ユーノ初めての六課訪問   作:猫山知紀

10 / 15
すみません遅くなりました。

前半ユーノ視点、後半ティアナ視点。
戦いを書くの難しい。


その10(ユーノ、ティアナ)

(さてと、どうやって戦ったものかな)

 

ユーノは部屋の様子を見ながらティアナを捕える方法に考えを巡らせる。

 

先ほどのハッタリは上手くいったようだった。自分を格上に見せることには、相手を萎縮させる効果がある。また、その副次効果として相手の戦術を狭める効果がある。強い相手と戦う時、弱い方は自分が放つことができる、最大限に強力な攻撃を当てようとする。しかし、大技というのは必然的に隙が大きくなりがちであり、必中の場面でしか使うことができない。なのはがスターライトブレーカー放つ時、フェイトがフォトンランサーをファランクス・シフトで放つ時、いずれの場面でも彼女たちは相手をバインドで釘付けにし、必中の場面を作り上げる。

 

しかし、そういう場面を作ろうとしてくるということは、逆に言えばそういう場面を作らなければ勝てないということでもある。狙いが相手に伝わってしまえば、相手は誘導には乗ってこないし、逆に狙いを利用されて罠に嵌めてくるかもしれない。

 

ティアナに対して、ユーノがティアナより格上だと思わせることができたのであれば、必ず彼女なりの大技を当てにくるはずだ。後は彼女がどうやってその場面を作ろうとするかを読みきればいい。

 

(彼女の得意技は幻術だってなのはが言ってたけど、最初はおそらく様子見。こちらの力を測ろうとするはず。幻術を使うなら、ある程度手を合わせた後に、虚を突くタイミングを狙ってくる……かな?)

 

ティアナが動き出す前に、こちらもある程度の準備をしておきたい。なのはから聞いた情報を基に、ティアナの次の動きを予測する――。

 

(幻術を使うなのはの教え子か……)

 

ティアナとの戦いに備え2つ魔法を準備する。部屋の数カ所が一瞬キラリと光るが、特に何も起こらない。遅延発生、発動した魔法を一旦待機状態にし、後でトリガを掛けることで効果を発生させるテクニックである。

 

(……出てこない?)

 

ティアナが姿を隠してから少し時間が経ったが、ティアナは姿を現さなかった。

時間稼ぎのつもりだろうか。なのはの訓練がもうすぐ終わる予定の時間であることはティアナも知っているはずだ。

なのはが隊舎に戻り、異常に気づいて助けにくるのをティアナは期待しているのかもしれない。

 

(そんな消極策を選ぶような子には思えなかったし、ひょっとして……)

 

ユーノの見立てではティアナはかなり勝ち気にみえた。そんなティアナがただ待つという選択をするようには思えなかった。姿を現さないティアナを探すため、ユーノは探知魔法を展開する。

 

(――正面っ!?)

 

気づいた瞬間に手を伸ばし、ラウンドシールドを展開する。少し遅れて魔力弾による衝撃が走った。魔力弾の元をたどるとクロスミラージュを構えたティアナが姿を現していた。

 

「っく! あと少しだったのに」

 

言い残してティアナはまた姿を消す。オプティックハイド、ティアナの得意とする幻術の一つだ。気づくのがあと少し遅れていれば、無防備な状態で彼女の魔力弾を受けるところだった。

 

(危なかった。幻術を使って姿を消すこともできるのか……)

 

最初は様子見かと思っていたが、ティアナは初手から打って出てきた。ティアナとは初めて手を合わせるのだから予想外の行動をとられるのは当然だが、ティアナの行動予測をかなり攻撃寄りにする必要がありそうだった。それはそうと――。

 

(うーん、頭隠して尻隠さずじゃないけど。なのはが言っていたのはこういうことか)

 

先ほどティアナは攻撃のタイミングで姿を現し、その後再び姿を消した。おそらく魔力のチャージまでは幻術が持つのだろうが、発動時には幻術を保持できないのだろう。魔力弾の発射後に改めてオプティックハイドを発動し今も姿を消していた。しかし、ティアナのオプティックハイドは光学的に姿を消す魔法であり、魔力を隠すことはまではできない。対してユーノが先程から展開している探知魔法は魔力を察知する魔法である。

そう、ティアナはオプティックハイドで隠れているつもりなのだが、探知魔法を使用しているユーノには丸見えだった。しかし、先ほどのやり取りで、ユーノが探知魔法でティアナの位置を察知したのと、ティアナが姿を現したのがほぼ同時であったため、ティアナはまだその事実に気づけていない。

 

(シャマル先生はあんまり模擬戦に参加しないだろうし、こういうのを指摘していけばいいのかな? えーっと悪役、悪役……)

「そうやって隠れるのは、もう無駄だよ。姿を隠すなら、魔力も隠さないと」

 

あえて指摘してからティアナが姿を隠しているところ目掛けてチェーンバインドを発動させると、バインドを躱し(かわし)ながらティアナが姿を現した。

 

「さっき射撃するときに姿を現したってことは、君のその魔法は並列処理に向いていないか、君の練度がまだ高くないんだろう? そういうのは一対一の場面で使っちゃだめだよ」

 

無防備になるからね、とユーノが指摘する。ティアナは黙ってそれを聞いていた。

 

「それともう一つ、姿を消せるのは自分だけだと思わないこと。幻術魔法は確かに珍しいから、めったに使い手と遭遇しないだろうけど、姿を消す手段は幻術魔法だけじゃないからね。――例えばこんな風に」

 

そう言ってユーノは手で印を結ぶと魔法を展開させる。するとユーノの姿は次第に薄くなり、数秒と経たず姿が消えた。展開したのはかつてグレアムの使い魔であるリーゼアリアとリーゼロッテの二人が使用していたミラージュハイド。ティアナのオプティックハイドと同じく自身の姿を隠す魔法である。

 

「っ!?」

 

姿を消したユーノを前に、ティアナが狼狽えた(うろたえた)表情を見せる。そしてすぐさまユーノからの攻撃に備え身構えた。しかし、ユーノからの攻撃はなく、姿を消したのと同じ場所にユーノは再び姿を現した。

 

「こういう魔法は一人で使うよりも、注意を惹きつける役がいると、より効果的だよね」

 

――と、そんな補足を加えながら。

 

「さて、お互いに姿を消せるのはわかったけど、まだかくれんぼを続けるかい? ただし、僕からは君の居場所がわかって、君からは僕の居場所がわからないアンフェアなルール付きだけど」

 

ティアナに選択させるような口振りだが、その実ユーノはティアナに射撃戦をするように誘導したかった。なのはやクロノは射撃魔法を基本に戦い方を組み立てるタイプであったため、相手をするユーノはその戦い方に慣れていたからだ。

 

(思惑通りに動いてくれると、ありがたいんだけど……)

 

ティアナが誘いに乗ってくることを祈りつつ、ユーノはティアナの次の動きを待った。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

(この人、何なの?)

 

男と向き合いながら、ティアナには疑問が生じ始めていた。口振りでは問答無用で拉致される雰囲気だったが、先程から手を抜かれている。いや、戦い方を自分に合わせているような意図を感じる。姿を消して戦われたら、今のティアナには為す術がない。魔力弾なり、バインドなりで簡単に無力化されてしまうだろう。

しかし、男はあくまで対等な条件で戦おうとしてくる。男が放つバインドも自分で避けてはいるが、わざと捕まえないように、ギリギリでティアナが避けられるように繰り出しているような気さえする。

 

これではまるで――。

 

(教導を受けてるみたいじゃない……)

 

しかし、なぜそんなことをするのかと問うても、男は答えてはくれないだろう。今のティアナには選択肢などないのだ。男が本当に悪人であれば、勝つ以外自身の安全を確保することはできない。仮に男が演技しており本当は善人だったとすれば、負けても問題ないのだろうが、判断材料のない現状でそんな分の悪い賭けをする気にはなれない。

100%の安全を確保するためには、勝つ以外に道はないのだ。

男が手を抜いてくれるなら好都合、ティアナは全力で勝ちにいくだけだ。

 

(防御の上からでもダメージが通れば……)

 

相手の実力は未だ未知数だが、バカ正直に真正面から打ってもダメージが通るのであれば、少し勝機が見えてくる。ティアナの実力も全てを把握されているとは考えにくい。特に収束させたクロスファイヤーシュートとファントムブレイザーは訓練でしか使用していない。この2つは今のティアナが放つことができる高威力の魔力砲である。ティアナと同程度の実力者であれば防御の上からでもダメージを与えられる自信がある。男がどうやってティアナの情報を集めたかは不明だが、六課の空間シミュレータは当然セキュリティは強固に保たれているため、男はティアナが実戦で使用している魔力弾しか使用できないと油断している可能性もある。

 

試してみる価値は……ある。

試すなら今がチャンスである。ティアナを過小評価してくれているのか、男が余裕ぶっている今ならチャージする時間も与えてくれそうだ。お試しの一発でいい、その一発でダメージを与えられれば僥倖、ダメなら作戦を練り直すだけだ。

 

かくれんぼはやめようと言ってきた男と向き合い続けたまま、ティアナはクロスミラージュを構える。そしてそのままクロスファイヤーシュートのスフィアを展開しチャージする。男はシールドを展開するが、ティアナが想定したとおり、その場からは動かない。

 

「逃げないんですね」

「必要ないでしょ?」

 

男に問いかけ、更にチャージ時間を稼ぐ。間違いない、油断している。

目に物見せてやる――。

 

「クロスファイア……」

 

最大限までチャージ出来た、通れっ。いや、通すっ!!

 

「シュート!!」

 

スフィアが銃口に収束し、魔力砲となって男へ向かう。

模擬戦でもここまで威力を高められたことはない、ティアナ渾身の一撃だ。

砲撃がシールドに当たり爆ぜ、辺りが煙る(けぶる)

 

(これでダメなら……)

 

男を隠した煙が徐々に薄くなる……が、ティアナには嫌な色が見えた。

――薄い緑。

煙越しにぼんやりと見えていたそれは、徐々に輪郭を取り戻し、再び傷一つない真円を描いた。

 

「――ね、逃げる必要なんてないでしょ?」

 

(もう少し……、頑張らないと)

 

 

 




ティアナは くじけぬこころを てに いれた

なのはさんの訓練を受けているとそんなアイテムが手に入りそう。
この話を書いていてそんなドラクエ6のアイテムを思い出しました。

ちなみにリメイク版ドラクエ3では装備すると性格が「くろうにん」に変化するらしい。まさにティアナ!!


いろいろとA's11話のなのはさんのセリフから引っ張ってきてます。
あのシーンのなのはさん男前すぎて惚れる。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。