「さて、残りのお説教は後にとっておくとして、模擬戦の振り返りをしようか。ティアナ、ユーノ君と戦ってみてどうだった?」
「えっと……。まず思ったのは、すごく防御が硬かったです。本当に。今の自分だと、どうやっても破れないと思うぐらいに」
「うん、ユーノ君の防御魔法は硬いからね。まだ、ティアナには厳しいのは事実だね」
「えっ!?あれってなのはさんが何かサポートしてたんじゃないんですか?」
「私は一応結界の中にはいたけど、模擬戦中には何もしてないよ」
「で、でも私が全力で撃ったクロスファイヤーシュートを完全に受けきったんですよ!?そんな硬い防御魔法を張れる人なんて……」
疑いの眼差しでティアナがユーノを見る。ティアナは自分の砲撃に少し自信を持てるようになっていた。クロスファイヤーシュートはもともと単発の射撃魔法だが、なのはが示してくれた砲撃verは弾速も早く、威力も高い。最近では練度も上がってきて、発射速度も通常の射撃魔法より少し遅い程度になっている。
今回はその発射速度を犠牲にし、フルチャージで発射した。なのはのディバインバスターには及ばないが、それでもかなりの威力を持っているはずだった。
「うん、だから言ったでしょ。ユーノ君の防御魔法は硬いって。私がリミッター無しの状態で大技を使ってなんとか破れるっていうぐらい硬いんだもん、リミッターがかかっている今の私だと全力でディバインバスターを打っても破れないかもしれない」
「そ、そんなに……」
リミッター有りとはいえ、なのはのディバインバスターはティアナの砲撃を軽く上回る。しかし、そのなのはのディバインバスターでも破れないのでは、ティアナの砲撃ではもはやどうしようもない。
あの時点で自分の砲撃が通用しないと割りきって『防御できなくしてから打ち込む』という戦い方に切り替えたのは正解だったわけだ。
「他には?何かある?」
なのはがティアナに次を促す。
「そうですね、あのバインド。あれ、わざと私を捕まえないようにしていましたよね」
「あ、うん。わからないように狙ってたつもりだけど、やっぱりわかっちゃった?」
「はい、最初は自分で避けているつもりでしたけど、ギリギリでの回避がずっと続いたので、わざと私がギリギリで避けられるところを狙っているのかなと」
「うん、正解。本当を言うとね、模擬戦を開始してすぐに捕まえることはできたと思うよ。でも、それだと訓練にならないから、個人的に気になったことを指摘しながらやらせてもらった」
「やっぱり……」
ティアナが教導されているように感じたのは、間違いではなかったわけだ。実力差があり、仕方がないとはいえ、事実を知るとやはり悔しい。しかし、悔しさは今は後回しだ。自分が悔しい思いをしているのはなぜなのか。どう立ちまわっていれば、もっと対抗することができたのか。今ティアナがやるべきことは、それを考えることだ。
「スクライアさんのように防御の硬い相手と戦うにはどうしたらいいんでしょうか?」
「うーん、ランスターさんが使えそうな手だと、やっぱり幻術を使って死角から狙うとか、あとは魔力ノックダウンじゃなくて、最終手段としては肉体ダメージを狙うのも有りだと思うよ。例えば魔力弾を固く圧縮して相手の顎を狙うとか。魔力を削らなくても、一撃でノックアウトできれば起死回生の一手になるかもしれない。本当のピンチには手段なんて選んでられないからね」
「な、なるほど」
「まぁ、そんな場面にならないのが一番なんだけど」
「でも、確かに最後の切り札として使えそうです」
「あとは、やっぱりバインド……かな。バインドは防御に関係なく相手を捕縛することができるから、よほどのバリアブレイクの使い手でもない限り、練度を高めればかなりの長時間捕縛できるはずだよ。クロノもよく使うし、執務官にとっては必須のスキルと言ってもいいんじゃないかな?設置型は罠としても使えるし、習得しておくと戦術の幅も広がると思うよ」
ティアナは今まで、犯人を確保するためには魔力ダメージかバインドが必須だと思っていた。しかし、バインドの練度が足りない自分では魔力ダメージを狙うしか道がなかった。そのため今日の戦いでも大技を当てるのに必死になった。しかし今、第3の道として肉体ダメージという道が示された。
ユーノの言うとおり、確かにこれなら上手く急所を狙えば一撃で相手を倒すこともできるはずだ。魔力量があまり潤沢でないティアナにとっては砲撃魔法は燃費の面から使い勝手が少々悪い。しかし、魔力弾なら少ない魔力で運用できる。魔力弾の圧縮、急所を狙える誘導弾の操作精度など課題はあるが、ティアナには戦術における新しい可能性が見えた気がした。
「ところで、バインドといえば、最後の場面では何が起こったんでしょう?私は確実にスクライアさんをバインドで拘束していて、ファントムブレイザーは直撃だったと思うんですけど」
「あぁ、アレね。あれは、昔なのはがフェイトと戦った時の戦術をちょっと真似したんだけど」
「ふぇっ!?私!?」
「うん、防御魔法の遅延発生。昔PT事件でなのはがフェイトと戦った時に使った手だよ」
ユーノにそう言われ、なのはは顔を上に向けて思い出す仕草をする。PT事件ももう10年近くも前のことだ、自分はあの時どうやってフェイトと戦っただろうか、と。
「そうか、最初に詠唱して待機状態にしておいたのは、分身を消したあのバインドだけじゃなかったんですね」
「正解。最初に僕がランスターさんを脅すようなことを言った後、ランスターさんは僕のことを格上だと思ったでしょ?」
「はい、あの悪役の演技は正直怖かったです」
「それは、えっと……ごめん。で、射撃型の人が格上と戦うときに何を狙うかというと……?」
誘導するようにユーノがティアナに投げかける。
「相手が防御できない状態での大技……」
「そう。だから、僕が最初に準備した魔法は2つ。ランスターさんの分身を消したストラグルバインド。そしてバインドされた状態でも防御を行うためのサークルプロテクション。最後の僕の動きを説明すると。ランスターさんが砲撃……ファントムブレイザーだっけ?を放った直後にサークルプロテクションを展開。砲撃を防御して稼いだ時間でバインドブレイクを行ってバインドを破壊。その直後に転移魔法を展開してランスターさんの後ろへ移動。そしてケイジングサークルで背後から捕縛して完了。これが最後の僕の動きだよ」
「こうやって聞くと、やっぱり最初から完全に読まれていたんですね」
「うーん、動きを読んでいたというか、たまたま予想がピッタリ嵌ったっていうだけだから……。戦いっていうのはね、やっぱり相手の動きの読み合いだと思うんだ。自分の今までの経験、戦っている最中に見た相手の動き、そういうものを全部合わせて、相手が次にどう動くかを予想する。それで可能性が一番高そうなのに賭けるしかないんじゃないかな?それで、その予想が的中すれば有効打を与えられるし、外れれば作戦の練り直し。強い人っていうのはその的中率が高い人なんだと思うよ」
思うところがあるのか、なのはも横でうんうんと頷いていた。
「やっぱり、普段と違う人の視点を入れるのは重要だね。私の教導が疎かになっている部分もわかってきたし、ありがとう、ユーノ君。ティアナも勉強になったんじゃない?」
「はい、まだまだ自分にはいろいろと足りない部分が多いんだと痛感しました」
「うん、一つずつしっかり潰していこう。さっきの模擬戦みたいに絶望的な状況になっても乗りきれるように」
「はい!!」
今回の件で、なのはとティアナの課題も明確になったようだった。そんな二人をユーノは横で優しげな目で見ていた。
「ところで、ユーノ君からの指摘は何かある?今までので全部言い終わった?」
「えっと……、本当はもっといろいろあるけど、今の二人のやる気に水を差すのも悪いから。後でなのはにメールで連絡するよ」
「うん、待ってるね」
(あ、まだいっぱいあるんだ……)
ティアナが少し落ち込んだ。
こうやってStrikerS 23話のスーパーティアナタイムにつながっていくんだと思うと燃える。
次ぐらいでラスト……かな?
ちなみに魔法の遅延発生は小説版の設定から取ってきてます