終わりのセラフ 《ghost of the flame》   作:坂下 千陰

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正直完全な自己満足です。前々から書こうと思っていたんですが、いかんせんブランクにより文章能力がかなり落ちています。ここから段々と整えていきたいと思うので、暇潰し程度にご覧頂ければ嬉しいです。


一話 : Move on

 世界は一度死んだ。

 

 毒に侵され、大地は穢され、海は汚染され、化物が闊歩する。

 異常が正常となる完膚無きまでに壊れきった世界で。

 

 ─────生き残った人間は、尚も欲深かった。

 

 欲望を満たす為に、際限なく力を求め続ける。

 その姿はまさに“鬼”だ。

 個の為に他を殺す。

 そして行き着く先は、生きながらに鬼となる。

 

 

 

 

「あーー、よく聞こえなかったが今何と? 」

 

「だぁから、今日付けで軍曹に降格だっつってんだろ。何回も言わせんな面倒くせえ」

 

 若い男が執務室の椅子にだるそうに座り、欠伸を噛み殺しながら眼前に立つ少年に淡々と告げた。

 

 一瀬(いちのせ)グレン。この崩壊した世界で、化物と戦争をしている組織『日本帝鬼軍』に所属する中佐で人類の英雄と呼ばれる人物である。

 

「…………はぁ!? ふざけんなよ! そんな処罰を受ける筋合いなんざ…………あぁ、割とあるな」

 

 思い返せば出てくるのは命令無視、独断専行、その他規則違反。

 

 どれを一つとっても普通なら謹慎処分になる所だ。寧ろ今の今まで見逃されていたのが異様だったのかも知れない。

 

「まぁ、そういう訳だ。今日から励めよ紅下真来(べにもとしんら)()中尉」

 

「……元を強調してんじゃねえぞバカ中佐、どうせアンタの手が回ってんだろうが。……くそっ、今度はどんな面倒な仕事を押し付ける気だよ 」

 

 紅下真来と呼ばれたその少年は、苦虫を噛み潰したかのような表情でそう言う。

 

「察しが良いじゃねえか、頭の回転が速い奴と話すと用件がスムーズに済んで助かる。時間は有限だからな」

 

「うるせえ、経験則だっつーの。アンタからの呼び出しってのは大体がイコールで厄介事に結びついてんだよ!! 」

 

「そりゃ、使える物は最大限に使わねえとな。つー訳でお前に任務だ、一度しか言わないからよく訊けよ」

 

 悪びれもせず、グレンはあっさりと話を進める。その態度に慣れてしまっている自分に気付いた真来は憮然とした表情を見せながらも指示を待った。ここでは彼は上官で自分は部下。それ以外の要素もあるにはあるが、少なくとも自分には命令を聞く義務と果たす義務がある。

 

「お前にはこれからある部隊に入ってもらう。そいつらは月鬼ノ組の新入り達だ。そうだな、一言で言うならバカと弱虫と眼鏡と性悪のチームだな」

 

「なんだそりゃ、ろくなのがいねえじゃねえか。しかしまぁ、それで凡そは理解できた。確かに、隊長より階級が上になる訳にはいかないわな」

 

「そっちの方が何かと都合がいいだろ。通常、月鬼ノ組の最小部隊構成は5人1チームだからもう1人三宮の令嬢が加わる。が、今回は特例としてお前を入れて6人で1チームとする」

 

「三宮の令嬢って ……げっ、あいつかよ」

 

 真来の脳裏に浮かんだのは勝気そうな金髪少女、はっきり言って彼は口煩い自信家な彼女が苦手だ。そいつと同じチームとは、早くも前途多難な予感を感じさせた。

 

「そして、ここからが任務の内容になるがお前にはそいつらの監視をして貰う」

 

「監視? 」

 

「そうだ、とにかく目を離すな。そしてもし何かあったらそいつらを守れ」

 

「それ矛盾してないか? 不穏分子だから監視するんだろうが。なのに何かあったら守れとか意味が分からん、何かって何だよ」

 

()の命令だ、黙って従え」

 

 此方を見据えるその目には有無を言わせぬ圧力があった。逆らう事は許されない、しかし逆らう意思など端からない。

 

 ただ、

 

「命令には従うさ、アンタには借りがあるしな。だが、明確な根拠をくれ。その任務に何の意味がある?」

 

 --欲しいのは行動する為の核。

 

「……情報を一つ追加する、今回の新入りは全員がお前や俺と同じ『黒鬼』だ」

 

「なっ、!? 」

 

『鬼呪装備』、鬼を封じ込めた彼らの武装の幾つかある等級の中でも最上位。その調伏難易度の高さから手にしている者は少なく、威力は勿論だが負担も大きい。下手をすると鬼に飲み込まれるリスクを常に抱えている。更に、黒鬼を所持している者は須らく何らかの成功率が低い人体実験を受けている。

 そこまでして漸く手に入る力。

 幾百、幾千。数多の犠牲の上に成り立つ力。

 

 それが黒鬼だ。

 

 易々と手に入れられる物ではない。余りにも異常な事態、普通ならばあり得ない。何か分からないが何かがあるのだ。

 

「詳細は話せない。ただ一つだけ言えるとしたら───」

 

 そこで、グレンは言葉を区切り一瞬だけ視線を外す。

 

「───誰も信じるな、俺を含めてな」

 

「? どういう……」

 

「話は終わりだ、本格的な行動は明日からになる。行け」

 

 真来は疑問を差し挟む余地もなく、半ば強引に部屋から追い出された。目の前で締められたドアの前で数秒立ち止まり、グレンの言葉を脳内で反芻するも、結局その真意は分からない。

 

「確実に言えることは、グレンが何かを隠しているということだけだな……」

 

 思考は止めない、今ある情報のみで自分の立ち位置を把握する。この任務で失う物と得る物をカテゴライズし、優先順位を付ける。

 第一に任務を達成する事。但し、終わりは見えない。期間を設定された訳では無かった、かなりの長期戦になることは間違いないだろう。

 

「ちっ、やっぱり厄介事だったか。あのバカ中佐め、一体何を企んでやがる」

 

 

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