次の日、予定通りデスクワークとなっていたティアナとスバルは執務室でコンピュータとにらめっこをしていた。
「うーん、久しぶりにがっつりデスクワークだと訓練よりも疲れる気がするねぇ」
「今日のうちにいろいろ片付けちゃいましょ。 次は時間取れるのいつになるかわからないんだから」
「そーだね。 今日はなのはさん以外の隊長たちがいないからライトニングチームだけが訓練なんだっけ?」
「そーよ。 ヴィータ副隊長とシグナム副隊長は地上本部、フェイトさんは昨日から本局に行ってるはずよ」
それに加えて、はやてとリインフォースも本局へ出張、シャーリーはフェイトに同行という形で不在となっている。
このため現在六課隊舎にいる前線人員はスバル、ティアナの二人のみである。
「で、なのはさん一人で4人を相手にするのは大変だからってことでスターズは休養を兼ねて溜まっているデスクワークの消化、と。 ―――ねぇティア」
「うるさいわねぇ、口じゃなくて手を動かしなさい」
「なのはさん一人で4人相手するのが大変になったってことは、私たち4人が全力で頑張ればなのはさんに勝てるぐらい強くなったってことだよね?」
「はぁ? 何言ってんのあんた?」
「でもでも、そういうことだよね!?」
「あんた、なのはさんに普段リミッターがかかってんの忘れてない? 本気出されたら4人揃っててもひとたまりもないわよ」
管理局では部隊ごとに保有する戦力がなるべく均一化されるよう、各部隊が持てる戦力に制限が設けられている。
そのため、オーバーSランク3名に加えニアSランク2名など一部隊が保有できる戦力としては通常であればありえない。はやてはこれを隊長、副隊長達にリミッターをかけるという形で回避し、スカリエッティに対抗する戦力を整えた。
ちなみに、リミッターがかかった状態でなのはが運用できる魔力はAAランクに相当する。
六課への配属初期は四人でも全力で戦ってなんとかバリアジャケットに傷をつけられるぐらいだったが、最近では4人で戦えば魔力制限かかっているなのはであれば圧倒できるぐらいになっていた。
「そうだけどぉ、でも最初のころはリミッター有りのなのはさん相手でもバリアジャケットにちょっとした傷をつけるのも大変だったじゃん。そう考えるとさ、すっごく成長してるよね、私達」
「そう考えるとそうね。でもまだまだよ。リミッター有りのなのはさんなら一人ででも対等に戦えるぐらいにはならないと」
「そうだよね。でも、なんかうれしいな。うー、なんかやる気出てきた!! さっさと終わらせて訓練混ざろうかな?」
「今日は休養でしょ。休めるときに休むのも仕事のうちよ」
「はーい」
「―――ところでティア」
「なによ」
「なんでそんなにピリピリしてるの?」
「してないわよ」
「してるよ。 キンチョーしてるっていうかー、強ばってるって言うかー」
「してないわよ」
「えー、絶対してるのになぁ」
「してないって言ってるでしょ!! もうっ、気にしないようにしてたのに、あんたのせいで余計に気にしちゃうじゃない」
「えー!! 私のせいなの」
「うっさい、バカスバル!! 見回り行くわよ!!」
「え、見回り?」
「いいから来なさい!!」
訳も分からず地雷を踏んでしまったスバルは、ティアナに引っ張られながら見回りへと向かっていく。その道すがら、声を潜めてティアナがスバルに告げる。
「いい、これはあんたにだけは言っておくわ。 絶対に他言無用よ」
「え、えっと……なに?」
「これは、昨日八神部隊長から教えてもらった話なんだけど、とある事件の犯人が近々機動六課から情報を盗み出そうとしているらしいの」
「えっー!!」
「しーっ!! 声が大きい。 今日は隊長たちが昼間は全員不在でしょ。 だから、警戒できる人間が私達しかいないのよ。 私一人で隊舎全体を見まわるのは流石に無理だから、あんたにも手伝ってもらうわよ。 あたしはこっち、あんたはそっち。 怪しい人を見かけたら即連絡よ」
「わ、わかった」
思いがけない深刻な話にスバルから笑顔が消える。スイッチが入ったかのように真剣な顔となり、スバルとティアナは二手に分かれ隊舎内、および周辺の見回りへと向かっていった。