ユーノ初めての六課訪問   作:猫山知紀

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なんか思ったよりもシリアス寄りになってしまった。

司書長が活躍すると、感想が増えるんですかね。
前話分に感想を下さった方々、ありがとうございます。
この場を借りてお礼申し上げます。





その11(ユーノ、ティアナ)

(よかった。さすがになのはのディバインバスター程じゃないよね)

 

ティアナの砲撃を受けても、シールドを超えてユーノがダメージを受けることはなかった。ティアナの魔力砲の威力は未知数だったため、念のためかなりの高威力の魔力砲を想定し、シールドを構築した。想定した魔力砲、それがなのはの放つディバインバスターである。

 

自ら好んで模擬戦を行うことはしないユーノであるが、魔力戦において少し自信を持っているものがある。それは、ユーノが展開する防御魔法の硬さ、つまるところの防御力である。

 

ユーノの張る防御魔法はかなりの強固さを誇る。かつて闇の書事件の際にヴィータと戦った際にも墜とされることはなかったし、なのはからも『ユーノの防御魔法はかなりの大技でないと貫通させられないぐらい強力』とのお墨付きをもらっている。当然なのはにもヴィータにもリミッターなどかかっていなかった頃の話だ。

 

なのはは管理局内においても『エースオブエース』と呼ばれるほどの実力者であり、戦技教導官という職種柄、様々な戦い方をすることができるが、その根底は圧倒的な火力を持つ『砲撃魔導師』である。つまり、なのは放つオーソドックスな魔力砲『ディバインバスター』以上の魔力砲を放つことができる者は管理局においてもそう多くはない。案の定ティアナの砲撃も防ぎきることができており、ユーノの想定は正解だった。

 

(姿を隠すのもダメ、真正面からぶつかるのもダメ。 さて、ランスターさん次はどう来るのかな?)

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

(硬すぎる……)

 

まだ、相手を見くびり過ぎていた。ティアナの放った砲撃をシールドで逸らすでもなく、完全に受け切られた。ダメージを与えるどころではない、余裕を持って受け切られている。シールド越しでダメージを与えるのは今のティアナには無理、おそらくなのはクラスの魔力砲が必要だ。奥の手としてとっておいたが、ティアナが放つことができる最大威力の魔法『ファントムブレイザー』でも無理だろう。

 

(なんとか、バインドで捕らえて……)

 

防御できなくしてから打ち込むしか方法がない。

初手でオプティックハイドを見せてしまったのが痛い。見せていなければバインドで捕らえずとも、フェイクシルエットを囮にしてオプティックハイドで背後を突くこともできたのに。

 

やってしまったことを悔やむのは無駄だ。今できることの最善を、と頭を切り替える。

 

ティアナのバインドの練度はまだ高くないため長時間の拘束に向かないが、ファントムブレイザーを発動する時間であれば稼げるはずだ。問題はどうやってバインドで捕らえるかだ。自分一人しかいないこの状況で、取れる戦術は多くないが、まだ見せていないフェイクシルエットで虚をつけば、魔力チャージの時間は稼げなくてもバインドで捕らえることはできるはずだ。ファントムブレイザーのチャージはバインドで捕らえた後でいい。

 

(まずは、射撃戦。相手が乗ってきたところでフェイクシルエットで隙を作る。そしてバインド)

 

――それしかない。

 

腹を括ったティアナは、2丁の銃を男へ向けると、力強く地面を蹴った。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

ティアナはユーノの思惑通り、射撃戦を選んだ。

いや選ばざるを得なかった。ティアナは射撃型であり、スバルやエリオのように近接戦はできないし、キャロのように竜を召喚して戦ってもらうこともできない。自分の練度の一番高い戦い方をするしか道はなかった。

正面から撃ちあっても通じない。ティアナは細かく当てる戦い方にうって出た。

時に隠れ隙をつき、時に誘導弾で挟むように、時に直射型で正面から。しかし、どれも致命打にはなり得ない。

 

対するユーノはティアナの射撃を受けながら、昔なのは達とやっていた模擬戦を思い出し、徐々に実戦の勘を取り戻していた。

 

(この感じ、懐かしいな……)

 

空戦と陸戦という違いはあれど、ユーノは射撃戦に慣れている。昔とった杵柄が大いに役立っていた。そして、なのはやクロノと比較してしまうと少し可哀想だが、ティアナの射撃戦は非常に正直でとてもやりやすかった。

 

(こうやってみると、クロノとなのはってやっぱりすごいんだなぁ)

 

ティアナの射撃は基本的には直線的なものが多く、誘導弾を使用してくる時も数は10を超えない上に弾速はディバインシューターよりも遅く、速さも一定で動きも読みやすかった。

しかし、なのはやクロノは違う。なのはは20をゆうに超えるアクセルシューターを巧みに操作し、全方位攻撃を仕掛けてくる上、そのスフィアは急加速、急減速、急反転と動きを読ませない。クロノはスティンガースナイプ、スティンガーレイといった魔法で戦いを組み立てるが、その魔法はスティング(刺す)という名の通り恐ろしい弾速を誇る。今でもたまに付き合わされる模擬戦でも気づいたら打たれているということはザラだ。

そんな彼らとの模擬戦の経験が今のユーノに余裕を持たせていた。

 

射撃戦が始まって数分、このまま行けばティアナの魔力が先に尽きる。

何もしなければティアナはジリ貧。仕掛けてくるとしたらそろそろだった――。

 

「ハァッ、ハァッ」

 

ティアナは物陰に身を隠していた。このままいけば自分の魔力が先に尽きる。射撃戦の中であわよくばと、本気で狙った魔力弾も混ぜてみたが、やはり通じない。シールドにバリア、自分では破れる気がしない鉄壁の守りに尽く(ことごとく)防がれた。

この数分、物陰に隠した後、不意を突くタイミングで飛び出して射撃を打つという戦い方を繰り返した。男の対応にもその動きが刷り込まれているはずだ。

 

(やるなら今……)

 

今までは、物陰から飛び出すのはティアナ一人。

 

――だが、複数のティアナが同時に現れたら?

 

バインドとファントムブレイザーが撃てるだけの魔力を残し、頼むから動揺してくれと祈りを込めてフェイクシルエットを展開する。分身は4体、彼女たちに全てを賭ける。

 

(これが通用しなければ本当に終わり……)

 

一瞬、負けた場面が頭をよぎるが、勝利への道筋でイメージを上書きする。

 

(大丈夫……いける)

 

誰にでもない、自分に強く言い聞かせティアナは意思を固めると、この戦いの最後になるであろう攻撃を開始した――。

 

 

 

ティアナの指示に反応し、物陰から『ティアナ達』が飛び出した。間を置いて一人が反対方向に走る。

 

(きたっ、幻術による分身)

 

先程からユーノが感じていた、増えた魔力反応の通り複数の人影が姿を現した。だが、これはユーノの想定通り。必ず使ってくると思っていた。だからこそ、ユーノは最初に魔法の遅延発生を仕掛けたのだ。待っていましたとユーノは部屋に仕掛けていたストラグルバインドを瞬時に発動させ、彼女たちが攻撃モーションに移る前に捕縛する。

ストラグルバインドは対象を拘束するのと同時に、対象に付与されている魔法を強制解除する効果がある。魔法で生成された分身などその効力により消滅してしまう。

現れた前方の3人、後方の1人。合わせて4人のティアナをストラグルバインドで捕縛する。すると分身は消え、残った一人が本物のティアナだ。後はティアナをバインドでぐるぐる巻きにすればユーノの勝利が決まる、……はずだった。

 

(全員消えた!? ――しまった!!)

 

瞬間、ユーノの体は固定され、両手両足がオレンジ色の輪に填められた。幻術による分身までは想定通りだった。しかし増えた反応は固まりとなっていたため個数まで判別できていなかった。そして、現れたティアナ達を『目』で追ってしまい、魔力反応への対応が疎かになった。ユーノが4人に気を取られている隙に、物陰に隠れてユーノの死角に移動したのだろう、顔を向けるとティアナの姿があった。

 

(見事に引っかかっちゃったなぁ~)

 

両手を固定されているので、脳内で頭をポリポリかきながら失敗を反省し、同時に大急ぎでバインドブレイクのための解析に入る。目の前にはクロスミラージュを構え、魔力をチャージするティアナ。

 

(これは、間に合わないか……)

 

ティアナの構えた銃口に照準が現れ、魔力が貯まる。照準越しにティアナと目があった。魔力が底を尽きかけているのだろう、息も上がり必死の形相だった。彼女のその表情に一瞬負けてあげようかという考えがよぎるが、それはティアナに失礼だと思い直す。

 

(最後まで本気で……約束だからね)

 

ティアナの一撃は避けられないだろうが、負けるつもりはない。今まで戦ってきてわかった。この先は分からないが、今のティアナであればユーノのほうが実力は上だ。ならば、模擬戦でちゃんと勝利するのも後輩に対する先人の務めだ。

 

ティアナのチャージが終わり、魔法の発動に入る。ユーノのバインドはまだ解けない。バインドが解ける前に一秒でも早く、焦りと冷静さの狭間でティアナは固く目を瞑り、叫ぶようにして最後の一撃を放った。

 

「ファントムブレイザー!!!」

 

ユーノに向かって放たれた魔力砲は、対象に当たると煙となって魔力の残滓を撒き散らした――。

 

 

光と音が収まり、もうもうと立ち込める煙を前に、ティアナは勝利を確信した。結界内に閉じ込められ、助けも呼べない絶望的な状況で、微かな光を掴むことができたのだ。

 

……結、界、内?

 

術者が昏倒すれば結界は解ける。

では、なぜティアナはまだ結界の中にいるのか。

 

「――ケイジングサークル。 ごめんね……僕の勝ちだ」

 

その声は、ティアナの背後から聞こえた。

正面を見れば、晴れた煙の中心に、中に誰もいない半球状のバリア。

そして自身の周りには見るからに強固な魔力の輪。

 

――ティアナの心が折れた瞬間だった。

 

 

 




上げてから落とす。


ちなみに、ケイジングサークルは2nd A'sに出てきた魔法ですが、
nanohawikiによると本来は内側から触れるとダメージを受けるらしいです。

かっこいい感じの魔法なので出しましたが、対人仕様のダメージを受けない特別版ということにしておいてください。

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