何だとっ!?春が陰るとか有り得ないだろう。俺の春を何処にやった!?」

「リリー落ち着いて。これは、紅い霧……?」

「あっちから流れて来るみたいだなー」

 

東方紅魔郷の開幕である!

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