ユーノ初めての六課訪問   作:猫山知紀

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その14(ユーノ、なのは、ティアナ、スバル、はやて、リイン)

「ところで、さっきなのはさんが局員待遇の一般の方とおっしゃっていましたけど、ユーノさんってどこの部署の方なんですか?」

「あぁ、それは――」

 

コンッコンッ

 

「失礼しまーす。お茶をお持ちしました!」

 

ノックとともに応接室に入ってきたのは、ティーカップを載せたお盆を持ったスバルだった。

 

「スバル!あんた、ノックの返事を聞く前に入ってきたらノックの意味ないじゃない!!」

「えぇ、いいじゃん。どうせ知っている人しかいないんだし」

「知ってる人しかいないっていっても、最低限のマナーでしょ。重要な話をしてたらどうすんのよ……って、知ってる人?」

 

悪びれた様子もなく、ティアナの言葉を受け流しながらスバルは4人分のお茶をテーブルに並べ終わると、ティアナの横に腰を下ろした。

 

「なんで、あんたも座るのよって言いたいけど、あんたこちらのスクライアさんと知り合いなの?」

 

スバルの置いたお茶に手をかけながら、ティアナがスバルに尋ねる。スバルとティアナは訓練校からずっと一緒だ。管理局関係の知り合いであればほぼ共通の知り合いになるはずだが、スバルだけがユーノと面識がある点が気になった。スバルは表面上は外向的な性格なので、ティアナと比べて幾分交友関係が広い。業務外で知り合った、どこかの部署の民間協力者なのだろうかと思った。

 

「知ってるよ―。ほら、前に八神部隊長のおつかいで私だけ本局に行ったじゃん。その時の届け先の人がユーノさんだよ」

 

その言葉を聞いた瞬間、お茶のカップに口をつけようとしていたティアナの動きがピタリと止まり、ティアナの頭脳が超高速で回転し始めた。

 

(待って、待って、待って。あの時スバルは誰に届け物をした?)

(ユーノ・スクライアさん。そう、ユーノ・スクライアさんだったはず)

(じゃあ、今目の前にいる人は?この人もユーノ・スクライアさん。さっきからなのはさんが、ユーノ君って呼んでるし、私はスクライアさんと呼んでいる。うわー、すごい偶然だなー。この人もユーノ・スクライアさんだ)

(ということは、スバルが無限書庫へ行った時の届け先とこの人は同一人物ってことよね?)

(え、待って?、落ち着いて、落ち着くのよティアナ。あの時のスバルの届け先……八神部隊長はなんて言ってた?『無限書庫司書長ユーノ・スクライア』そう言っていたわよね)

(無限書庫司書長、司書長、司書長って偉い人じゃなかった!?『提督って呼ばれとる人たちと同位っていうことや』って八神部隊長言ってなかった!?)

(え、じゃあ何?今日の私は提督クラスの人を犯人扱いした上に、いきなりクロスミラージュを突きつけて逮捕しようとして、あまつさえ追いかけ回して、模擬戦で教導までしてもらって、果ては不利な状況での戦技指導までしてもらってたっていうこと???)

(いやいや、そんなことあり得ないでしょ。あ、なーんだ。こちらのユーノ・スクライアさんは同姓同名の別人か……、あーよかった)

(ってないわよ!、ないわよ!!、ないわよね(泣)!!!)

 

不意にティアナが立ち上がり、ユーノの側に歩み寄った。

そして――。

 

「すみませんでしたーーーっ!!!!」

「「「えぇっっ!!!!」」」

 

いきなりの直角おじぎにティアナ以外の三人が驚く。

 

「今日のこの時までの数々のご無礼、本当に申し訳ありませんでしたっ!!!」

 

顔を上げないまま、ティアナの謝罪は続いた。

 

「あ、あぁ、何だそのこと。大丈夫だよ。僕なら全然気にしてないから」

「で、ですが」

「ほら、ランスターさん。顔を上げて。それに言ったでしょ、全部はやてが悪いんだって……」

 

その言葉を聞いて、ゆっくりとティアナが姿勢を戻した。眉をハの字にし、今にも泣きそうな表情をしている。

 

「本当に全然、全然気にしなくていいから」

 

迷惑をかけられた側が気にしていなくても、迷惑を掛けた側が自責の念に囚われるのはよくあることである。元来真面目な性格のティアナにもその傾向が見て取れた。謝罪しただけでは私自身が納得できない。そんな表情を顔に貼り付けている。

 

そんなティアナを見て、なのはが一言。

 

「ユーノ君、ティアナに何か罰をあげれば?」

「え、罰?」

「うん、そうしないとティアナも納得できそうにないし。一週間トイレ掃除とか、一ヶ月寮のゴミ捨て係とか」

「いや、さすがにそれは……。うーん、罰か……そういえば」

 

何か思いついたのか、ズボンのポケットに手を入れるとメモリーカードを取り出した。そう、本日の用事のメイン、はやてに渡す情報を記録したメモリーカードである。

ユーノはメモリーカードに手をかざすと、一度掛けたロックを一旦解除し、再びロックしなおした。

 

「では、ランスターさんに罰を与えます」

「は、はい」

「これを八神部隊長に渡してください」

 

ユーノはそう言って、ティアナにメモリーカードを差し出した。

 

「えっと、それだけですか?」

「うん、それだけ。あ、渡すときにはパスコードも伝えてね」

「パスコード?」

「うん、パスコードは――」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

午後21時 機動六課隊舎 部隊長室

 

 

「あー、本局への往復は、ほんま疲れるわ」

「ですねー、私もへとへとです」

 

部隊長室では、本局への出張から帰ったはやてとリインが、移動で凝り固まった体を伸ばしていた。

 

「さてと、もう一仕事して、今日は早めに上がろうか」

「それがいいですね。休めるときに休んでおかないと。いざというときに動けませんから」

 

時刻はすでに21時を回っている。ここから一仕事していれば、22時を超える。それでも『早めに』という言葉がでることが、はやての仕事量の多さを物語っている。

 

「リインはもう眠いやろ。バスケットの中で寝ててもええよ」

「いえ、私も一局員ですから、はやてちゃんのお手伝いをするです」

「そうか、ありがとう」

 

コンッコンッ

 

「はい、開いてるよ」

「失礼します」

 

ノックの後、部屋に入ってきたのはティアナだった。ティアナは普段ははやてに対して一定の敬意を持ちつつも、わりと気さくに接している。しかし、今は緊張しているのか何故か神妙な顔つきをしている。

ティアナははやてに促され入室し、はやての机の前までやってくると足を止めて敬礼した。

 

「ティアナ、どないしたん」

「はい、昨日八神部隊長から受けました、犯人確保の指令について結果報告に上がりました」

「そうか、どないやった」

「本日15時20分頃、犯人と接触。一度は取り逃がしましたが、再び接触に成功。高町隊長、及びスバル・ナカジマ陸士の協力を得て、犯人より情報の入手に成功。その後、犯人に食事を提供し取り調べを実施。19時頃まで犯人を隊舎の食堂で勾留。その後、釈放。犯人は再びアジトに戻ったと思われます」

 

はやてに騙されたままの(てい)でティアナが事務的に報告するが、内容はなんということはない。あの後ユーノと雑談をしながら食事をし、その後ユーノは帰っていきましたということだ。

その報告を聞いて、はやてが柔らかく微笑む。

 

「そか、ランスター陸士が事の真相に気づいたのはいつなん?」

「ユーノさんを完全に犯人扱いして、戦闘を行った後に高町隊長に本当のことを教えてもらったときです」

 

はやての反応をみて緊張を緩めたティアナが、少しのため息を交えながらユーノと戦い終わるまで本当のことに気づかなかったことを正直に報告した。

 

「そか、仕掛けた私がいうのもおかしな話やけど、ティアナはもうちょっと冷静に判断できるようにならなあかんな」

「はい、今日は自分の思い込みの激しさが本当に身に沁みました」

「なら、よしやな。今度からは気ぃ付けなあかんよ」

「はい」

「ところで情報の入手に成功って言うとったけど、ユーノ君からなにか預かったん?」

「あぁ、はい。ユーノさんは今日はこれを部隊長に届けに来たみたいです」

 

ティアナがユーノから預かったメモリーカードをはやてに手渡すと、はやてはそれをリインに手渡した。

 

「リイン、中身わかるか?」

「えーっと、ロックがかかってるですね。パスコードが必要みたいです」

「ティアナ、ユーノ君から聞いてる?」

 

パスコードを聞こうと、はやてがティアナを見るとティアナは不自然に目をそらし『は、はい』と何故か小声で答えた。先ほどの報告の後半では緊張は緩んでいそうだったが、今再び緊張の面持ちとなっている。

というよりもすごく嫌そうな雰囲気を醸し出している。

 

「パスコード、何やって?」

 

「『…………き…、ぃ……………………ぃ』です」

 

「え、なんて?」

 

「『ち………き…、ぃ…………ほ………ぃ』です」

 

「ごめん、全然聞こえへん」

 

苦虫を噛み潰した様な顔をしていたティアナは、意を決して目を大きく見開くと、はやての目をしっかり見ながら大きく息を吸い込んで叫んだ。

 

「『ちびだぬきへ、いたずらはほどほどに』です!!!!!」

 

「……………………」

「……………………」

「…………そ、そうか。ティアナ、なんか、ほんま……ごめん」

「……いえ」

 

気まずそうに見つめ合う二人。

 

そして――。

 

「あ、開いたです」

 

ユーノから託された情報は、無事にはやての元へと渡った。

 

 

おしまい

 




以上で『ユーノ初めての六課訪問』はおしまいです。
最後まで読んでくださった皆様ありがとうございました。

この物語が少しでも皆様の人生の、楽しさの一部になったのであれば幸いです。

個人的にも書きたいものが大体書けたので、語彙や技量の問題はあれど、現時点においては十分満足のいくできになりました。

3rd Reflectionは本当に公開されるのかもわからない状況で、
リリカルなのはシリーズも完全に下火な雰囲気ですが、
また、気が向いたら、なのはSSを書いてみようと思います。


ただ、しばらくはオリジナルを頑張ってみます。
これを書いていたので、あんまり書けてないですがオリジナルを幾つか書き進めてます。
よければ読んでみてください。私が喜びます。


<なろう>
http://mypage.syosetu.com/693839/

<カクヨム>
https://kakuyomu.jp/users/necoyama



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