「やっと二人きりになれました」
その時を待ち望んでいたかのように、
「…ちょっとその発言はいかがな物かと」
歯車は回りだす。
「あれーお兄ちゃん、今超変な事を想像してますか?」
それはとてもゆっくりと、
しかししっかりと、隣の歯車を捉える。
「いえいえ、まさか~」
「……いいんですよ?」
そう言って上条に近づく最愛。
「最愛…そんな事するなって言ってるだろ」
「冗談ですよ。超冗談です」
「ならいいんだけどな」
「…なんでお兄ちゃんは私をそういう目で見てくれないんですか?」
「なんでって…妹だろ?」
「本当のじゃないですよ…?」
最愛は俯く。
それは今さら覆しようの無い事実。
それは"兄妹ごっこ"をしている二人にとって立ちふさがる壁。
『でも』と当麻は答える。
「例え本当じゃなくても…俺は最愛を本当の妹以上に思ってるんだけどな」
それはもちろん本心から。
「もし、実の妹がいたとしても?」
「いや、最愛は最愛、実の妹は妹としてみると思うぞ」
「そう…ですか…」
その当麻の家族を想う気持ちが最愛にはとても暖かくて気持ちよかった。
「そう言ってくれる人がいる…そんな場所が出来てよかったです」
「なんだよ、そう言うってことはまだ俺は家族じゃないのか?」
また当麻に近づく最愛。先程のような卑しい気持ちでは無い。
「いいえ、もう立派な私のお兄ちゃん、大切な一人の家族(違う意味でも)です」
「そっか。ありがとな」
もちろん当麻は()の中は聞こえていないし、意識もしていないだろう。
けど、それが当麻に届くまで…
最愛は声を大にして言うだろう。
「大好きです、お兄ちゃん」
「おお、なんだいきなり…」
「言ったそのままですよ。あ、そうだ」
「どうした?」
「今日、一緒に寝ませんか?」
「最愛、今まで一緒の病室のベッドで寝てたよな?」
「今日、一緒に寝ませんか?」
言わなくても伝わる、互いの気持ち。
「…あーはいはい、分かりました」
歯車が回るように、互いが互いにかみ合って稼働する。
「手、いいですか?」
「ほれ」
当麻は右手を差し出す。
それは最愛を守る剣になれば盾にもなる右手。
それは不安をかき消し、安心を与える。
そして最愛と当麻を繋いだ赤い糸。
「はい…」
いつか言うであろう、プロポーズの快諾の言葉。
でも鈍感な当麻は気付かないだろう。
でも大丈夫だと、確信できる最愛。
これからじっくりと、
その距離は、今のように近く無いのかもしれない。
服が擦れ、互いに手を取るその距離にまで、
歯車を近づけよう。
「じゃあ電気消すぞ」
「いいですよ」
パチッ
近くに、月夜に照らされる当麻の顔がある。
もし…いや、将来こんな景色を見る時、
それはどれほど心が躍る事なのだろうか。
そう考えると胸の鼓動が止まらない。
「(寝れません…)」
「お、どうした? 寝れないのか? やっぱり電気つけようか?」
「んーん、超大丈夫です」
照れを隠すために最愛は当麻のシャツに顔をうずめる。
それが実は逆効果で、当麻の匂いが、温もりが目の前にある。
「(もっと眠れません…)」
それでも、
安心出来る存在に導かれて、静かに眠りにつく。
そういう時に限って、
「(駄目だ上条当麻、寝ろ、寝るんだ…!)」
と、可愛い寝顔が横にあるから、そしてさっきの最愛の唐突な好き発言に、
一人モヤモヤ悶々としている上条当麻だった。
それでも最後は眠りについたのだが。