東方転性譚   作:Parfait

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紅く染まる館へようこそ

「別に勘で飛んでるだけよ」

何処に向かっているのかという俺の質問に答えたのは意外にも霊夢だった。

しかし進めば進む程紅霧が濃くなっているのであながち間違ってはいない様だ。霊夢の勘恐ろし。

どんどんと霧が濃くなるせいで視界が狭まり、景色が見えなくなっていくことに寂寥を覚える。今は正に五里霧中といったところか、諺的にも実際にも。

訳もなく変化の乏しい景色を眺めていると何かが動く様がちらりと見え、魔理沙も同じ様に気づいたようで少し眉を動かす。

「あん、誰か居るのか?」

「お前らは誰なのだー?」

魔理沙の呟きに返答するかの様に、しかし噛み合っていない答えが闇を切り裂いて聞こえてくる。

近づいてきたせいか徐々に輪郭が鮮明になり、声の主の全貌が見えてきた。

「わたしはルーミアなのだー」

聞かれてもいないのに自己紹介を始める声の主はまだ幼げな少女だった。

綺麗な金髪を肩口で揃え、お札の様なリボンが乗っかっている。

まん丸の目は赤く染まっており、悪戯気に緩む口元から覗く鋭い犬歯は「人外」という言葉を連想させた。

「別に聞いてないわよ」

「こっちの名前は教える気もないしな」

相変わらず辛辣な魔理沙と霊夢の返答に顔を顰めるでもなく飄々とした表情を崩さない少女ルーミアは、さも無垢な子供のようにコクリと首を傾げ

「おねーさんたちは、食べてもいい人類?」

どこまでも無邪気で、しかし殺気のようなものが含まれている声に思わすゾッとする。

噛み合わない会話、死を纏った雰囲気。日常生活では一切感じない死への恐怖。錆び付いていた筈の死に抗う本能が警鐘を鳴らしている。

「ま、魔理沙!逃げよう!」

しかし叫びも虚しく目の前の少女は臨戦態勢に入っていた。

彼女はまるで人類の罪過を負う聖人のように両手を広げると、腕から光を一切反射しない漆黒をどろりと垂れ流していく。

その闇は重力に従って落ちることなく幾つもの球を形作り、ルーミアの周りを囲むようにして宙へと浮かんだ。

「おねーさんたちは、つよいのかー?」

そう問うた瞬間、漆黒の球から弾幕が溢れ出る。

彼女の周りを弾幕が覆っていくが、霊夢も魔理沙も恐れることなく隙間を掻い潜っていく。

「そうね、強いわよ」

「取り敢えず一筋縄ではいかないぜ」

ついに霊夢がルーミアの前に踊り出る。だが拳が後わずか届きそうなところで唐突にルーミアが宣言した

———————月符「ムーンライトレイ」————

ルーミアの両手から月光の光線が伸び、霊夢に直撃する。

「霊夢っ!」

「ちっ、面倒臭いわね」

しかしその光は霊夢を貫くことなく、いつ出したのかお札によって五芒星の形に張られた結界が阻む。

「妖怪、後ろがお留守だぜ!貫け!シャイニングスピア!」

「がはぁっ」

ルーミアへと殺到した光槍はそのほとんどが闇の球体によって吸い飲まれたが、一本だけルーミアのわき腹へと突き刺さった。

「これで終わりよ」

いつの間にか懐へと潜り込んでいた霊夢が退魔針でルーミアの鳩尾を突き上げる。

そしてその勢いのまま頭に踵落としを叩きこみ、少し遅れて地面に激突しただろう音が微かに聞こえた。

「本当に面倒臭かったわ」

「でも無傷な分後が楽そうだな」

「はぁ……さっさと元凶倒して帰るわよ」

し、死ぬかと思った……。もう今直ぐに帰りたいんだけど、いや本当に。

しかしそんな俺に追い打ちをかけるように目の前に巨大な建築物のような影が現れ始めた。

「霊夢、どうやら敵の本拠地が見えてきたっぽいぜ」

「そうね、そろそろ降りましょうか」

そのまま高度を下げていって門の目の前に降り立つ。

目前に迫ったそれは所々に紅が散りばめられた洋館だった。端から端まで見渡すことが出来ない程には大きく、いやに窓が少なくて壁ばかりが目立っている。

大きな屋敷に違わぬ大きく聳える門の前までいくと、やはりそう簡単には通してくれないようで緑色のチャイナドレスを纏った門番が立ち塞がっていた。

「貴方たちがお嬢様の言っていた侵入者ね」

「あん? お前は私達のこと知ってるのか?」

魔理沙が聞くと門番は少し笑って

「お嬢様から赤白と黒白の侵入者が来る、ということだけはね」

「そりゃまた随分と勘のいいお嬢様だな」

そして獰猛な笑みを浮かべ

「よしっ、霊夢! 後は任せた」

「は? ちょっと、待ちなさいよ魔理沙!」

「いくぞ時子!」

霊夢の静止も聞かずに俺を抱えて箒で門を飛び越えて屋敷へと突っ込む。

後ろで霊夢と門番の恨み節が聞こえてきた。御愁傷様です。

屋敷の中を見渡してみると、外見以上の広さを感じる。目の前には大きな階段があり、踊り場にはまるで定番のように大きな肖像画が飾られていた。絵に描かれている男性は口許の牙を伸ばしていて吸血鬼だと言うことが分かる。この館の主人だろうか、だとしたらもう今すぐに帰りたいんだけど。

「右と左で分かれてるけどどちらから見てみる?」

「そりゃ当然二手に分かれるぜ」

さも当然のように言われたが勘弁してほしい、どう考えてもこんな場所に一人でおいてかれたら死ぬ未来しか見えないわ。

「いや、ちょ、それはどう考えても」

「じゃあまた後で落ち合おうぜ」

またしても叫びは届かずに空回りする。本当に今日は厄日だ。

横幅二メートルはあろうかという廊下を歩きながら、一人身震いした。




今回は更新が遅かった癖に短くてすみません。戦闘描写が難しかったのと他の作品に手を出したのが原因ですね。というか戦闘描写に苦戦した割に短い&ルーミア出オチすぎるという突っ込みはなしの方向でお願いします。といいながら感想もらえたら狂喜乱舞します。
ついに紅魔館へ潜入!これから主人公はどうなってしまうのか!? 美鈴との戦闘シーンは後で書きます。
チルノ?いえ、知らない子ですね。
……今度出します。
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