・月曜日
「上条さーん、朝です…よ…」
朝、上条の病室を訪れる看護婦。
彼女はスライド式の扉を開けて真っ先に窓へと向かいカーテンを開ける。
朝日と共に彼女に降り注ぐのはそう、上条の寝顔。
他の看護婦から羨ましがられる「上条の寝顔」を見るために、毎朝真っ先にこの病室に来るのは秘密だったりする。
あの医者に「上条さんが入院したら連絡ください、いつでも飛んでいきます」と言って、他の看護婦と差を離した。
そこまでして来たこの朝。この病室。この寝顔、
と横に寝る二人の少女…。
「…」
それは無言になるはずだ。
確かにいつも横に一人寝ている、最愛という子が。
それはまあ色んな理由があるけどまだ良いだろう。まだ。
だがしかし、今日もう片方で寝ているシャンパンゴールドの髪の女の子は別だ。
ミサカさんだったっけ?たしか10032号とか言われていた子。何故一緒になって寝ているの?
それでなんだ。何故両サイドから上条は手を握られているんだろうか。
何をツッコむべきか迷っていると、その張本人が起きる。
「ん…ふわぁぁ…。あ、おはようございます…ってあれ、目が擦れない…ってえぇ!?」
「…お兄ちゃん、昨日の夜は(勉強の)しすぎで疲れたんだからもっと寝させてください…」
「おはようございます、とミサカは寝起きから貴方の側に居れる事に今まで味わった事の無い感情が胸に流れ込みます…」
一つ、ただ一つ言うのであれば…
「上条さん、不純です~!!!!」
静寂の病院に、若い女性の悲鳴が響く。
「一応、朝飯は貰ったけど…看護婦さんが一度もこっちを見てくれなかった…」
「あれお兄ちゃん、そこで悔しがるってのはどういう事なんですかね。超説明求めます」
「こうやって既成事実で固めていく事こそ、恋愛の必勝条件です」
はぁ、とため息をもらす当麻。
ツッコむ気も失せているのでそそくさと食事にありつく。
「「ぐぅぅ~~」」
これは当麻の両サイドから聞こえた音。
「そういえば、昨日の昼から何も食べてないですね」
「私も言われてみればそうでした」
そういう二人は当麻の病院食を凝視、もとい要求している。
「まさか、あわよくばありつこうとか思ってます?」
「いやいや、まさかそんな事は…」
遠慮なく、最愛の口の端からヨダレが垂れている。
「“あわよくば”ではなく、要は目の前でミサカが要求しているのだからくれたっていいじゃないかという確定事項です」
「いやいや、お前らは歩けるんだから何か買いに行ってきなさい!!」
財布から1000円渡して、病室から追い出す。
「これじゃあ貧相な弁当しか買えないですけどね」
なんて文句言いながら二人が出て行った後、やっと一人になった。
「ふう。静かだなぁ」
シンと静まり返る病室。日々家事や追いかけっこに忙しい当麻にとって至福の時間だ。
「さて、時は金成り、ちゃっちゃと宿題やりますかね」
シャーペンがベットに備え付けられている机に当たり、心地いい音が病室に響く。
「ふふふん、ふふふん、ふんふんふーん♪」
この調子なら、宿題なんてあっという間に終わりそうだ。
あくまで"そうだ"。終わるわけないのだが、
「そう思わないと、スタート地点で挫けるから・・・はは」
悲しくなる当麻だった。
それから一時間後…
「はぁーまぁーずぅーらぁぁ!!!」
「だぁーすいませんすいません、今行くからそんなに急かさないでぇ!!」
段ボールを3つ抱えながら走ってくる男と、病院内で大声を出す女性。
「顎で使われているはまずらを、私は応援する」
ピンクのジャージを着た大人しめの女の子と、
「また当麻は入院して、どんだけ私達に会いたいのかしらぁ?」
「結局、上条に会いたいのは私達だった訳で…」
「フレンダ…あとでオシオキだから」
フレンダと呼ばれる小柄な女の子。
「相変わらず皆さんは変わらないですね。もちろんバカ面はより一層深みを増して超バカ面になりましたけど」
「駄目だ、俺の味方が一人もいない…。おい上条、助けろ」
当麻の病室は先ほどの静寂など嘘のように、
その三人の女の子と一人の男によって破られる。
「・・・はぁ・・・」
そもそも当麻の周りに静寂なんて言葉は存在しない。
一過性のものなのだ。